The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

十四松と十代亀でこりゃめでてーな ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>

タートルパワー!
 今年のアメコミ映画攻勢もほぼ終わり。この「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」と「スーサイド・スクワッド」を観たので後は来年の「ドクター・ストレンジ」までしばし待機。リアルなの、シリアスなの、コメディ調いろいろ揃っているけれど、なんだか歳を取るにつれて暗めのやつより明るいヒーロー映画の方が楽しんで観れるようになってきているなあ。というわけで僕個人としては十分に楽しめたのであった。「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>(以下TMNT影)を観賞。

物語

 NY。エイプリルは科学者ストックマンがフット団の一味で、タートルズに敗れ捕まった首領シュレッダーのために何かを計画していることを突き止める。シュレッダーを護送する道中、フット団が護送車を襲撃する。担当の警官ケイシー・ジョーンズとタートルズによってシュレッダーの脱走が失敗かと思われたその時、ストックマン博士は次元転送装置を作動させシュレッダーを逃亡させることに成功する。異次元でシュレッダーはディメンションXの悪人クランゲと出会い、彼の計画を手助けすることで世界を手に入れる盟約を結ぶ。
 一方シュレッダーと一緒に護送され、ドサクサに紛れて逃げたビーバップとロックステディの二人組はシュレッダーに勧誘されミュータジェン投与の被験体となる。二人を追っていたジョーンズはタートルズとエイプリルと出会う…

 前作の感想はこちら。

 マイケル・ベイが制作した前作はCGによるマッチョなタートルズに多少の違和感も覚えたものの概ね大成功。本作は前作の印象をそのままにパワーアップした直近の続編。アメコミ映画の例に漏れず、オリジンとキャラクター紹介に時間を費やさねばならない1作目に比べると、最初から全開でいけるため、テンポは今回のほうが段違いに良くなっている。
 原題は「Teenage Mutant Ninja Turtles out of the shadows」。前作は「ミュータント・タートルズ」だったが、何故か今回は「ニンジャ」の単語が加わって「ミュータント・ニンジャ・タートルズ」に。しかしですね、以前も書いたとおり、実はこの4匹の亀の要素としては彼らが「十代」であるってことが重要であると常々言っているのですよ。本作でも冒頭のバスケ観戦シーンやハロウィン・パレードに紛れ込むマイキーのシーンなんかで彼らのティーンエイジャーぷりはふんだんに描かれている。だから次こそはタイトルに「ティーンエイジ」をちゃんと入れて欲しいですね。タイトル長すぎったってテーマ曲に合わせて言えば全然面倒くさくないし、「TMNT」って略称もちゃんとファンの間では定着しているんだから。

 そんな十代の彼ら。前作でキャラ紹介は終わっているので本作ではいちいち改めてクローズアップしたりしません。レオナルドはクールなリーダー。ドナテロは天才発明家。ラファエロは熱血漢、そしてミケランジェロはパーティ・ピーポー!その辺はもうみんな知ってる大前提で進むよ。アニメ主題歌を口ずさめばそのままキャラクターが把握できるし。

 このテーマ曲を覚えて歌おう。今回はガッツリ出てくるし。
 今年のヒット作といえば「おそ松さん」だが、松野六つ子とタートルズの4人は微妙にかぶらない。が十四松とマイキーだけは奇跡のイメージカラーも性格も重なっている!
 ヒロイン、エイプリルはミーガン・フォックスが引き続き演じている。職業はTVリポーターだが、今回はラストまでその仕事が出てくることはなく、勝手にフット団の陰謀を暴いたりしてるのでてっきりタートルズのサポート兼探偵業にでも職業替えしたのかと思った。予告編で観た女子高生姿はさすがにもうコスプレにしか見えんだろ、と思ったりしたが(女子高生(ただし私服)役だったトランスフォーマーももう9年前)、やっぱりスクールガールのコスプレ集団に紛れ込むため、というシチュエーションだった。エイプリルは主要な人間キャラクターだけど、あくまでアクション担当はタートルズでしかも今回はケイシー・ジョーンズも登場するため影が薄くなるかと思いきや、特にそういうこともなく、それこそロイス・レーンから連綿と続く「仕事のできる自立した女性」という格好良さをもっている。元々のエイプリルのキャラもあれどその辺は演じたミーガン・フォックスの力も大きいと思う。
 前作でフット団の野望粉砕の功績を表に出れないタートルズに替わり独占したカメラマン、ヴァーンはすっかりNYの有名人として調子に乗っている。タートルズと並んで本作の正義の側のコメディ部分を、それもちょっと情けない部分を担当するキャラクター。でもいざというときにはきちんと仕事を成し遂げるから素晴らしい。
 新登場のケイシー・ジョーンズはアニメではお馴染みのホッケーマスクにスティックやパックを武器として使う自称ヒーロー。本作ではシュレッダー(とビーバップ&ロックステディ)護送を担当した警官だったが逃げられたため独自にその行方を追い、その過程でタートルズたちと出会う。演じているのはTVの「ARROW/アロー」で主人公オリバー・クイーンを演じているスティーブン・アメル。二度目となる常人ヒーローだが、冷静で渋いアローに対してジョーンズはちょっとドジキャラ。本作の雰囲気に合わせてアメルもユニークな感じに。ちょっと声も高めな気がする。タートルズがいっても亀なのでエイプリルとの恋愛関係は成立しにくく(ゼロではない)、本来ならエイプリルの恋人候補でもあり、実際一緒のシーンが多いのだが、どうにも肝心なところで間が抜けてるので「できる女とそのボディガード」といったところ。
 スプリンター師匠も出てくるがそれほど出番は多くない。

 敵も味方も全体的に太平楽なの人間ばかりなのが本作の特徴でもあって、そんな本作の象徴がビーバップ&ロックステディ。元は普通の人間(性格は変わらず)だがミュータージェンの力で先祖返りしてそれぞれイノシシとサイの獣人となった。とにかく豪快で愛すべき馬鹿。演じているのはビーバップがゲイリー・アンソニー・ウィリアムズでロックステディがシェイマス。シェイマスはアイルランド出身のWWEスーパースターですね。マッチョマンだがそのあまりに白い身体と赤毛のモヒカンが特徴。俳優としては本作がデビューであるが、まあWWEなんて毎回ぶっつけ本番の舞台に立っているようなものなので。

 タイラー・ペリー演じるストックマン博士もフット団の幹部ということで前作ならウィリアム・フィクトナーが演じていたキャラクターに当たるんだけど、いわゆる黒人のスタンダップコメディアンといった感じの演技で、作品の明るい雰囲気に貢献している。
 宿敵シュレッダーは前作ではパワードスーツのような鎧を着こみ、その声は吹替で表現されていたが、本作ではアジア系ブライアン・ティーが演じ普通に素顔も見せる。というか今回はもっぱら素顔の役として過ごし、いざスーツを着込んで人間十徳ナイフとして活躍しようという矢先にクランゲに凍らされて彼のコレクションになってしまう。なんとなく「G.I.ジョー バック2リベンジ」のデストロを思わせる。まあこの場合シュレッダーもクランゲを裏切る気満々だったのでどっちもどっちだが、その分タートルズと直接やりあう機会は無く、対決は次回へ持ち越し。スーツも無駄に気合の入った前作の鎧風パワードスーツに比べると黒いタイツに兜かぶっただけッて感じだったしな。一応前作に引き続き出てくる女幹部カライとともにこの陽性のヒーロー映画の中では洒落が分からないアジア人という感じで悪人だけどその真面目さが印象に残る。てか前作の最後でミュータージェン浴びてミュータント化したことが暗示されてなかったか?

 クランゲ。ディメンションXの独裁者、狂気の科学者。その科学力で地球を征服しようとする。見た目は巨大な脳みそなので、ニコちゃん大王とかスペースインベーダーの親戚みたい。怪力ロボットを作りその腹の中に入っている。本作の悪の黒幕であり、ラスボスだが、どうにも憎めない。昔のアニメではシュレッダー(サワキちゃん)とクランゲの漫才は名シーンであり、本作でもちょっとその片鱗を覗かせる。まあNYで空中に次元の穴を開けて巨大な何かが?!ってのは「アベンジャーズ」だし、「トランスフォーマー:ダークサイド・ムーン」でも同じような展開だったりした。NYの高いところから何かを放出(前作はこっち)!って展開と並んでアメコミ映画では定番なのである。本作も死ぬコト無くディメンションXに逆戻り。お供としてシュレッダーが一緒なので次は最初からちゃんとコンビを組んで漫才を見せて欲しい。

 ニューヨークを舞台にしたアクション映画だと、ヒーローである主人公とNY市民、NY警察が一体となって悪に立ち向かう、みたいなシーンがあって、これが他の国やアメリカでも他の都市だと、冷めた目で見てしまうこともあるのだが、NYだけは本気でヒーローや市民を応援してしまいたくなる。それこそ「スパイダーマン」はサム・ライミの3部作もマーク・ウェブの「アメイジング〜」2作もその市民とヒーローが一体となるようなシーンが胸熱。アクション映画とは言えないが「崖っぷちの男」や「マネーモンスター」などでも似たようなシーンがあった。先日のリメイク版「ゴーストバスターズ」ではそのNY映画としての側面(この点ではオリジナルが上だと思う)はあんまり感じなくてちょっと不満だったのだが、その点では本作「TMNT影」が補ってくれた感じ。もっとも本作ではあくまで警察は知っているけどタートルズは表に出ず市民は都市伝説としてしか知らない、という感じだけれど(タイトルの「Out Of The Shadows」は影の外に出て認知されたが、それでもあえて影の存在であることを選んだタートルズを表している)。

 とにかく陽性のヒーロー映画。こういう作品だと映画を観て感じるリアリティのラインが他の作品とは全然違うので物語的な矛盾はほぼ気にならないし、解明されない謎、置いてきぼりの伏線らしきものとかも、まあもし次で触れるkとがあるならそれでいいんじゃね?という感じ。作品自体ももう一作きりで判断というより昔の連続活劇を観る感じで、続編当然あるよね?という態度で臨んでいるのです。
 後はやはり同じパラマウント映画である「トランスフォーマー」シリーズと「G.I.ジョー」シリーズ。この2作は元々アニメやコミックスでは世界観が一緒だし、本作はマイケル・ベイが制作しているので雰囲気が「トランスフォーマー」と似ている(音楽が同じスティーブ・ジャブロンスキーでかなり似たテーマが流れるのも似ている要因だろう)。深刻ぶった予告編だけど本編はバカ満載ってあたりも共通だ。だからパラマウント上層部は一刻も早くマイケル・ベイとスティーブン・ソマーズを呼び寄せて、「トランスフォーマー」「G.I.ジョー」「TMNT」の3作の実写クロスオーバー作品を作るべきだと思う。

ミュータント タートルズ:オムニバス (ShoPro Books)

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カワバンガ
そして次は兎用心棒の実写化を!(しつこい)