The Spirit in the Bottle

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地獄の創世記! キングコング:髑髏島の巨神

 さて、キングコングである。僕的には怪獣と言った場合ゴジラに勝るとも劣らない存在。大好きなキャラクターで、やはりオリジナルの1933年版「キング・コング」は今でもそれこそ過去に何回も当ブログで取り上げた「荒野の七人」「大脱走」などと並んでよく見る映画の一つ。そんなキングコングが装いも新たに再登場。それも最初から2014年の「GODZILLA ゴジラ」と同じ世界観であり、将来的にゴジラと戦うことを決定づけられた通称「モンスターバース(MonsterVerse)」作品の一つとして。必然的にオリジナルに比べ変更点も多く、オリジナルをこよなく愛する僕としては期待半分不安半分で観に行ったのだった。「キングコング 髑髏島の巨神」を観賞。

物語

 1944年南太平洋。とある島に不時着した日本軍とアメリカ軍のパイロット。出会った途端に激しい殺し合いをする二人であったが、その前に巨大な手が襲いかかる…
 1973年、アメリカがベトナムからの完全撤退を決定したその頃、地球観測衛星ランドサットが謎の島を発見する。その島は巨大な暴風圏に囲まれていたため漂流や不時着以外ではこれまで辿りつけなかった未知の島。政府の特務機関モナーク。その一人ランダはこの島の探索のための許可を上院議員に取り付ける。遅かれ早かれソ連もこの島の存在に気付くだろう。そこに何があるかは分からないがソ連に後れを取ってはいけない…
 その島〜髑髏島の探索隊にはランドサットとモナークのメンバーの他にパッカード大佐率いる米陸軍ヘリ部隊が輸送を命じられた。ランダは島の探索のために元SASでサバイバルの達人コンラッドを雇い入れる。また民間人カメラマンとして女性カメラマンウィーバーがいた。
 島を取り囲む嵐を乗り越えるとそこは手付かずの自然が残る風光明媚な美しい島が。早速サイズミックという地質調査のための爆弾を投下。その振動で地層密度を調べるのだ。モナークブルックスが島の地下に広大な空間が広がっていることを認めたその時、巨大な猿が現れ、次々とヘリを攻撃していくのだった。この島はまだ人類が挑戦するには早すぎた…

 原題は「KONG:SKULL ISLAND」で邦題もほぼそれに準じているが原題にない「キング」の称号をすでに付けてしまっている(巨神というのも盛りすぎとは思う)。僕がこの作品を観る前に知っていたのは

  • 舞台が1970年代であること
  • コングの設定がおよそ30mでしかし、まだまだ成長中の若者であるということ
  • コングはほぼ直立で動き、ナックルウォークはしないこと
  • 将来的にコングとゴジラは対決するすること(ただゴジラと対決する個体が今回出てくるコングかは不明

 といったあたりの情報。原題で「キング」をつけていないのはなにか意味があるのかな?と思ったのでいくら「コング」だけでは物足りないとはいえこの時点で「キングコング」としてしまうには勇み足過ぎないか?などと思ったのだった。個人的には怪獣王であるゴジラとの対決に際して「キング」の称号が付いてどちらが怪獣王に相応しいか争う、という意味もあるのではないかと思った*1。まあ結果として劇中で何度も「髑髏島の王、神」という触れ方はされるので現時点での「キング」付きの邦題も特に問題はないだろう(あるいは予定されている「GODZILLA VS KONG」でもコングとだけタイトルになっているのでこの「モンスターバース」ではあえてキング抜きのコングが正式名称なのかもしれない)。
 僕はこの作品を2回観て、一回目は割りと1933年のオリジナル「キング・コング」の新しいリメイク、コング主演単独作品として観た。その点で言うと正直イマイチである。ただ二回目はモンスターバースの中の一作、すでに「GODZILLA」が前作として在り、さらに後続の作品も複数控えているという視点で見直した。やはりこの2つのどちらの視点で観るかで感想も変わってくると思う。

 僕が最初に劇場で観た実写映画が1984年の「ゴジラ」である、というのは何度か書いたと思うのだが、それ以前にまだ小学校に入る前だと思ったが、親戚の家で見たのが1933年の「キング・コング」だった。小さなテレビ(持ち運べるようなやつだったので10インチもなかったと思う)で、しかも白黒の作品。子供が見て退屈しないはずがないのだが、僕はその面白さにやられてしまった。この記憶の中の面白さは割りと盛られていて、後年改めて「キング・コング」を見なおした時に、もちろん面白いけれど、あれ?こんな感じだっけ?という部分もあったりしたのだが、それ以来キングコングに関してはオリジナル原理主義者である。というかいま見ても屈指の面白さで戦前の映画とは思えないテンポの良さ。きちんとキャラクターとして確立されたコングの造形や動き。ティラノサウルスとの死闘、ラストのエンパイアステートビルでの戦闘機との対決と見せ場だらけだといっても過言ではない。
 なので僕の中では1933年の「キング・コング」とその忠実なリメイクである2005年のピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」は自分の映画史のなかでも不動の地位を占めている。
 今回の「髑髏島の巨神」の解説や感想を読むと、「ただのゴリラじゃないのが良かった」とか「きちんと怪獣映画になっている」といった意見が多く見受けられて、要するに「人類の兵器なんか効きやしねえぜ!」という感じのもの。1998年のエメリッヒ版「GODZILLA」があっさり通常兵器で倒されてしまったことに対する批判にも似ているのだが、僕としてはその部分でゴジラとコングは明確に違うのだ、と言いたい。
 ゴジラのデビューは1954年、コングは1933年とおよそ20年の開きがあるが、この間に第2次世界大戦という人類が見た地獄があり、さらに原爆、水爆といった核兵器の脅威が存在することでゴジラとコングが同じ怪獣と言ってもその存在価値は大きく違う。水爆によって目覚め、人類の通常兵器はほぼ通用せず、大都市東京を焼け野原にする怪獣ゴジラはいわば「黙示録の怪獣」。人類が自分の手に負えない、自ら自分たちを滅ぼしてしまいかねない科学力を手に入れたことに対する警句みたいなものがある。
 コングは違う。手付かずの大自然で王として君臨していた巨大猿はやがて外部からやってきた人間に捕らえられて大都会に連れてこられる。暴れだして都会をパニックに陥れるものの、最後は人類の科学力(戦闘機)の前に敗れる。キングコングはいわば「創世記の怪獣」。まだこの時期は怪獣(大自然)と人類が対等に戦える存在であった。
 だから、ゴジラの文脈での「怪獣」の意味合いで、それ以前の「怪獣」のパイオニアであるコングを語り、そうじゃないから良かった、悪かったというのはちょっとコングに酷ではないか、と思うのだ。
 単なる巨大ゴリラじゃないのが良かった、というのも理解はできるものの個人的(ゴリラ大好き)にはゴリラであることと怪獣として格好いいことは矛盾しないので、この意見にもちょっと与し難い。もちろんオリジナルもまたそれよりずっとゴリラに近い描写であったPJ版にしても単なる巨大ゴリラではないのだが、そのゴリラっぽさはコングの重要なファクターだ。今回のコングは全体的なフォルムは足が短く腕が長いというゴリラやオリジナルのコングに近いものなのだが、全く直立二足歩行をし、ナックルウォークはせず、前かがみになることも殆ど無い。ほとんど前かがみ状態でナックルウォークで移動していたPJ版とは大きな違いだ(オリジナルはその中間ぐらい。前かがみの二足歩行だが急ぎの時はナックルウォークになる)。あの体型なら時と場合によってはナックルウォークしたほうがいいと思うのだがなあ。ナックルウォークによって怪獣としての威厳が損なわれるみたいなことも個人的には全く思わないです。むしろ格好良さが増す!(ただPJ版はその点で確かにゴリラに寄り過ぎたと言えるし、設定はそのままに常に前かがみになった結果、全体としてオリジナルより小さく感じてしまうという欠点はあった)
 これらの見解の相違はおそらく最初に触れたキングコングがオリジナルの「キング・コング」か、ゴジラと戦った「キングコング対ゴジラ」か、という違いも大きいのではないかと思う。これまで正式なライセンスのもと作られたキングコング映画は1933年のオリジナル「キング・コング」とその続編の「コングの復讐」、その次が東宝の1962年の「キングコング対ゴジラ」と67年「キングコングの逆襲」(この2つは正続の関係なし)。そして76年にディノ・デ・ラウレンティスが製作した「キングコング」とその続編でメスのレディコングが登場する「キングコング2」。2005年のPJ版「キング・コング」と今回のレジェンダリー版「キングコング 髑髏島の巨神」の計8本となる。意外と少ないし、いずれも2本以上シリーズが続かない。もちろんその影に膨大な類似作品が存在し(「クイーン・コング」劇場で観たな)、あるいは「猿人ジョー・ヤング」やそのリメイク「マイティ・ジョー」のようなコングの遺伝子を受け継ぐ巨大ゴリラ映画もあったりするのだが。
 東宝制作による「キングコング対ゴジラ」は僕も大好きな作品だが(以前筋肉映画ベストテンでランクインさせた)、ここでのコングはゴジラ(体長50m)と戦う都合上45mという巨体(現時点で最大のコング)になり、ゴジラの放射熱線もへっちゃら、更に劇中で帯電して電撃を放つなど「対ゴジラ」仕様になっている。今回(というかモンスターバースのコング)の作品にも強い影響を与えているであろう「キングコング対ゴジラ」、ちなみに日本版では引き分けとされることが多いが海外版では明確にコングが勝った!という風になっているらしいです。
  
 本作はメイン舞台が1973年だが、1944年の南太平洋における日本とアメリカの空戦から幕を開ける。ここで共に墜落したパイロット同士が無言で殺し合うのは「太平洋の地獄」。ただ、日本兵が腰に日本刀をぶら下げ、それをスクっと抜いて立ち向かってくるさまは割りとトンデモ日本描写の一つ、という感じがしてスタート時点から良い意味で「あ、この映画はまともじゃないな」と思わせてくれる。もちろんコングはじめ怪獣が出てくるわけだから、まともじゃないのはわかっているのだけれど、いわゆる人間ドラマの部分でもどちらかと言うと「キル・ビル」に近い世界観じゃないのかと思ったりしたのだった(そういやあの映画も「サンダ対ガイラ」の影響受けてるんだっけ?)。実際の戦闘機乗りが日本刀所持して戦闘機に乗ったりしたのかは分からないけれど、刀の銘なんかから支給された物と言うよりは結構な業物という感じだった。
 1973年が舞台ということで時期的には1976年版の「キングコング」を彷彿とさせる。ベトナム戦争が終わり、パッカード大佐(サミュエル・L.ジャクソン)はその憤懣やるかたない想いをこの髑髏島にぶつけている。ヘリの船隊が髑髏島に辿り着き、サイズミックを落とし、髑髏島を爆撃していくさまはまさに「地獄の黙示録」(コンラッドとマーロウの名は「地獄の黙示録」の原作「闇の奥」を書いたジョセフ・コンラッドと登場人物マーロウからの引用だろう。ちなみにPJ版でも船員のジミーが読んでいる本が「闇の奥」である)。ちなみに今回ギラーミン版の2作に関しては見返していないので、もしかしたら本作と強く関連ある部分もあるかもしれないけれど、確認できないのであまり触れません。
 主人公であるコングの造形に関しては個人的にはPJ版のほうが好きです。今回はどちらかと言えば粗暴・粗野な印象が強い。ただ、初登場(ヘリ撃滅大作戦)の時はかなり人相が悪いのだが、物語の進行とともに徐々に魅力的になってくる。これは最初は観客がどちらかと言えばパッカードやコンラッドと言った人間側の視点でコングを観るのに対して中盤以降はコングに肩入れした状態で映画を観るからではないかと思う。具体的に造形も演出として最初と後半では違うような気もするんだけれど、気のせいかどうか。直立でのっしのっし歩くのは個人的にあまり好きではないというのは先に書いた通り。ゴリラというよりはイエティやビッグフット(有名なパターソン・ギムリン・フィルム)などの雪男を彷彿とさせる動き。ただスカルクローラー他相手の格闘シーンは良かったです。大蛸リバーデビルとのシーンは官能的ですらある。コングのゴジラにはない動きとしてそこは巨大とはいえ類人猿なので賢くて道具を使うところである。クライマックスでは漂流船の鎖のついたスクリューを武器として使う。おお!片腕カンフーと空とぶギロチン!
 オリジナルでのティランノサウルスとの死闘はクライマックスのスカイクローラーとの死闘である程度再現されていて顎をガクガクいわせる描写も健在。ただ、オリジナルは殺した後で生死を確認するためにガクガクさせるのに対してPJ版は倒してと思ったら実は生きててしょうがなくとどめを刺すために顎をガクガクさせる。今回は中盤でガクガクさせるも最終的には口の中に手を突っ込んで内臓ごと引き釣り出すというブルータルな倒しっぷり。スカルクローラーがティランノサウルスと違って大自然の中で生きるための競争相手と言うよりは、より邪悪な意志を体現するモンスターとして設定されているので、この倒し方もコングが残酷!という印象にはならない。
 コングとゴジラの大きな違いのもう一つは、コングは人間と交流できるキャラクターということである。ゴジラもいくつかの作品でそれっぽい描写がないでもないが(個人的に好きなのは「ゴジラVSキングギドラ」で戦争中にゴジラの前身ゴジラザウルスに偶然救われた土屋嘉男がゴジラと見つめ合うが、ゴジラは一瞬にやっとし(たように見える)、その直後放射熱線で土屋嘉男をビルごとふっとばすシーン)、そこはコングにはかなわない。きちんと人類の一人一人を区別する。オリジナルのコングとアン、ドリスコルの三角関係は設定としても見事だと思う。本作ではオリジナルのように特定の女性に惚れたがためにどうにかなる物語ではないが、ウィーバーがスケル・バッファロー(巨大な水牛)を助けようとしたため、コングがそれに報いようとする感じ。一方で部下をコングに殺されたパッカードはコングを殺すことを邁進し突き進む。いくらマーロウやコンラッドに「コングを殺したらスカルクローラーに立ち向かう者がいなくなる」と言われても聞く耳を持たない。パッカードの中ではコングとベトナムが一体となっていて、これを討ち果たさないと全てが無駄になる、と言う思いでもあるのだろう。パッカードは最初の方は割りと理解のある軍人という感じだが、徐々にコングに固執する凶気を覗かせる。コングの方もそれを察しているようで不倶戴天の敵となる。

 それに比べるとオリジナルではドリスコルにあたるのであろうがコンラッドは割りと陰が薄い。トム・ヒドルストンが演じているから訳ありっぽい格好良さではあるのだが、あくまで物語を順調に進めるための都合の良いコマという感じはする。
 オリジナルのカール・デナムにあたるのが、ジョン・グッドマン演じるランダで、彼はいろいろ謎を引っ張りつつあっさり亡くなってしまったのは残念。またモナークからはランダの他に地質学者のブルックスと生物学者のサンが同行するが、一部で話題になっていたのがサン。中国出身の女優ジン・ティエンが演じているが、見事なまでに何もしない。役に立たない代わりに足も引っ張らない。最後まで死なない。徹頭徹尾お人形さん。一説には中国共産党幹部の令嬢でそれ故にコネで出演したのだとか*2の噂も耳に挟んだけれどどうなのかしら?死なないのはまだいいんだけど、劇中全然汚れないのよね。元々色白の美人なんだろうけど、ウィーバー役のブリー・ラーソンがそれなりにジャングルで汚れて、でもそこが魅力となっているのに比べると、最初から最後までビシッと美貌を維持。添え物なら添え物でいいんだけど、妙に気になる女性ではありました。

髑髏島とスカルアイランド

 オリジナルのスカルアイランド(以降、髑髏島と言ったら本作の舞台を指し、オリジナル版及びPJ版の髑髏島を指す場合はスカルアイランドと書く)はインドネシアの領域に在り、島民の原語もニアス島(インドネシアの実在の島)のものに近いとされ、実際船長がある程度会話に成功している。つまり島そのものは完全に孤立していたわけではなかった(島の中にある壁によってコングや恐竜がいる世界とは隔絶していたが)。PJ版では壁を築いた民族と1933年当時島に住んでいる民族は別という設定。尚PJ版のスカルアイランドは映画の後、数度の探索が行われたが、発見から15年後海に沈むこととなる(この設定は「コングの復讐」を受け継いでいるのだろう)。インドネシアで類人猿といえばゴリラでなくオランウータンなのだが、巨大なオランウータンといえば「ジャングル・ブック」のキングルーイである。コングとルーイを結びつけたSF考証みたいなのって何かないのかな?
 本作の髑髏島はこれまでとかなり設定を変更していて、場所もインドネシアでなく南太平洋。島の住民は海岸近くの僅かな部分に生活していたスカルアイランドと違ってどちらかと言えば島の中央部の開けたところに居住地を作っている。攻撃的だった島民もどちらかと言えば親切になりマーロウによれば言語を介さず会話する人たちということとなる。コングの脅威から生贄を捧げることで村を守っていたオリジナル版と違って、スカル・クローラーの魔の手から守ってくれるコングを神として崇めているという設定。住民が温和になり、生贄とかもなくなっているので従来のスカルアイランドのイメージとは大分違う。
 続編で登場する予定のモスラにそれと関連してインファント島が登場するかはまだ分からないのだけれど、本作の髑髏島にはインファント島のイメージもあるのではないか?と思ったりした。本作では地球の地下に巨大な空間がある「地球空洞説」が採用されていて、髑髏島にはその出入口となっている穴がある。スカルクローラーはそこから出てくる。ランダたちモナークの目的もそこに住んでいるであろう古代の支配者たち(ゴジラ)なのだが、その辺は本作ではまだ詳細は明かされない。
 この髑髏島に1944年に不時着したのがマーロウとグンペイで敵対していた者同士最初は殺しあうが、自分たちがちっぽけと思える存在=コングの出現によって争いを止め親友となる。本編はそこから30年後のことであり、すでにグンペイは死亡。マーロウが島にやってきたコンラッドたちと出会い、島について詳細を語る。マーロウ役はジョン・C・ライリー。1944年の時にはまだ美青年と言っていい容姿だったが(二回目観たら鼻のあたりがライリーによく似てる)、30年で容姿はワイルドに。人は魔境で30年間サバイバルすると美青年でもジョン・C・ライリーになる!*3
 登場するモンスターは巨大ナナフシや竹林に擬態する巨大蜘蛛、翼竜系のサイコ・バルチャーなどが登場。普通に通常の大きさの鹿なども出てくるが生態系はどうなっているのだろう?コングの最大の敵となるのがスカルクローラーでオリジナルでドリスコルがコングから逃れて崖の穴に逃れた時に襲いかかってくる前足しかないトカゲが元になっている。顔のデザインは「エヴァンゲリオン」の第3使徒サキエルなども参考にされているのだそう。複数匹登場し、クライマックスはその中でもとびきり大きい個体と対決。これまでのティランノサウルスやV-レックスと違って生存競争というよりは明確にコングや島の住人を狙っている邪悪な存在として描かれているのが特色。このスカルクローラーは地底に棲む怪獣でコングたち髑髏島の他の巨大生物とも出自が異なるようだ。「GODZILLA」のムートー(M.U.T.O.)と近い存在。「M.U.T.O.(未確認巨大陸生生命体)」という単語は巨大生物全体を指す単語として今回も登場する。

軍平とオマージュ

 今回はまず日本語吹替版を観て、二度目を字幕版で観賞。コンラッドGacktウィーバー佐々木希、パッカードの部隊の一人に真壁刀義、と言ったあたりがいわゆるタレント吹替。佐々木希(結婚おめでとうございます)が下手じゃないけどなんか癖があるな、ッて感じではあったけど、特に文句を言うほどダメではなかったです。
 冒頭登場するMIYAVI演じる日本兵の名はグンペイ・イカリ(碇軍平)。吹替では「グンペイ」だが字幕では「ガンペイ」となっている(ノベライズでは漢字で「軍平」)。確かにジョン・C・ライリーのマーロウの発音は「ガンペイ」に近い感じではあったのだが、日本人の名前をローマ字で書いた「Gunpei(クレジット表記)」なら表記は「グンペイ」だろう。「gun」は確かに英語発音だと「ガン」だけどこれは固有名詞だし。またこの名前は日本のゲームクリエイターで「ゲーム&ウォッチ」や「ゲームボーイ」を開発した横井軍平氏にちなんだものだという(碇はエヴァンゲリオン碇シンジから)。遺作がそのものずばり「グンペイ」と言うタイトルのゲームであるし、その辺を考えたらこれは「グンペイ」としなければ間違いなのではないか?
 と言うかですね。観る側にとっちゃオマージュとかはとりあえずどうでもいいのだけれど、グンペイならグンペイで、ガンペイならガンペイで、字幕と吹替、更にはパンフなどの表記を統一してもらわないと困るのですよ(少なくともオフィシャルのものは)。もちろんツイッター上で、軍平が自分の名前をローマ字で教えたけれど、結局マーロウはガンペイで覚えてしまってそれが直ることはなかった、みたいな考察をしている人がいたみたいにそういう裏設定があったりするのかもしれないが少なくとも劇中ではあんまり関係なかったしなあ。ちなみに字幕版の翻訳はアンゼたかし氏で監修が町山智浩氏。
 オマージュといえば、この映画いわゆるオマージュ・引用が多い。それは観ている側としては楽しい部分でもあったりもするのだけれど、なんかこの映画では消化(昇華)しきれていないというか、まんまそのものを出してしまうものが多くてちょっと食傷気味ではあった。映像なら「地獄の黙示録」や「太平洋の地獄」「片腕カンフーと空とぶギロチン」といった具合。もちろん「キング・コング」からも引用されている。また登場人物の名前もコンラッド、マーロウ、碇軍平と言った感じでそのものをまんま持ってきてしまうのはちょっと気恥ずかしい。モンスターバースでは先の「GODZILLA」も渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士(「ゴジラ」の登場人物芹沢大助博士と監督の本多猪四郎から)とか出てきてそのあからさま具合が妙に恥ずかしかったのだが、このあからさまさこそがモンスターバースの特徴なのだろうか。
 監督はジョーダン・ヴォート・ロヴァーツと言う人でヒゲを蓄えたワイルドな容貌の御仁だが本作が初のメジャー大作。

KONG Will return.

 二回目はリメイクではなく「GODZILLA」から続くモンスターバースの一作として観て、その点ではとても面白かったです。本編で世界観として語られたのは、モナークが「M.U.T.O.」探索のための組織であり、54年に核実験に偽装して怪獣(ゴジラ)を殺す作戦が立てられたが上手くいかなかったことぐらい。どちらも「GODZILLA」で説明されたものから特に進展はない。ただ、全て(エンドクレジット)が終わった後にコンラッドウィーバーブルックスとサンから語られるのが古代に実在した怪獣たち。背びれのある直立するトカゲのようなもの、巨大な蝶、巨大な翼竜、そして三つ首の龍…「元々地上は彼らの物。問題は彼らが奪い返すまでどのくらいの猶予があるか」
 というわけで、モンスターバースの次回作は「GODZILLA:KING OF MONSTERS」でずばり「怪獣王ゴジラ」これは最初の「ゴジラ」の海外公開版タイトルですね。そしてモスララドンキングギドラが登場する。前作の時点で次はモスララドンキングギドラが出てくる、とは言われていたのだけれど、実際のものとして見ると格別。この3体が登場するということは実質的に「三大怪獣地球最大の決戦」のリメイクともいえるわけで、例えば金星人だとか小美人だとかの要素が引き継がれるのかも興味深いところ。その後で「GODZILLA VS KONG」が控えている。
 予定されている続編には本作の登場人物も再び登場するとも言われているが、時代は再び現代になるはずで40年以上経っていることになるからどうなるのか。その辺も愉しみだ。

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 ちなみにノベライズには映画では出てこないマーロウとグンペイの凄い良いシーンが書かれている。このシーンが実際に撮影されたのかどうかは分からない(脚本にはあるのだろうか?)。でももし撮影済みなら是非ソフト発売の際に特典映像として収録して欲しいし、なんならこのシーンを組み込んだスペシャルエディションとかで発売して欲しい。
 
髑髏島でともに暮らすようになって7年目。スカルクローラーによって島民に甚大な被害が出たその夜グンペイ(ノベライズでは軍平)がマーロウに尋ねる。
「一番おそろしい瞬間ってなんだった?」
「今日は相当やばかったな。お前は?」
沈黙。
「ここではじめて俺たちが会った日だ」
「はじめてコングを見たときか」
「違う。俺が一番怖かった瞬間は、やつが現れる直前、危うく親友を殺しかけたときだ」
キングコング 髑髏島の巨神 (竹書房文庫)

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*1:ちなみに「GODZILLA」の次回作で登場予定のキングギドラも一般にはアメリカではギドラとだけ呼ばれていて、これは「キングコング」に配慮した(王といえばキングコングただ一人!)ものとも言われている

*2:製作したレジェンダリーピクチャーズは現在中国の大連万龍グループの傘下

*3:ラスト彼は30年ぶりに妻のもとに帰るのだが、奥さんよく分かったなと思わないでもない