The Spirit in the Bottle

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ディズニー謹製、カルト化確実! トゥモローランド

 上半期終了!未だ「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の興奮止まず。でももう4日には「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」が公開されるわけで、その前に観たかったやつを観ておこう!前回の記事で「トゥモローランド」をまだ観ていない旨書いたが、ようやく観賞。これが実に不思議な作品で、かつ「マッドマックス」とも微妙に共通点を見つけて楽しめるような作品で観ておいてよかったな、と思える作品でした。ブラッド・バード監督作品「トゥモローランド」を観賞。

物語

 1964年、ニューヨーク万国博覧会に一人の少年がやって来る。フランク・ウォーカー少年は発明コンテストにジェットパックを持ってくるが審査員ニックスに却下される。それを観ていた謎の少女アテナがウォーカーに「T」を象ったピンバッジを与える。彼女の後ろを追いかけて「イッツ・ア・スモールワールド」へ無断で潜入したウォーカーは突如まばゆい未来世界へ!
 現代。17歳のケイシーは今夜もNASAスペースシャトル発射台の解体工事を阻止するべく敷地に潜入。しかしその日はついに捕まってしまう。保釈されたケイシーは警察から返却された自分の荷物の中に自分のものではない「T」のピンバッジを見つける。それを触った瞬間、ケイシーは広大な麦畑の中へ。驚いたケイシーは広い場所で再び接触。麦畑の先には未来都市が有り、そこではケイシーのために用意された宇宙船のシートまであった。乗り込もうとした瞬間ピンバッジのパワーが切れたのか現在に戻される。バッジの謎を探るべくネットでそのバッジを高価買取りしている店を訪れるが店員はそのバッジを渡した少女について訪ね、ケイシーにレーザー銃を突きつけた。危機一髪のその時、謎の少女アテナがケイシーを助ける。アテナが言うには彼女も店員もAAと呼ばれるロボットである目的のために人材=ケイシーを探していたというのだ。アテナはケイシーにある人物と引き合わせようとする。その名はフランク・ウォーカー…

 とても不思議な映画。確かに家族向けであり、どぎつい下品なギャグも過剰なアクション、バイオレンス描写も意味のないセクシー描写もない。ある意味安心して家族で観られる作品ではあるのだが、では映画の内容はと言うと、誰もがついていけない部分もあるのではないだろうか?例えば同じディズニー映画の「イントゥ・ザ・ウッズ」も実にディズニーらしからぬ作品で、でもあれはソンドハイムのミュージカルが原作で元々ディズニーとは関係ない作品だったわけだが、今回は正真正銘ディズニー映画。
 ディズニー映画で予告編などではウォルト・ディズニーその人も関わっているかのような感じであるが、特にそういうこともなし。ディズニーと言うよりは手塚治虫とかあるいは藤子・F・不二雄っぽい作品のような気がした。なんだろう、劇場で観ながらにして「ああ、これは将来的にカルト映画になるな」と確信が持てる感じ。面白かったし観てて楽しかったけど最後までSF(すこしふしぎ)な映画でした。

 大人のウォーカーにジョージ・クルーニー。ちょっと偏屈で厭世家な部分があるがかつては天才発明少年で、明るい未来に思いを馳せる事もあった。そこはジョージ・クルーニーであるから熟成された頼もしい男とちょっと子供っぽい部分が役の中で両立されてて良かったです。一応アテナとの淡い恋物語も語られるがこれが少年時代から描かれ、ウォーカーの方だけ歳を重ねてはいても、おっさんと少女(まだ幼女といってもいいかも)の恋がそれほど不自然ではないかも。まあいわゆる恋愛と言うよりは友達以上恋人未満な感じだけれども。
 主人公のケイシーはブリット・ロバートソン。「スクリーム4」に出てたらしいが特に記憶になし。17歳の役だが1990年生まれで25歳。シアーシャ・ローナンがもうちょっと庶民的に親しみやすくなった印象の女優。聡明かつ活動的な感じが良かったです。
 トゥモローランドを仕切るニックスには「Dr.HOUSE」などで知られるヒュー・ローリー。こっちもクルーニーとはまた違った厭世家な感じがとても似合っている。
 そしてアテナ役のラフィー・キャシディ。「ダーク・シャドウ」でエヴァ・グリーンの、「スノーホワイト」でクリスティン・スチュワートの子供時代を演じていた。アテナはリクルーターと呼ばれる「トゥモローランド」にふさわしい人材を探し出すロボットで64年にはウォーカーを、現代ではケイシーを探し出す。僕は最初というか終盤までウォーカーを導いたアリスはニックスの娘で、後にその娘をモデルとしてケイシーのもとに現れたロボット、アテナが作られた、と「鉄腕アトムアトム大使)」的な予想をしたのだが、これが最初からロボットだったのだな。ちょっと「ターミネーター」も入ってます。アテナを演じたラフィー・キャシディはそばかすも目立つまだ全然子供だが、容姿は表情は橋本環奈を思わせる美少女でした。
 メカデザインなどは60年代風のレトロなものと現代風なものとが上手くミックスされていて良かったです。トゥモローランドの中心となる建物はシンデレラ城を未来風にした感じ。

 物語は天才たちが別次元に築いたトゥモローランドからタキオンを利用したモニター(ちょっと先の未来が映る)から世界の滅亡を予測し、トゥモローランドに害が及ばないようにしようとするニックスと、希望でもあり最後まで諦めないケイシーたちの衝突が物語のクライマックスとなる。実はモニターは相互関係にあり人々の思考を写すだけでなく、写しとった暗い未来は再び人々の思考に宿る。こうして人々がネガティブになり、夢をなくし、世界は滅亡するのだ。
 「マッドマックス サンダードーム」ではクラック・イン・ジ・アースに住む少年少女たちが目指す土地が「トゥモローランド」で、これはおそらくディズニーランドの同名のテーマランドのことだと思うのだけれど、映画の「トゥモローランド」を観ていたらいきなり「ロケッティア」を彷彿とさせるジェットパックを発明する少年として「フランク・ウォーカー」と名乗る少年が出てきて、「これウォーカー機長のことじゃ?!」と思ったりした。予告編の時から「あんまりあかるい未来が云々という話にしては暗そう」と思っていたのだが、映画は世界の破滅をめぐる物語であり、あるいは「マッドマックス」の世界は「トゥモローランド」の主人公たちが世界の破滅防止に失敗した世界なんじゃないか?とか思ったりした。そういえばアルフォンゾ・キュアロンの「トゥモロー・ワールド」なんかも思い出されて、劇中にもディストピアについて言及されていたりして案外暗い物語を役者の明るさがカバーしている感じですね。

 今回はスケジュールの関係もあって通常吹き替え版で観賞。画率が特殊なのか、劇場のスクリーンの中に黒い枠で囲む形で映しだされていたのでちょっと小さく感じて損した感じ。これはIMAXだったら良かったのかな。てっきり「オズの魔法使」でカンザスがモノクロ、オズの国がカラーで描かれたみたいに、トゥモローランドに行ったら、パーッと画面が広がって大きくなる演出とかなのかなあ、と思ったら最後までそのままだった。
 吹替はケイシー役に志田未来志田未来は「借りぐらしのアリエッティ」でも主人公の声を演じていたが、あの時が普通の演技の朴訥もっさりした感じだったのが*1、こちらではきちんと吹替の声優の演技になっていてまったく気にならなず上手かったです。
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PULS ULTRA!

*1:これはおそらくジブリの演出として狙ったものなのだろうけど