The Spirit in the Bottle

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プレイボーイとその華麗なる賭け 危険な関係


 さて、TOHOフリーパスで観た作品の最後の感想です。チャン・ドンゴンチャン・ツィイーセシリア・チャンのチャンさんが3人揃って主演した「危険な関係」です。

物語

 1930年代上海の上流社会。プレイボーイで知られるイーファンは以前に関係した女起業家ジユから謀を持ちかけられる。ジユを捨てた男が15歳の少女と婚約したが、それが許せないジユはイーファンにその15歳の少女と寝ることで彼女を処女でなくし、男を笑いものにしようというのだ。しかしイーファンはそれを断る。彼の現在の標的は夫を亡くした遠い親戚のフェンユーだったのだ。
 ジユとイーファンは賭けをすることに。もしもイーファンがフェンユーを落とせればジユはイーファンの物に。しかしもしも落ちなければイーファンの土地がジユの物となるのだった。それぞれの欲望と野望が交錯し周りを巻き込んでいく・・・

 原作はフランスの古典文学で1782年にコデルロス・ド・ラクロによって書かれた同名小説。今回は中国映画だが、中国語タイトルも「危險關係」で邦題とほぼ一緒。これまでにも何度も映画化されているが、原典に忠実に、と言うよりその時々で舞台を変えた翻案作品としての映像化が多いみたい。とにかく貴族社会、あるいは富裕層の上流社会が舞台であれば普遍的に成り立つ物語で現代のパリを舞台に置き換えたりされている。意外なところではアメリカの高校に置き換えた「クルーエル・インテンションズ」などもある。アメリカの高校が実は貴族社会を模倣したものとして成り立つことを端的に証明したともいえようか。後は今回は中国映画だけれど監督(ホ・ジノ)と主演(チャン・ドンゴン)は韓国人だが、その韓国映画でもペ・ヨンジュン主演の「スキャンダル」もこの小説を李朝両班社会に置き換えた物語だそうだ。
 日本でもいわゆる昼ドラとしてドラマ化されているが、確かにそのソープドラマぽさは昼ドラ向きだなあ。全然関係ないが、この間ふとフジテレビの昼ドラを観る機会が合ったのだが、妙に舞台劇を見てるみたいなセリフ回しや演出であった。内容はほぼ痴話喧嘩だったけど。
 とりあえず、今回はその中国版。舞台は戦前の1930年台の租借地だった頃の上海。元々上海はアヘン戦争以降に列強の租界として発展した地域。この辺日本ノ横浜と近い成り立ちかな。そのため、欧米風の建物が建ち並ぶ。劇中では途中で日本軍による侵攻などもエッセンスとして描かれるが、まああんまりメインではない。欧米流の上流社会をうまく中国の中で描こうとするには格好の舞台なのかな。

 主演のチャン・ドンゴンは未だに僕の中では「あなたのことが好きだからー!」の人というイメージで、それと仲村トオルとともに主演した「ロスト・メモリーズ」のイメージが強い。「ロスト・メモリーズ」は「もしも安重根による伊藤博文暗殺が失敗して、その後の歴史学が変わり、21世紀になっても朝鮮半島が日本の植民地として従属させられていたら」という「歴史のif物語」。劇中では日本名を名乗る朝鮮人刑事チャン・ドンゴンと日本人の刑事仲村トオルのコンビが主人公で最終的に「歴史を元に戻す=安重根による伊藤博文暗殺を成功させる」というタイムトラベルSFとなる。劇中ではチャン・ドンゴンの坂本刑事は当然日本語を喋るがそこでは頑張っているけれどかなりたどたどしく、ずっと日本語で暮らしてきた、というにはちょっときついものが合った。
 今回は舞台は中国で当然使用言語や中国語なのだが、日本語はあんなんだったのに大丈夫なのだろうか、と少し不安にはなったが、まあ素人目には他の中国人キャストと比べても特にたどたどしいとか違和感とかは感じなかった。てかまあ、こちらは使用言語が広東語なのか、北京語なのかもよく分かっていないんだけど。それによく考えると主要キャスト3人はそれぞれ母語は韓国語、北京語、広東語と異なるわけだよなあ。
 えーとそれでチャン・ドンゴンはどちらかと言うとプレイボーイというより誠実な人、というイメージがあったのだな。もちろんそれほど彼の主演作を見てるわけではないのでそんなイメージはすぐ吹き飛ぶけれど、それでも十代の娘を持つ親からは蛇蝎の如く嫌われる要注意人物というキャラクターはちょっと意外であった。
 この役柄、設定だけ聞いたら、絶対チャン・ドンゴンよりエディソン・チャンが適役だよなあ。などと思ったりしたけれど、まあ映画というのは虚構であるから別にプライベートを反映させる必要はないし、何よりこの映画にはセシリア・チャンも出てるのでエディソンだったら洒落にならないよなあ。セシリア・チャンはあの事件で大分悪いイメージ付いちゃったからなあ*1セシリア・チャンは「少林サッカー」でカレン・モクと一緒にヒゲ生やした選手を演じてた人です。今回は妖艶な女性起業家を演じている。声が意外に低く太かったり、役柄もあるのだろうけどどこか作り物っぽい美しさではあるが、それでも時々見せる表情はとても美しい。
 そしてチャン・ツィイー。ここしばらくはデビュー初期の頃の儚いイメージはほとんど無かったけれど、ここでは夫を亡くしてもその事業を引きついで慈善事業に精を出す貞淑な女性を演じている。「初恋のきた道」での初々しい雰囲気が戻ったという感じ?個人的には未亡人という役柄から高橋留美子めぞん一刻」の音無響子さんを思い出したりした。

 映画はその物語に反して、直接的なベッドシーンとかは無かったりするのだけれど、それでもほのめかす形で色々と艶っぽいシーンは多いです。ただ原点通りとはいえ途中で15歳の少女が慰み者となる展開は現代に生きる人間の目には辛かったですね。イーファンの最後なんて自業自得としか思わないけれどベイベイちゃんはかわいそうだったよ。

危険な関係 (角川文庫)

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 特に似ているわけでも共通点が多いわけでもないけれど、「危険な関係」を観て連想した作品。同じ時期の上流階級が舞台で主人公の最後が似てるってことぐらいかな。ただ、劇中で描かれる上流階級の生活やパーティが華やかであればあるほどラスト近くの寂しさが際立つのだ。

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*1:エディソン・チャンの事件については詳細は書きませんので気になる方は各自調べてください