The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

七人のサイコ超人! セブン・サイコパス

 北斗七星に七福神、ラッキーセブンに世界七不思議。えーと他には七転び八起き、七つの大罪、無くて七癖・・・日本に限らず「7」という数字は世界中で特別な意味を持ってきた。映画作品に限っても黒澤明の「七人の侍」とその西部劇リメイク「荒野の七人」のお陰で世界中で個性派七人によるチームワーク映画というものは多く作られている。アラン・ムーア先生の「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・オブ・ジェントルメン」を映画化した「リーグ・オブ・レジェンド」は原作にないトム・ソーヤーを加えているがこれはアメリカ人のキャラクターが欲しいという他に彼を加える事で人数が7人にする意図もあったのではないかと思う。最近は「キン肉マン」で「七人の悪魔超人」が大活躍していますね。悪魔将軍出てきたぜ!なんだかゴールドマンとシルバーマンの設定がまた変わったような気もするけど素直に上書きされました。
 久々に劇場で観た今回の映画はタイトルと数名の出演者だけ認識していて物語的に一体どんな作品なのか全く分からずに臨んだ。タイトルからの連想では「7人のシリアルキラーが互いに戦う」かシリアルキラーやギャングなど7人がチームを組んでミッションに挑む、という感じ。「セブン・サイコパス」を観賞。

物語

 アル中気味の映画脚本家マーティンはもう暴力的な物語は書きたくなかったが現在「セブン・サイコパス」という猟奇映画の脚本を依頼されているが行き詰まっている。親友で役者志望のビリーから実際に起きたマフィアの中堅幹部だけを殺し、トランプのダイアのジャックのカードだけを置いていくシリアルキラーの話を提案され脚本を進めていくが・・・
 一方ビリーは普段は初老のハンスとともに愛犬を拉致しては迷子犬を保護したと言って飼い主から謝礼をせしめる詐欺を行っていた。あるとき拉致したシーズー犬がマフィアのボス・コステロの愛犬だったことが判明し、マフィアが愛犬を取り戻すためハンスの倉庫に襲いかかる。そこにダイアのジャックが現れマフィアを殺す。ハンツとビリーにマーティンも巻き込まれてしまうが・・・

 まあ、なんといっても「セブン」で「サイコパス」ですからね。当然あのデヴィッド・フィンチャー「セブン」ヒッチコックの「サイコ」などを連想するのですよ。いわゆるサイコな人たちが出てくる映画だと。ところが蓋を開ければオフビートなコメディといった趣であった。
 出演はコリン・ファレルサム・ロックウェル、そしてクリストファー・ウォーケン。この3人が出てると知った時点で観ることが決まったので、ほかは実際に出てくるまで分からなかったが、更にウディ・ハレルソントム・ウェイツ、そしてオルガ・キュリレンコが出てくるという豪華布陣であった。
 「サイコパス」とは先天的に精神疾患を抱え、一般の良識や他人に対するおもいやりが全く欠ける人物のこと、とされる。嘘をついたりするのに良心の呵責無く出来る人などのことだろうか。ロバート・ブロック原作の「サイコ」は元々この言葉から作られた。「セブン・サイコパス」劇中ではそこまで厳密な意味を当てはめられていないが、それでも世間の常識やルールから逸脱した人たちの顛末が描かれる。
 で、驚くべきことにタフガイのイメージが強いコリン・ファレルはこの物語の中では主要人物中ほぼ唯一のまともな人物でビリーやハンス、コステロといった「サイコパス」たちの騒動に巻き込まれ翻弄される。「七人のサイコパス」の中で本当にやばそうなのはビリーとコステロ。ほかはある程度動機が理解できるもの。

 ビリーを演じているのはサム・ロッックウェル。僕だと「チャーリーズ・エンジェル」と「ギャラクシー・クエスト」で認識した感じか。とにかく飄々とした感じでチャラいハンサム、といったイメージ。今回も多分にもれずとにかくチャラい感じなのだが、その笑顔のままで酷いことを平気でやれる感じはある意味僕がイメージするサム・ロックウェルに一番近い役柄だったかも。また今回はエドワード・ノートンクリスチャン・ベイルを足して割ったような雰囲気でそのちょっと不気味な雰囲気にも一役買っている。
 ハンスを演じているのはクリストファー・ウォーケン。彼は60代で20年以上失業中という身だが、後にその壮絶な半生が明るみになる。元々クリストファー・ウォーケンもそのルックスから冷血冷徹狂気じみた役が多かったが、ある意味その集大成ぽくもある。「007 美しく獲物たち」のマックス・ゾリンや「バットマン リターンズ」のマックス・シュレック(どっちもマックスだ)。まあ本人はとてもいい人で元々子役出身であるのだが、個人的にはファットボーイ・スリムのPVで踊る姿が大好き。

 後はこの人絵画が趣味らしいんですが、描いた画は描き終わったらひっそりと倉庫にしまうそうですよ。「誰にも見せないし、誰も見たがらない。下手だから」というクリストファー・ウォーケンがめちゃめちゃかわいいです。実家はパン屋さん。ウォーケンの後継者的な人としてはウィリアム・フィクトナーあたりが近い気がするがやっぱり元祖の人の輝きは素晴らしい。
 そしてウディ・ハレルソン。この人も強面なので犯罪者役などが多いが、最近はその手のイメージを逆手に取って「一見凶悪そうだが実は・・・」という役が多い気がする。でもここではイメージ通りのマフィアのボス。これが何よりも犬を大事にするという人で、ああいうヤクザとかギャングとかが可愛らしいペットを飼っているという描写などはもうおなじみに近いものがあるのだが、それでもこのコステロの設定は度を越していて、愛人(オルガ・キュリレンコ!可愛いがあいかわらず水野美紀に見えてしょうがない)よりも犬のほうが大事だし、部下の前で平気で犬のために部下を見捨てる発言をしたりする。それはもう思わず忠実だった部下がもうどうでも良くなるくらい。そのくせ犬のためなら本当に丸腰で現れたりと価値観が完全に犬のほうを向いている犬公方ならぬ犬親分で彼もやはりサイコパスなのだ。

 その他、直接的に物語に関わるわけではないものの、マーティーに自分の人生を聞かせるザカリアスにトム・ウェイツ。うさぎを抱きながら淡々と話す様子が不気味ながらリアリティがある。彼もハンスも奥さんが黒人というのが(彼らの若い頃の年代を考えると)珍しいが、やはりそこもサイコパスならでは、ルールにとらわれない代わりに世間の呪縛とも無関係なのかもしれない。
 ハリー・ディーン・スタントンも劇中劇として登場する(実はある登場人物の過去の姿)娘を殺した犯人をストーカーするクエーカー教徒という役柄で出演し、全く台詞も無いにも関わらず強烈な印象を残す。
 また7人のサイコパスのうち、完全にマーティーの脚本の中の人物であるベトナム人(とはいえ最後まで見ると最も有名な実在のモデルがいたことになる)も強烈。ベトナム戦争で家族を殺された元ベトコンが復讐のため」アメリカ軍人を殺そうとする話だが、ただ、彼をサイコパスと言うのはちょっと酷な気もするなあ。まあ彼だけは直接マーティーに関わってこないわけだけれど。

 はっきりいって役者だけを目当てに観に行って思う存分その思いが満たされた作品である。登場人物の大多数がサイコパスとされるだけあって、会話が噛み合ってない(互いに好きなコト喋ってるだけでいまいち意思疎通の手段として機能していない)部分があったりするのだけれどその辺も妙におかしい。
 監督/脚本はマーティン・マクドナーというイギリス出身の人で「ザ・ガード〜西武の相棒」などを撮った人でブラック・コメディを得意とする人のようだ。

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 とりあえず、コリン・ファレルサム・ロックウェルクリストファー・ウォーケンウディ・ハレルソン。この4人の中に一人でも好きな役者がいればおすすめ!僕は全員好きだったので最高の映画だったよ!
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記事タイトルは例によって「キン肉マン」から。ネメシスの肌の色が想像(スーパーフェニックスと同じ感じで想像)と違った!