The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

狼眼浪人見参! ウルヴァリン:SAMURAI

 今年はヒーロー映画も豊富で僕も全部見ているわけでもないが意外な作品が面白かったり、期待していた作品がちょっと疑問符がついたりいろいろだった。「アイアンマン3」「マン・オブ・スティール」という2大「鉄の男」映画が作品単品の評価とはまた別に僕にとってはいまいちだったのだが*1真打ち、鉄より硬い「アダマンチウムの男」がまだ残っている。
 「X-MEN」シリーズ最新作、「ウルヴァリン:SAMURAI」を観賞。

物語

 キュアー事件から数年。ウルヴァリンことローガンはカナダの山中で孤独に暮らしていた。ある時、酒場で暴れていると日本人の少女に呼び止められる。彼女の名はユキオといい、彼女の雇い主はかつてローガンに命を助けられ、今は死の床に伏しているという。日本へ向かったローガンとユキオはその主、かつてWW2でローガンが長崎に落とされた原爆から生命を救い今は日本有数の企業の総帥となったヤシダと対面する。ヤシダはかつての礼としてローガンに「不老長寿=ヒーリング・ファクター」から解き放ってやろう、と提案。ローガンはそれを拒否する。
 その日の夜にヤシダは亡くなり、冷徹な息子シンゲンが葬儀を取り仕切る。ユキオは姉同様であるヤシダの孫娘、シンゲン娘であり時期会長と目されるマリコを心配しつつローガンと葬儀に参列するが、そこに謎のヤクザ集団が襲撃マリコを連れ去ろうとする。ローガンはマリコを助けともに逃げるが、本来なら問題ないはずの銃弾を受けたキズが回復しない。彼のヒーリングファクターが失われていたのだ・・・

 多分、今のアメコミヒーロー映画ブームの原点は2000年のブライアン・シンガー監督による「Xーメン」だと思う。もちろんそれ以前に1978年の「スーパーマン」、1989年の「バットマン」の大作アメコミ映画によるブームもなかったわけでもない*2が、その時はいずれも質的に良い物が量産されたとはとても言えなかった。またマーベル作品の実写映画化もそれまであまり恵まれていたとは言えなかったが、「X-メン」を皮切りにサム・ライミの「スパイダーマン」シリーズやマーベル・シネマティック・ユニバースの成功につながるのはご覧のとおり。
 今作の「ウルヴァリン:SAMURAI」はそのX-MENの中でも人気キャラクター、ウルヴァリンを主人公にしたスピンオフ作品。本編の方はミュータントという新人類が社会において差別されている、という現実の社会問題が反映された社会的テーマ性の強いシリーズであったが、こちらは前作にしても今回にしてもミュータントという種そのものの悲哀というよりは、ヒーリング・ファクターという能力によって歳を取らず、負傷してもすぐ治る男、そして国家によって翻弄される悲劇的な人生とそれによって記憶をなくした男の孤独を描いたハードボイルド作品といえるだろう。
 また前作「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」は時間軸上は19世紀という映画シリーズの中では一番古い時間から始まって1作目のカナダ酒場でローグと出会う直前で終わるという形だけれど、今回は「X-MEN ファイナル・デシジョン(以下X-MEN LS」の後から始まるので、「ウルヴァリン」シリーズで「X-MEN」本編(「X-MEN ファースト・ジェネレーション(以下X-MEN FC)」含む)を挟むという形になる。
 一応、ウルヴァリンは映画シリーズ全作品に登場している唯一のキャラクターで(役者が違ってもいいならプロフェッサーXも)その人気はコミックスの方では70年代からずっと続いている。映画ではヒュー・ジャックマン演じる長身の男だが、コミックスでは160cmほどの小柄な男。デビューは「ハルク」作品中でカナダに逃げ込んだハルクと対峙するカナダのヒーローとして登場。その後オリジナルメンバーから国際色豊かなメンバーにメンバーチェンジした時にX-MENに参加する。最初の頃は設定が定まっていなくてなんと名前の由来ともなった「クズリ」が変異して人間態になった、というつもりで描かれたたらしい。その後現在の設定のもと、ぶっきらぼうで暴力的、何事にも物怖じせず常に悪態をつく男としてマーベル一とも言える人気を誇るキャラクターとなる。この70年代はパニッシャー、ジャッジドレッドなどに代表されるアンチ・ヒーローとでもいうべきそれまでの品行方正なヒーロー像から逸脱したキャラクターが多く誕生し人気を集めたが、その中でも最も成功したキャラクターの一人だろう。アティテュード時代のWWEスーパースター、ストーンコールド・スティーブ・オースティンなんかはある意味ウルヴァリンをそのままリングの中に持ち込んだキャラクターと言えないこともない。
 WWEといえばクリス・ベノワはその渾名が「ラピッド・ウルヴァリン」であった(もう一つは「トゥースレス・アグレッション」「クリップラー」など)。これはベノワがカナダ出身で小柄でありながら攻撃的なレスリングをしているところから名付けられたのだろうが、当然そこには動物のクズリだけでなくキャラクターとしてのウルヴァリンも想定されていただろう。名前の由来となった動物クズリはカナダ・アラスカに多く住む(シベリアや中国北部にも)イタチ科の獰猛な動物で、今回ヤシダによって連呼される。前作でも寝物語でローガンの恋人だったケイラがクズリの話をする。よくウルヴァリンを狼男などと表現することがあるが、英語でもWolverineのWolvは狼を意味するwolfから来ており「狼みたいな者」というような意味を持つ名前。和名の「クズリ」は少数民族ニブフ(樺太に住居していて現在は大多数がロシア、一部が日本などに住んでいる)の言葉に由来し漢字では「屈狸」を当てる。
 今回の物語はクリス・クレアモントの原作、フランク・ミラーの作画によって描かれた「ウルヴァリン」を定本としており、前作の段階で「もしウルヴァリンを単独主演とした映画を作るなら日本を舞台とした物」と製作者(ローレン・シュラー・ドナーなど)が決めていたが20世紀FOXの方から「まずはウルヴァリンのオリジンとなる作品を先に作ってくれ」と言われて前作「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」を制作したらしい。今回は原題もシンプルに「THE WOLVERINE」であり、シリーズとしてはもちろん続いているもの、前作から直接続くわけでもなく今作こそが本当の「ウルヴァリン」シリーズ第1作と言えるのかもしれない。

ウルヴァリン (MARVEL)

ウルヴァリン (MARVEL)

 元になったコミックスが描かれた当時はフランク・ミラーはまだそれほど有名とはいえない時期。日本の「子連れ狼」などの影響をモロに受けていた頃。マーベルで手がけた「デアデビル」や「ウルヴァリン」にはまだ日本の漫画の影響を消化しきれてないのかそのままニンジャやサムライが登場したりする。ただ、個人的にはミラー御大よりもクリス・クレアモントに注目したい。この人は17年に渡って「X-MEN」(及び関連タイトル)の原作を手がけた人で現在まで続くX-MENの世界観、不動の人気を作り上げたのはこの人の功績で、X-MENの生みの親はスタン・リーだが育ての親はクレアモントだと僕は思っている。過去には「X-MEN2」のノベライズも手がけているがそもそも元となった「GOD LOVES,MAN KILLS」を手がけたのも彼だ。日本に「X-MEN」が本格的に紹介された時のジム・リー作画による「X-MEN」の原作もこの人であり、個人的にはライターとしてはDCのデニス・オニール(70年代以降の「バットマン」主要タイトルの原作を努めた)と並んでクリス・クレアモントはもっと知られてもいいライターだと思う。
 1982年に出版された物語が原作ということで日本描写も現在より更に荒唐無稽なニンジャやサムライ、ヤクザが出てくる。映画でもいわゆるトンデモ描写(人によっては国辱物と思う人もいるのかな)は多く、いくらなんでも一般人(ということになっている)の葬儀(芝増上寺がロケ地)でマスコミもいる前でマシンガン抱えたボディーガードがいたり、普通にニンジャが出てきたりする。一部で話題になってたラブホテルは僕はそんなに詳しくないけどああいうコンセプトをテーマにしたラブホテルとかは本当にありそう。このへんのコミック的トンデモ描写と現実的な日本の描写(今回は事前に話題になった通り日本ロケも行ってますね)の付かず離れず具合がこの手の映画の見所の一つだと思うのだが、突き抜ける所は思いっきり非現実的に描きつつ、そうでないところは比較的地に足の着いた描写となっていて良かったと思う。この辺はシンゲンを演じた真田広之が明らかに間違った描写の時には彼がアドバイスをして訂正したりしたそうなので、その辺彼の功績も大きのかな、と思う*3。間違ってはいるんだけど中国や韓国、その他のアジア地域と混じってはいなかった。
 地理的にも長崎と東京の距離移動が一瞬だったりするのだが、僕はあんまりそういうのは気にしない性質なのだな。「ダークナイト ライジング」のピットから脱出した後などもそうだが、そういうのにこだわるよりは作品としてのテンポが良くなる方がいいと思うので。ちなみに長崎のロケ地は広島!
 後は全体的にヤクザの身体能力が高いです。あのウルヴァリンと新幹線の屋根の上でそれなりに対等に立ち向かえるのだから!特にミュータントという言及もなかったしなあ。あの手の特急バトルはなんとなく「スパイダーマン2」を連想してしまうね。
 監督は「17歳のカルテ」「3時10分、決断のとき」のジェームズ・マンゴールド

ウルヴァリン

 ウルヴァリン=ローガン役は安定のヒュー・ジャックマン。今回はヒッピー風のロン毛ひげから途中で髮を切って、「X-MEN」の頃に似た風貌に。あの特徴的な髪型ってウルヴァリンのヒーリング・ファクターとも関係していて、坊主にしても、すぐに髮が生えてくるし、逆に伸ばそうとしても一定以上は伸びないはずなんだが映画ではその設定はないのかな。とはいえ、あんまりウルヴァリンぽくなかった爽やかな前作の頃に比べると、野性味あふれる風貌は取り戻している。
 コミックスのウルヴァリンはその人柄とは対照的に幾つもの言語をマスターしているが日本語もその一つ。映画では特にそういう設定は無さそう。メインの舞台が日本だけに時折日本語での会話シーンもあり、大体は問題ないのだが、やはりたどたどしい日本語のシーンも見受けられる。そういうのはたいてい日本人キャストではなく日系人だったり韓国系だったりするのであるが、日本語を喋っているのに出てくる英語字幕を読んだほうが理解が早かったりする。向こうの製作者は日本の観客に対するサービスのつもりなのかもしれないが、「パシフィック・リム」なんかでもそうだけど正直テンポを悪くしているだけな気がする。で、ローガンがマリコの婚約者である政治家を脅すシーンで相手が日本語で話すと「英語で話せ!」と殴るシーンが有るのだが、もう今後ハリウッド映画でたどたどしい日本語会話が出てきたら物語と関係なく脈絡なくウルヴァリンが出てきて「英語で話せ!」と殴る、展開にするというのはいかがだろう。
 爪の出し入れは元から備わっているミュータント能力でそれに後から人体実験でアダマンチウムを結合させられるのだが、今後どうなるのだろう。アダマンチウムは自家製生できるのだろうか。

ジーン・グレイ

 今回、ローガンは「X-MEN LS」においてジーンを殺してしまったことがトラウマとなっている。前作のケイラの思い出も出てこないわけではないがローガンはその頃の記憶を完全に思い出しているわけではないので過去の恋人(というかジーンの場合は一応ローガンの片思いだが)のメインはジーン。そしてそのジーンがローガンの幻覚として登場する。もちろん演じているのはファムケ・ヤンセン。もしかして少しCG補正で若返っている?
 シチュエーションは大概ローガンが寝ているとセクシーな姿で彼の横にいる。そして気づくとローガンがジーンをアダマンチウムの爪で貫いてしまう。そして目覚めるローガンというパターン。これが純粋なローガンのトラウマなのか、もしやジーンの残留思念的な何かなのかは不明。どうとでも解釈できるが(この作品を単品で見た人の多くは単にローガンが見た幻覚なのだと思うだろう)、なんといってもジーンは作中でも有数のテレパスでありシャドウキングの例に漏れず肉体的に死んだからといってもそれが本当の死を意味しない可能性もある。個人的にはローガンの中に残されたジーンの残留思念的な何かがそのトラウマと共に増幅されたもの、という解釈をしたい。もしかしたらこのへんも次回作で判明するのかも。しかし、今回は登場も言及もされないが(あるいはそれ故に)スコット=サイクロップスが余計に哀れ。ジーンは確かに「北斗の拳」のおけるユリアのようなキャラクターで登場人物の多くが彼女に好意以上の感情を持っていたりするのだが(オリジナルメンバーに至ってはボビー=アイスマン以外はプロフェッサー・X含む男子全員がジーンに恋していた)、やはりジーンとスコットのカップルこそ最高。ウルヴァリンのお相手として強く認識されるのはむしろ今回のヒロイン、マリコの方である。

マリコ、ユキオ

 ウルヴァリンもその人気と長いキャリアの持ち主であるので例に漏れず恋のお相手はたくさんいる。しかし一人選べと言われたらそれはマリコということになるだろう。コミックスでは紆余曲折会ってローガンと婚約までしているが結局死を迎える。「スパイダーマン」におけるグウェン・ステイシー同様死んだことで永遠の輝きを放っているキャラクター。
 今回の映画ではTAOという日本出身のモデルが演じており(俳優としてはこれがデビュー作らしい)、スレンダーで長身なスタイルとちょっと地味めなルックスでいかにも欧米の男性が理想とする日本の女性という感じ。
 もう一人のヒロインがヤシダ家に拾われてマリコと姉妹同然に育ったというユキオ。僕はユキオをコミックスでウルヴァリンとマリコの養女となったアミコのキャラとごっちゃにしていて、アミコのキャラクターを成長させウルヴァリンの相棒的なキャラにしたのだと思っていた。実際はユキオはシンゲンに雇われたウルヴァリンの命を狙う暗殺者として登場し、やがて信頼すべき仲間となるキャラクターでその意味では映画ではそんなにアレンジは大きくない。アミコはユキオに育てられることになるので、やはり少しアミコのキャラも混じっているのかも。
 ウルヴァリンは少女の相棒をサイドキック的にコンビを組んでいることが多く、一匹狼キャラのウルヴァリンとしては珍しく少女との相性がいい。映画1作目ではローグ、コミックスではシャドウキャットやジュビリー。今回はその相棒的少女の役割をユキオが果たしている。演じている福島リラもモデル出身でいかにも日本美人といった感じのマリコに比べると赤い髪にパンクな格好で(和服着るシーンもあるが)対照的。ヒュー・ジャックマンやTAOと並ぶシーンが多いので小柄に見えるがそれでも168㎝はある。ちょっと個性が強い容貌だが、活動的でウルヴァリンの相棒として劇中では魅力的である。

4つのシルバー・サムライ

 最初予告編などでは「シルバーサムライは登場しないのでは?」などと言われたことがあった。シルバーサムライはセイバートゥースと並ぶウルヴァリンのライバルであり、「まさか日本を舞台にしておいてヴィランとしてシルバー・サムライを出さないわけはあるまい」などと思っていたのだが、コミックス通りのシルバー・サムライこそ登場しなかったが、うまくアレンジされて登場する。シルバーサムライはそのキャラクターを4つに分身させ、

  1. ヤシダ家に伝わる先祖の武士の鎧
  2. その鎧をシンゲンが身につけた姿
  3. コミックスにおけるシルバー・サムライの正体であるハラダ
  4. アダマンチウムで作られた鎧武者をモチーフとしたパワードスーツ

などで登場する。
 真田広之演じるシンゲンはヤシダ家の跡取りでありながら死の床に付した父は孫(シンゲンにとっての娘)マリコを後継者に指名したため陰謀を企む。真田広之安定の格好良さで彼とウルヴァリンの刀と爪の格闘シーンは見どころ。シンゲンは隔世遺伝で父と孫が似ていることなどに言及するがそれならシンゲンがミュータントという設定でウルヴァリンと対比される孤立感みたいなのを出せればもっと良かったのではないかと思う。今回は見どころではあるもののウルヴァリンとシンゲンの対決はちょっと唐突で脚本的にこなれてはいなかった。
 そしてコミックスにおけるシルバー・サムライは今回マリコの幼馴染でかつての許嫁として登場するハラダだろう。フルネーム(今回は登場せず)はハラダ・ケヌイチオで日本のファンの間では「ハラダ・ケンイチロウ」の綴り間違いではないか、などとも言われるが彼がヤクザ、ヤシダ一家の棟梁としてウルヴァリンの前に立ちはだかる。映画では彼が鎧に身を包むことはないし刀ではなく主に弓を使うがおそらくハラダのキャラクターそのものはハラダ・ケヌイチオから来ている。演じていたのは若い津田寛治と言った感じのウィル・ユン・リー。名前で分かる通り日系人ではなく韓国系で彼の喋る日本語はかなりたどたどしいのだが、ローガンに殴れられずに済んだのは幸い。
 そして、まるで「アイアンマン」におけるアイアンモンガーを洗練させて趣味的にしたようなパワードスーツとしてのシルバー・サムライがラストに登場する。最初はロボットかと思わせておいて実は・・・このシルバー・サムライのアダマンチウムの刀が熱せられてヒートサーベル状態になるのはコミックスでシルバー・サムライの能力がタキオン粒子を刀にまとわせてなんでもぶった切る!という物だが、それのアレンジだろう。
 また、今回の数少ない白人キャストで、明確にミュータントであるキャラクターとしてヴァイパーという女性キャラが登場する。彼女は体内で毒を生成し、相手に噴きかける。またやはり蛇のように脱皮して負傷を直す。このキャラクターはコミックスではどのようなキャラクターなのか僕は知らないが、皮を剥ぐシーンは若手ミュータントである「ニュージェネレーションX」のハスク(その名は「皮を剥ぐ」という意味)というキャラクターを連想させた。*4

 映画としては成立させるにあたって、キャラの改変というのはよくあることだが「アイアンマン3」のマンダリンと違ってきちんと元のキャラクターをリスペクトした上で改変しているのが分かるので今回は全然許せる感じではある。
 今回は「X-MEN」シリーズのスピンオフ作品ということで作品のテーマもそれほど重くなく、ミュ−タントとしての苦悩もほぼウルヴァリン個人の苦悩に集約される。明確にミュータントとして登場するキャラクターもそれほど多くない。ウルヴァリンとヴァイパーぐらい(ユキオは明確にミュータントかどうかは不明)。まあ新幹線の屋根でウルヴァリンと対等に戦えるようなヤクザたちとかももしかしたらミュータントかもしれないが、その辺はちょっと残念。
 「X-MEN」本編のようなテーマ性は薄いものの、コミックス原作のアクション映画として見た場合は十分面白いといえるのではないだろうか。

Days of Future Past

 エンドクレジットではアメコミ映画ではお馴染みの本編終了後のお楽しみ。今回は本編より2年後、とある空港でローガンはマグニートーイアン・マッケラン!)と出会う。どうやらキュアーによるミュータント能力の消失は完全に過去のものとなっったようだ。再び磁界の帝王としての力を取戻した、マグニート―はローガンに協力するよう求める。当然拒否するローガン、その時周りの人たちが動きを止める。これは「X-MEN2」冒頭の博物館のシーンやラストのホワイトハウスのシーンでもあった展開。そう!死んだはずのプロフェッサーX(パトリック・スチュアート)が登場。次作への怒涛のつなぎとして本作は終りを迎える。
 シリーズの次回作は「X-MEN Days of Future Past」は同名のコミックスが原作。人類のミュータント支配が苛烈を極めたパラレルワールドを舞台にそこに迷い込んだキティ・プライド(シャドウキャット)の物語。映画の方は「X-MEN FC」と「X-MEN LS」の共通の続編となることで両方のキャストが登場する。つまりマグニート役としてイアン・マッケランマイケル・ファスベンダーが、プロフェッサーXとしてパトリック・スチュアートジェームズ・マカヴォイが、それぞれふたりとも登場する(一緒の画面で共演するような部分があるのかは不明)!おそらく旧3部作とそのプリクエルとして制作された「X-MEN FC」の間に存在する矛盾なんかも解消されるのではないだろうか(個人的にはオリジナルの「宇宙大作戦」の時間軸とJJ版「スター・トレック」の時間軸の関係と似たものとなる気がする)。当然ウルヴァリンヒュー・ジャックマンはもちろんエレン・ペイジ=キティ・プライドも出ますよ!(原作に近ければ実質エレン・ペイジ主役?)因みにこの空港のシーンでトラスクという企業のCMがかかるがこれは次で重要な役割を果たすであろうミュータント捕獲ロボ、センチネルを作るボリヴァー・トラスクのことですね。
 監督はブライアン・シンガーが復帰!「X-MEN FC」のマシュー・ヴォーンは脚本と製作という形に。シンガーは「X-MEN LS」の時に「スーパーマン リターンズ」の方に行ってしまったので裏切り者扱いされることもあるが、「リチャード・ドナーブライアン・シンガー」のラインでは一貫してるのだなあ。またヴォーンも実は「X-MEN LS」の監督候補で彼のもとでキャストもスタッフも集まったのに結局ブレット・ラトナーになってしまったという経緯もある(そしてブレット・ラトナーは元々「スーパーマン リターンズ」を監督する予定だった)。「X-MEN LS」はマグニートーによるミスティークの扱いが酷いとか、キュアーによるミュータント能力の消失を好意的に描いているとか色々文句もあるが、もしかしたら続編が作られることで単品としての評価はともかく、シリーズとしては好意的に捉えられるようになるかもしれない。かつて「バットマン ビギンズ」が僕の中では公開当時、一作のみでの評価は微妙だったのに「ダークナイト」「同ライジング」と公開されることによって「シリーズ1作目としては最高!」と位置づけられたように、できれば「X-MEN LS」も「X-MEN Days of Future Past」や更にその後続く?続編群によって連作の中のつなぎとして肯定的に見られるようになってほしい。続編には是非そのぐらいの出来を期待したい。
 人類の進化は始まったばかりだ。

*1:両作品ともコミックスやヒーローに思い入れがなく映画単品で評価すればとてもおもしろい作品だったと思う。ただ「アイアンマン3」はマンダリンのキャラがコミックスと乖離し過ぎていたし、「MOS」で描かれたスーパーマンは(もちろん原作となるコミックスにも色々あるのは承知のうえで)僕の理想の英雄であるスーパーマンとは違っていた。ただし一部で話題になったので言っておくと僕も最初の感想ではパンフやその他の資料を特に読んでいなかったのでザック・スナイダークリストファー・ノーランデヴィッド・S・ゴイヤーの3人を特に切り分けず当分として扱ったが、その後パンフやその他でノーランはほとんど撮影現場には姿を表さず、またザックに対しては「ダークナイト」路線は辞めるように進言していたとか、物議をかもしたゾッド将軍の最後にしてもザックがゴイヤーに直させてあの形にした、などを聞いたので現在はやはりザックが一番責任を負うであろう、と思っている。あの作品を面白かったと思うにしろ、ダメだったと思うにしろ、その責任(功績)はやはりザックに帰せられるべきで、一部で見られる過剰なノーラン叩きはやはり不当であると言わざるを得ない

*2:というかそもそも「バットマン」の企画は「スーパーマン」の成功による物が発端だったりする

*3:真田広之は「ラスト・サムライ」の時もそういうう役割を引き受けていた

*4:シルバー・サムライは最初このヴァイパーのボディーガードとして登場したらしく、やはり映画中のハラダはハラダ・ケヌイチオなのだろう