The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

アタマが悪いんじゃない、子供のほうを向いているんだ! G.I.ジョー バック2リベンジ

YO!JOE!

 というわけで、「G.I.ジョー」です。前作は実はそれほど楽しんだ作品というわけでもないのですが、この映画にはイ・ビョンホンが非情な暗殺ニンジャストームシャドーとして出演したことで色々と騒がれて、僕もそれに反論する記事を書いたりしたこともあって(関連記事参照)それなりに思い入れもある作品。ただやはり前作は一作品としてみた場合はちょっと弱い部分が多かったと思うのですよ。なのでこの続編もそんなに期待してはいなかったのです。だから「3D作品にするためのその処理のため公開を延期した」となった時も別になんとも思わなかったのですね。
 でも「アイアンマン3」を見た時にこの作品のちょっと長めのフッテージ(スネークアイズとジンクスによるストームシャドー拉致作戦)が公開されそれがなかなか面白かった事もあってここ最近は急に期待作品となった次第。それでいち早く先行公開初日に観て参りました。「G.I.ジョー バック2リベンジ」観賞。

 前作の記事はこちら。

小覇王の徒然なるままにぶれぶれ!: G.I.ジョー
旧ブログの記事です。

G.I.ジョー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

G.I.ジョー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

物語

 ナノマイト戦争から数ヶ月。テロ組織コブラの指導者コブラコマンダーとデストロは捕まりG.I.ジョーコブラの闘争は終わったかに見えた。しかし実は大統領がコブラの変装の達人ザルタンと入れ替わっていたのだ。
 パキスタンの大統領暗殺に始まる内戦の中核兵器がテロリストの手に渡ることを恐れてG.I.ジョーが派遣される。デューク率いるG.I.ジョーは見事任務を果たすが突然襲われ3人を残して壊滅。ザルタンの大統領はG.I.ジョーが反乱を起こしたと発表。代わりの特殊部隊コブラG.I.ジョーを殲滅したとも。
 一方その頃、生きていたストームシャドーはコブラコマンダーとデストロが捕らえられている牢獄へ、コブラコマンダーを救出する。生き残ったロードブロック、レディ・ジェイ、フリントの3人はコブラに立ち向かうため伝説の初代ジョージョー・コルトンに会いに行くのだった。またスネークアイズも嵐影一族から命を受けストームシャドーを追っていた。いま再びコブラG.I.ジョーの死闘が始まる・・・!

 原題は「G.I. Joe: Retaliation」で「Retaliation」は「報復」とかいう意味なので分かりやすく「リベンジ」を入れた邦題も中々良い。この「報復」は2つの意味にとれて前作で敗れたコブラの報復とも言えるし(前作の原題は「コブラの勃興」でした)、またそのコブラによって壊滅させられたG.I.ジョーの逆襲を意味するとも言える。
 監督はスティーブン・ソマーズに代わりジョン・チョウ。これまでは「ステップ・アップ」シリーズや「ジャスティン・ビーバーネヴァー・セイ・ネヴァー」などキッズ向けアイドル映画を撮ってきた模様。僕はそのどれも観ていないが、ある意味この作品もキッズ向けということではこれ以上無い出来です。最初にはっきり言っときますがこの「G.I.ジョー バック2リベンジ」、「大人の観賞に耐えうる」とか「従来のコミックを超えた」とかそういうものでは全くありません。徹頭徹尾子供向けの映画です。ただ本気度は半端ない。マーベルシネマティックユニバース作品やワーナーの「バットマン」などを連想してはいけません。日本で言うなら「コロコロ」や「ボンボン」の作品をその読者に向けて作った映画みたいなもの。そういうことではこの監督起用は正解だったのではないかと思う。
 スティーブン・ソマーズは製作に回っている。この人の作品の特徴は大味なストーリーと特殊効果で、例えばWETA(「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなど)のしっかりしたCG効果に比べると非常に安っぽく感じてしまうが、それが見事に作家性というか味となっている人でもある。製作に回った今回は比較的CGも落ち着いて荒唐無稽とリアルの境目が曖昧。それでも見せる所ではとことん荒唐無稽さの快感を味あわせてくれる。脚本は「ゾンビランド」のコンビ。
 
 前作ではG.I.ジョー側にも秘密兵器やパワードスーツが出てきたりしたが、今作のG.I.ジョー側は比較的地に足の着いた軍備描写で銃器なども特に超科学的な描写は無し(もしかしたら装弾数無限のSF銃なのかもしれないが、見た目はリアルな普通の銃器)。あのダサいパワードスーツも登場しない。正直あのパワードスーツのデザインがもう少しヒーローぽく格好良ければよかったのになあ、と思っていたので登場しないで良かったと思う。おもちゃとしてのG.I.ジョーの原典は第二次世界大戦の兵士人形だが、今回はある意味その原典に則った描写をG.I.ジョー側はしていると思う。
 もちろん、それだけではない、スネークアイズ、ストームシャドーの無国籍ニンジャアクションも健在。今回は更にジンクスというストームシャドーの従姉妹という女性も加わり嵐影一族の因縁もヒートアップ。他のニンジャたちも加わりカタナと手裏剣が雪山で飛び交うワイヤーアクションが素晴らしい。このFPSゲームCall of Duty」を彷彿とさせる比較的(前作と比して)リアルなガンアクションと無国籍な忍者アクションがともに高いレベルで共存しているのが素晴らしい。アクション部分に対してはカメラが動きすぎという批判もあるようだが、僕は比較的スムーズに分かりやすかったと思う。

G.I.ジョー


 前作から引き続きのキャストというのは少なく、その意味ではもし前作のキャラクターの引き続きの活躍を楽しみにしていた人は不満に思うかも。とりあえずG.I.ジョー側ではチャニング・テイタムのデュークとスネークアイズだけが登板。デュークは前作の活躍を受けて実働部隊のリーダーとしての登場だが、前半で退場。これが生死不明の行方知れずとかかと思ったらガッツリお亡くなりになってしまった(ロードブロックが軍の認識票(ドッグタグ)をデュークから取るシーンがあるのだが、ちょっとチャニング・テイタムと認識するのが難しかった)。これにて前作から登場のG.I.ジョーはスネークアイズ以外いなくなり新メンバーでの活動に移行。
 この映画集団ヒーローものとも言えるのである種群像劇ではあるが主役は明確にロック様(ドウェイン・ジョンソン)。予告編ではブルース・ウィリスが活躍していて主役のようだったが作品全体ではロック様がやはり主役といえるだろう。ロック様演じるロードブロックはデュークの部下兼友人として登場。デュークが若くして出世するエリートだとすればロードブロックは一般兵から地道に活躍した人、という感じか。ロック様は昨年からWWEに本格復帰してWWE王者にまでなってしまったがやはり本腰を入れるのは俳優活動の方でこの後は「ワイルド・スピード」の最新作が公開される。個人的に「ハムナプトラ2」以来(あれでも直接共演はしていない)となるブレンダン・フレイザーとの共演映画というのが観たいのだが、それにしても「センター・オブ・ジアース」といい「G.I.ジョー」といいシリーズの1作目にはフレイザーが出て2作目にロック様が出る、というのが続いているなあ。
 そのブルース・ウィリスはどちらかと言うとスポット参戦で「エクスペンダブルズ2」の出演と似ている。伝説の初代ジョーということで役柄的には「RED」の引退したCIAエージェントとも似ている。その分、こういう映画ではあるがいきなり超スーパースターであるブルース・ウィリスが出てきても違和感はない。家の至る所に銃火器を隠しているシーンは最高だった。
 原作となったアニメやトイでの一番人気であるスネークアイズは相変わらず全身特殊スーツとマスクに身を包んだ喋らない男としてレイ・パークが続投。マスクのデザインが口元部分が前作は人間の口を模していたのに対して今回はフラットに。その分感情表現が難しくなったのであるが無口で頼れる男であることは変わらず。
 新人メンバーは肉感的で銃の扱いにも長けたレディ・ジェイにエイドリアン・パリッキ。前作のバロネスやスカーレットとは又違う軍人としての強さにあふれている。胸の形が最高でですね、タンクトップの軍服姿が素晴らしいです。
 もうひとりの新人フリントはD.J.コトローナという人でいかにも熱血な新人隊員という感じ。このフリントとレディ・ジェイはアニメの「地上最強のエキスパートチーム_G.I.ジョー」で1985年に同期のメンバーとして登場したキャラクター。
 ストームシャドーの従姉妹としてジンクスという女ニンジャも登場。ご存知のようにストームシャドーは師を殺して逃亡したことになっているので一族上げてストームシャドーを狙っていてその経緯でG.I.ジョーに加わることに。ところでスネークアイズも嵐影一族となっているし(スネークアイズは子供時代は登場してそこでは金髪の白人になっている)、一族の頭領は黒人(RZA)である。ストームシャドーもイ・ビョンホンが演じるということで韓国人という設定に変えられていたりするので(このことで前作で嫌韓ネトウヨの類が騒いだ)嵐影一族は血筋よりも修行を通して結束を固める集団なのかもしれない。一族というか一門といったほうが合っているか。ちなみにこの一連の嵐影一族シーンは全くそうは見えないが東京でござる。

コブラ


コーブラー!!
 前作でコブラコマンダーを演じたのは今をときめくジョゼフ・ゴードン・レヴィットで、まあ回想シーン以外ほぼ素顔ではなかったのだけれど、前作出演のあと、「(500)日のサマー」などでブレイクした。そのせいか否か今回は別の役者に交代。まあ見れば分かるのだけど今回のコブラコマンダーは前作以上に素顔を晒すシーンがないので特に問題なし。JGLに関しては売れて「こんなの出てられるか」と思ったと言うよりは「ダークナイト ライジング」でヒーローになることを匂わせておいて同じコミック原作映画で悪党を演じることに配慮したのかな、といい方に判断したい。新コブラコマンダーファラン・タヒールという方が演じていて「アイアンマン」にも出ていたらしい。コブラコマンダーの容姿は前作よりも「地上最強のエキスパートチーム_G.I.ジョー」に登場したデザインに近く、格好良い。善と悪の間で揺れる複雑なキャラクターもいいけれどこういう明確な悪役もやはり観ていて楽しい。コブラコマンダーは今回も最後は行方知れずになるので次作での更なる活躍を期待したい。
 前作で囚われたといえばデストロもそうなのだが、予告編などから「デストロ登場しないなー」などと思っていたら、まさかの「デストロ、お前は不要だ」とコブラコマンダーにクビ宣告される。この時コブラコマンダーが銃を手にしているのでもしかしたら殺されたのかもしれないが、ここはそのまま放置させられたと信じて次回の活躍に期待。というか前作の最後で「お前はこれからデストロだ」と命名されてすぐG.I.ジョーに捕まって、脱走の時にクビ宣告ってデストロとしてはなんにもしてないな彼
 ストームシャドーとともにコブラコマンダーを救出するのが新登場となるファイアーフライ。演じるのは「パニッシャー:ウォーゾーン」のフランク・キャッスル、「マイティ・ソーのヴォルスタッグを演じたレイ・スティーブンソン。彼もクリス・エヴァンズライアン・レイノルズと並んでよくコミックキャラクターを演じている印象があるが役柄やルックスがその都度違うので混乱はしない。どちらかと言えばパニッシャーに近い軍人系の悪人。頭は悪そうなところも良いです。最後はロック様と一騎打ち。
 そしてイ・ビョンホンが演じるのがストームシャドー。前作では生死不明だったが生きていた!見事な肉体美も晒しつつ、今回は悪役とG.I.ジョーにも味方する一匹狼の両方を演じる。スネークアイズと対照的に素顔を晒すし、セリフも喋るが、しかしそれでもイ・ビョンホンはやはり表情で魅せる人なんだよね。眼力が強く怒りを押し殺したような表情がとてもエモーショナル。
 そしてある意味一番楽しそうに演じているのがザルタンが変装している大統領を演じているジョナサン・プライス。本当の大統領と偽大統領と両方演じているが明らかに偽大統領としての演技のほうが楽しそう。特に核兵器保持国の首相をズラッと前にしての「核兵器撃っちゃった。ほらどうする皆も撃ちなよ」から「皆が撃つならオレはやめよう」の件はもはやコントを超えた楽しさ。一応アーノルド・ヴォスルーもオリジナルザラタンとしてちょこっと登場してます。それにしても楽しそう。ある意味どのアクションよりも一番の見せ場。

 とにかくいい意味で肩の力を抜いて楽しめる映画。例えば劇中の核兵器の描写、完全崩壊したロンドンの描写など、眉をひそめる人もいるだろうけどこれに関してはそういうのは不毛な気がするなあ。今シーズン放送中の刑事ドラマに「ダブルス」という21世紀に作られたとは思えないドラマがあるのだけれど、あれを突っ込みながら楽しめる人はこの映画も楽しめると思う。後は早速今年の「バトルシップ」という位置づけが囁かれているのだけれど、個人的には「バトルシップ」なんかよりよほど出来がいいと思う。もちろん僕が個人的にバトルシップと相性が悪いというのはあるけれど、子供目線という意味ではよほど「G.I.ジョー」のほうが真摯で最初からバカ映画を狙って作ったわけではない気がするのだ。僕は断然「G.I.ジョー推しである*1

関連記事

再録 G.I.ジョー 忍者とニンジャは別物です。

最後に「この作品はフィクションです」って字幕が出て思わず笑ってしまった。そんなの言われなくても分かってるよ!

G.I. Joe: Retaliation

G.I. Joe: Retaliation

*1:この記事はAKB総選挙見ながら書いてた