The Spirit in the Bottle

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誰かニコラス・ケイジを止めろ! ゴーストライダー2

 前回の「ジャッジ・ドレッド」より早く観て感想書くのは後回しにしていたのが、やはり1970年代に誕生したアンチ・ヒーローが活躍するコミックスを映画化した「ゴーストライダー2」。映画の完成自体は結構前だったと思うのだが、公開まで時間がかかった模様。一応ニコラス・ケイジが主演した2007年の「ゴーストライダー」の続編。なのだが色々と歪な作品であった。

物語

 父親を死から救うため悪魔と契約しゴーストライダーとなったジョニー・ブレイズ。現在は故郷を遠く離れ東欧をバイクでさまよっていた。カトリックの武闘派僧侶モローからゴーストライダーの力を取り去ることを条件にとある少年の保護を依頼される。その少年ダンは母親がやはり悪魔と契約して産んだ子供で、やがて来る大悪魔ロアークの新たな器となる運命を持っていた。息子を守ろうとする母親ナディアとジョニー。一方ロアークはナディアの元恋人であるキャリガンを雇い執拗にダンを狙う。果たしてジョニーは無事ダンを守ることが出来るのか?

 アベンジャーズの枠に収まらない」―というような惹句が宣伝コピーになっているが、こちらもマーベルコミックス。製作はマーベルスタジオの大人向けレーベルである「マーベルナイツ」。アベンジャーズには加わっていないかもしれないが、「ニュー・ファンタスティック・フォー」をウルヴァリンとかと結成してたことはあります。そして先述の通り2007年に映画化されている。
 ただどうも、純粋な続編という感じでは無さそうで、ニコラス・ケイジ=ジョニー・ブレイズは続投だが作品の雰囲気やカラーは随分変化している。ストーリー的にも前作との矛盾もある。前作では契約した悪魔はピーター・フォンダ演じるメフィストフェレスだったが、今回はロアークという悪魔に変わっている。もちろん役者が変わるのはよくあることだし、メフィストは悪魔なのだからその時々で姿を変えるとか可能なのだから、この変更は意図的なものなのだと思う。原作においてロアーク=メフィストなのかもしれないが。原作でもゴーストライダーに登場するメフィストとマーベルのその他のヒーローの物語に登場するメフィストは同じ人物のはずなのに結構違ったりするしね。原題もそのせいか2とはつかず「SPIRITS OF VENGEANCE復讐の精霊*1」というサブタイトルが付く形になっている。

 ゴーストライダーは見れば一発燃える骸骨が黒いライダースーツを着てバイクに乗るというヴィジュアル。鎖を操り眼前の敵を燃やし尽くす。バイクに乗るヒーローと言えば我が国の仮面ライダーだが誕生は仮面ライダーの誕生が1971年なのに対してこちらは1972年のほぼ同期と言っていいヒーロー。もちろんバイクに乗るヒーローでもっと古いキャラクターもいるけれど、日米を代表するバイクヒーローがほぼ同時期に誕生しているのも興味深い。それもどちらもヒーローとしての能力の出処が敵に由来するという所も共通している。ともにアンチ・ヒーローである、ともいえるだろう。
 今回は前作の比較的ツルッとしたスカルフェイスから、もうちょっとリアルな人骨という雰囲気で白い骸骨の周りに炎があるという前作に比べ、骸骨そのもの炎で炭化しているように黒ずんでいる。

炎の小便をするゴーストライダーの想像図。
 前作からの継続キャストはジョニー・ブレイズ役のニコラス・ケイジのみ。ケイジのアメコミ好きは有名で本名はニコラス・コッポラ。あのフランシス・フォード・コッポラの甥なのだが、七光りと思われるのが嫌なのか芸名を名乗っている。そして芸名の「ケイジ」はマーベルコミックスの黒人ヒーロー、ルーク・ケイジが元ネタだ。アメコミヒーローをやりたくてたまらなかった彼が「スーパーマン・リターンズ」からの落選(降板?)などを経て念願の作品が前作の「ゴーストライダー」だった。その後は「キック・アス」など変化球ながらヒーローを演じている。とまれ彼にとっては前作は記念碑的な作品であったのだろう。
 ニコラス・ケイジはその大げさな演技が特徴だが、今回は度が過ぎているというか、限度を超えている暑苦しさ。変身前はもちろん、変身後もケイジが演じているが、変身すると比較的表情が読めなくなるため、早く変身して欲しいと思うくらい。とにかく大げさ、暑苦しさ全開である。この大げささは今回は劇場公開版では無いようだが、むしろ日本語吹き替え版になれば、わざとらしさは取れて良い感じに中和されるような気がする。前回同様の順当なキャストで行けば大塚明夫さんがケイジの声を当てるはずである。
 乗車するヘルバイクは前作のハーレータイプからYAMAHAのVMAXをベースとしたものに変わりスピード感を重視している。基本のマシンは一台だが、ゴーストライダーに変身した状態で別の機械に乗るとその機械もヘルマシン化し、劇中では巨大な重機が炎を上げて敵に襲いかかる。バイクからはドクロの意匠も無くなり、随分スタイリッシュなマシンに。
 ゴーストライダーの力の基となる悪霊はザラソスといって名前は知っていたのだが、このザラソスというのはニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」のツァラトゥストラ、つまりゾロアスターのことであるらしい。ゾロアアスターは現在でもゾロアスター教として一定の信者がいる宗教の開祖で漢字で拝火教と書くように火を神聖視している。ゾロアスター教の火とゴーストライダーの地獄の業火は概念としては別だろうがなるほどイメージは似ているかもしれない。
 今回の話のキーパーソンになるのがダン少年なのだが、おそらくこの少年が原作の2代目ライダー、ダン・ケッチであると思われる。僕が読んでいる「ゴーストライダー」のコミックスはこの2代目となるダン・ケッチ少年(コミックスの方ではもっと年長の青年、「MARVELS」のラストエピソードで少年時代が出てくる)が主人公なので、むしろこちらのほうが馴染み深い。物語の要となる重要な子供、ということだと最近の「ルーパー」などもそうだが、この場合はその昔エディ・マーフィーが主演した「ゴールデン・チャイルド」を連想。

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 その母親のナディアはジーナ・ガーションを連想させる美人さんで名前はヴィオランテ・プラシドという。ヴィオランテというと「ゴジラVSビオランテ」を思わせますね。
 彼らをサポートするのが、黒人僧侶モローのイドリス・エルバ。彼はすでに同じマーベルの「マイティ・ソー」でアスガルドを守る神ヘイムダルを演じているが、今回も同じマーベルのキャラクター(原作で出てくるのかどうか分からないが)を演じた。最も寡黙なヘイムダルとは違って飄々とした雰囲気で普通の人間キャラではケイジよりむしろ彼の方が格好いい。ヘイムダルの時も本来白人風の神(「白い神」という異名を持つ)であるヘイムダルを黒人であるイドリス・エルバが演じるというので論争が起きたが、今回も東欧のカソリックというあんまり黒人が出てくるイメージがない世界での黒人僧侶という役柄。ただそういうところに彼が現れても、あんまり違和感が無いのも確かでイドリス・エルバはイギリス出身であるためか、いわゆるアフリカンアメリカンの役者の持つファンキーな雰囲気は感じないのだな。その辺が今後の彼の持ち味になるのではないだろうか。
 後はクリストファー・ランバートを久々に見かけてびっくりした。僧侶たちのボスと言う役柄だが、ほとんど活躍しなかったのは意外でもあり栄枯盛衰という感じ。
 
 敵役は巨悪の大悪魔ロアークに太ったリー・アーメイという雰囲気のキラアン・ハインズ。前作ではピーター・フォンダメフィストフェレス)だったのに比べるとぐっとランクが下る感じはするが、悪魔のくせに俗世間にまみれたインチキセールスマンと言った風貌で貫禄はある。
 悪役の中で実行犯としてゴーストライダーと戦う役柄は堪え性のない若きギャングという風のキャリガン。最初は若い頃のカート・ラッセルという感じの風貌であるが、ゴーストライダーに倒されるとロアークから力を得て触っったものを腐食させる怪人となる。この怪人となった後のキャリガンは標的の前に現れる時に周りを暗闇にする能力を持つ。このことや白髪の風貌から原作のブラックアウトというキャラクターがモデルだろう。ブラックアウトはその名の通り明かりを消し暗闇にする能力を持つ。

 とにかく変身してしまうと楽しいが変身する前のニコラス・ケイジに付き合うのが体力を消耗する。色々バランスは悪い映画であった。まあタイトルでは「止めろ!」と書いた。別に継続してもいいんだけど、ちょっと抑えてほしい感じ。 ダン・ケッチ、ブラックアウトなんかが出てる日本語で読めるコミックス。 こちらはウルヴァリンパニッシャーと荒くれ者3人が共演するクロスオーバー。作画は「キック・アス」のジョン・ロミータJrで絵柄もおすすめ。前作に出てきたブラックハートが悪役。

 脚本はアメコミ映画ではお馴染みデヴィッド・S・ゴイヤー。マーベルナイツレ―ベルの作品だけあってアクションにおけるバイオレンス描写などは手を抜いていない。また全体的に乾いた作風で前作とはイメージが違うので特に見なおさなくても大丈夫です(大筋は冒頭に説明してくれますし)。それこそ「ジャッジ・ドレッド」などと一緒に見たりすると面白いかもしれませんね。
 でもこれは日本語吹き替えで見たかったなあ!

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旧ブログの方ですが、同じマーベルナイツレーベルの作品として。

 

*1:この「復讐の精霊」というのはバットマンダークナイト、スーパーマンのマン・オブ・スティールのようなゴーストライダーの異名