The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

新世界を日に染めて ONE PIECE FILM Z

 思えば「ONE PIECE」の映画を劇場に観に行ったのは「STRONG WORLD」が初めてでその理由が「原作者が大きく関わって原作の流れとリンクしているらしいこと」だったのだがあれから3年。ほぼ同じ理由で再び「ONE PIECE」の劇場版を鑑賞。「ONE PIECE FILM Z」を観た。

物語

 かつての海軍大将「黒腕のゼファー」率いるネオ海軍が海軍基地から恐るべき爆発力を持つ「ダイナ岩」を強奪。現役大将の黄ザルが出向くがゼファーはゼットを名乗りダイナ岩を爆発させる。
 新世界を航行する麦わらの一味。甲板で花見を楽しむ中、突然火山灰が振りその海の中一人の遭難者を救出する。海楼石で出来た巨大な腕を持つ明らかに危険な男を危険視もするがチョッパーはこれを治療。しかし復活した男は相手が海賊と知ると大暴れ。ゾロやサンジも歯が立たない。そしてその男「ゼット」の仲間ネオ海軍がやって来る。ルフィもやられ、ネオ海軍アインの悪魔の実の能力によってナミ、ロビン、チョッパー、ブルックが若返ってしまう。なんとか窮地を脱したサニー号。一行は打倒Zを誓うのだった。
 一方Zとネオ海軍は新世界そのものを滅ぼす恐ろしい計画を実行しようとしていた・・・

 脚本は放送作家でお笑い芸人森三中大島美幸の旦那として有名な鈴木おさむ。正直これを聞いた時は不安だった。放送作家というのがわかりにくいというのもあるが業界ではともかく、一般人にはあくまで大島美幸の夫なんだよね。ちょっと脚本家としての実績がよくわからない人でもあったので。でもよくできていたとは思います(話そのものは原作者の尾田栄一郎が作っているのだろうけれど)。
 原作とのつながりが重要視されてはいるんだけど、当然これだけ単品で見ても問題はないです(もちろん、ある程度キャラクターや世界観の前提知識は必要ですが)。ただ、原作の方の大きな動きで連載開始時点から進んできた物語がマリンフォード頂上戦争(白ひげ海賊団VS海軍本部)を頂点として現在は2年時代が経過しているということ。そして物語の舞台がグランドライン後半の海、通称新世界に移っているということですね。この劇場版は新世界を舞台にした最初の映画ということになります。
 映画はゼットの独唱から始まる。ゼットの声は大塚芳忠。この時点でハートを持っていかれます。大塚さんはアラゴルンでもあるのでね。ある意味「ホビット」のトーリン・オーケンフィールドの歌並に引きこまれます。そして縦横無尽に動き回るカメラワークのバトルシーン。TVシリーズとは明らかに金のかけ具合が違うアニメならではの凄い動きが見れます。ディズニーのアニメとは、あるいは日本のお家芸ロボットアニメともまた別に、アニメーションとは動きなんだ、ということを思い知りますね。
 ただ、戦闘シーンその他におけるルフィーのゴム人間としての描写がちょっと過剰気味で気持ち悪かったかも。首を伸ばしたりっていうのが妙になめらかでしかも日常的に使われるので普通にろくろ首みたいな描写が多いんですよね。基本的に戦闘時だけに絞って描写したほうが良かったと思いましたね。
 原作との付かず離れず具合、というか微妙に謎を残して原作に誘導しつつ大枠では原作知らなくても分かるように作られてるのは上手いと思いました。とはいえ映画だけで完結していないのでダメ、という人もいるかもしれないですね。

あざとい!

 今回。実にあざといシーンが続きます。なんといっても敵幹部アインの「モドモドの実*1」によってナミ、ロビン、チョッパー、ブルックの4人が12歳若返ってしまうのですね。ナミは8歳、ロビンは18歳、チョッパーは5歳、ブルックはほとんど変化なし(本人だけわかってるらしい)。そっかー、ロビンは12歳若返っても18か・・・そして、そんなロビンとナミがウソップの指揮のもと酒場で情報収集するのですよ。ロビンは踊り子さん、ナミはウェイトレス。
 女性陣にそんなことををさせている間、ウソップとチョッパー、サニー号修理に忙しいフランキーを除く男性陣は温泉で湯治。水商売してる間にルフィ、ゾロ、サンジ(+骨だけブルック)の裸を挟むなんてなんてあざといんでしょう!しかも貴方、原作の方では赤イヌとの戦いに敗れ海軍を去った青キジ、クザンもそこに加わるんですよ!これをあざといと言わずナニをあざといというのでしょう!ちなみにクザンは赤イヌとの戦いで欠損した足を自らの能力による氷の義足で補っているという設定。直接的には麦わらの一味の味方になるわけではないですが、切り札的な扱いですね。色々と因縁のあるロビンとは目でコンタクトしながら特に何も会話をかわさないところは良かったです。
 あざといと言えば映画ではいつものルフィ達の衣装とは違う特別な格好も見せ場なんですが、クライマックスにおける衣装はともかく、普段の衣装としては個人的には余り好きではないなあ。普段から原作でも衣装をとっかえひっかえしてる設定なら(ナミとかロビンはある程度衣装持ちでしょう)ともかく劇場版だからと言って突然ルフィやゾロが日常からファッショナブルになるのはどうなのかと思うなあ。男性陣ではせいぜいサンジとウソップぐらいでしょ普段から衣装に気を使っているのは。

七武海は誰?

 今回の敵、ゼット(ゼファー)は元海軍大将。ガープ、センゴク、おつるの同期でロジャーや白ひげ、金獅子のシキらと覇を争った世代です。つまり「STRONG WORLD」と同様、過去の大物に新世代の海賊であるルフィたち麦わらの一味が立ち向かう、という構図です。ゼットが海軍を抜け独自の海賊撃滅組織「ネオ海軍」を組織したのは度重なる出来事によって海軍の正義に絶望を感じたからですが、劇中ではまず、ゼファーへの恨みを持つ海賊に妻子を殺されたのが始まりです。その事件の後彼は前線を退き教官として頂上戦争時点での三大将や中将たち、スモーカーやひななどの海兵を育てます。ある意味当時の海軍を育てたのは彼とも言えるわけですね。しかしそんな彼に二度目の悲劇が。新兵の訓練航行中に海賊(能力者)に襲われ、二人を残して教え子である新兵を全員殺されてしまいます。ゼファーも腕を失い劇中の海楼石で出来たの巨大なバトルスマッシャーに。その二人(アインとビンズ)とともに海軍の遊撃隊として新世界で頑張っていた彼ですが、そこに自分の教え子を皆殺しにした海賊が王下七武海入りしたという情報が伝えられ海軍に絶望、ネオ海軍を組織します。
 劇中ではこの七武海入りした海賊が誰かは語られなかったのですが、漠然と少し前ならドンキホーテ・ドフラミンゴ、2年前の時点なら黒ひげマーシャル・D・ティーチあたりかな、と思っていたのだけれど、入場特典である「千巻」によると海軍を抜けたのはわずか一年前とのこと。というとそれ以前からの七武海と言うことはありえません。
 二年後の現時点で分かっている七武海は、鷹の目のミホーク、ドンキホーテ・ドフラミンゴ、暴君バーソロミュー・くま、海賊女帝ボア・ハンコック、そして新たに加入した死の外科医トラファルガー・ローの5人。逆に抜けたのはティーチ、海侠ジンベエ、サー・クロコダイル、そして行方不明ということになっているゲッコー・モリアの4人。ローは現在連載中の展開では麦わらの一味と同盟を組んで共闘していますしドフラミンゴと敵対しているようなのでローということはまずないでしょう。と言うことはまだ登場していない新しい七武海がゼットの宿敵ということになりそうです。
 一部ではインペルダウンから頂上戦争での活躍によって道化のバギーが七武海入りしているのだろうと言われています(僕も多分バギーは七武海入りしているのだろうと思います)が、どうもバギーもそういうことができそうな感じではないですね。ということでおそらくバギーでもローでもない残されたもう一人の新たな海賊という線が濃そうです。いずれ作中で出てくるでしょうし、その時は今回の映画の内容が物語に反映されるのではないでしょうか。

声優

 ゼットの声は先述の通り大塚芳忠。前回のシキが竹中直人だったことを考えるとまたぞろ芸能人を起用しそうなところですが、ここではきちんとしたベテラン声優を起用したところはさすがです。実際ゼットのキャラは中々に魅力的ですが、かなりの部分大塚さんの声によるところも大きい気がします。キャラクターの設定年齢(74歳)の割に若々しいところ、かと言って年齢並みの経験を感じさせるところをきちんと両立させてるんですよね。
 大ボスに起用しなかった代わりと言うとなんですが、ネオ海軍の幹部であるアインに篠原涼子、同じく幹部のビンズに香川照之の二人が声を担当しています。篠原涼子演じるアインはロビンと同じくらいの年齢と思われる美女。ゼットを先生と慕いゾロと渡り合う剣の使い手であるがどこか常に怯えた感じでちょっと震えるような篠原涼子の声と合っていました。ビンズは派手なニンジャといった扮装ので地面から植物を生やし相手を絡めとり動きを封じるモサモサの実の能力者。こっちはほとんど叫んでるようなシーンばかりだったので特に香川照之と意識することはないです。しかし、篠原涼子香川照之って「アンフェア」のコンビだったのだな。

アンフェア DVD-BOX

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 その他は劇中クザンに助けられる女性たちがあたりが芸能人(佐々木希*2とか)だと思われますが一瞬だったので特にどうということもなし。
 レギュラー勢はもういつものメンバーに加えてクザン役の子安武人さんとかが頑張っています。子安さんは歌うシーンもありますね。
 レギュラー勢と言えばコビーとヘルメッポですよ。この二人今回大佐と少佐って事になってるんですよ。二年前は曹長と軍曹だったのに!ONE PIECEの世界政府の海軍がどういう階級制度なのか確かではないけれど少なくとも間に、曹長と大佐の間には少尉、中尉、大尉、少佐、中佐、とあるわけで*3いくらコビメッポが優秀で師匠であるガープ中将のコネと本人の努力があったとしても普通は無理ですね。何か裏があるに違いない!とか言ってみたりして。現在の元帥であるサカズキの人柄にもよるのかも、ですが頂上戦争において自分に逆らったコビーをあえて引き立てたか?


ONE PIECE FILM Z オフィシャル ムービーガイド (集英社ムック)

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ONE PIECE FILM Z (JUMP j BOOKS)

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ONE PIECE FILM Z オリジナル・サウンドトラック

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 作品としてはスタイリッシュで地に足がついた描写で前作の「STRONG WORLD」より洗練されて面白くなっていました。原作ファンもそうでない人も満足できると思います。
 ところでフランキーが両肩の大砲から手をついて砲撃するのはガンキャノンのパロだよね。

HGUC 1/144 RX-77-2 ガンキャノン (機動戦士ガンダム)

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*1:この語感の悪さは何とかならなかったものか

*2:全然関係ないけどフジテレビでCS用に作られた「恋なんて贅沢が私に落ちてくるのだろうか?」というドラマがすごく面白くて佐々木希はけして大根なんかではないと思いました

*3:場合によっては准尉とか准佐とかが加わる