The Spirit in the Bottle

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女神降臨! easy A 小悪魔はなぜモテる?!


 思い起こせば2010年。一本の映画で僕は彼女に出会った。エマ・ストーン。「ゾンビランド」で出会った彼女に僕は一目惚れしてしまった。でその時点で海の向こうでは彼女の次回作「easy A」が公開待ちであり、やがてその作品は大評判となる。しかし日本では公開する兆しが見えず半年、一年と過ぎていった。やがて監督ウィル・グラックの新作「ステイフレンズ」が日本でも公開されエマ・ストーンはそこにちょい役で登場した。結局2011年の暮れに「小悪魔はなぜモテる?!」という邦題を付けられDVDスルーされることが発表されてしまった。それでも完全にお蔵入りしたわけではないので良しとして発売日を待っていたのだった。そして!買ってきたですよ。発売日に。本当はブルーレイが出てくれればいいんですけどね(「ステイフレンズ」は当然ブルーレイも出てるしこの作品もアメリカではブルーレイ出てます、1年前に!)。特典も全然少ないんですけどね。それでもやっと待ちわびたまだ見ぬ愛しの作品をいきなり購入したわけです。で、見たらこれが最高だったのですよ!エマ・ストーンの魅力がぎっしり詰まっているだけでなく普通に作品としても面白い。ジョン・ヒューズの学園映画のDNAをきっちり受け継いだ学園映画でした。

物語

 地味目な女子高生オリーヴは見栄から友人に「セックスの経験あり」と嘘をついてしまう。その噂はあっという間に学校中に知れ渡る。ある時オリーヴは一緒に居残りさせられたゲイの少年ブランドンと知り合い、彼がノンケに見えいじめから逃れられるよう彼との関係を偽装する。やがて、学校中のモテない男子から「関係したことにしてくれ」という偽装以来が続々舞い込んでしまう・・・

 真実よりデマのほうが広がりやすいのは去年の3月以来の我が国の状況を省みてもよく理解できるが高校という小さな社会ではそれは大変なものだろう。
 この映画ではナサニエル・ホーソーンの「緋文字」が重要なモチーフになっているがアメリカ学園映画というのは実に古典名作との親和が高い。シェークスピアの「から騒ぎ」や「ロミオとジュリエット」などなど。要は学校の中には階級が存在しプロムではキングとクイーンが選ばれる。それは現代社会というより中世ヨーローッパに似ている。だから古典をそのまま置き換えてもそれほど違和感がないのだ。ちなみにデミ・ムーアの「緋文字」を観て「なぜアシュトン・カッチャーは離婚しないの」という学生のレポートという形でセリフがあったけど、、このあと離婚になりましたね。「easy A」というタイトルは「緋文字」にちなんだ部分なのでそう思うと邦題の「小悪魔はなぜモテる?!」はやっぱり微妙でここはカタカナ邦題の「イージーA」で副題として「小悪魔は〜」あるいはジャケットの載っているコピー「非モテ女子がウソで恋愛に勝つルール♡」にでもすれば良かったのではないかなあ。
 で、この映画実はキャストがめちゃくちゃ豪華なんである。それもそれぞれのキャストが過去に演じた役柄を想起させるものになっている。オリーヴの父親はリベラルな雰囲気なスタンリー・トゥッチ。どこかゲイっぽい雰囲気や慈愛に満ちた雰囲気は「バーレスク」や「キャプテン・アメリカ」での彼を思わせる(撮影はこっちのほうが先だが)。オリーヴの宿敵に当たるマリアンヌ役に「ヘアスプレー」のアマンダ・バインズ。「ヘアスプレー」では熱心なキリスト教徒である母親に育てられながら最後は黒人と付き合うという役だったがここではその裏返しのような熱狂的なキリスト教徒の役。ビッチ(嘘だが)なオリーヴを目の敵にする。アマンダは「ヘアスプレー」の頃に比べて顔がむくんでまるで豹のようになっていたな。TVシリーズ「フレンズ」のフィービーとして有名なリサ・クードローはフィービーとは正反対な真面目な役かとおもいきや実は・・・
 そして、何と言っても保守的な校長役であのマルコム・マクダウェルが出演。「時計じかけのオレンジ」のアレックスですよ!まあこの人は比較的節操無くなんにでも出る人なので出演自体は別に驚かないけどあんまりまっとうな倫理観とは程遠いイメージなのでそのへんが面白かった。
 後は「スパイダーマン3」のサンドマンことトーマス・ヘイデン・チャーチが教師役で出演。サンドマンとはずいぶんイメージが違うけど強面ながら格好いい大人として登場した。

私の人生の監督はジョン・ヒューズじゃない

 途中、親友のリートの電話でブチギレた後、持ってる服を改造してビッチ風するシーンは明らかに「バットマン・リターンズ」のセリーナ・カイル(ミシェル・ファイファー)がキャットウーマンの衣装を作るシーンのパロディ。
 勿論作品中で言及されるぐらい80年代の学園映画、とりわけジョン・ヒューズ作品に対するリスペクトも大きい。劇中でオリーヴの理想のシチュエーションとして様々なパターンが紹介されている。家の外でラジカセを抱えて待つジョン・キューザックや「ブレックファスト・クラブ」のラスト片手を高らかに上げるジャド・ネルソンなど。このうち幾つかはきちんとラストで再現されるのが素晴らしい。「ブレックファスト・クラブ」は僕にとってもオールタイムベストな一本だがもう完全にこの映画にやられていてSimple Mindsの「Don't You(Forest About Me)が流れるだけで涙腺がうるっと来てしまうのだが、この曲が本作でも流れる。


 この時点でこの映画はエマ・ストーンが出てる出てないに関わらず傑作だと確信しましたですよ。もうウルウル。オリーヴが「私の人生の監督はジョン・ヒューズじゃない」というセリフがあるけど僕も人生の監督がジョン・ヒューズだったらなー。
 仲間はずれされることと孤高であることは別なのだ。ラストのセリフも最高。

トッドが来たの。
もう告白することは残ってないんだけど、彼がすごく好き。
だからきっと彼に処女を上げるかもしれないね。
でもね、それがイツになるか分からない。
5分後なのか今夜か。それとも半年後か、結婚式の夜になるのかも。
でも何より最高なのは、それがあんたらには関係ないってこと。


 この手のコメディとかは会話のテンポが大事なわけだけど、よく見られる顔を合わせない電話での会話(カットバックが重要)がこの映画でもうまい。特にオリーヴとブランドンが互いにトイレの個室に入って掃除しながら(といいつつブランドンは消さずに落書きしてる)会話するシーンは隣り合わせだけど互いに顔が見えない状況で話していてテンポが心地よかった。
 とはいえ、やっぱり一番はエマ・ストーンなわけで「エマ・ストーン非モテ女子って嘘だろ。どう見たって女神じゃねーか」などと映画的なお約束にすらツッコミ入れたくなるほどキュートなのだがこれが困ってる人を見逃せないタイプなわけですな。最初のブランドンこそあれだけどその後のモテナない男子から偽装エッチを持ちかけられる展開って古今東西たくさんある「何とか童貞を捨てようムービー」(「パンツの穴」「アメリカンパイ」etc・・・)の女子から見た展開だよね。
 
 エマ・ストーンはこのあと日本では4月に1960年代の公民権運動をテーマにした「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」が公開され、そして6月にグウェン・ステーシーを演じる「アメイジングスパイダーマン」が待機してます。主演のピーター・パーカー事アンドリュー・ガーフィールド*1と私生活で付き合っているとかそんな話よりも(オレは信じない!)MJが出てこずグウェンが出てくるということはラストどうなるんだろう?と戦々恐々しながら待っている次第。

小悪魔はなぜモテる?! [DVD]

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愛しているよ!エマ・ストーン

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 勿論、ソフトが発売されたからといってここで終わりではなく、今から劇場公開したっていいし、ブルーレイ版(洋盤は監督とエマ・ストーンのコメンタリー入り)を発売してくれて全然構わないんですよソニーさん!

*1:どうでもいいが彼の名前を聞くと「ソーシャル・ネットワーク」のエドュよりも黄色い猫が思い浮かびます