The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

五感不満足? パーフェクト・センス

 なぜか雨が降っている中(朝は雪も降った)唐突に映画が観たくなり、例によってユアン・マクレガーが出てる!」というそれだけの理由でどんな映画か全く分からず「パーフェクト・センス」という映画を観に行ったのだった。前回の「ゴーストライダー」の時以上に全く前情報無し。

物語

 世界中で嗅覚を失うという症状が蔓延し始める。スコットランドグラスゴーで症状を研究する感染病学者スーザンは自宅アパート近くのレストランでシェフを務める、、マイケルと出会い惹かれあう。やがて症状は嗅覚だけでなく、味覚や聴覚にまで及び始める。しかもその症状が出る直前には人は感情を爆発させるのだ・・・

 僕は幸福なことに五体満足、五感も正常に生まれ育っている。勿論年齢と共に眼は悪くなっているし、中学ぐらいの時に中耳炎を患って以来時々耳鳴りがするような軽い症状はあるけれど概ね健康。だから目が見えない、耳が聞こえない、といった人たちの苦労は正直分からない。ただ、映画鑑賞なんてものを趣味にしていると、そういうものが制限された時、想像する以上に大変だろうな、とは思う。
 この映画は徐々に五感が制限されていく世界での物語だ。しかもそれは感情の発露を伴う。嗅覚を失う前には悲しみの感情を。味覚を失う前には飢えを。そして聴覚を失う前には怒りの感情が爆発する。原因は最後まで解明されないし一種のSFパニック映画だが主眼はそこにおいていない。むしろそういう状況で人々はどう生きるか、ということが描かれる。
 映画のトーンは陰鬱なグラスゴーを反映して暗い。またナレーションと共に不安定な世界情勢の映像やイメージ映像が挿入されたりしていかにもヨーローッパのアート映画という形で前半はたるかったのだが中盤の味覚を失うあたりから面白くなってくる。

 ある種の終末映画といえると思うが、その描写はアメリカ映画とはやはり少し違う。味覚を失う直前、人々が飢えに襲われて我をなくして食べ物にむしゃぶりつくシーンはある種のゾンビ映画をイメージさせた。そこから世界は崩壊を迎えるのかと思わせる。ところが人々は立ち直る。ユアン演じるシェフが務めるレストランは嗅覚の消失によって客足が途絶えるが今度は鼻がダメなら刺激だ!と言わんばかりに濃い味付け、辛い料理で盛り返すし、味覚が消失しオーナーが「これは高価なブランデーだが今となっては消毒用アルコールと変わらん!味も匂いも分からないのに誰がレストランになんて来る。腹が満たせればいいのだから油と小麦粉で充分だ!」と自暴自棄になるが今度はワインを注ぐ音、パリパリとした触感そうしたものを楽しむ場へと適応する。勿論劇中では暴徒と化す市民の姿も描かれるがどちらかと言うと「人間なんかあっても結構上手くやっていけるんじゃね」という希望的な展開を迎える。この辺同じイギリス映画でゾンビ映画でありながらどこかほのぼのとしている「ショーン・オブ・ザ・デッド」を思わせる。
 エヴァ・グリーン演じるスーザンとユアン演じるマイケルは感覚の消失の中で深く愛しあうがともに過去に深い傷を抱えている。それを埋め合うように愛し合う二人。しかし聴覚を失う前の怒りの感情を爆発させるマイケルに絶望しスーザンは彼の元を去る。嗅覚や味覚だけでなく、聴覚まで失った人類はやがて絶望するかと思われたが、やはり時とともに対応していく。そして次なる消失・・・
 いよいよ、視覚の消失。今度はこれまでにない多幸感に襲われる。幸せの感情の中、マイケルとスーザンは再び出会い、そして互いを見失うが残された触感でのみ互いを感じあう。そして画面がフェードアウト。もはや人類は互いに触れ合うことでしか相手をそして自分を認識できない。融け合う人類・・・
 僕はこのラストを見て「エヴァンゲリオン」の人類補完企画を思い出した。あれも解釈は様々だが*1人類が一体になることで恐怖などをやり過ごす、というようなふうに捉えている。このラストは触覚のみを残された人類がしかしそれを持って「完璧な感覚」を手に入れたといえるのかもしれない。
 
 さて、ここからは下世話な時間。僕はユアンが出てるから、というそれだけの理由でこの映画を鑑賞したわけだが、その意味では完璧な映画であった。意外と脱ぎたがり傾向のあるユアンが今回も登場初っ端から裸体で登場し(今回のユアンは肩にタトゥーあり、のちょいワル青年。全然そんな風には見えないけど)、そしてさすがはフランス女優、エヴァ・グリーンも堂々と裸体を晒してくれる。二人のベッドシーンやお風呂でいちゃつくシーン*2ではカット割り等でごまかすこと無く堂々と見せてくれているのは非常に評価できる。とくにユアンは「ゴーストライター」にひき続きてその魅力的な尻を見せてくれるのだ!というかですね、下手すればもっと大切な部分も見えたんじゃないですかね。エヴァ・グリーンもその豊満な胸を見せてくれるし前半の物語としてのたるさはそのへんで相殺されます。
 とりあえずユアン・マクレガーのファンは見る価値有るんじゃないですかね!

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 ラスト多幸感の余韻の中人類は触感だけを残すが、おそらくその触感もいずれ失われるだろう。互いの認識も自己の認識も出来ずそして人々は・・・

*1:僕は「スーパーロボット大戦α」で示された宇宙怪獣(トップをねらえ!)と絡ませた解釈が好きだ

*2:どうでもいいがいくら味覚を失い触感で楽しめるからと言って石鹸食べるのは身体に悪いだろ