The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

鋼鉄の絆 リアル・スティール

 ヒュー・ジャックマン主演のロボット格闘技映画「リアル・スティール」を鑑賞。最初、予告編を見た時凄い面白そうだと思ったのだが、その後原作がリチャード・マシスンで制作がディズニー系列のタッチストーンということを知って「ぬるい家族愛映画に改変されているのではないか」と期待度を少し下げていた*1。でも、いざ観ると作品は男泣きの燃える映画だった!

物語

 2020年、人間の格闘技は廃れ、代わりにロボットが行う格闘技が主流になっていた。元ボクサーのチャーリー・ケントンはロボボクサーのオーナー兼操縦者としてドサ回りをしているが借金は膨らむ一方。今度も牛相手の試合を受け2万ドル負けた上所持ロボットを破壊されてしまった。逃亡しようとするチャーリーにかつての恋人が亡くなり、その子供の親権の件について裁判所に来るよう命令が来る。子供の名はマックス、11歳。亡くなった母親の姉夫婦がマックスを養子にしようとしていた。一計を案じたチャーリーは2ヶ月だけマックスと共に過ごしその後親権を譲ることを10万ドル(先払い5万ドル)を条件に取り付ける。こうしてチャーリーのもとにマックスがやってきた。
 先払いの5万ドルでかつての名機「ノイジー・ボーイ」を手に入れたチャーリーは早速インディーズの試合に出かけるがチャーリーの傲慢と操作ミスからノイジー・ボーイは大破。新しいロボットの材料を手にいれようと忍び込んだ鉄くずの廃棄所でマックスは崖を滑り落ちる。そしてATOMという旧型のスパーリングロボットを見つけるのだった。マックスはATOMで試合に出ようとするが・・・

 まず、予告編を観た人はこの映画をATOMを通じて離れ離れで暮らしていた親子が心を通い合わせる話、だと思ったことだろう。それは間違いではないが、予想以上であった。まず、ヒュー・ジャックマン演じるチャーリーが予告編から想像できる以上にクズ!ダメな親父と言ったって「夢を追って自由に生きる」系の人物でなんといってもヒュー・ジャックマンが演じているのだからそんなに大したことないだろう、と思っていたのだがこのチャーリーが人間としてかなりのダメ人間なのだ。ロボットボクシングに活躍の場を奪われた元ボクサーが代わりにロボットに夢を託す、とかそんな要素は殆どなし。冒頭から前半のかなりの部分を使ってチャーリーのクズっぷりが描かれる。マックスの親権を手放すときも一切迷いなし!渡りに船で金が手に入る、ぐらいにしか思っていない。大体10年前に別れた恋人の自分の子供(存在は知ってた)について「今9歳だっけ?」とか言ってる時点で興味がないのが丸分かり。また、ロボットの操縦者としてもイマイチで二回の自機大破と共に操作ミス。その上で自分ではなくロボットのせいにしてしまう。特にノイジー・ボーイで戦った時は自機の性能をほとんど理解していない、調子に乗っていきなり強い敵と戦う、などチャーリーのクズっぷりを強調している。ただ、前半そのクズさ加減を目一杯出しているから後半マックスとの友情が生きるのだ(後述するが親子の愛情と言うより友情という方がふさわしいのだな)。
 で、そのマックス。ダコタ・ゴヨという子役が演じている。ダコタというとどうしてもダコタ・ファニングが思い浮かぶため「もしかしたら女の子が少年を演じてるのか?」などと思ったのだが正真正銘の男の子。ダコタってのはノースダコタとかサウスダコタとかの州の名前(さらには元々はインディアンの部族名)が由来かな。というかこの子「マイティー・ソー」でソーの子供時代を演じてたじゃないか!
 とはいえ女の子に見間違うほど可愛い男の子で特に夜、ATOMに抱えられるシーンは実にキュート。タレ目が可愛い*2。僕は何度か書いているが子役が重要な役割を果たす映画では(演技の上手い下手とは別に)その子役に好感を持てるかどうかが実に重要だと思っていてその昔のハーレイ・ジョエル・オスメントとか日本で言うとえなりかずきとか最近だとこども店長とかは全く好感が持てず作品も好きになれなかった。その点このダコタくんは合格。「スターウォーズEP1」の頃のアナキンことジェイク・ロイドを思わせる。あえて言うならこの作品の一番の萌えどころだろう。
 その他のキャストはマックスの養母となるデブラやチャーリーの幼なじみでボクサーだった時のジムのオーナーの娘ベイリー、ライバルロボットのオーナー、ファラなど大人の女性が皆さん艶っぽいのも高得点です。

で、やはりこの映画の真の主人公といえるのは人間よりもロボットたちなわけですよ。ここで登場するロボットたちは人間の代わりに殴りあうのが役目で人間と違って機械だから派手に壊されたりするのも見所なわけです。なので基本は人間同様なフォルムで肩幅や拳が強調されたデザインが多い。劇中設定は2020年なので現在から10年も経ってないのだが現実同様アップデートは激しくチャーリーが買うノイジー・ボーイはチャンプとして君臨するゼウスの設計者タク・マシド(逞しい?宅麻伸?!)の過去の作品という設定だったりする。それぞれが個性的だ。
 主役メカであるATOMはマッチョ揃いのロボボクサーの中ではスリムなデザインで余計な装飾もない。元がスパーリング用だけあって頑丈に作られておりタフ。またシャドー機能(操縦者の動きをトレースする)も備えこれが最終的に元ボクサーであるチャーリーと結びつくことで画期的な強さを誇る。予告編だけ観るとまるで自分の意志を持つロボットかのようだが、劇中で見る限りそういう描写はなく、あくまでマックスやチャーリーの運用の仕方(改造なども含めて)が上手いのであるな。でも彼がチャーリーとマックスを取り持つ絆となるのだ。細身だけに動きもしなやかでシャドー機能を使ってダンスを踊ったりもする。ロボット界のジェフ・ハーディー*3
 ATOM「アトム」というと日本人なら鉄腕アトムを思い出すだろうけど、あっちはアメリカではアストロボーイとして知られてて元々はDCコミックスにアトムというキャラがいたので変更を余儀なくされたらしい(諸説あり)。
 その他劇中チャーリーの最初のロボットがアンブッシュでなかなかの面構えで僕好みだが闘牛やって大破した。そしてかつての名機ノイジー・ボーイは鎧武者のような頭部と漢字のペイントが特徴。残念ながら大破するがこの2体はATOMの一部となって生き続ける。
 他にもモヒカンのミダスやトンカチ装備のジャンクパーツ戦士メトロ。頭を二つ持つツイン・シティズなどがいる。そしてATOMの前に立ちふさがるのがチャンピオンであるゼウス。地下スポーツのほうが過激そうだが、ロボットボクシングの場合メジャーのほうが大企業が金を出し一流設計ができるので強さも上なのだな。
 その名にふさわしい強さを誇るゼウスは常に一ラウンドで相手を倒す最強チャンプ。体格はでかいがそれほどゴテゴテしておらず、ATOMターンAガンダムだとすればスモーのような対比。ブロック・レスナーあるいはビル・ゴールドバーグのような存在。
 このゼウスとの戦いがクライマックスなのだが、アクシデントがあって途中から操作方法が変わるとかかなり燃える展開。この辺、相手チームの設計者や女オーナーの役どころもあって「ロッキー4」みたいな感じなんだよね。もちろん「ロッキー」の要素も多く含まれている。
 近未来のロボットが活躍する映画であるがその日常描写には未来っぽい部分は殆ど無くて一部カーナビやロボットの操縦ディスプレイ等に見られる程度。
 一般にロボット物(日本の場合多くはアニメだが)というのは日本のお家芸的なものと認知されてると思うけど、たまにアメリカはすごいロボット映画を繰り出してくる。この「リアル・スティール」や「アイアンジャイアント」などは日本のロボットアニメの影響を絶対受けてると思うけどその上でいかにもアメリカな作風に仕上げてくる。こんな燃える映画をもっと観たい!

 物語の後、おそらく、マックスはデブラ夫婦のもとに行くのだろう。彼女たちは誠実だ。チャーリーとマックスは親子と言うよりむしろパートナーとして付き合うことになるのではないのだろうか。ビジネスパートナーであり友情である。親子として一緒に暮らすとかは小さな事でしかない。二人には鋼鉄の絆があるのだ。

リアル・スティール (ハヤカワ文庫NV)

リアル・スティール (ハヤカワ文庫NV)

Real Steel (Original Score)

Real Steel (Original Score)

 音楽はダニー・エルフマンだけど彼とは言われなければ分からないくらい正統派。ダークな雰囲気は少なく、盛り上げる所では実に盛り上がる。
 
 後はパンフレットが劇中で言及されないロボットやロボットボクシングの歴史などの設定が書いてあって良かったのだが、なぜか中山秀征と木下優樹菜のレビューが載っている。中山秀征はまだパパタレントということで採用されたのだろうが木下優樹菜の方はなぜ起用されたのかよく分からない。その中山秀征にしてもページ開いて最初の記事に載せるのは勘弁です。

*1:原作は読んでいないがマシスンの作品はあんまり人情的ないイメージがない

*2:どこかトリンドル玲奈に似ている

*3:とはいえ劇中では「皆の王者“ピープルズ・チャンピオン”」の称号を贈られるのでロック様でもある