The Spirit in the Bottle

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諸行無常が空をとぶ! 新少林寺/SHAOLIN

 ええ、1日に観てきたんですけどね。後でいいや*1とか思ってたらズルズルと遅くなってしまいました。というわけでアンディ・ラウ主演ジャッキー・チェン共演の「新少林寺/SHAOLIN」を観た。

物語

 1912年、清朝が倒れた中国は混乱の極みにあり各地には半ば独立した軍閥がしのぎを削っていた。嵩山少林寺のある河南省鄭州市でも戦闘は続き、独裁者・侯杰(コウケツ)は少林寺に逃げ込んだ命乞いする敵対する将軍を無慈悲に撃ち殺した。侯杰は将軍の残した城の利益を独占するため義兄弟の契りを結んだ宋虎を謀殺する計画を立てるが腹心の部下、曹蛮(ソウバン)が裏切り追われる羽目に。命からがら逃げた先は少林寺であったが娘の命を失ってしまった。
 地位を失った侯杰は失意のどん底で自分の犯してきたことを知り、やがて少林寺で行われる武術修行に参加する・・・

 1912年というから以前観た「孫文の義士団」の6年後。無事辛亥革命を起こし清朝を倒したものの孫文勢力は弱く結局袁世凱の力頼みでの結果、アジア初の共和国とはなっても混乱の極みにあった。ちなみにこの作品ジャッキー・チェンの出演99作目だそうだけど記念すべき100作目が「1911」でこの1年前辛亥革命を描いたものですね。
 そもそも少林寺といえば漠然と中国武術のメッカ(仏教寺院にこの表現はまずいか)というイメージだけど、発祥は495年というから南北朝時代まで遡る。かの達磨大師が禅を組んで修行したところでもある。唐の創成期に太宗(李世民)に援軍を出したのが武術隆興のきっかけとか。フィクションでも「闘将!!拉麺男」の超林寺や「鉄拳チンミ」の大林寺のモデルでもある。
 これまでに少林寺を舞台にした映画というと数知れずあるが一番有名なのはリー・リンチェイ(現在のジェット・リー)主演の1982年の「少林寺」だと思うが、これは隋末唐初を舞台にしている。ちなみに日本の「少林寺拳法」は少林寺とは関係ない日本独自のものだそうです。「仮面ライダースーパー1」の赤心少林拳はこっちがモデルなのかな?
 
 さて、主演はアンディ・ラウである。この人日本でも知名度のある有名俳優だと思うけどいまいち立ち位置があやふや。個人的には川野太郎に似ている人、というイメージがずっとある。「酔拳2」「同3」や「マッスル・モンク」などでカンフー映画にも出ているけどあんまり武打星というイメージでもない。まあ、一昔前の香港の俳優は程度の差あれ皆ある程度はカンフーを使いこなせるのが当たり前らしいけど(逆にTV局の俳優養成所出身のチョウ・ユンファはカンフーができないことが弱みであり強みでもあったそうな)。それでももちろん香港を代表するスターであることは間違いなく今回の映画も主題歌まで歌っています。関係ないが「コウケツ」というと「北斗の拳」第3部のアレを思い出すので前半のいやらしさは倍増である。
 アンディとジャッキーの共演というと「炎の大捜査線」を思い出させるけどあくまで今回のジャッキーは友情出演的な助演。俗っ気がありすぎて出家はできないけど寺の外で生きてもいけないのでずっと料理番をしている男悟道を演じている。とはいえ彼がどん底に落ちた侯杰を癒すのでその意味ではジャッキーの人懐っこいキャラにぴったりだと思う。
 
 「孫文の義士団」では学のない無邪気な車夫を演じていたニコラス・ツェーがここでは上司を裏切り野望を燃やす曹蛮を熱演。「孫文の義士団」とぜんぜん役柄が違うのはもちろん、今回も前半のアンディの部下としているときは生真面目な軍人風、後半の実権を握ってからは無精髭を生やし格段に格好良くなる。
 その他実際に武術家としても高名な人たちがたくさん出てくる。以前僕が「処刑剣」で間違えたウー・ジンさんが格好いい!関係ないが最近「google日本語入力」に変えたのだけど「くまきんきん」と打ったら一発で「熊欣欣」が変換できてびっくりした。この人は「天地大乱」など「ワンチャイ」シリーズで大活躍した人ですね。

 アンディの奥さん役がどこかで見たことあるなあと思ったらやはり「孫文の義士団」でドニーさんの元奥さんでチェンの妻を演じたファン・ビンビンだった。今は香港ではこういうすごい美人で芯は強いけど幸薄い女性というのが流行ってるんですかね。いや僕が見た狭い範囲でのことですけど。アンディの娘さん(役名は勝男!*2)を演じた子役もとても可愛かったがこの子は日中ハーフの嶋田瑠那というこだそうです。
 

 ただ、この映画非常にリアルと言うか無常観と言うか仏教説話的な趣すらある。ジャッキー率いる寺を脱出した一般民衆&小坊主以外は敵味方全滅し唯一生き残るのは敵役である曹蛮だけなのだが、にも関わらず彼の負け感が半端ない。いわゆる超絶秘技を見せてくれるわけでもなく淡々としている。
 非常に哲学的なカンフー映画である。
 
 

*1:公開初日に見た「タンタンの冒険」の感想を優先させた

*2:中国語の語感でも女の子に「男」が入った名前をつけるのは変な気がするのだがどうなんだろう?