The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

信念を14本の刀に託して 処刑剣 14BLADES

 多分、いろんな人が書いてると思うし僕も書くけれど、今年はドニー・イェンの当たり年なわけですね。「イップ・マン」2部作、「孫文の義士団」と公開されて全てが傑作。で、今年4本目の日本公開作が「処刑剣 14BLADES」ですね。そんなドニーさんの最新作を鑑賞。

物語

 中国、明朝。太祖が創立した「錦衣衛」は皇帝直属の秘密警察、特殊部隊、暗殺集団である。幼い孤児たちを集め過酷な修行によって暗殺者に仕上げていく。善なる皇帝の元では正義の集団だが暴君の下では恐怖の集団と化す。
 その幹部は四聖獣の名が与えれられ、一番の使い手・青龍にはそれぞれ使命が違う14本の剣「大明十四刀」が当たられる。
 明朝成立から200年が過ぎた頃、青龍は宦官のジアから重臣のジャオが皇帝が与えた箱を奪い取れという使命を受ける。が、それは叛乱を企むチン親王と手を組んだジアのワナだった。重傷を負った青龍は運送屋の正義護送屋に自分を都まで送ることを依頼。しかしそこに追っ手がやってきて、正体がばれてしまう。青龍は護送屋の一人娘ホアを人質にして逃亡を図る。それを追うのは親王の義理の娘で西域の暗殺者・脱脱だった・・・

 今年公開のドニーさん主演の3本が近現代を舞台にした歴史ドラマという一面があったのに比べるとずっと通俗的な時代劇ぽい創りである。原作があるのかどうかは分からないがいわゆる武侠物という奴だと思う。
 明朝は現時点で最後の漢人王朝でフビライ・ハーンが建てた元朝を倒した(正確にはモンゴル高原に追っ払った)朱元璋が建てた王朝。江南から興り中国を統一した唯一の王朝でそれまでの漢人王朝と一番違うのは国号に創立者の出身地を用いていないこと(なんだったか忘れたが多分四書五経辺りから取っているのだろう)。太祖・朱元璋が貧農出身だからというのもあるか。日本では大体南北朝時代から江戸時代初期に当たる。創立200年というと日本では戦国時代の最中で、明朝では嘉靖帝とか隆慶帝とかの頃ですかね。いわゆる「北虜南倭」で疲弊していた時期。この後万歴帝が良くも悪くも最後の仇花を咲かせるその少し前、といったところ。
 で、この「錦衣衛」(原題でもある)という組織は実在していたのである。勿論劇中の竜牙会のような暗殺集団であったとは思えないしフィクション部分も多いと思うがWikipediaの記述がそれほど長くないので全て引用する。

錦衣衛 - Wikipedia
錦衣衛(きんいえい)は、明朝の秘密警察・軍事組織で、禁衛軍の1つ。

明朝の洪武15年(1382年)に、儀鸞司が再編・改称されたもので、侍衛上直軍の1つとして親軍指揮使司に属し、勲戚の都督の下に南北両鎮撫司・十四所を統轄して儀仗と宮禁守護が職務とされたが、実際には特務機関としてその側面が強くなり、北鎮撫司の処理する招獄が別称となった。東廠設置後は、その下部組織として兵刑両権を行使して恐怖政治を実現し、人々から恐れられた。

 まあ、太祖は大粛清で有名な人なのでいかにもこういうのを作りそうな人だとは思う。

  主人公の青龍は錦衣衛の首領で一番の使い手他に白虎、朱雀、玄武と続く。そして実力的には一番下の玄武が裏切る。玄武は朱雀を何とか倒すものの白虎には敵わず、脱脱が代わりに戦ったりする。この玄武がもう少し手ごわかったらなあ。あまりにも情けなさすぎて・・・
 タイトル(英題副題)にもなっている「大明十四刀」は一つの箱の中にまるで十徳ナイフのように仕込まれており、それぞれに役割が定まっている。最後の一本は自決用。また青龍はこの箱を普段は背中に背負っているのだがいざとなればそこからワイヤーが飛び出し文字通りワイヤーアクションでスパイダーマンのように飛び回ることが可能なのだ。後、14本の中に入ってるのかどうかは分からないがボウガンも備えていて飛び道具対策も万全、暗殺者がのどから手が出るほど欲しい七つ道具×2である。
 青龍演じるドニーさんは髭も凛々しい格好いい男。イップマンのような泰然自若でもなければ、「孫文の義士団」」の小役人とも違うある意味悟りを開いたような男。役目のために自分を捨てる男である。畳の上で死ねない(日本的表現)ことを悟っており、金銭欲がほぼゼロの男。 

 で、ヒロインに当たる運送屋の娘がヴィッキー・チャオ演じるホアである。徐々に青龍に惹かれていくのだが、お約束どおり最初は喧嘩したりしながら。彼女はどちらかというと美人というより可愛い系の女性だと思うのだが幾つか飛び切り美人に見えるシーンがある。特に最初の方で赤い嫁入り衣装をまとって車の中にいて、その中にいる時は暗いのだが、臨検の役人が車の戸を開けた瞬間、日の光が差し、肌が明るく照るシーンのヴィッキーは超絶美人だった!
 一方の敵キャラ、脱脱はクール系美人。西域の暗殺者という設定で、叛乱軍の首領である親王の義理の娘ということだが、実際は愛人なのではないのかな、などと思う。彼女は眉をつなげる刺青を入れているのだが、中原においては刺青は罪人のしるしであり、青龍の刺青(文字通り龍の刺青)も俗世間から隔離する役割をもつのであろう。一方西域や周辺諸国では単に風習として刺青を入れる習慣があり(日本でも昔は普通に入れていて中国から野蛮と見られていたし、近世になってもアイヌや南方の刺青習慣を野蛮なものと見ていた時期がある)脱脱もそういう二重の意味が込められているのかな、などと思う。この人の戦い方も幻想的で素敵。

 で、個人的に一番美味しいところを持っていったのがこいつ、通称「砂漠の判事」だ。こいつは国境沿いの町(それっぽく色々な風俗が伺われる)に出没する盗賊の首領なのだがこれが砂漠に似合わぬさわやかイケメン。ドニーさんを食うほどではなかったが格好いい。ブーメランみたいな刀を使う。このイケメン役者はウージンウーズン(ちゃとらんさんより指摘あり。こちらに出てるのはウーズンさんでありウージンさんとは別の人です。指摘多謝!)というらしいですよ!副官みたいな女盗賊も格好いい。
 一方も少し頑張れただろ!と思う残念君が玄武。彼がもう少し頑張ってくれれば色々と良かったのにと思う。
 
 さて、ゲスト出演でサモ・ハンが出ているのだが(叛乱軍の首領である親王役)、本当にゲスト出演。ほとんどアクションはない。ドニーさんとの絡みもなかったのは少し残念。ただ、その本の少しの出番でも存在感が半端ないのはさすがである。

 さて、これでドニーさん主演作の日本公開も一通り落ち着いたのかと思うがもしかしたら、「レジェンド・オブ・ザ・フィスト(原題:精武風雲)」も公開されるのかな?これって「ドラゴン 怒りの鉄拳」の関連作?だとしたら楽しみすぎる!

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