The Spirit in the Bottle

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漂流する荒ぶる魂たち ドリフターズ

 「ヘルシング」完結からそれほど間をおかず平野耕太の新作「ドリフターズ」の第一巻が発売。

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

 平野耕太は「進め!聖学電脳研究部」から読んでいて*1大好きな漫画家の一人。
進め!聖学電脳研究部

進め!聖学電脳研究部

今回の「ドリフターズ」はエルフなどが存在するヨーロッパ中世風ファンタジー世界にこちらの世界の人間が現れる、という「聖戦士ダンバイン」的世界。とはいえ異世界に召喚される人間が皆実在の人物で織田信長とか島津豊久とかが活躍する。
 異世界を舞台に「紫」と「EASY」という人物の代理戦争として「漂流物」と「廃棄物」と呼ばれる歴史上の人物、生死(てか死体)不明だったり非業の死を遂げた人物が戦う。
 主な登場人物に

「漂流物」側

 

「廃棄物」側

 

所属不明

 といったところ。島津豊久関ヶ原の合戦、終盤の「島津の退き口」で大将の島津義弘を守って討ち死にした猛将。
 織田信長はいわずと知れた日本史に残る巨人でその功績・実力・人気ともに常にベスト3に入るぐらいの人物。明智光秀の謀反による「本能寺の変」でもしもこの人が死ななかったら、というifは日本史上でも一番興味深いところだろう。一般にその政治構想の多くは秀吉に引き継がれてるとも言われるが信長死亡時点では秀吉はあくまで方面軍の司令官に過ぎず信長の天下統一後の構想をどこまで知ることができたかは疑問だ。例えば後述する「義経が死ななかったら」とか言うifに比べるとこの「信長が死ななかったら」が魅力的なのはおそらくその後の日本が大きく変わってしまっていただろうからだ。個人的にはおそらくヨーロッパ風の絶対王政(それもどちらかといえば啓蒙専制君主的な)になっていたのではないだろうか。
 そんな人物の為フィクションでも重用され、大陸に渡ってイワン雷帝と決戦に挑んだり(「夢幻の如く本宮ひろ志)、比叡山に飽き足らず現代に蘇って裏高野を襲ったり(「孔雀王荻野真)、やはり現代に蘇って内閣総理大臣に就任、クリントン大統領と政略結婚を図ろうとしたり(「内閣総理大臣 織田信長志野靖史)する。
 この「ドリフターズ」でも国盗りを開始して(ただし大将には豊久を据え自分は黒幕として)その他の「漂流物」一行とは一線を画しているようである。
 で、那須与一平家物語中の壇ノ浦の戦いで扇の的を射止めた人ですね。以上!というかこの人って他に具体的に何かしたっけ?というわけで困った時のWikipedia。「那須与一」の当該欄によると、

吾妻鏡』など、同時代の史料には那須与一の名は見えないため、与一の事跡は軍記物である『平家物語』や『源平盛衰記』に伝えるところが大きい(そのため、学問的には与一の実在すら立証できていない)。『平家物語』の記述から逆算すると、1169年(あるいは1166年、1168年)頃に誕生した。誕生地は当時の那須氏の居城神田城(現在の栃木県那須郡那珂川町)と推測されることが多い。

学問的には与一の実在すら立証できていない 
 そうなんだ・・・じゃあしょうがないね。「ドリフターズ」内では19歳の美少年ということになってます。
 そのほか、ハンニバルスキピオはローマ時代の名将。ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドは「明日に向かって撃て」や「ワイルドバンチ」でおなじみの西部開拓時代のならず者(正確には二人が抜けた後のキャシディ強盗団がワイルドバンチである)。そして一番最近の人物が太平洋戦争の戦闘機乗り菅野直。戦闘機に搭乗したまま異世界に召喚されるので現時点で最強だが弾撃ちつくしたりガス欠になったらどうするんだろうか?
 
 敵対する廃棄物は「鬼の副長」こと土方歳三など。アナスタシアは今も生存説が絶えないロマノフ朝最後の皇帝ニコライ2世の皇女だがさすがにもう死んでるでしょう。生きててもババア・・・ラスプーチン(ロシアの道鏡ももれなくセットで付いてきます。
 敵か味方か源義経は日本史上もっとも戦が上手いとも言われたひとだが残念ながら日本限定。世界で通用する人ではないです。チンギス・ハーンになったとか言うけど全然及ばないと思います。僕は東北出身なので奥州藤原氏とか好きだけど義経よりは頼朝の方が好きだし評価されるべきだと思う。ちなみに同時代資料によると頼朝は文句なし美男子だが義経は決して美男子とはいえないご面相。
 敵の親玉っぽい黒王の正体を予想。世紀末覇者の愛馬・・・ではなく平将門ではないだろうか。なかなか政治的にも軍事的にも信長に匹敵する歴史上の(そして非業の死を遂げた)キャラはそう多くない。日本史に絞れば平将門公ならふさわしいと思うがいかがか。

 現世での戦いに満足できないものが死んで別の世界に転生し思う存分戦うことが出来る戦闘狂の理想郷。北欧神話にはそういう概念があったと思うし、たしかバイストン=ウェルもそういう世界だったはず。この「ドリフターズ」を読んでるとこの世界もウォーモンガー達のために与えられた世界なのではないかと思ったりする。

HELLSING OVA VI Blu-ray 〈初回限定版〉

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*1:もしかしたらその前のエロ漫画をそれと意識せず読んでいるかもしれない