The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

超人たちの内戦、凡人たった一人の戦争 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

 2016年も後残り3ヶ月、というところまで来ましたが、多分もう今年の映画ベスト1はよほど凄いのが現れない限り「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で決まりなわけです*1。で日本公開初日に観てその後もGW中含め計6回ぐらい観て、ブログやツイッターでも絶対感想書く!と言いながら(その中にはソフト発売までには、という今となっては虚しい言い訳も)、結局ソフト発売後のこの時期までずれ込んでしまいました。映画の感想が億劫になってきた背景には使用しているパソコンの調子が著しく悪い、というスペック的なこともあるのですが、とりあえず僕のモチベーションが下がっているのは確かで改めたいものです。あんまりおもしろく感じなかった作品の方は負のパワーが炸裂するのか結構楽だったりするんですけど、面白いと感じた作品ほど感想書くのが辛かったりします。12月にはとりあえず劇場鑑賞作品リストを作りたいと思いますが、今年は劇場で観た作品の3本に1本ぐらいしか感想は書いていないでしょう。ただ、「シビル・ウォー」含めアメコミ映画感想は絶対書くぞ!ということで遅ればせながら、感想です。ソフトも発売されているのでいつもよりもさらにネタバレになると思います。マーベル・シネマティック・ユニバース、フェイズ3開始!
*レギュラーキャストについてなどいろいろ追記しました。そこそこ文量増えたので一度読んだ方ももう一度読んでくださると嬉しいです。

物語

 ソビエト連邦崩壊前夜の1991年、シベリアヒドラがウィンターソルジャーを眠りから起こし、あるターゲットを狙わせる。ウィンター・ソルジャーは見事にそれをやり遂げ目的の品を奪取した。
 現代。ブロック・ラムロウ〜今はクロスボーンズと名乗る〜の情報を手に入れたアベンジャーズはナイジェリアのラゴスでその行動を追う。アベンジャーズはクロスボーンズの狙いであった生物兵器の奪取の阻止に成功するが、クロスボーンズは自爆。その爆発はスカーレット・ウィッチによって防がれたに見えたが、爆発にはワカンダのボランティアが巻き込まれ多数の死者を出した。
 アベンジャーズのもとに国務長官ロス将軍が訪れる。NY、ワシントンDC、ソコヴィア、そしてラゴスアベンジャーズやヒーローたちが活躍し世界を救った時、同時に多数の救われなかった人たちがいる。世界はアベンジャーズを危険視している。ロスはアベンジャーズの活動を国連の管理下に置き活動を制限するソコヴィア協定のことを告げる。従わなければ引退してもらう、と。協定に従うべきだとするトニー・スタークと反対するキャプテン・アメリカ
 ウィーンでの協定調印の日。爆弾事件が置きワカンダ国王が死亡する。犯人はバッキー・バーンズ=ウィンター・ソルジャーだと特定された。ワカンダの王子ティ・チャラは復讐を誓い、親友を信じるキャップたちは独自にバッキーの行方を追う。ウィンター・ソルジャーを巡ってアベンジャーズが分裂する!そして全ての影にはジーモという一人の男が暗躍していた…

 前作「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」の感想はこちら。

-受け継がれる盾、蝕まれるシールド キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー

アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロンの感想はこちら。

-人を、神を、そして機械を超えて アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

 映画のタイトル「シビル・ウォー」は直訳すると「市民の戦争」だが、要するに「内戦」のこと。一つの国の中で二分された勢力による戦争を指す。一般名詞で例えば日本の戦争でも「戊辰戦争」とか「西南戦争」なんかは「日本のシビル・ウォー」と言う扱いである。ただアメリカで一般に「The Civil War」といった時、それは殆どの場合「南北戦争」を指す。1861年から4年間続いた南北戦争はその後のアメリカが関わったどの対外戦争よりも死傷者を出した戦争で、特に焦土作戦によって荒廃した南部が戦争前の状態まで回復するのに1世紀近く(つまりWW2後)かかったとも言われていて、多分「シビル・ウォー」という単語の響きは下手な対外戦争より強烈で大きいだろう。
 監督は「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(以下「CA/WS」)」から引き続きアンソニージョー・ルッソ兄弟。この後の「アベンジャーズ3」も監督するそうで今後のMCUをけん引する役割も担う。観た人の中では「これはアベンジャーズ2.5だ」というような意見も観た。確かに「アベンジャーズ エイジ・オブ。ウルトロン(AOU)」で起きたソコヴィアでの出来事からつながっていたり、アイアンマンはじめこれまで登場した、そして新登場する多数のヒーローが出てくることから一見キャプテン・アメリカ単独主演というよりはアベンジャーズの物語という気もする。ただやはり全体通して見るとこれは「キャプテン・アメリカ」の物語でむしろ「アベンジャーズAOU」が「キャプテン・アメリカ2.5」とでもいう感じなのではないかと思ったりした。
 この映画のベースとなっているのはやはり同タイトルのコミックスで基本的には別物語だが、スーパーヒーローの活動を政府の管理下に置くべき、という動きに対してそれぞれ賛成・反対の立場でアイアンマンとキャプテン・アメリカを軸としてヒーローたちが対立するという構造は一緒だ。この場合の内戦はアベンジャーズ内部の分裂抗争、という形をとるが、2つのアメリカ的価値観のぶつかりあいでもある。
 物語的には公開は後だが、先に感想を書いた「バットマンVSスーパーマン」もほぼ同じような話で、超人たちの活躍を称える一方、危険視もしてその活動を制限するかどうかを決めるときに爆発テロが起きてしまう。ただあちらDCEUはあの時点でまだ2作目であり、スーパーヒーローと言うのがほぼスーパーマン一人に絞られるのに対して、こちらのMCUはもう10作を越えている。スーパーマンほどの飛び抜けた超人はいないが(ヴィジョンは匹敵するかも)数は多く、スーパーマンが個人で悩むのに対して、こちらは内紛を伴う。共に現実の国際情勢やアメリカの内情を比喩表現しているからこそ似た内容になるのだと思うけれど、やはりDCEUというかDCコミックスって基本的に架空の都市が舞台なのでMCU(というかマーベルコミックス)に比べると箱庭感が強く、これまで丁寧にその世界を描写して積重ねてきたMCUに対してあくまで架空の世界の出来事という感じ。MCUももちろん架空の国(今回だとワカンダやソコヴィア)なども登場するけれど、基本的に我々の世界と地続きであると錯覚するぐらい現実感が強い。

チーム・キャプテン・アメリカ


 アベンジャーズ国連管理下に置き活動を制限、命令が合った時だけ出動が可能、というソコヴィア協定に反対する立場のヒーローたち。キャプテン・アメリカとその相棒であるファルコン、疑惑の人ウィンター・ソルジャー、スカーレット・ウィッチにホークアイ、そしてアントマン
 かつてはアメリカ軍に所属してナチやヒドラと戦い、現代に復活してからも基本的にはシールドの下で活動していたキャップがこの協定に反対するというのは、一見すると矛盾しているような気もするが、そこには「CA/WS」であった、シールドでさえヒドラ支配下に合ったと言う事実、そしてそのもとでインサイト計画という人類全体を管理下に置くような施策が進められたことで、キャップの国家や組織不信みたいなものは強まったのだろう。シールド再建には反対し(このへんのシールドの再建を巡る物語は「エージェント・オブ・シールド」で)、「AOU」では独立した組織としてアベンジャーズを率いた。日本人的にはどうもこの辺りのキャップの心情は分かリづらく、最後まで見てアイアンマン派の人のほうが多いが基本的にアメリカのヒーローは独立独歩を是とし管理されることに批判的なことが多い。日本だとそもそもヒーロー資格制、登録制になってる設定のものも多いんだけど。逆にかつて国家体制下のヒーローだからかこそ、特定の組織の管理下におかれることの、危険性を身を持って知っているという感じか。
 面白いのは現役でない、かつて軍人やシールドのエージェントだったファルコンやホークアイがこの管理に批判的というキャップに与している点。チームとしてはアイアンマンだが、ブラックウィドウも感覚としては似た感じだ。
 ファルコンは前作で退役軍人として登場し、人工の翼を駆使して空を駆ける。その人工翼は「CA/WS」では強度に不安があったが、今回は劇的に改善されていて、飛行だけでなく身体を囲って銃弾を防ぐ防御盾としても使用できる。コミックスではレッドウィングという鷹を相棒としているが本作では同名のドローンを操る。「アントマン」でも登場し、今回はアントマンをチームに引っ張り込む役でもある。
 ウィンター・ソルジャー=バッキー・バーンズは前作ラストで記憶を取り戻したが、まだヒドラの洗脳の管理下にあり、本作のキーマン、互いに彼を奪い合うという意味でヒロインでもある。映画だけでは我々には想像も及ばないくらいキャップ=スティーブ・ロジャースとの友情は深く、彼の冤罪を晴らすというのが大きな物語としての目的ともいえる。本作はまだソ連が存在した時代1991年のシベリアにあるヒドラ基地で目覚める彼の姿から物語が始まるが、おそらくソ連崩壊後にアメリカのヒドラ(ピアースの管理下)に移動したのであろう。でもJFK暗殺もウィンター・ソルジャーの仕業なんだっけか?彼を冷凍睡眠状態から呼び覚ます暗号みたいなものはロシア語で響きが特徴的でなんとなくそれっぽいものを適当に選んだということだが、妙に格好いい。バッキーとファルコンは新旧のキャップの相棒ということで反目しつつも一緒に行動するシーンも多く、特にキャップがシャロン・カーター(エージェント13)と語り・抱擁するシーンを車の中から二人してニヤニヤしながら見守るシーンは愉快。ツイッターでこの二人をさして「バッキー&翼」と誰ともなく言っていたのがツボ。
 スカーレット・ウィッチは「AOU」でヒドラによって超能力を付与された存在として登場。ラストでは新生アベンジャーズの一員となった。今回は最初の戦闘で無辜の市民の被害を出したことでメディアでは名指しで非難されることに。能力的にはヴィジョンと並びこれまでMCUに登場したキャラクターの中でも最強クラスだが精神的には脆く危ういところも。そのヴィジョンとは不思議な仲(コミックスでは恋人同士だったことも)であり、師匠的存在はホークアイ
 ホークアイアントマンはどちらかと言うとゲスト出演的な感じで、引退したはずのホークアイはキャップの要請を受け軟禁状態だったスカーレット・ウィッチを救い出しアントマンを連れて合流。物語的には大きく関わってこないが戦闘などでは一番の試合巧者ぶりを見せ活躍。精神的には一番のタフ野郎でもある。アントマンは「アントマン」でファルコンと戦ったが、その時の縁でスカウト。彼自身としての心情は特に語られていないが、元々アウトロー気質であるし、ピム博士から吹きこまれたのか、「スターク」にいい印象を持っていないようだ。後は純粋にキャップに憧れを持っていて、そのキャップに頼まれたら嫌とは言えないッて感じでもあるのでしょう。コスチュ−ムは基本的に「アントマン」から変わっていないが、マスクの顎部分がちょっとシャープになってよりヒロイックに。そして!そのまま巨大化、ジャイアントマンになります!チームでは正体が特に有名人ではないため捕まった後、トニーに「君は誰だ?」って言われるシーンはシリアスな中のちょっと笑えるシーン*2

【追記】キャスト

 当然のようにキャストは引き続きの出演なので、レギュラーキャストに触れるのを忘れてしまいました。もちろんキャプテン・アメリカクリス・エヴァンス。素顔も出てくるけれど、クライマックスでもちゃんとマスクを付けたままなのはポイント高いですね。セバスチャン・スタンアンソニー・マッキーの新旧相棒もそのまま。スカーレット・ウィッチのエリザベス・オルセンは今回は相棒(AOUGODZILLAで共演したアーロン・テイラー=ジョンソン)はいないけれど儚くも芯の強いところを好演。トニーに「君は誰だ?」と言われたアントマン=スコット・ラングを演じたポール・ラッドはやはり一人だけ庶民派というか他のヒーローが何かしらエリートっぽいところがあるのに比べるととても親しみやすく。初参加だけどチームのムードメイカー的存在に。
 ホークアイのジェレミー・レナーとかはもう見ていて安心感しかないですね。

チーム・アイアンマン


 ソコヴィア協定に賛成の立場にたつヒーロー。アイアンマン=トニー・スタークを始めとして、彼の相棒であるウォーマシン=ローディ、アベンジャーズの広報的な役も背負っていたブラックウィドウ、元はトニーの開発した人工知能ジャーヴィスで最強のアンドロイド、ヴィジョン。そしてトニーがスカウトしたスパイダーマン。ここにウィンター・ソルジャーを父の仇と狙うワカンダの新国王ティ・チャラ=ブラックパンサーが加わる。
 トニー・スタークはアベンジャーズのオーナー的立場でもあり、一番の有名人。政府とのコネも持っている。ただこれまでの女好きの自由人というイメージから、本作のヒーローも管理下に置かれるべきだとする彼の立場は相容れないようにも思えてしまう。トニーはああ見えて精神的には脆いところもあって、それが「AOU」でのウルトロン開発につながったりしたのだが、本作でもソコヴィアで死んだ子供を持つ親から直接非難を受けたことで協定に賛成の立場を取る。「アイアンマン1」でそうだったように、現実を見せられて改心する形だ。僕は以前TV出演した「熱中スタジアム」の中で「アイアンマンは小さな犠牲で大きな犠牲を回避できるとなれば、小さな犠牲を見捨てる気がする」というようなことを言ったが、確かにそういう部分はあった。ただ彼自身今回はパパスターク(ハワード・スターク)の息子としての彼の葛藤も描かれていて、大局を見ているようで彼自身小さなことに囚われている。
 ウォーマシン自身の心情は特に描かれないが、最初のほうでソコヴィア協定への賛否をめぐりファルコンと議論するシーンで元軍人と現役軍人の立場の違いみたいなのが見えて興味深い。ローディは割りとヒーローというより軍から出向してアベンジャーズにいるという意識が強いのだろうか。今回は「アイアンマン3」で見せた星条旗カラーのアイアンパトリオットではなく従来の銀色のウォーマシン。基本的にはアイアンマンのスーツと同等だが、より重武装という感じなのは相変わらず。またキャップとファルコン、バッキーほどではないが、トニーとローディの友情も描かれていて、ローディがこの内戦での唯一の重傷を負った時の怒りの姿は印象深い。
 アベンジャーズに対する全世界の一般人の意向を尊重するとでもいうべき形なのが、ブラックウィドウ=ナターシャ・ロマノフ。彼女自身はキャップに近いがアイアンマン側となる。
 ヴィジョンは冷静で自愛にあふれているようでいざとなったら冷徹にもなれる人。能力的には最強クラスだが、やはり人間に興味を持ちつつ戦闘では躊躇はしない感じ。
 新ヒーローブラックパンサーはワカンダの王子ティ・チャラとして登場し、父が殺された後は新国王、そして復讐の鬼ブラックパンサーとなりウィンター・ソルジャーを追う。他のヒーローと比べてもかなりスマートなそのコスチュームはワカンダでのみ採れる鉱物ヴィブラニウムを織り込んでいてしなやかにして頑強。ブラックパンサーといえばアメリカの黒人過激派組織ブラックパンサー党だが、このキャラクターとは黒人ということ以外特に関係はない(ただし組織の発足とキャラクターのデビューは同年!)。
 スパイダーマンはチームキャップ側におけるアントマンのようなゲスト的出演で特に事情を知らず憧れのアイアンマンにスカウトされて連れて来られたという感じ。彼については後述。

【追記】キャスト

 トニー・スタークはもちろんロバート・ダウニーJr。最初に登場するシーンでは発明品BARF(バーフ=脳の海馬部分を刺激してトラウマとなっている記憶を癒やす)のデモンストレーションで出てくる回想シーン?(実際に映像として多くに人に見せている)で若い頃のトニーとして出てくる。多分これはロバート・ダウニーJr本人が演じてCG加工で若返らせたものだろう。同じようなことをやった過去の映画(トロン:レガシー等)に比べると違和感は薄まっているけど、それでもちょっと変な感じ。あれ劇中ではどういう設定なんだろう?リアルなCG再現ってことなのかな。ちなみに本編では全然絡んでこないこのBARFなる発明品。もしかしたら今後、ウィンター・ソルジャーの洗脳を完全に解くきっかけみたいな感じでまた出てくるかも。
 ローディはドン・チードルドン・チードルは「アイアンマン2」からテレンス・ハワードに替わってローディ役を務めているが、その生真面目そうな表情は、同じメインヒーローの黒人の相棒という立場であるファルコンとの対比になっていてよかった。これが飄々としたテレンス・ハワードだったら似た感じになってしまっていたかも。ヴィジョンは引き続きポール・ベタニー
 新キャラであるブラックパンサー=ティ・チャラにはチャドウィック・ボーズマン。彼も当然黒人キャストだが、アフリカの王国の王子/国王という役柄だけあってちょっと貴族的。しなやかに優雅だが、お坊ちゃんらしい茶目っ気も。僕はこれが初認識(キング・オブ・エジプトではトート神!)だがとても魅力的だ。

その他のキャラクター

  • サディアス・“サンダーボルト”・ロス将軍

 国務長官。かつて「インクレディブル・ハルク」で執拗にハルク=ブルース・バナーを追っていた人物。捕まえたアボミネーションをトニー経由でシールドに持ってかれたこともあり、あまりヒーローのことはよく思っていない。(主役であるハルクの役者(エドワード・ノートンマーク・ラファロ)が変わったこともあって)MCUの中でも半ば忘れられてた「インクレディブル・ハルク」から再登場のキャラクター。演じるのも同じウィリアム・ハートでこういうのは嬉しい。今回はハルクは言及されるだけで登場はしないが是非マーク・ラファロのハルクとも再会して欲しい。「インクレディブル・ハルク」もいくつかの続編への含みが投げっ放しで終わってるからなあ。

 元シールドのエージェントで「CA/WS」ではキャップの警護を担当していたが、ラストでCIAに異動。何かとキャップに便宜をはかる。「ファースト・アベンジャー」に登場したペギー・カーターの姪であることも分かりキャップとの仲はより深いものに。そのペギーは本作の中で亡くなる。若いころの活躍はTVシリーズ「エージェント・カーター」で。

 カーターの上司である対テロ共同対策本部の副司令官。姓は一緒だがロス将軍とは特に関係ない模様。小柄で童顔な小役人といった風情だが、やけに威圧的で嫌な上司の典型的なタイプ。演じるのはマーティン・フリーマンで、ちゃんと声優も森川智之。この後「ドクター・ストレンジ」でベネディクト・カンバーバッチMCUに参戦するのでもしかしたら「SHERLOCK」「ホビット」に続く共演あるかも?

  • ハワード・カーター(訂正!ハワード・スタークでございました。パパスタークはツタンカーメンの墓を見つけた人ではございません!)

 パパスターク。今回は1991年など回想シーンで登場。シールド設立の立役者の一人。自分も若い頃は天才の遊び人だったが、それを上回る天才兼遊び人である息子トニーとはあまりうまくいかないまま死別することになる。トニーにとっては最後にはいつも生きる指針を与えてくれる人物で(「アイアンマン2」参照)あったが、今回その最後がウィンター・ソルジャー(正体であるバッキー・バーンズとは顔なじみでもある)による暗殺だったことが判明。キャップとアイアンマンの亀裂を決定的なものとする。演じるのは「アイアンマン2」「アントマン」でハワードを演じたジョン・スラッテリーで、彼は「エド ボーリング弁護士」というドラマで主人公エド(演じるトーマス・キャバナーはTVシリーズ「THE FLASH/フラッシュ」でハリソン・ウェルズ博士=リバース・フラッシュを演じている!)の恋のライバルとして登場した。彼の役はエリートの若い校長だったが、彼がヒロインに自分が完璧な存在ではない、という証拠を「子供の時、アクアマンがデビューした時にすぐにスーパーマンの人気を抜くと確信したが、結局そんなことはなかった」ことで示すシーンが印象に残っている。彼の若いころ(ドミニク・クーパー)の活躍は「エージェント・カーター」で。

  • クロスボーンズ

 ブロック・ラムロウ。元シールドの戦闘員と思わせつつ実はヒドラの戦闘員だった人。「CA/WS」ラストで火傷を追い、クロスボーンズとなることを予測させたが、本作冒頭で登場。コミックス的な悪役というよりは多少シンボル化しているが実際の戦闘兵士という感じに。残念ながら本作で退場となるが、わずかながらインパクトは強い。

  • ヘルムート・ジーモ

 本作のメインヴィラン。コミックスでは二代目のバロン・ジーモでナチスに源流を持つ典型的な悪役なのだが、本作では名前以外設定は全く新しくなっていて本作で起きる出来事の黒幕ながら同情の余地が十分にある人物に。このコミックスと全然違う、というのは「アイアンマン3」のマンダリンと一緒なのだが、何故かあちらは許せなくて、こちらは許せる。それは単に作品の出来もあるのだがなんといっても描写の積み重ねが丁寧で正体が判明した時にはすっかりその新設定で受け入れているという脚本の旨さもあるだろう。マンダリンの時はコミックスのイメージで期待させておいて登場したと思ったら全然違うただのおっさんだった。あれではコミックスのファンは怒るって。
 ジーモはソコヴィアの特殊部隊出身の兵士であったが、「AOU」によって家族を失う。そしてその復讐としてアベンジャーズを内戦へ導くべく暗躍するのだ。彼とトニーが最初のほうで出会ったソコヴィアで息子を亡くした婦人は同じ立場である。
 本作実はスーパーヒーローにはいくらでも超人が登場するが、いわゆるヴィランにおいては超人が一人も登場しない。クロスボーンズも優秀ではあってもただの常人だし、ジーモも自身は超人でもなく、超人を操ることもない。途中でバッキーによって1991年に超人血清が盗まれそれによって新たに5人の超人兵士が創造されたと語られ、ジーモの目的もそれかと思われた。僕は旧ソ連の超人兵士ということでまさかオメガレッド*3登場か!と期待したりしたのだが、結局彼らは復活せぬまま死亡する。しかしヴィラン側に超人が一人も登場しないからこそこの物語のテーマは際立つ。ジーモはヒーローの内紛を演出し、彼らはどのヴィランのせいでもない、彼ら自身のせいで崩壊するのだ。
 演じるのはダニエル・ブルーリュ。「ラッシュ」でも見せた誠実で理知的そうな見た目を生かしつつ、特に過去が語られる前からその悲しみを背負った演技は見どころ。

 終盤。ジーモはあるVTRをトニーたちに見せる。それは1991年のウィンター・ソルジャーの仕事。彼の暗殺のターゲットはハワード・スターク。両親の死とその敵を目の前にし、トニーはバッキーとそのことを黙っていたキャップに攻撃を仕掛ける。
 この予告編で見られた「友のために」「私も友だろ」のシーンは予告編と本編の印象はまるで逆で、本編では「彼は友人だ」「ボクもそうだった」となり、予告編ではトニーがキャップを説得する感じだったこのセリフは、本編ではむしろトニーのキャップへの決別宣言とでもいう感じに。

SPIDER-MAN WILL RETURN.
 本作ではスパイダーマンが登場する。「スパイダーマン」はMCU20世紀FOXの「X-MEN」と並んでソニーが映画化権を持っていて独自にシリーズを重ねていたが「アメイジングスパイダーマン」シリーズは残念ながら2作で終了。張り巡らされた伏線も回収できずに終わってしまった。まあスパイダーマン=ピーター・パーカーの物語としては完結しているので良しとするが個人的には残念。その後スパイダーマンソニーに権利を残しながらもMCUにも参加するという形をとることとなり本作への出演と相成った。ストーリーは再び仕切り直しとなり、新しいスパイディを演じるのはトム・ホランド。20歳だがもっと若く見えて、これまでのピーター・パーカーでもかなり若い。設定も高校生になったばっかり、といったところか。すでにスパイダーマンとしてデビューしていて、NYで自警活動してるところをトニーに見初められた。この時のスーツはいかにも手作りのスーツと言った感じだが、きちんと登場した時はスターク製のいつものスパイディスーツを着用。マスクの眼の部分が大きくなったりするのはズーム機能かな。個人的にはこれまで実写で登場したスパイディのスーツは「アメイジングスパイダーマン2」のものが一番好きなのでちょっと残念。
 ピーターの周辺人物ではメイおばさんが登場して演じているのがマリサ・トメイ!ピーター同様、かなり若返った。サム・ライミ版→マーク・ウェブ版でもかなり若返った印象があったのに本作では普通にトニー・スタークの相手となってもおかしくない感じ。ライミ版のメイおばさんは完全に老女で夫(ベンおじさん)が亡くなった後は働くのは辛い年齢だったので銀行に融資を求めたり、家を処分したりしていた。「アメスパ」のメイおばさんは良き主夫だったが夫を亡くした後に生活のため高齢で若い子に混じって看護学校に通いその苦悩をピーターに訴えたりしていた。それに比べると今度のメイおばさんは自分の人生を楽しんでいる感じがする。ベンおじさんが存在するのか、したとしてまた亡くなってしまうのか分からないが、「シビル・ウォー」の描写を観る限り生活に男の影を感じさせないというか、ベンおじさんどころかそもそも男に頼ることなく生きていきたオーラがある。ブティックでも飲み屋でもなんでもいいから自分の店を持っていてそれを繁盛させていそう。「スパイダーマン」の単独主演新作「スパイダーマン ホーム・カミング」が現在製作中。もうさすがに3度めだからオリジンはにおわせる程度にして最初からガンガン活躍して欲しいな。時系列的に「シビル・ウォー」のあとになるのだろうし。あと実は何気にMCUの作品としてはニューヨークをホームタウンとする初のヒーローの映画である。MCUの方からもなんかしらゲスト出演はあると思われ。

 一番の見所はやはりドイツの空港でのチームキャップとチームアイアンマンの激突で、コミックスにおける見開きを意識したという互いの勢力が綺麗に並ん後、一斉に戦うシーン含め興奮しっぱなし。僕が初日か二日目かそのくらいに劇場で観た時は、両隣が中学生ぐらいの男子グループだったのだが、このシーンで「かっけぇえ!」とか「うぉおお凄ええ!」みたいな感嘆の声を上げていた。うるさいといえばうるさかったのだが、ただのお喋りではなくそういう作品に感情を揺り動かされての歓声は(もちろん限度はあるけれど)いいですね。僕だってなんなら叫んでキャップを応援したかったもの。僕はもちろんどっちにもある程度理解を示した上でどっちか選ぶなら断然キャップとチームキャプテン・アメリカです!
 吹替もレギュラーはそのまま。米倉涼子宮迫博之溝端淳平の3人も回数を重ねるごとにうまくキャラに馴染んでいると思います。もうこのまま変更はせず、きちんとシリーズに付き合って欲しい。ただやっぱりこの3人が、主演の中村悠一藤原啓治を差し置いて最初にクレジットされるのはちょっと納得いかないですけどね。むしろゲスト出演のタレント吹替でなく、一声優としてきちんと扱うのであればちゃんと役の重要度の順でクレジットするのが彼らに対しても礼儀だと思います。
 MCUの今後としてはもう予告編もバンバン流れている「ドクターストレンジ」が2017年1月に控えていて「マイティーソー ラグナロク」「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーVOL2」そして「スパイダーマン ホーム・カミング」と続く感じ。勝手に2018〜2019年の「アベンジャーズ3」前後編でちょうど10年だし一旦区切りつけるのかな?と思ったけれどどうやらまだまだ続くっぽいです。
 キャップの単独主演映画としては一応本作が区切り。もちろんこれはキャプテン・アメリカがもう登場しないということではなく、今後は他のキャラクターの主演映画や「アベンジャーズ3」で登場するということです。物語はこのあと宇宙へ向かうこととなるので、地球をメイン舞台にした政治的な物語としては本作がクライマックスだと思われます。
スタン・リー御大はラストトニーにキャップのメッセージを渡す役として登場。
EXCELCIOR!

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ-オリジナル・サウンドトラック

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ-オリジナル・サウンドトラック

シビル・ウォー【限定生産・普及版】 (MARVEL)

シビル・ウォー【限定生産・普及版】 (MARVEL)

*1:スター・トレック:ビヨンド」には期待

*2:アニメの「ジャスティスリーグ」でも似たような(フラッシュと意識を取り替えたルーサーが、さあ正体を見てやると洗面所でマスクを取るもフラッシュの正体ウォーリー・ウェストはスーパーマンクラーク・ケントバットマンブルース・ウェインと違って素顔が有名人ではないためルーサーが「誰だこいつ?」となる)シーンがあった

*3:ただ彼はどちらかと言うと「X-MEN」世界の住人だろうなあ