The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

黙示録の先の希望 X-MEN:アポカリプス

We are livin', livin' in the eighties
We still fight, fightin' in the eighties
TOUGH BOY」byTOM☆CAT

 我々は1980年代に生きている!「ゴジラ」の新作と「ゴーストバスターズ」の新作が同時期に公開されるあの84年や89年と同様*1
 2000年に始まった映画「X-MEN」シリーズも本伝5作、外伝3作(FFを除外)を数え、時代をさかのぼって始まりを描く「X-MEN ファースト・ジェネレーション(以下FC)」から始まる展開も63年、73年と舞台を変遷し今回は83年が舞台。一応のシリーズ最終作を謳う20世紀FOXマーベルコミックスユニバース、「X-MEN:アポカリプス」を観賞。

物語

 紀元前3600年のエジプト。最古にして最強のミュータント、エン・サバー・ヌールは自身の肉体的な死を間近に迎えて新たな肉体へ、その魂を移そうと試みていた。ピラミッドの中で儀式が始まった時、彼に従わない裏切り者が儀式を妨害。彼の忠実な部下四騎士がエン・サバー・ヌールを守るもピラミッドごと沈み彼は長き眠りについた。
 1983年、73年の事件によりミュータントの存在が広く知れ渡った。ミスティーク=レイブン・ダークホルムはミュータントの英雄となったが彼女はそれをよく思わず虐げられたミュータントの保護活動を、マグニートー=エリック・レーンシャーはポーランドで新しい家族とともにひっそりと自分の過去を隠し暮らしていた。そしてプロフェッサーX=チャールズ・エグゼビアはやっと念願のミュータントの子供たちのための「恵まれしものの学園」を経営、学校運営も軌道に乗ってきていた。そんな時かつてチャールズたちと行動を共にしながらも記憶を消去されたCIAのモイラ・マクタガートはエジプトで謎のカルト教団を負っていた。彼らが地下で儀式を行っている場に潜入。太陽の光が差しこみ、伝説のミュータント、エン・サバー・ヌール=アポカリプスが復活する。彼は目覚めて最初に出会った少女ストームを新たな四騎士の一人とするとこの世界を「適者生存」ミュータントの世とするべく活動を開始する。
 サイコキネシスも使えるテレパスであるジーン・グレイが夢に見たビジョンからアポカリプスの存在を感じ取ったプロフェッサーXは再びモイラと接触する。ミスティークも新たに保護した若きミュータント、ナイトクローラーを連れて学園に戻ってきた。
 ポーランド。エリックはその正体を暴かれ家族を殺される。復讐に燃えるマグニートーの前に現れたのはアポカリプスだった。アポカリプスの四騎士の一人となったマグニートーへチャールズがセレブロで話しかける。しかしその様子を察知したアポカリプスはチャールズの能力を奪おうとするのだった…

前作の感想はこちら。

 そういえば私事ですが、約一年ぶりにblu-rayが見れる環境が復活したのですよ。で、買って見てなかった映画なんかをここ最近ずっと見たりしていたのですが、その中には「X-MEN フューチャー&パスト(以下DoFP)」のローグ・エディションもあってやっとそちらを見たのです。ので、ちょっと「ローグ・エディション」の感想を。
 劇場公開版では、暗黒の2023年ではアイスマン=ボビー・ドレイクと恋人関係にあったのは「X-MEN ファイナル・デシジョン(以下LS)」で関係が深まったシャドウキャット=キティ・プライドだったけれど、ウルヴァリンが改変した希望に満ちた2023年ではアイスマンと付き合っていたのはほんの一瞬だけ登場するローグだった。この展開は「DoFP」のみ見た人にはちょっとわだかまりが残る展開だっただろう。もちろん2つの2023年には直接的なつながりは無くなったので人間関係が同様である必要はないのだが、ちょっとすっきりしない。またローグを演じていたアンナ・パキンは最後に一瞬出演しただけなのにエンドクレジットでは単独で載っている。実は本来ブライアン・シンガーが望んだバージョンがあった、ということでそれが「ローグ・エディション」である。
 劇場公開版はウルヴァリンを過去に送る(2023年のローガンの精神を過去1973年のローガンの肉体に移す)役割を負ったのはキティだが過去のことで錯乱したウルヴァリンが暴れた時に傷を負う。劇場公開版ではその後もキティが一人我慢するが「ローグ・エディション」ではここでローグの出番となる。キティの力を奪い代わりにウルヴァリンのタイムトラベルを行う者として。ローグはすでに死んだものと思われていたが、実はプロフェッサーXも感知できない場所=エグゼビア邸のセレブロの中に囚われている事が分かる。ローグを救出するためにアイスマンマグニートーが向かう、という展開。このシーンは1973年にマグニートーが自分のコスチュームを奪還する劇場公開版でもあったシーンとカットバックで出てくるので対になっていることが分かる。そしてローグがキティに代わる。
 他にも細かい追加シーン、変更シーンなどがあるので、劇場公開版と見比べるのも一興。本来の監督の意図するところはこちらのほうがよく分かり、特に旧三部作の方のエンディングとしては「ローグ・エディション」を見ておいたほうが良いだろう。これだと希望の2023年でボビーとローグが付き合っている描写もそんなに変な感じなく受け入れられると思う。
 あと「ローグ・エディション」はミスティークの声が「FC」から引き続き牛田裕子氏に変わっていて(同時収録されている劇場公開版は変わらず剛力彩芽)、最初からこっちにしとけよ!と思ったりした。劇場で吹き替え版観た時はもちろん違和感はあったけど、そんなに下手ではなかったので彼女の声優活動自体は否定しないし。今後大いにやって演技に研鑽を加えて欲しいと思うけれど、やはりシリーズ物は決まった役者で一貫して欲しいと思う次第。「アポカリプス」でもミスティーク役は牛田裕子です。

 さて、本題である「X-MEN:アポカリプス」。一応新三部作の完結編ということになっている。ただツイッターのTLなどを見たところ賛否両論といったところ。パッと見た感じ、旧三部作に特に思いれなく「FC」からファンになった人はチャールズとエリックの友情(あえてBLとは言うまい)物語として見る傾向があり、その点ではどうも本作には不満、といった様子。一方で旧三部作からずっと見続けた場合、完結編、それもブライアン・シンガーの手による物として見事作り上げた感慨深い作品、という感じか。僕はどちらかと言うと後者。「FC」も好きだけれどこの実写版X-MENシリーズはあくまでブライアン・シンガーの物、という意識が強い(僕がシリーズの中で一番好きな作品は「X-MEN2」)。後はコミックスからの再現みたいなシーンも多い。コミックスが日本に本格的に入ってきた頃(ジム・リーX-MEN創刊号!)から読んでいて、映画も最初から追いかけてきた者にはご褒美でもある。ちなみにシリーズでも悪名高い「LS」だが、僕も公開当時からずっとシリーズでも一番嫌いな、なんなら許せない作品という感じだったんだけど、「DoFP」の登場により時系列的な最終作ではなくなったことで、長いシリーズの橋渡し作品としてああいう物があってもいいかな、と思えるぐらいの位置づけにはなりました。
 キューバ危機、ベトナム戦争のパリ和戦条約など各年代の重要な出来事を背景としてきたが、本作1983年は特になし。ただ過去からもずっと続いてきたアメリカとソ連に代表される西側と東側の冷戦による最終戦=核戦争の危機が最高に高まっていた時期でもあるだろう。ところどころで大統領がタカ派レーガンであることに言及されたりする。そんな起きるかもしれない核戦争への恐怖、人類全体への絶望感、そんなものが背景にある(後は単に80年代ブームもあると思う)。本作の世界観特有のミュータントに関して前作のクライマックスの出来事で一般にもミュータントの存在が認知されたことに。大統領を襲ったのもミュータント(マグニートー)なら救ったのもミュータント(ミスティーク)ということで最初の「X-MEN」「X-MEN2」ほどホモ・サピエンス(人類)によるホモ・スペリオール(ミュータント)への差別はひどくないのかもしれないが、その辺はまだこの後の歴史によって、なのかもしれない。
 それでは例によって各キャラクターごとに簡単に。

X-MEN

 今回はついにチャールズがつるっぱげになる!「FC」でキャスティングされた時勢い余って自分て剃って、でもまだその予定ではなかったため全編カツラで撮影したマカヴォイだが、念願叶った。「FC」ラストで車椅子になり、「DoFP」では薬で歩けるようになったもののテレパスとしての能力は使えない、という感じだったが、今回は基本ずっと車椅子で、その辺でも本来のプロフェッサーXに近い感じに。マグニートーにコンタクトを取ろうとしてアポカリプスにその能力に目をつけられる。アポカリプスの新たな器となる儀式の最中に髪の毛が抜けていくという仕様。
 後半は囚われた状態だったりするけれど、前半は結構アクティブに行動し、特に過去に記憶を消したモイラ・マクダガードに対してはかなりお茶目な様子も伺える。

 新シリーズでは主人公格のレイブン・ダークホルム。前作で大統領を救ったことでミュータントならず一般の人々にも英雄扱いされているが、本人はそれが気に入らず、地道に虐げられているミュータントの救助活動を行っていた。ナイトクローラーを救う過程でマグニートーの身に起きた悲劇を知りチャールズのもとへ。ナイトクローラーと一緒にいるシーンは色々と興味深い。多分この実写シリーズでは反映されていないと思うけれど、コミックスではミスティークとナイトクローラーは親子(父親は「FC「」で出てきたアザゼル)。後は「X-MEN2」でもこの二人は印象深い会話を残していた。「FC」ではミスティークが悪に走った(マグニートーの側についた)きっかけを描き、「DoFP」では旧三部作と違う道を歩むに至った経緯を描いたが、本作最後では「恵まれしものの学園」の教師、若きX-MENの教官としての姿を描いたことで、明確に旧三部作のミスティークとは別者といえるだろう。

 新三部作では皆勤賞でチャールズ、エリック、レイブンに続く四番手。能力を発揮するときだけ青いけもじゃになる、という割と都合のいい感じではあるが、今回は学園の教師としても活動。プロフェッサーXの女房役として堅実に役割を果たす。

 コードネームはサイクロップスだが、本作ではまだその名前は出てこない。本来ならX-MENという物語の主人公、なのだが、実写映画シリーズではなにかと損な役回りを与えられてきた人物。高校で突然能力が発現しオプティックブラスト(目からビーム)を出すようになる。この能力は基本的に制御不可能で目を開いている間ずっと発射される。兄アレックスのつてで恵まれしものの学園へ。そこでジーンと運命の出会いを。アレックスとの関係はコミックスでは兄弟の兄貴だが、本作では歳の離れた弟に。両親も出てくるが一般人のようだ(コミックスでは宇宙海賊)。

 旧三部作のマドンナ。「北斗の拳」で言うところのユリア的存在。テレパステレキネシスの2つの能力を持つが実は「X-MEN2」や「LS」でも描かれたとおり最強のミュータントの一人であり、本作でもその一端は垣間見ることができる。

 本名カート・ワグナー。旧三部作のタイムラインより20年ほど早くX-MENと会遇することに。能力はもちろん性格も外見デザインも「X-MEN2」に登場した時とほぼ変化はなく、最初にこの「アポカリプス」でナイトクローラーが再登場すると聞いた時は、ブライアン・シンガーは本当にこのキャラクターが好きなんだなあ、と思ったものだ。ちなみに僕もナイトクローラーは大好きなキャラクターです。「X-MEN2」ではアラン・カミングが演じていたけれど、当然本作ではもっと若く描写されていて、コディ・スミット=マクフィーという人が演じている。かなりひょろっとした感じ。

 前作「DoFP」で初登場。飄々とした若きミュータント。前作でもマグニートーと関係があるっぽいことは示唆されていたが、本作では正式に息子と判明。時期的にはエリックがまだチャールズと出会う前、の50年代後半から60年ぐらいにかけてってことだろうか。演じるエヴァン・ピーターズの外見に劇中での時間経過(約10年)が反映されていないため具体的な年齢は(彼にかぎらず)判明しないのだが「DoFP」の時点でもしかしたらまだ10代前半だったりするのだろうか?そしてクイックシルバーといえば「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」の方でも登場し、双子の妹ワンダ・マキシモフ(=スカーレット・ウィッチ)が生き延びてその後のMCU作品にも出ているけれど、一応この20世紀FOXX-MENユニバースのクイックシルバーにも出てこないだけで双子のワンダが存在するそうです。
 前作のアクションシーンも最高だったが、本作の彼の活躍シーンもある意味この映画の一番の見所。

  • その他

 他にはウルヴァリンとアレックスが登場。ウルヴァリンはウェポンXの名前でストライカーのもとミュータント兵器として改造(アダマンチウム注入)されている。囚われた仲間を助けるべくジーンやスコットが行動を起こす時に登場。意識の混乱したローガンは基地内で大殺戮を行うのだった。この一連のローガンの登場シーンはバリー・スミスというアーティストの傑作コミック「ウェポンX」を元にしており、ローガンのビジュアルはかなり忠実に再現されている(違いはコミックスは下半身も裸だが、映画は下着履いてるところくらい)。演じるのはもちろんヒュー・ジャックマン。本作だけ見ているとかなり唐突な登場ではあるのだが、これは人気キャラクターのその人気にあやかってむりくり出したというよりは、この後続く新作「ウルヴァリン」への橋渡し、そして旧三部作でも見られたスコット、ジーン、ローガンの三角関係を彷彿とさせる目的もあるのだと思う。またジーンがローガンの精神を宥めることでジーンの癒し手としての強調も行われる。
 アレックス・サマーズはハボックとして前2作に引き続き登場。ミュータント能力が発現した弟スコットを学園へ誘う。ビーストと共にプロフェッサーXを支えるが今回悲劇の死を迎えることに。スコットのところでも述べたとおり本来はスコットの弟、だが映画では先に登場したこともあり兄という立場になっている。演じるのは引き続きルーカス・ティル。前2作では短髪であったが、今回は長髪に。また設定的には20年は経っているはずなのに全然老けておらず(彼にかぎらずこの映画は特にメイクなどに寄る年齢経過を表現していない)、長髪になったためかやけに中性的な美男子になっている。
 スコットやジーン、カートとつるむ若いミュータントとしてジュビリーも登場するが個人的にはジュビリーにはもっと主役級の活躍をして欲しかったのでちょっと今回の扱いは残念かな。

アポカリプスと黙示録の四騎士

  • アポカリプス

 本名エン・サバー・ヌール。最古にして最強のミュータント。古代エジプトで神として君臨していたが裏切りによって長期間の眠りにつく。83年に目覚め「適者生存」のもとミュータントに拠る支配を行おうとするが。コミックスでもX-MENの宿敵、マーベル全体でも最強のヴィランの一人だろう。設定的にもデザイン的にもあまりにコミックスらしさ全開なので実写での登場はないだろうと思っていたけれどついに登場!映画では次々と身体を入れ替えることで長寿を保ち、かつその入れ物がミュータントであった場合、その者の能力も獲得するという設定。コミックスでは分子を自在に操る能力で巨大化したりしていた。映画ではもうちょっと能力は弱いものになっているだろうか、予告編でも出てきた巨大化してチャールズを抑えこむシーンは二人の精神世界、アストラル空間での出来事で現実のものではない。この描写にはちょっとシャドウキングの要素も入っているのだろうか?
 前作の感想の最後の方でも書いたとおり、僕は最初に次回作でアポカリプスの登場を知った時はコミックスの「エイジ・オブ・アポカリプス」を連想したのだが、本作では現代(1983年)を舞台としタイムトラベル的な要素はなし。アポカリプスが核兵器を全て宇宙に追いやるシーンは「スーパーマンⅣ/最強の敵」でスーパーマンが世界中の核兵器を太陽に破棄するシーンのパロディかな、とも思ったがどうなんだろうか。もちろんスーパーマンの方は賞賛されるのに対して、アポカリプスの行為や人類への脅威とみなされるのである。
 演じるのはオスカー・アイザック。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の爽やかパイロットとは思えぬ怪人ぶり。ちなみに感想書いてませんが、この間には「エクス・マキナ」の変態科学者なんかも演じてます。「るろうに剣心」の鯨波兵庫の元ネタともなったデザインはもちろん実写にして違和感がないようにアレンジされているけれど、概ねコミックスの雰囲気をそのままに描写されコミックスの映像化としては期待に応えたものに。もうちょっと普段から巨漢として描写されていたら完璧だったかな。

 エリック・レーンシャー。虐げられたミュータントの戦うカリスマ。前作の後ポーランドで過去を隠し新たな家族を見つけひっそりと暮らしていたが、ひょんなことから正体がばれ家族も失うことに。そしてアポカリプスにスカウトされ彼の四騎士の一人となった。このポーランドでの出来事は元々のマグニートーのオリジンエピソードの一つ。ナチスに拠るユダヤ人収容所での同胞と家族を殺されたエリックが戦後、今度はミュータントということでふたたび家族を殺されヴィランとなるきっかけとなる。今回はそのポーランドの家族に加え本人も知らないクイックシルバーという息子、更には擬似家族とでも言うべきチャールズやレイブンとの関係などで割りとふらふらしてる印象は強い(その点でもFCからファンになった人には不満のようだ)。ただ作者によってヒーローともヴィランとも描かれる彼の複雑な立場が物語を動かしていることも確かなのだ。ラストは最初の「X-MEN」のラストシーンと対になる台詞のやりとり。

  • ストーム(アレクサンドラ・シップ)

 オロロ・マンロー。後に強力なX-MENのリーダー的存在となる彼女もまだここではその日食うのもにも困るような生活をしている少女。エジプトでその力を使って食料を盗むような生活をしていたところをアポカリプスと出会い彼の四騎士の一人となった。ミスティークを英雄としてあこがれを抱いており、後にアポカリプスから離反する事となる。彼女のモヒカンに近い容姿、エジプトで盗みを働いて暮らしていた、などもコミックスに比較的忠実で他の二人と違いこちらは後にハル・ベリーが演じることになるストームと同一人物である。

 黙示録の四騎士。精神力を実体化したサイ・ブレードを使う女戦士。コミックスでは本名ベッツィ”エリザベス”・ブラドック。イギリスのヒーロー、キャプテン・ブリテンの妹でプロフェッサーXやジーン程ではないがテレパスでもある。元々は白人だったのだが、とある事件で日本人(カンノン)の身体になってしまった。これまで実写映画シリーズに登場したキャラクターの中でもパトリック・スチュアートのプロフェッサーXを除けばそのコスチュームが最もコミックスに忠実なキャラクターで、予告編などで最初に見かけた時は、ついにここまで来たか!と感慨深く*2
 外見はコミックスに忠実、ではあるけれど、彼女と次のエンジェルに関しては映画の場合本名が設定されておらず、コミックスそのままのサイロックやエンジェルが登場した、と言うのとはまた別のよう。

  • エンジェル

 翼の生えたミュータントだったが、その美しい翼に怪我を負い、やけになっているところをアポカリプスから金属の翼を与えられ四騎士の一人となった。こちらも原作コミックスではX-MENのオリジナルメンバーでもあるウォーレン・ワージントン3世ことエンジェルで金属の翼を与えられ彼の四騎士の一人となった経緯もほぼそのまま採用(ただコミックスでは肌の色も青くなっている)。黙示録の四騎士はデス(Death)、ファミン(Famine)、ペスト(Pestilence)、ウォー(War)の四人からなり、その都度構成は入れ替わるのだが、エンジェルはその中でもデスとして名高い。最もこのデスはウルヴァリンガンビットもサイロックもバンシーも就いていたことがあるのだけれど。映画では特に四騎士の中のどの役割かは語られないけれど、ことエンジェルに関してはデスで間違いないかな、と。ただこちらもサイロック同様本名は設定されておらず、いわゆるオリジナルX-MENであるウォーレンとは似て非なる別人といったほうが良さそう。

  • その他

 ミスティークがナイトクローラーを伴いやってきた偽造パスポートを作ったり、サイロックの元の雇い主だった裏社会に生きるミュータントの何でも屋みたいな役割だったキャリバックもコミックスでは黙示録の四騎士の一人(やはりデス)。今回はアポカリプスには相手にされず。
 古代エジプトでアポカリプスに仕える四騎士はビーストタイプやフォースフィールドを使うタイプなどファンタスティック・フォーのパロディではないかな?と思うのだがちょっと詳細不明。

 後は人間キャラでモイラ・マクダガードとウィリアム・ストライカーが出てきます。モイラは「FC」で出てきたものの、その時の記憶はチャールズ消されている状態。20年経ってCIAのそれなりの役職に就いているようだが、自ら前線にも出張って、相変わらずのうっかりさんからアポカリプスを現在に蘇らせてしまう。本人も特にそのことに気づいていないようだが、今回の元凶はこの人です。演じているのはローズ・バーン
 ストライカーは前作に引き続きジョシュ・ヘルマンが演じているが普通の軍人ぽかった「DoFP」に比べると、ミュータントを兵器に改造する計画の責任者として「X-MEN2」の役割に近づいているか。彼ももしかしたら「ウルヴァリン」の方の新作にも登場するのかも。


 さて、一応完結編ということにはなっているし、本作は新三部作としては未来に希望を託した大団円となっている。だが、まだこの世界を舞台とした作品は続き、この作品の中でも「ウェポンX」を出したり(エンドクレジット後の引きも)、完全に終わりというわけではない。「ウルヴァリン」と「デッドプール」の続編が残っている。
 新三部作は60年代、70年代、80年代と描いてきたが、実際のところ劇中時間で20年間、作品として3作かけてやっとX-MENが本格始動するまでを描いたに過ぎない、ともいえる。最初の「X-MEN」が2000年代を舞台(2000年製作の作品で舞台は「そう遠くない未来」)としているので1990年代が抜けている。コミックスではジム・リークリス・クレアモントによって「X-MEN」が「世界で一番売れたコミックス」となった頃で、この頃のエピソードも名作揃い。このまま映像化しないのはもったいない。スコットやジーン、ストームが恵まれしものの学園で学びつつ、教師としてもX-MENとしても一人前になっていく姿を是非観たい。もしかしたらウルヴァリン」の新作で90年代が描かれるのかもしれないが、是非本編でも観たいところだ。
 またX-MENの物語は確かにチャールズ=プロフェッサーXとエリック=マグニートーの友情と別れ、イデオロギーの対立などが重要な柱としてあるが、もう一つサイクロップス=スコット・サマーズとジーン・グレイの恋の行方、というのも重要な柱だ(それに比べるとローガンの過去というのはウルヴァリン個人ではともかくX-MENの本筋とはいえない)。実写映画シリーズでもスコットとジーンは恋人として描かれてきたが、それほど重要視されてきたとはいえない(特にスコット)。なので是非この2人を中心とした本作の延長上にある物語が観たい。「デッドプール」の続編ではケーブルが出てくるとデッドプール本人が言っていたが、これが冗談じゃなく実際のものであるならば、その補足としてケーブルの誕生秘話にするといいんじゃないかな。そうすればタイムトラベルの要素もあるし(ケーブルはスコットとジーンのクローンであるマデリーンの間に生まれたミュータント。諸事情で未来で育って過去(現在)にやってきたためスコットたちより歳を重ねている)。普通に考えると最終的に「DoFP」の希望の2023年が待っているわけだから、どんな困難が訪れようと未来は確定されている、と思うかもしれないが、そこはそれ、もしかしたら第3の未来が待っているのかもしれず平和は確約されてはいないのだ。
 あとね、今回サイロックがほぼ原作のコスチュームを再現して登場し、第一作の時点では出て欲しいけど設定からデザインからあまりにコミックスぽ過ぎて実写映画での登場はないだろうなあ、と思っていたアポカリプスが登場したことでもう殆どの枷は外されたと思う。ということはミスター・シニスターが出てもいいんじゃないでしょうか?

時代や作者によって多少描写は異なるものの、こんな格好のキャラクター。X-MEN世界ではコロッサスと並ぶ角刈り兄さん。
 ミスター・シニスターは最強のミュータントの創造を追い求める人物で、スコットとジーンの間に生まれる子供こそその最強のミュータントとなる存在である、と確信し暗躍する人物。これならスコットとジーンを中心とした物語の敵役としてはピッタリだし、いまなら実写にしてもそんなにバカっぽくならず実写としての説得力を持ちながらコミックスのデザインの要素も生かせる描写が可能なのではないだろうか。
 というわけで僕はまだまだこの20世紀FOXのX−MENユニバースが観たいのです。

We are livin’ livin' in the nineties
We still fight, fightin' in the nineties

TOUGH BOY」byTOM☆CAT(「北斗の拳2」オープニングバージョン)

僕らは90年代に生きて、そして戦っている。今もまだ。

Ost: X

Ost: X

*1:グレムリンの新作はまだですか?

*2:今のコミックスの映画化の隆盛の基礎を作ったのは2000年の「X-MEN」だけどコミックスそのままに近い描写を違和感なく見せるようになったのはその後の「スパイダーマン」シリーズやMCUの1作目「アイアンマン」によるところが大きいと思う