The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

暴君竜の帰還 ジュラシック・ワールド

 あの恐竜テーマパークが帰ってきた!数々の惨劇を乗り越えてついに正式オープン!
 というわけで、人気シリーズ「ジュラシック・パーク」の最新作が14年ぶりに登場。なんだか興行的には大変なことになっていて、多分売り上げ的には今年の世界一位でしょう。というわけで「ジュラシック・ワールド」観賞。

物語

 コスタリカの孤島。かつて「ジュラシック・パーク」の惨劇が起こった島は新しいオーナーのもとで復活。ついに「ジュラシック・ワールド」として正式にオープンした。生きた恐竜たちと出会えるこの施設は毎日二万人の客が訪れる人気テーマパークだったが、経営の安定は厳しい。
 施設の運営責任者であるクレアは甥のザックとグレイが訪れてもかまってあげる暇もない。新しい見せ物として過去の恐竜の復活ではなく、全く新しい新種インドミナス・レックスを創りだしたが、その安全性に疑問も。オーナーのサイモンはヴェロキラプトルの調教をしていたオーウェンにインドミナス・レックスを隔離する防御壁の安全性を確認する作業を任せた。オーウェンが赴くとインドミナス・レックスの姿が見えない。確認のため中に入るとそこには擬態したインドミナス・レックスが、辛くもオーウェンは助かるがインドミナス・レックスが壁の外に出てしまった。
 一方ザックとグレイの兄弟はジャイロスフィアという乗り物に乗って草食恐竜たちを見るアトラクションを体験していたが、戻るように忠告するアナウンスを無視してどんどん先に進んでしまう…

 スティーブン・スピルバーグが監督(1,2作)、制作した「ジュラシック・パーク」シリーズはマイケル・クライトンの原作を1993年から映画化して来たが、続編の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」と「ジュラシック・パークⅢ」はもちろん正統続編ではあるものの、テーマパークとしてのジュラシック・パークとはまた別で、ある意味でこの「ジュラシック・ワールド」は一作目を受け継ぐ直接の続編といえるかもしれない。今回の監督はコリン・トレボロウ。
 マイケル・クライトンの「ジュラシック・パーク」のそれまでの恐竜映画と違うところはまず恐竜がこの地球のどこかで生きていると言うわけではなく、琥珀の中に閉じ込められたはるか昔の恐竜の血を吸った蚊の体内から恐竜の血液を取り出し、その血液に含まれた遺伝子情報を元に復元(この時に両生類の遺伝子などを組み込ん居るので完璧なクローンというわけではない)したという設定が斬新だった。またそれまでは恐竜や怪獣といえば主に日本の特撮映画でよく使われる着ぐるみ特撮か、人形をちょっとづつ動かすストップモーションアニメーションによる物が主流(数は少ないが実際のトカゲをミニチュアの上において撮影するトカゲ特撮なんかもある)。ところが「ジュラシック・パーク」ではCGによって恐竜が再現されているといのも話題だった。最も元々はこの映画はフィル・ティペットストップモーション・アニメーションで撮影する予定だったのがCGメインに切り替えられたらしい。またCGアーティストが恐竜の動きが分からず、結局ストップモーションアニメーションを手がけたアーテストたちが深く関わり、結果としてフィル・ティペットがCGを学び、その成果は「スターシッップ・トゥルーパーズ」で見ることができる。
 1992年というと、僕ももう映画観賞を趣味としていた頃で、この映画の公開前、見た後などは親や友達に熱く語ったことを覚えている。特にこの映画によって一躍有名になったヴェロキラプトルはそれまでの巨大な肉食恐竜ではなく集団で襲う狡猾な恐竜として映画の顔となる。

 色んな所で賞賛を浴びている本作だが、ドラマ部分はやはりファミリー向けというかちょっと古臭く、登場人物の造形などは最近の作品としては単純化されていて、物議を醸すところも多そう。ただある意味古き良き東宝怪獣映画のような雰囲気も持っている。
 主人公といえるのはスターロードことクリス・プラット演じるオーウェン。容姿はスターロードそのまま性格は真面目になった感じ。過去のシリーズにおけるアラン・グラント博士とイアン・マルカム博士を合わせたような感じか。
 もう一人の主人公は施設の運営責任者であるクレアでこちらはブライス・ダラス・ハワードが演じている。予告編だと今作の悪役みたいな感じだが、ちゃんともう一人の主人公と言っていい活躍を見せる。ただ、ジャングルに行くと分かっていてヒールを履いていくとか、前半は特にキャリアウーマンと言ってもちょっと批判的にカリカチュアされたキャラクターに映ってちょっと微妙。
 ザックとグレイの兄弟は一作目のレックスとティムの姉弟にあたる。ただ、弟はティム同様恐竜マニアだが、兄のザックは恐竜より女の子という感じ。出掛けにガールフレンドが居る描写があり、更に施設でも恐竜より女の子に夢中で、行列に並ぶ女の子をナンパしたりする。多分この世界ではもう20年以上前から生きた恐竜の存在は明らかにされ(サンフランシスコにTレックスが上陸して大惨劇になったりしている)、直接見れるかどうかはともかく、恐竜そのものはそれほど珍しい存在ではないのかも知れない。でもここに来たなら女の子より恐竜だろ!っては思うが。
 施設側ももうかつての恐竜を復活させるだけでは客が離れていくからその対策として全く新しいインドミナス・レックスを創造するんだよね。
 他、人間ではインド人オーナーが行動的でわがままな善意の人という感じで描かれている。「グレムリン2」の社長とかアメリカ映画にはこういうタイプの社長が結構良く出てくるよね。悪い軍人役ではヴィンセント・ドノフリオ。ほほえみデブも悪辣な軍人になりました。
 個人的におすすめのキャラはウー博士のB・D・ウォン!この人唯一「ジュラシック・パーク」から役柄も俳優も同一で出演しているのですね。僕は最近「フォーカス」で知ったと思ったのだけれど、そうじゃなかった。ウー博士はこの「ジュラシック・パーク」シリーズの科学的な部分の根本を担当しているよう人でこの人がいなければ恐竜の復活はありえなかったし、別の意味では諸悪の根源でもある。1作目の時は演じるB・D・ウォンもまだ若く、役柄的にも特に悪役というわけではなかったが、本作では半ば意図的にインドミナス・レックスを色々詰め込んだ究極の生物して創造したマッドサイエンティストぶりが強調されている。B・D・ウォンの「顔は笑っているけれど、目だけは笑ってない」ぶりが凄くて1作目のウー博士とは段違いの存在感。無事今回も生き残りました。

永遠の王者T-レックス


 やはり真の主役は恐竜。
 本作の敵役はインドミナス・レックス。この創造物はこれまでの恐竜と違って再現ではなく、イチから創りだしたクリーチャーである。そのため色々な恐竜や生物の特徴が盛り込まれている。ベースはティラノサウルス・レックスだがヴェロキラプトルやカルノタウルスなど複数の恐竜、さらに現生の生物(コウイカの遺伝子によって体表の色を変える擬態が可能)のDNAも加わっている。巨大で狡猾、最強の敵とも言えるだろう。
 思えばこのシリーズは王者T-REXに代わる新しい恐竜を探し提供続けたといってもいいかもしれない。一作目ではヴェロキラプトル、2作目でT・レックスをサンフランシスコに上陸させるという手段をとった後は3作目ではスピノサウルスという新しい恐竜がT・レックスに取って代わった(もっともスピノサウルスは魚食で実際に戦えばTレックスの敵ではないらしい)。それが今度はインドミナス・レックスというわけだ。
 しかし、最終的にはT・レックスがインドミナス・レックスの前に立ちふさがる。やはりT・レックスの前には敵うものはいないようだ。考えるにTレックスの魅力とは単純に大きく恐ろしいだけでなく生物としてのデザインがシンプルであることに尽きるのではないだろうか。時代によってその再現想像図には変化があるが、基本的に肉食であることを印象づける大きな顎を持つ頭部と確かな脚力を感じさせる獣脚。それ以外に特に装飾を持たない。背びれもなければ角や尻尾に刺があるわけでもない。もはやなんの役にも立たなかったのではないか、と言われる小さな前足も含めて、足と顔に特化したそのフォルムが完成されていて、そのシンプルさこそが王者の証である。これは我が国のゴジラが後発の怪獣に比べると圧倒的にデザインがシンプルであるが、だがそれが魅力のマイナスにはつながらないことと同様だろう。ゴテゴテした装飾はむしろ弱い証拠のように思えてしまう。この作品ではインドミナス・レックスという全く新しいクリーチャーが出てくるがそれによってティラノサウルス・レックスを葬り去るのではなく結果的に王者の圧倒的な存在を魅せつけることになっているのだ。

 実はこの作品、怪獣映画として観た場合、僕が散々酷評した実写版「進撃の巨人」と構成がよく似ている。壁を越えて襲い来る怪物、巨大なものに群がって戦う小兵(立体機動の兵士とヴェロキラプトル)、そして最後は似て非なる怪獣同士の戦い、と。ドラマ部分だってヒール履いた女性がキャーキャー叫ぶ部分や唐突に差し込まれるキスシーン、殺されるのために登場したのがまるわかりのようなザックとグレイのお守役の女性(結婚が控えているかのようなセリフが合ったのでなおのこと哀れだ)と今時の映画としては褒められたものではない。ただ、それでも僕はこの「ジュラシック・ワールド」の方が面白くて、そういう点が「進撃の巨人」ほど気にならなかったのはところどころ印象的な残虐描写があれど基本が「ファミリームービー」である、と言うところを外れていないからではないだろうか。また「進撃の巨人」よりドラマ部分と恐竜との絡み部分が自然でうまい。「ジュラシック・ワールド」の方がよほど往年の東宝特撮映画ぽくて懐かしさを感じる。要するに似た欠点があってもそれ以外のところでこちらのほうがはるかに地力が上に感じるのだ。

 今回は吹替で観賞。玉木宏の吹替は決して下手ではなかったけれど、クリス・プラットのキャラには合わなかったかな。クレアの木村佳乃とグレイ役の松岡茉優は全然気付かなかった。ジミー・ファロン(直接出てくるわけではなくスフィアの中でナビゲートするビデオに出演する本人役で出てくる)がオリエンタルラジオ藤森だったりするのはちょっとおもしろかった。中田敦彦の方はアトラクションのやる気のない係員として登場。オリエンタルラジオは藤森の方はきちんと声優として上手いので今後も機会があれば声優としても頑張って欲しい。全体としてもちろん本編のドラマもそうなんだけど吹替も演出としてちょっと大仰に、ファミリームービーとして幼い子どもにも分かりやすいことが意識されているのではないのかと思った。