The Spirit in the Bottle

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理想の上司(但し悪人)を求めて三千里 ミニオンズ



バーバーバー、バーバナナー、バーバーバー、バーバナナー、バナーナー♪ポテートイェー♪
 とこれで全部埋めようかとも思いましたが、一応人語も入れましょう。「怪盗グルーの月泥棒」でデビュー。今では色んな所でお目にかかる黄色い奴らミニオンたちの冒険と理想の上司(但し悪党)との出会いを描いた作品です。「ミニオンズ」を観賞。

物語

 人類よりはるか昔に誕生した黄色いやつらミニオン。彼らの生きがいは極悪人に仕えること。これまでもたくさんの上司に仕えてきたがいずれもミニオンのミスから滅んでしまうのだった。絶望したミニオンたちは南極に自らの王国を築きそこでミニオンだけの繁栄を満喫。しかし時が経つとミニオンたちは生きがいをなくし無気力になってしまう。やはりミニオンには極悪人の上司が必要だ!この危機を脱するため、ケビン、スチュワート、ボブの3人が理想の上司(但し悪人)を探す旅に出た!ときに1968年!

「怪盗グルーの月泥棒」「怪盗グルーのミニオン危機一発*1」に続く第3弾。とはいえ、この2作の前日譚、ミニオンとグルーが出会うまでを描くので基本的にこれだけ単独で見ても問題はないです。
前作の感想はこちら。

 ちなみに2作目の方は試写会が当たったのに、諸事情で見に行けず、そのせいかなんとなく観る気が無くなってしまったので未だに見ていません。今回も特に「月泥棒」の方を見直すこともせず「ミニオンズ」に臨んだ。
 ミニオンズの設定は「月泥棒」の方だとグルーと手を組んでいた科学者の博士がバナナから作ったとか語られていたように記憶するのだが、今回は特にその設定はなし。どうやら日本語吹き替えの時に勝手に作った設定なのかな?バナナ好きという面は変わらないものの人間よりはるか昔に誕生した生命体ということになっている。年齢的にも不老不死なのだろうか?
 アメリカのアニメーションはシリアスな感動作であってもコメディ要素は多分に入っているものだが(その辺がカトゥーン的と言っていい要素だろうか)、本作は例えばピクサーの最新作「インサイド・ヘッド」なんかと比べてもコメディとシリアスの割合が圧倒的にコメディの要素に傾いている稀有な作品。予告編を観ても一切感動できる要素が見受けられず徹頭徹尾ギャグのみで構成されていた。実際の本作も一応ちゃんとしたストーリーもあるし、最終的にミニオンたちの行動だとか、グルーとの出会いなどで感動出来る要素もあるけれどそのほとんどはとにかく笑えるシーン。

 極悪人の上司に仕えることが生きがい、といってもミニオンたちは太平楽な性格ででもどっかぶっ飛んでる通常の人間とは少し違う感じが最高で、あえて言うなら「マッドマックス2」でヒューマンガスが演説してる最中にフェラル・キッドが投げたブーメランをトーディーが捕ろうとして指を切断してしまった時、他の仲間が怒るでもなくゲラゲラ笑ってる感じ。アレのもっと悪意のないぶっ壊れた感覚でミニオンたちは生きている。タイトルロールにもなっているだけあって、ミニオンたちはとにかく魅力的で、主要人物であるケビン、スチュワート、ボブの3人(3匹?)以外のミニオンたちも外見こそ似たような感じだが、きちんと個性分けされているのはさすが。リーダー格のケビン、ギターを持ち唄うことが大好きなスチュワート、子供っぽい末っ子キャラのボブとこの3人のミニオンがベッドで騒ぎながらTV見ているの眺めるだけでも二時間行ける気がします。特にボブがキュートこの上ない。「ひつじのショーン」のティミーと出会わせてやりたい!

 物語はミニオンがNYに辿り着き、そこでオーランドで「大悪党大会(SF大会の悪党版みたいなもの)」が行われることを知り、オーランドへ。そこで理想の極悪人、史上初の女性にして悪党ナンバーワンとなったスカーレット・オーバーキルに仕える事となってロンドンへ。ロンドンで英国王室の宝を奪うべく……という展開が続く。この中で1968年というスウィンギング・ロンドンの風俗が描かれたり(有名どころでは「アビー・ロード」のジャケット撮影中のビートルズ)、細かいネタが続く。あれですね、エリザベス2世って実在の人物で現在も王位の就いている人ですよね?って確認が必要なぐらいイギリス王室に対してギャグのための扱いが容赦無いのだけれど、このへんで日英の王室皇室に対する扱いの差が如実に感じられますね。日本は不敬罪こそ今はないけれど、フィクションでこんな扱いをする事はまずないし。まあこれはアメリカ映画でアメリカの場合、建国の経緯から言ってもどの国の君主に対しても容赦なかったりするのだけれど、それを鷹揚に受け止めるイギリスも凄いわけで。地球上で最後に残るキングはトランプと英国王室だけだ、みたいなことを言われるのもこういう自由なところが魅力なんだと思いますね。
 悪党ばかり出てきて、悪党の上司を求めるミニオンたちが主人公なわけで、それじゃあ作劇上の敵役が誰か?ということになるのだけれど、それはスカーレット・オーバーキルが担当。やってることは悪事何だけれど、それでは物語上での善玉と悪玉をどう分けるのかといえば、やはり部下に対する扱いかと思う。スカーレットはそれはそれで魅力的な悪党だけれども部下にしたミニオンを使い捨てぐらいにしか考えていないのでやはりグルーとの差は際立つ。


 今回は日本語吹き替え版で観賞。一応ミニオンたちも日本語吹替になっている(単語単語でたまに日本語が入る)がほぼミニオン語なのでまったく問題なし。そしてその他の人間の声はスカーレット・オーバーキルに天海祐希ミニオンがオーランドに向かう途中で出会う家族ギャング、ウォルター一家はウォルターがバナナマン設楽統、息子のウォルターJrがバナナマン日村勇紀。この中で事前に知っていたのはバナナマン設楽のみ。ただ、出てきたらバナナマン日村演じるウォルターJrが太っちょでおかっぱというルックスでむしろこっちを日村さんに演じさせるためのキャスティングだったのだな、という感じ。もちろんバナナつながりによる部分もあるのだろうけど。バナナマンの二人はジョージ・ミラー監督のCGアニメ「ハッピーフィート2」でも自意識を持ったオキアミ、ウィルとビルを演じていて、とても上手かった。特に設楽さんは普通に声優としてのスキルも高いと思う。
 一方、エンドクレジットを観るまで気付かなかったのが天海祐希で、まあ元宝塚のトップスターだけにこういう大げさで豪快な演技もお手の物ですな。
 面白いのは日本語吹替のクレジットでもきちんと笑いを持って行って、宮野真守が演じるフラックス教授と言うキャラはほんのワンシーン登場するだけなのだが、タイムマシンで未来の自分を連れてきて働かせているという人なのだが、これがクレジットできちんと「フラックス教授 宮野真守」と8人か10人分か出てきてそれだけで画面を一枚分使用してしまうところなんかは日本版独自の笑いどころ。たしかオリジナルのクレジットロールは普通に一人分の掲載だけだった気がする。宮野真守はスカーレットの夫君、ハーブも演じているよ(というかメインはこっち)。
 その他エリザベス女王役の雨蘭咲木子とか実はナレーターが真田広之だったりタレント吹替として豪華だけど、普通に上手で違和感が少ない作品として観れるので日本語吹き替え版もオススメです、というかミニオンたちが基本的に英語だろうと日本語だろうと変わらないので日本語版の方がストレスが少ないと思う。ちなみに真田広之はオリジナルの方では力士を模した悪党を演じてます(オリジナルのナレーションはジェフリーラッシュでその力士の悪党も日本語版では別の人が演じている)。
 最後にはグルーも登場(ただ、グルーはオーランドの大悪党大会のシーンでちょっと登場していたように思う)。グルーの声は「月泥棒」から続いて笑福亭鶴瓶で、賛否が分かれていたような記憶もあるが僕は意外と好きだった。シリーズもののタレント吹替だと完全に宣伝目的で1作だけ声を当てたけど次からは知らん、というのがシリーズの継続性から言うと一番ダメなわけで、その意味でもグルーと鶴瓶の声は不可分になっていて今後もシリーズが続き出番があるなら鶴瓶に続投してほしい。
 あと何度も言うけれどこういうファミリームービーなら日本語吹替の方が上映数多いのはむしろ喜ばしいことなんだからね!

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 ミニオンズにはぜひヒマラヤ方面に向かってヨミ様と出会って欲しかった。1968年当時ならまだヨミ様がバビル2世と戦う前なので存分にヨミ様の元世界征服に邁進できたことだろう。あるいは川崎方面に来てヴァンプ将軍と出会っていれば今頃川崎・溝ノ口の町でミニオンとすれ違っていたかもしれないのに!(止まらぬ妄想)
 僕はこの「ミニオンズ」一回目を実写版「進撃の巨人」の後に見て「進撃の巨人」のフラストレーションが吹っ飛んだのだが、この「ミニオンズ」、一日の初めに観てその日の活力にするもよし、日中に見て夕食を楽しく過ごす肴にするもよし、一日の締めに見てその日あった嫌なことを吹き飛ばすもよし、万能映画です!バ〜ナ〜ナ〜🎶

*1:危機一髪じゃないのね。水野晴郎の発明「危機一発」