The Spirit in the Bottle

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視線をそらすな、そらさせろ! フォーカス

 劇場で観た映画の感想がたまっているのでちょっと短めにいきたいと思います。

 あたりまえだけど人間完全に客観的に映画を評価するなんてことは出来ず、自分の経験や好みを参照にする。そしてその一番わかり易い例が続けざまに複数映画を観た場合だ。例えば、昨年の僕がワーストに選んだ作品に「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」があったのだけれど、あれはちょっと可哀想なところもあって、あれは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」とハシゴして「ウルフ〜」を観た直後に続けて観ていたりする。すると当然先に観た作品の強烈な印象が残ってしまい、後の作品の似たようなシーンはインパクトが薄れる。「ウルフ〜」と「キック・アス2」の場合シモネタシーンがそれでことごとく後者の該当シーンに薄い印象を抱いてしまい、全然笑えなかった。まったくこれ一本だけ観たのだったらその薄まるということがなく、普通に楽しめたかもしれない(それでも総合的にイマイチだったけどね)。もちろん逆もありでイマイチと思った作品の後に観たちょっと面白い作品は、最初の不満を打ち消す作用もあるため余計に面白く感じたりする。今回の作品もちょっとばかりそういう作用があったことは最初に記しておこう。ウィル・スミスの主演作「フォーカス」を観賞。

物語

 ある男がニューヨークで美人局に遭う。しかしその男はあっさりと美人局を見破り逆手に取る、相手の女性ジェスはその男が気になり後を追う。彼こそ一大スリグループを率いるニッキーだった。
 ニッキーのグループに入りスリの極意を教わるジェス。狙いはスーパーボウルが行われるニューオリンズ。世界中からやってきた金持ち・観光客を相手にニッキーのグループはスリ/詐欺で、あっというかに120万ドルを荒稼ぎ。ジェスも実力を発揮しやがてニッキーとジェスは惹かれ合っていく。
 決勝当日。二人はVIPルームから観戦するが、ちょっとした賭けがやがて一人の男との莫大な賭けへ。仲間の金を賭けようとするニッキーを止めようとするジェス。しかしそこにはさらなる仕掛けが…

 タイトルは「視線」。詐欺やスリを働く時は相手の視線を如何に誘導するか、という意味合い。ちょっと日本語で「フォーカス」って言うと写真関係の用語に聞こえちゃうんだけどね。最初に予告編を観た時はウィル・スミスにしては珍しいちょっと予算小規模の作品なのかな?とか思ったのだが(ホテルで喋ってるシーンとラストの監禁されたシーン中心だったからかな)、いざ公開されたらTVスポットも多く結局はいつものウィル・スミス作品のように俺様な作品ではあった。
 監督は「フィリップ、きみを愛してる!」のグレン・フィカーラ&ジョン・レクア。あの作品は実在の詐欺師スティーブン・ラッセルのウソのような本当の詐欺と脱獄と純愛を描いた物語だったが、本作も詐欺と純愛の物語とも言える。制作はデニース・ディ・ノヴィで、彼女はティム・バートンの90年代初期の傑作群を一緒に手がけた人(「バットマン・リターンズ」も「シザーハンズ」も彼女の制作です)で、まるでハーレイクインや少女漫画のような物語でありながら映画ならではのリアリティもあるのは彼女の力も大きいのではないのかと思う。
 今回は「マジック・イン・ムーンライト」の後に(直後というわけではないけれど次の日ぐらい)観た作品で、「トリックと詐欺と恋愛」みたいな部分が共通する要素だった。もちろん話そのものはぜんぜん違うんだけど、たまたま続けて観て共通する要素もあるので比べてしまった。そして「マジック・イン・ムーンライト」で出てきた不満はほぼこの「フォーカス」で解消されている。「マジック〜」での、年齢差のあるカップルなのにそこに葛藤がないこと、詐欺師の割に純朴に描かれすぎなヒロイン、といった不満点は似たシチュエーションでありながらこちらは見事に解決していると思う。この辺もデニース・ディ・ノヴィのちからも大きいと思われ。

 ウィル・スミスは1968年生まれなので現在46歳。ヒロインのマーゴット・ロビーは1990年生まれの24歳なので約20歳差。でもコチラはそんなに年齢差を感じさせない。ウィル・スミスが年齢が分かりづらいし若く見えるというのもあるけれど、まず行動が若々しいし確かに年齢を感じさせない魅力があるのでこの年齢差カップルが全然不自然に見えない。またこの映画ではニッキーは弟子でもあるジェスにちゃんと節度ある態度を取っていて、一度は堅気に戻るよう仕掛けるのでその辺でちゃんと葛藤が描かれているのだ。
 マーゴット・ロビーは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でレオナルド・ディカプリオの2番目の妻を演じて、モデルの美人妻ということでディカプリオ=ジョーダン・ベルフォードの成功の証明みたいな役どころであった。ただ、あの映画では本当に外見的な美人であって、それほど印象に残らなかったのも事実。美人だけれど二度目観た時にちゃんと顔を覚えているかと言ったら疑わしい、と言ったところだろうか。ところが一転、本作では女詐欺師であり、未熟ながら劇中で一気に成長していく役でもある。マーゴット・ロビーのルックスは当然「ウルフ〜」から大きく変わるわけでもなく、金髪でモデル級のスタイルと美貌を持つ美人なのだけれど、本作ではニッキーが指摘するように色気は感じない。どちらかと言えば少年のような佇まいさえあり、つまり美貌をそのままに演技でキャラクターの性格付を演じているわけで見事である。
 この二人、ウィル・スミスとマーゴット・ロビーの二人は続くDCコミックスバットマンヴィランが刑期と引き換えに政府の特殊チームとしてミッションに挑むという「スーサイド・スクワッド」でも共にチームを組むことに。マーゴット・ロビーはハーレイクイン、ウィル・スミスはデッドショット。ジャレッド・レトジョーカーを演じるので今度は恋人同士というわけではなさそうですがこれは楽しみ。ベン・アフレックバットマンが登場するそうなので、「マン・オブ・スティール」「スーパーマンVバットマン」と連なる映画世界の話なのかな。

 あとね!素顔でロドリゴ・サントロが出てたり(そういや素顔のロドリゴ・サントロを最初に観たのは「フィリップ、きみを愛している!」だったな)、脇のキャラクターも魅力的なんだけど、一番はスーパーボウルの会場でニッキーと賭けをする東洋人リー・ユァンを演じたB・D・ウォン!伝説的なギャンブラーという設定で軽薄な笑いを絶やさぬ男だが、その目は全然笑っていない。でも確かに人懐っこそうで魅力にあふれた男。ここでは本人も知らぬまま気持よくニッキーにしてやられる役で、直接本編に関わってくるキャラクターではないのだが、その強烈なキャラクターでもし続編があればまた出て欲しいし、あるいは彼を主役にしたスピンオフとかを作ってもらいたいぐらい(僕はこういう展開を妄想するの好きです)。

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 マーゴット・ロビーの出演作。これもある意味「詐欺と愛」か。

-インクレディブル・犯行!!! グランドイリュージョン

 直接関係ないけどなんとなく雰囲気が似ているな、と思った作品。
 
 ウィル・スミスはどちらかと言うと苦手な、嫌いと言っても良い俳優なんだけど本作は良かったです。