The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

あの瞬間、たしかに私は十代の亀だった! ミュータント・タートルズ


カワバンガ!!
 バットマンはコウモリ、仮面ライダーはバッタ。そしてスパイダーマンはクモ。1番分かりやすい超人化の方法は人間に別の生物の要素を持たせることなのだけれど、ある意味で最も(悪役・怪人としてはともかく)ヒーローから縁遠いのが爬虫類の要素を持つキャラクター。日米のコミックスを見回してもあまり見受けられません(仮面ライダーアマゾンぐらいか。また架空の動物である龍は別)。しかし、その爬虫類の中でもさらにヒーローとは程遠い感じの亀が今回の主人公です。亀の要素というか亀そのものが主人公!「ミュータント・タートルズ」を観賞。日本にはガメラがあるが、アメリカにはタートルズがいるッ!

物語

 ニューヨーク。悪のフット団が暗躍する世界。TVリポーターのエイプリルはNYのたわいもないことを伝えていたが本来は報道志望。ある時、港で何かを強奪するフット団を見かける。密かにその現場をカメラに収めようとするが、その時謎の集団がフット団を蹴散らした!
 謎の自警者を誰も信じてくれない。しかし今度は地下鉄がフット団に襲われる。再び現れる4人の自警者。エイプリルは彼らを追う。彼らこそ突然変異で人間大に成長した亀、やはり人間大の鼠スプリンターを師匠として育ったレオナルド、ドナテルロ、ラファエロミケランジェロのティーンエイジ・ミュータント・ミュータントニンジャ・タートルズだ!

 爬虫類の中では比較的穏やかな生き物というイメージの亀。子供の頃ミドリガメを飼ったことのある人も多いだろう。「大怪獣ガメラ」でも亀を飼っていた少年が出てきて、元々ガメラは子供好きであるという設定もあったので続編で悪い怪獣と戦う怪獣になってもゴジラと違って違和感がなかった。アメリカでも亀の位置付けは似たようなものであったらしい。そこにニューヨークの下水に棲むワニの都市伝説を合わせて、もしもそれがワニではなく亀だったら…どうせならニンジャにしよう…!
 最初に「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ(以下TMNT)」を知ったのはいつだったか、最初の実写版が作られる時点ではすでになんとなくコミックスを見ていて、ある程度内容は知っていた気がする。1984年誕生のヒーローなのでアメコミヒーローとしては比較的後発組。「トランスフォーマー」とほぼ同期のデビューと言ったところか。
 僕の思い出としては中学の頃、とにかく映画のノベライズを読みまくっていた時期があって、最初のジム・ヘンソン版のノベライズもその一つ。これが古本屋で面陳列されていて、来る日も来る日も売れ残ってその店を訪れるたびになんだか、目に入ってこちらに訴えてくるような気がした(ビニール包装されていたので中は読めず)。ついにある時店から救ったというか身請けしたというか購入した、そんな記憶がが残っている。
 またゲームボーイコナミから出ていた「TMNT」の横スクロールアクションゲームはおそらく僕が最初にきちんとクリアしたアクションゲームだったような気がする。僕はTMNTにはそれほど思い入れがないと思っていのだが、こうして記憶を辿るとそれなりに意外と思い入れがあるヒーローかも。

ジム・ヘンソン版。被り物然としてるけど、今見ても可愛い。

今回の。マッチョゴリラ亀って感じ。
 で、TMNTと「トランスフォーマー」とほぼ同期と書いたけれど、今回の新しい実写映画版はマイケル・ベイが制作、(人間の)主演がミーガン・フォックスという実写版「トランスフォーマー」のコンビ。この2人って「ダークサイド・ムーン」の時に喧嘩別れしたって話だったけど仲直りしたのかな。ミーガン・フォックスはアニメや原作では黄色いつなぎがトレードマークのエイプリル・オニールを好演。いわゆるお色気を振りまくようなシーンはなくて現代的な働く女性(アンカーウーマンということではスーパーマンロイス・レーンから続く伝統的なヒロインでもある)。もちろん余計な演出を入れずとも彼女のフェロモンは充分発揮されているわけで、実に健康的でいいと思います。黄色いつなぎこそ着ていないけれど黄色い服装をメインに着用。
 監督は「タイタンの逆襲」「世界侵略:ロサンゼルス決戦」のジョナサン・リーベスマンマイケル・ベイとは「悪魔のいけにえ」のリメイク「テキサス・チェーンソー」の続編にして前日譚である「テキサス・チェーンソー・ビギニング」で組んだ仲。これまでのリーベスマンの作風は僕が思う限りでは砂埃舞う中行われるアクション、という比較的乾いた作風というイメージ。あまりTMNTの持つイメージとは一致せず予告編を見ても不安ではあったのだが、今回は良い意味でリーベスマンらしくない出来で逆にTMNTの映画としてはとても良かったと思う。
今回はとにかく楽しいですよ。アメコミヒーロー映画がごく当たり前に題材として作られるようになって、その多くが「ダークナイト」の影響を受けて深刻で重厚で、というものも多い中それこそ去年の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」にも並ぶ能天気さ。「GotG」の場合、その明るい雰囲気には「最高MIX」の70年代ヒット曲も貢献していた。でも「ミュータント・タートルズ」の場合はスコア自体はハンス・ジマーダークナイト」路線の重厚なもの。そんな音楽がバックで流れてるシーンでも明るく楽しそうなんだもの。音楽は「アイアンマン3」や「エクスペンダブルズ」シリーズ、ジョナサン・リーベスマンとは「世界侵略:ロサンゼルス決戦」でも組んだブライアン・タイラー
 映画は意外とベイの影響が強いのかな、と思う感じだけれど、そのせいかやはり雰囲気は「トランスフォーマー」に近い。正義を愛するけれど、やはり普通の人間とはどこかちょっと違う能天気さと基本太平楽な性格というあたりサイバトロンとタートルズは共通するところがある。あるいは(原作ではトランスフォーマーと世界を同じくする)実写版「G.I.JOE」も含めて実写版のこれらが世界観を共有する作品としてクロスオーバーしても個人的には違和感はない。

 日本ではなぜか「ミュータント・タートルズ」という名称で定着しているけれど、正式名称は「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」。この内「ニンジャ」に関してはすなわち「忍者」のことで80年代にショー・コスギによるニンジャブームが起きていたことに由来するのか(ブーム自体は同時多発かもしれないが)。ただ英語原題に日本語が含まれていると邦題では排除するという傾向があって「ベストキッド」シリーズも原題は「Karate Kid」だったりして「ニンジャ」の排除はそういうのに倣ったところもあるのだろう。まあTMNTで描かれる「ニンジャ」と日本人が連想する「忍者」はかなり乖離しているので致し方ないか。ただ「ティーンエイジ」の方は是非残して欲しい単語である。「十代の亀」というのはもしかしたら彼らのキャラクター要素としてはミュータント=突然変異であることより重要かもしれない。実は彼らほど10代の少年らしいヒーローもそうはいないかも(特にマイキー)。個人的には「ティーン・タイタンズ」よりもティーンですね。そんな10代らしい溌剌とした勢いの良さもタートルズの特徴だ。
 彼らの名前はルネサンス期の芸術家から取られているが今回はその名付け自体が物語に深く関わってくる。エイプリルの父親が科学者で実はそこで実験動物として飼われていたのがスプリンターとタートルズであった。ヘンソン版やアニメ版ではスプリンターとシュレッダーの因縁が強かったが今回の映画ではサックスというシュレッダーの部下である科学者兼富豪を通じてエイプリルとシュレッダーの因縁が強い。
 名前がルネサンス期の芸術家から取られていることでちょっと古めかしいイタリア風の名前であるのだが、それぞれをレオ、ドナ、マイキー、ラファと略称の愛称があるしピザ好きというところなどがいかにもアメリカらしい文化を好むところが移民の国アメリカのヒーローらしさ。ニューヨーカーにも好かれそうだ。それではそれぞれを個別に簡単に。

レオナルド

 青いマスクのタートルズのリーダー。日本刀が武器で冷静沈着なチームのまとめ役。「ガッチャマン」で言う所の大鷲のケン。ちなみに実は僕が中々覚えられなかったタートルズの名前と色と武器と個性だが(特にラファエロミケランジェロ)レオナルドだけは最初からそれが全て一致したキャラでした。名前の由来はレオナルド・ダ=ヴィンチから。

ドナテロ

 紫のマスクの棒使い。タートルズの頭脳担当。ちょっとおっとりとした話し方が特徴。最近のCGアニメ版では彼がエイプリルに想いをいせていたなあ。名前の由来はルネサンス期初期のフィレンツェのドナテッロから。

ミケランジェロ

 オレンジのマスクのヌンチャク使い。1番子供っぽくノリもいい。エイプリルに1番好意を寄せるのもタートルズのかけ声「カワバンガ!」も彼の口癖。先のCGアニメ版ではこの「カワバンガ」がなぜか「ブヤカシャー!」になってた。名前の由来はミケランジェロ・ブオナローティから。

ラファエロ

 赤いマスクのサイ使い。タートルズ一の暴れん坊。突貫小僧。特攻隊長。冷静なレオ、亡羊としてるドナ、子供っぽいマイキー全員とそりが合わないふりをしているが実は1番チームが大好きな亀でもある。名前の由来はラファエロ・サンティから。

スプリンター

 ネズミが突然変異したタートルズの養父であり師匠。彼の出自は作品によって様々で、シュレッダーと同門の武道家がネズミになった、というものもあれば、その武道家が飼っていたペットのネズミという設定だったことも。今回はタートルズと同様エイプリルの父親に飼われていた実験動物という設定。下水世界で拾った忍術の教本で独学でいろいろ学んでタートルズに伝えるのだった。

シュレッダー

 人間十徳ナイフ。タートルズの宿敵。日本人の武道家でフット団を率いて世界征服を企む大悪人。本名はサワキ・オロクで紛う事なき日本人設定。通称サワキちゃん。
 全身が刃物だらけの鎧を着ていて、それゆえに「シュレッダー=破砕機」と恐れられる。映画ではただの鎧というよりちょっとしたパワードスーツになっていて、「ウルヴァリン:SAMURAI」のシルバーサムライを思わせる。演じてる人はよく分からないが、日本語を喋るシーンがあって、そこはたどたどしい日本語じゃなくてきちっと流暢な日本語吹き替えられてるのでストレスはないです。吹き替え感は満載だけど。
 今回は出てこなかったけど、90年代のアニメ版での脳味噌みたいな宇宙人クランゲとの毎度の漫才が楽しいので実は笑いも取れる人である。次はクランゲの登場とともにその辺も期待(ラストにタートルズたちを突然変異させたミュータジェンが体内に入ったと思われる描写も…)
 そのほか、フット団の幹部サックスにウィリアム・フィクトナー。一度見たら忘れられないクリストファー・ウォーケン直系の爬虫類顏役者。彼もシュレッダーの弟子なので武術が使えるはずだがもっぱら銃に頼ってたのは残念か。
 東洋系の女幹部カライは最近のCGアニメ版ではシュレッダーの娘として出てきて善と悪の間、レオナルドと父親の間で揺れ動くキャラだったが、本作ではただ残酷な女幹部という感じ。
 次は敵にもミュータントキャラを期待したいですね。

ミュータント タートルズ大全 (ShoPro Books)

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ミュータント・タートルズ (ハヤカワ文庫SF)

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↑このノベライズだ!
 本作自体がもうそれなりに歴史のあるアメコミヒーロー物だけれど、映画の中ではタートルズによる他のヒーローの真似であるとか、あるいは他のヒーロー映画のオマージュ、パロディと思われる要素も多い。ので、僕が感じた元ネタ作品らしきものを幾つか挙げてみたい。

アメイジングスパイダーマン

 ともにニューヨークを舞台に活躍するヒーロー。かたやウェブスリング、かたやニンジャということで建物の間をビュンビュン飛び回るような描写も多い。ただクライマックスの舞台がNYの高いタワーの上から何かを放射・散布というのは本作とそっくりである。というか、2000年の「X-MEN」から「アベンジャーズ」「アメイジングスパイダーマン」そして本作とNYのタワーから何かを放射・散布というのはアメコミ映画の定番ネタでもあるのだな。上記以外に他にもあるかも。

マスク

 ジム・キャリーを世に知らしめた顔面変幻自在ヒーロー映画。シュレッダーが両腕をばっと出してそこからたくさんの刃物が飛び出すシーンは、マスクが銃火器をたくさん出すシーンに似てますね。それだけ。

Mask [Blu-ray]

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ウルヴァリン:SAMURAI

 先述したけれど、シュレッダーの鎧はもうパワードスーツみたいになっていて、ラファエロとシュレッダーが一騎打ちで戦うシーンなどは「ウルヴァリン:SAMURAI」のウルヴァリンとシルバーサムライの戦いを思わせる。

ダークナイト

 ウィリアム・フィクトナーが出てます。あと音楽がちょっと似てる。でも雰囲気から何から全然違うけれどね。

以上!
 今回は字幕2Dで観たけれど、ああここは3D効果が高そうだなあ、というシーンも充分見受けられたので3Dも楽しそう。吹き替えではタートルズ4人はちゃんとした声優さんなのだけれど、エイプリルがベッキー、スプリンターがカンニング竹山、そしてエイプリルの上司として出てきたウーピー・ゴールドバーグ泉ピン子という布陣。多分この中ではベッキーが一番マシでウーピーはゲスト出演みたいなものなのでまだよし。でもスプリンターはナレーターも務めているのでカンニング竹山はキツそうだなあ。ウーピーの出演シーンでは、「なるほど、もし仮に日本で本作をリメイクするとしてウーピーの役を泉ピン子が演じる、というのは有りかも」とほんの少し思ったりしたのだけれど、リメイクで演じ直すのとウーピーの演技に声を当てるというのとでは天と地ほどの差があるのですよ!
とにかく楽しい作品。ぜひ十代の亀に感情移入して欲しい。
 そして次は「兎用心棒」の実写化だ!*1

*1:多分ないと思うけど、何が起きるかわからないのが現在のハリウッド