The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

頑固親父と放蕩息子の和解 ジャッジ 裁かれる判事

 いよいよ公開も近づいた「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」を控え、ロバート・ダウニーJrの主演作を観賞。

物語

 シカゴで弁護士を務めるヘンリーは真実にかかわらず自分の依頼者を勝たせることで悪名高い名弁護士。妻との離婚も控えたある時、兄からの電話で母の死を知り、久方ぶりにインディアナ州カーリンヴィルの実家へ帰る。そこでは兄とその家族、そして弟がいて、地方法廷の判事である父ジョセフは相変わらず威厳を持って君臨していた。父との関係が悪いヘンリーは葬儀が終わり次第帰るつもりだったが、父は葬儀の夜ひき逃げをした疑いで逮捕される。被害者はかつてジョセフによって懲役20年を言い渡され出所してきたばかりだった。ヘンリーは父を守るために弁護を引き受ける…

 作品自体は比較的小粒な佳作、という感じ。ロバート・ダウニーJrがもうほぼトニー・スタークと同様のキャラクター(というかロバート・ダウニーJrそのもの)を演じていて、才能があり自信家でそしてちょっとやんちゃである、そんなキャラをいつもの様に演じている。RDJはこの作品のプロデューサーも務めているが、私生活では母を亡くしており、ちょうどこの作品と重なり、もしかしてその辺も影響を与えいているのかも。
 全然関係ないけど、冒頭シカゴの空撮シーンが有り、都市のガラス張りの高層ビルが映ったりすると思わずどの窓が割れるのかな、と思ってしまいますね。
 

 物語はミステリーというよりはやはりヒューマンドラマという趣のほうが強い。小さな町の判事として長く権威として存在した父が妻の死を受けて一気に崩壊していくさまだとか、昔のヘンリーの不良ぶり(ヘンリーがグレンを伴い事故ったことで野球選手への道が絶たれたことを暗示している)が家族のギクシャクの元になっていたりということが分かったり。地方の判事というのはあんまりどういうものかは分からないが、最初に出てくる法廷だとまるで大岡裁きのような判決を出したりしていて、日本より裁判が身近なお国柄、判事も地元に住民に尊敬され親しまれている一方で恨みを持っている者もそれなりに多いという背景がある。
 ロバート・デュバル演じるジョセフ判事はガンによる治療の副作用として認知症の疑いがあり、しかしそれを公表してしまうとここ最近の判決に疑いを持たれてしまうということで、その事実を知られたくない。一方で息子のヘンリーは勝つためには父の栄光に泥を塗らなくてはならない。そんな葛藤も。
 ただ、ユーモアが随所に見受けられて徹底的に暗くならないのもこの映画の特徴でジョセフが夜中に奇声を上げ、トイレで下の処理ができなくなる場面とかある意味一番深刻で観客が絶望的になるシーンなんかももちろん一時的に唖然とするもののその後ヘンリーの子供でジョセフに取っての孫娘の登場で(観ている観客だけでなく悪戦苦闘中のヘンリーとジョセフまで)和やかになるシーンなんかは見ていてホッとする。

 その他のキャストは兄グレン役にヴィンセント・ドノフリオ。元々将来を嘱望される名野球選手だったとはちょっと信じられないがしかし自身はあんまりその辺を気にしていない良い長男ぶり。弟のデイルも並んで3兄弟のバランスが良い。
 後はヘンリーの高校時代の恋人にヴェラ・ファーミガ。相変わらず神秘的な雰囲気さえ漂わせる美人ぷり。若いころのRDJとヴェラが付き合っていたというのはよほど注目のカップルでしたでしょうな。というか個人的にはふたりとも年をとって魅力を増すタイプなので今のほうが全然いいと思うけれど。この二人の顛末はちょっと前にあんなこと

対等な近親婚などありえない - 小覇王の徒然はてな別館

を書いた直後なので観ていてちょっとむにゃッとしたのだけれど、きちんとオチはついていた。

 個人的に普段は骨董品屋をやりながら弁護士をしている人がRDJの助手としてそれなりに成長する姿とか見たかったかな。陪審員選別の場面ってアメリカ映画の法廷ものではおなじみの場面だけれどこの映画でもとてもおもしろいシーンに仕上がっていたと思います。 

 この映画を見た直後、立て続けに父を亡くしたという方のブログを読んだ。そのせいか感情の持って行き場所が分からない部分もあった。僕の父も高齢で多分そう遠い未来のことではない。そんなことを思いながら夜道を家路についたのであった…
 なんとなくクリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」にも似た雰囲気。映像の色彩が独特でこれはヤヌシュ・カミンスキーによるものでした。