The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

「愛犬とごちそう」と「オリエント急行殺人事件」

 地上波TBSで放送されている生物バラエティ番組「トコトン掘り下げ隊!生き物にサンキュー!!」は民放のこの手の番組にしては比較的落ち着いていて(程度の問題ではあるけれど)毎週楽しみに見ていたのだが、ここ最近はすっかり犬猫ばかり取り上げていてかなり残念。もっと昆虫だとか、深海生物だとかを取り上げて欲しいのだよ!特に僕は猫派なので猫はまだともかくもう犬はいいよ!というところでそういえば「ベイマックス」感想で前座の短編「愛犬とごちそう」を取り上げるの忘れたなあ。ということで「愛犬とごちそう」及びそれに伴う諸問題を簡単に。

 リアルベイマックス。このエントリーを護ってくれることでしょう。

 ジャンクフード好きの主人に拾われた子犬は主人の嗜好もあってすっかりジャンクフード好きに。そして主人に恋人ができた。彼女が一緒に暮らすようになり食生活は激変。これまでのジャンクな生活が一変ヘルシーな食生活に。しかし犬はそれが不満だった。
 ある時主人は恋人と破局。再び食生活はジャンクなものに戻り犬は大喜び。しかし主人はどんどんやつれていくのだった…

 というわけで、例によってセリフ無しの短編。映像的にはとても楽しい物でした。ただ、かなり評判が悪い作品で、要するに「犬に人間と同じものを食べさせるのは動物虐待!」というわけですな。多分上記の僕が書いた物語も結構意地悪い物になっていると想う。ただ、僕自身はそれほど目くじらを立てるものかなあ、という思いも強い。最も僕も「崖の上のポニョ」で「水道水で魚を飼おうとするな!真似する子供が出てきたらどうする!」などと言った過去があるのでダブルスタンダードではあると思う。ポニョはいわゆる普通の魚ではないし、一方でこの作品はファンタジーではなく普通の子犬が主人公だから単にどっちが現実的か、ということで言えばむしろ真似されて困るのはこっちの作品なんだけれど。
 ただ、ジャンクフード自体はもちろん健康によくないというのはわかりつつも精神的な良い料理なんだよね。親と暮らしていた時、精進料理みたいなものばかり食べさせられたこともあるが、いくら健康に良いと言われてもそればかり食わされてはストレスが溜まり逆にニキビとかたくさん出来た事があった。一人暮らしで適当な生活に戻ったら意外とそういう面での健康には良いのだ。これも劇中ではジャンクフード(ハンバーガーとか)を食べる場面ばかり集められているがあくまで時々であってしょっちゅうではないと思いたい。
 もしも納得の行く話にするとしたら、子犬がそれこそ「ベイマックス」本編に出てきたデブ猫モチのように肥満体になり、しかし主人の彼女のお陰でまた元に戻るみたいな話なら良かったのだろうか。ただそれだと爽快感には欠けるよね。
 アニメメーションとしては動きが良かったのと主人(ヒゲのこちらは肥満体で典型的なアメリカ人という感じ)に対して彼女さんのデザインがとても可愛らしかったです。ただ話として有無を言わせぬ面白さがあったかというとまた別で(そもそも有無言わせぬという言うならここまで話題になっていない)、ディズニーの本編前の短編としてもちょっといつものよりは質は落ちるかな、というのが正直なところ。個人的にここ最近で一番良かった短編は「シュガー・ラッシュ」の同時上映作「紙ひこうき」ですね。

 ただ、この作品やフランスのテロなどがあって「表現の自由」とか「フィクション作品内でのウソ」であるとかについてちょっと考えるところがあったのは確か。例えば先日アガサ・クリスティーの名作「オリエント急行の殺人」を三谷幸喜が1930年代の日本を舞台に脚色したものが2夜に渡って放送されたが、あれは1夜目は原作に忠実に、2夜目は三谷幸喜が大胆にオリジナルで、というのが売りだった。そして2夜目の終わりに再び原作に立ち返ったのだが、ここで真犯人を知ってなお、ポワロ(ドラマでは勝呂*1)がすでに犯人は逃亡してしまった、ということにして無罪放免とする。この終わり方に憤っている人たちが結構見受けられた。なるほど、このご時世たとえ犯人に同情できる余地があろうとも、罪を犯した以上それなりの報いは受けるのが、当然かもしれない。もしもこれがポワロでなく「相棒」の杉下右京なら確実にしょっぴいたであろう。それで三谷幸喜が責められたりしたいたのだが、実はこの結末は原作通りである(さらに元になった事件として「リンドバーグ愛児誘拐事件」ある)が。
 2夜目に関して「原作と違う三谷幸喜オリジナル」と謳われたためあの結末が三谷幸喜オリジナルだと思われたのか、何故かアガサ・クリスティーではなく三谷幸喜が叩かれていて理不尽だった。
 色々意見はあるであろう。フィクションだろうと時代に即して犯罪はダメだ!という風にして原作と異なる罰を真犯人には与えるのが筋だ!とか。もしも現代日本が舞台だったら僕もそう思わないでもないが、日本を舞台にしているとはいえ原作同様1930年代に時代設定をしているのだからあれでいいと思う。
 もちろんドラマの中では演出の問題でコメディ調で描かれている部分も少なくないため、その雰囲気でダメと思った人もいるかもしれない。ただ結末それ自体で三谷幸喜が叩かれるのは何度も言うが理不尽。どうせ結末を変えたら、原作と変えたって叩く人は出てくるのだろうし。
 ちなみに、ドラマは三谷幸喜オリジナルである犯人たちが用意周到に犯行に及ぶまでに至る2夜目の方が圧倒的に面白かったです。三谷幸喜は現在NHKアーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を10代の少年に変え、寄宿舎を舞台にした人形劇の脚本も手がけているが、「オリエント急行殺人事件」第1夜と同日に放送された「シャーロック・ホームズ」に原作「恐喝王ミルヴァートン」に出てきた聡明な少女アガサが再登場していた。このアガサはシャーロッキアンの間では実はのちのアガサ・クリスティーである、という説もあるそうで、もしかしたら放送日程まで考慮した三谷幸喜ジョークなのかもしれない。
 いずれにしろフィクションの中での暴力・犯罪などをどのように描くか。肯定的に描写する場合どこまでなら許されるのか、という問題は確かにある。表現規制の問題でフィクションの暴力描写を規制しようという動きなんかに対しては「あんたのほうがよほど現実とフィクションの区別がついていないじゃんか!」とか思うのだが、逆に現実もフィクションも一緒くたにして「暴力最高!」という輩もいる。どっちも同じ穴のムジナだが意外と後者の方が潜在的には多そうな気も。フィクションではOK、でも現実ではダメ!という簡単な事なんだがなあ。
 さて、残りは僕のごちそうをざざっと貼って終わろう。






 ふう!森田順平さん最高だ・・・(リー・ペイスじゃないのかよ!)

オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

*1:主に登場人物が原作のキャラ名の音から日本名に置き換えているのに対し、発端となるアームストロング大佐が剛力大佐と意訳になっていたのが笑えてしまった