The Spirit in the Bottle

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帰ってきた80年代野郎の逆襲! エクスペンダブルズ3 ワールドミッション


 古典題材の映画化が終わったら次は80年代だ!というわけで「エクスペンダブルズ3」です。ご存知“イタリアの種馬”シルベスター・スタローンがアクション映画スターを集めて作ったオールスター大感謝祭映画。製作としてはかなり歪だけどもう定期的なイベント映画の趣もあり、これ、どちらかと言うと日本で言えば素顔の「仮面ライダー全員集合」映画といったほうが適切な気がします。「エクスペンダブルズ3」観賞。

物語

 バーニー・ロスとその愉快な仲間たちはスワジランドにて移送列車を襲撃する。それはかつての仲間、ドクを救出するため。エクスペンダブルズ創設メンバーでの一人であるドクを救出したその足でドクも連れて今度はCIAからの依頼であるソマリアでのミッションへ。ターゲットである武器商人を見たバーニーは驚愕。それはかつてのの仲間でありチームを裏切ったためバーニーが自ら殺したはずのストーンバンクスだった。バーニーが動揺を見せミッションは失敗。おまけにシーザーが撃たれて重症を負ってしまう。
 バーニーは仲間がこれ以上傷つくのを恐れ、チームを解散する。しかしCIAからの指令は続き、彼は新しいチームを結成し任務を続行。若く優秀な仲間が揃い、ミッションは成功したと思われたが…

 前作、前々作の感想はこちら。

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 1作目は内容は置いといてその豪華なキャストだけで一本作ったという出来事自体がもう事件で、まさにお祭りのような映画であった。2作目はジャン・クロード・ヴァン・ダムというスターを敵役に迎えスライが監督でなくキャストに専任することでもうちょっと物語的には内容のあるものとなり、しかし役者の経歴をそのまま登場人物の設定としたり、アーノルド・シュワルツェネッガーブルース・ウィリスがゲストとしては出過ぎ、そうでないなら唐突すぎ、というアンバランスさ、トドメとして切り札としてチャック・ノリスが登場し、自らチャック・ノリス・ファクトを言うというカオスさだった。2公開時点で次は誰が参戦するのか?と話題になっていたものだが、正解は…?

 答え。ハリソン・フォードウェズリー・スナイプスアントニオ・バンデラス、ケルシー・グラマー、そして敵役にメル・ギブソンという超豪華ぶり。ブルース・ウィリスチャック・ノリスの登場はなくなり、噂されたセガールや個人的に再戦して欲しかったジャン・クロード・ヴァン・ダムは無し*1
 ハリソン・フォードはもちろん「スターウォーズ*2」と「インディ・ジョーンズ(まだ2作分契約が残っていたはず)」という80年代を代表する2大シリーズに主演し、他にも今では役者も変わって製作が続けられている「ジャック・ライアン」シリーズなどアクション映画にも多数出演しているのだが、作品のカラーかハリソン・フォードその人にはあんまりアクションスターというイメージは個人的には薄い。それで僕自身は前作の感想では「ハリソン・フォードはあんまりエクスペンダブルズではない」というような事も書いたのだがいざ出てみればそれなりにハマっていたのだ。やはり80年代を代表するアクションスターの一人!最初に背広で登場した時は、あまりに他のキャストと比べて身体が細く、また容姿もすっかり老けてシワが目立ち「このおじいちゃん誰だ?!」と思ったぐらいなのだが実は(でもないが)主要キャスト中最年長。CIAとしてエクスペンダブルズに指令を下す前作までのウィリスの役回りだが、屈強な筋肉の中一人一般人みたいな雰囲気なので大丈夫か?と思ったがそれでも後半クライマックスでヘリを操縦するときは格好良く往年のハン・ソロを思わせる格好良さ。ちなみにウィリス(チャーチ)は楽屋ネタ的に「彼の出番はなくなった」とフォードによって語られる(実際はギャラで揉めたとか揉めなかったとか)。
 ウェズリー・スナイプスは後述するとしてケルシー・グラマー。彼は日本での知名度はそれほど高くなく、どちらかと言えばTVドラマを主戦場とするスターでアクションと言うイメージも薄いが(「X-MEN ファイナル・デシジョン」のビーストである)、それでも大スターであることは間違いない。今回はいったんチームを解散したスライに若いメンバーを斡旋する役回り。彼自身はアクションはやらないし、出番もそれほど多くないけれど強い印象を残す。そういえば「トランスフォーマー ロストエイジ」ではCIAの悪役を演じていたのか。
 メル・ギブソンはオーストラリアでの「マッド・マックス」シリーズ*3が有名だが、ハリウッド製のアクション映画としてはやはり「リーサル・ウェポン」シリーズか。僕が劇場で観たのは4だけで他はTV放送での観賞だが、4では今回も共演した(といっても直接顔を合わせてはいないかもしれないが)ジェット・リーリー・リンチェイ)が敵役。奇しくも今回は敵味方の役回りが逆になったわけだが、あの4ではちょっと中国人、ひいてはアジア人を馬鹿にしたような描写もあり、また格闘という面ではジェット・リーの圧勝だった事もあってちょっとメル・ギブソンには損な役回りだったか。そのぐらいからプライベートでのろくでもない噂も聞こえてきて、映画人としての才能とは別に人間的に危ないというイメージも同時進行。そこで今回の悪役が来てイメージ的に「あのメル・ギブソンが悪役!」というよりは「やっとメル・ギブソンが自分の本性に近い最低野郎を怪演!」という感じ。アクションスターとしては前作までのストーンコールド・スティーブ・オースティンやヴァン・ダムと違って格闘技というよりどちらかと言うとガンアクションのイメージが有るメル・ギブソンだが、本作では他のキャラクターほとんどが重火器や小銃を使う中、拳銃をメインに扱い、その銃を構えるスタイルはやはり格好いい。エクスペンダブルズ創立メンバーでスライとの因縁もたっぷり、一度スライたちに拉致されながら余裕たっぷりに講釈を垂れる姿など悪役としての余裕もたっぷり。ドラマ的にもキャラクターとして面白く今回は個性のある悪役がほぼメル・ギブソン一人ということもあって(後は「007 消されたライセンス」の悪役サンチェスや数多くのアクション映画で悪役を務めたロバート・デヴィがメル・ギブソンのストーンバンクスの取引相手として登場)、結構独擅場な趣もあった。
 一方味方として新登場するウェズリー・スナイプスアントニオ・バンデラス、そしてレギュラーであるドルフ・ラングレンの3人は自身の主演作もある一方で過去に直接スライ主演作で敵役として共演したこともある間柄。その辺も虚実入り交じって面白い。

 不発の核弾頭ドルフ・ラングレンはもちろん「ロッキーⅣ」。ソ連の産んだ殺人ボクシングマシーンイワン・ドラコでロッキー・バルボアの前に立ちふさがりロッキーの親友アポロを殴り殺した。「ロッキー」シリーズ中では一番といってもいい知名度を誇る作品だがシリーズ全体で見ると4だけがちょっと異色なんだよね。その後紆余曲折あって現在に至るがこの人はMIT卒でモデルで極真空手の名手という俳優以前の履歴書は黄金に輝いていて、フルブライト留学生としてMIT入学した、という経歴はそのまま前作でガンナーの経歴に生かされている(がネタなのか本当にそういう設定なのかちょっと分からない)。1作目では裏切ったりしたがもう安心安全の仲間としてそこにいるだけでほっとする存在に。以前も「ちょっとハンサムなリチャード・キールリチャード・キールは今年9月に亡くなりました。R.I.P.)」と言っていたが、同じリチャード・キールでも凶暴な面よりも愉快な面でもキールっぽい。


 ウェズリー・スナイプスは「デモリションマン」で管理された近未来にやってきた戦争と暴力の20世紀からの使者サイモン・フェニックスを演じスライと対戦。金髪にやけに格好いいアーマーを身につけ「北斗の拳」のモヒカンライクなルックスで近未来をメチャクチャにした。ユーモアと残酷さが一体となったサイモンを楽しそうに演じていたのが印象的。そしていい加減貝殻の使い方を教えてくれませんかね(しつこい)。
 今回はスワジランドでムショ暮らしをする元エクスペンダブルズとして登場。ウェズリー・スナイプスも私生活の乱行で知られているが、この劇中の服役をスナイプスの脱税での服役とかぶせる楽屋ネタというか虚実入り混じった設定。またナイフ使いでもあり同じナイフ使いであるステイサムとスライを取りあう仲。後半はメンバーに馴染み、良い意味であまり見せ場はなくなるが前半の活躍は見もの。
 そしてアントニオ・バンデラス。この人は今回ある意味一番儲け役だったのではないだろうか。僕はこの人は「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のアルマン役で知ってその後に「デスペラード」か。いずれにしろラテンの熱い男というイメージ。この人もアクション映画に主演してヒットさせる一方一般作品にも出ていてハリソン・フォード同様そんなにアクションスターというイメージは大きくない。スライとは過去に「暗殺者」で対戦済み。この時は殺し屋の頂点に立つスライを殺し頂上に立とうとする若手の殺し屋を熱く(というか暑苦しく)演じてました。まだそれほど一般的でなかったネットのチャットでスライと会話するシーンで熱くなるあまりモニターごしに「Fuck!」を連発するだけでは飽きたらずキーボードで「FUCK!」を連発しモニターをFUCK!で埋めるシーンが有名ですね。ちなみにこの「暗殺者」は「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟(現姉弟)の初脚本作品。
 本作ではバーニーの新メンバーオーディションで猿のようにすばしっこい男として登場し、年齢をごまかしていたため若手で固めようとしていたバーニーに落とされる。その後その新メンバーたちがストーンバンクスに捕まった時点押しかけ入隊。とにかくマシンガントークで喋りまくりとても小柄に見える事もあってこれまでのアントニオ・バンデラスの印象とはもう別物。僕は最初ジェット・リー再登場かと思ったぐらい。新人メンバーの中ではキャリアがあることもあって後半はアントニオ・バンデラスの見せ場が多い。
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 その他、レギュラーの登場人物にジェイソン・ステイサムのリー・クリスマスやランディ・クトゥーアやテリー・クルーズも再登場。この辺は今回あんまり印象に残る出番は無くてちょっと残念。ただランディ・クトゥーアとテリー・クルーズは1作目の時点では有名どころだらけの中で「こいつ誰?」状態だったのだが、作品を重ねる中で十分チームに馴染んで大物感を出して来たのはさすが。最も僕も二人の出演作なんてこの「エクスペンダブルズ」シリーズぐらいしか観ていないのだけれど(あ、ランディ・クトゥーアは「ヘラクレス」でもちょっと触れた「スコーピオン・キング2」でラスボスやってました)。
 一度解散したチームに代わって新しくスライが組織した若手メンバーが4人いるが全員どこかで見たことあるような無いような、誰か他のスターに似ているような似ていないような「THE若手!」という感じ。純粋な役者のほか、ボクシングや格闘技から役者に転向した人なんかもいるみたい。元々僕はこのシリーズはシルベスター・スタローンからジェイソン・ステイサムへのアクションスター王者ベルトの禅譲のためのもの、という意味合いもあると思っているのだが、ステイサムより更に若手が出てきてしまったためちょっとその辺は今回は薄めか。
 若手ながらそれぞれ各分野のプロフェッショナルで中盤この若手たちが中心となって行うストーンバンクス拉致作戦はこの「エクスペンダブルズ」には似つかわしくない知的で21世紀な作戦。通常の作品だったら緻密で説得力溢れる作戦も、でもこの作品の80年代風アクションの中では逆にイラッとしてしまう。なぜお前たちは正面から挑まないのか!というかこの一連のミッションはおそらくトム・クルーズ主演、J・J・エイブラムス監督の「MI3(ミッション:インポッシブルⅢ)」のパクリというかオマージュというか引用というかかなり意識した物だろう。さらにスライがその作戦があんまり好みではない様子を示したりする。せっかく若手がやる気見せてるんだし彼らに任せてみるか、という感じ。
 その作戦は成功し、ストーンバンクスを拉致するもその移送中にストーンバンクスの余裕綽々な挑発に乗ったりしていると突然の身柄奪還作戦遭う、というこの展開も「MI3」のフィリップ・シーモア・ホフマンの奪還シーンとほぼ同展開。21世紀を代表するアクション映画シリーズそっくりのシーンを入れることでこの映画の80年代風アクションを際立たせているのかな、と思う。
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 シュワはもうゲスト出演と言うよりはメインではないけれどきちんとレギュラーという感じでちょこちょこ登場し、クライマックスではハリソン・フォードジェット・リーとともにアクションにも加わる。ただもうシュワ自身は自分の主演映画では80年代風のアクション映画はやらないのではないかなと思う。この後に見た「サボタージュ」もきちんと21世紀に見合った骨太な映画になっていたし、その一方でこういう主演ではないスポット参戦で昔のイメージも残すという感じではないのか。と言いつつ「ターミネーター」の新作も待機しているそうですが。
 ジェット・リーは前作で序盤だけ登場し、何の脈絡もなく退場。クライマックスでまた駆けつけるかな、思いきやそのまま出番なく終わるという歪な出演だったが、今回はクライマックスだけ登場。しかしエピローグではシュワとともに冗談なのか本気なのか分からぬカミングアウトを見せて場を攫うのだった。

 今回は前回好評だった日本語吹替は無し。これは絶対吹替で見たほうが面白い映画だと思うなあ。吹替版が劇場公開されると字幕派の人からは批難されることも多いけれど、例えば3D作品だったり、こういうアクションが激しい作品だったりは絶対吹替のほうが良いと思う。ましてやこの映画なんてスライもシュワも吹替で馴染んでいるスターだし。次回は是非吹替版の公開もお願いします(ただし日本語版主題歌とかはいらないよ!)
 すでに4の企画もあるそうで、数年に一回のイベント映画として続けていくと良いと思う。次は誰だろうなあ。セガールハルク・ホーガン?80年代から来た消耗品たちの戦いは続く、そう21世紀でも。

*1:双子だとかクローンだとか方法はいくらでもあったでしょうよ。次回に期待

*2:新作の予告編が公開されましたね。ハリソンはこちらにも出演するようです

*3:シリーズ最新作が「怒りのデスロード」のタイトルで公開待機!