The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

オレ、グリムロック三度ノ飯ヨリ爆発好キ! トランスフォーマー/ロストエイジ

 2007年から始まった実写版「トランスフォーマー」シリーズももう4作目。前作「ダークサイド・ムーン」でもうやり尽くしたのか、一時はマイケル・ベイは降板するとか、シリーズ仕切り直しとか色々言われてきたけれど蓋を開ければベイ継続の第4弾!まだまだトランスフォーマーでやれることは尽きないのです!「トランスフォーマー/ロストエイジ」観賞。IMAX3Dです(懲りない)。

物語

 シカゴでのオートボットディセプティコンの最終決戦から数年。今や人類はオートボットも敵とみなしトランスフォーマー狩りが行われていた。テキサスでよろず発明家を営むケイドは古びたトレーラーを購入する。調べていく内にそのトレーラーがトランスフォーマーであったことが判明する。仲間の一人が当局に連絡してしまいケイドたちはCIAに狙われるがその危機を救ったのは壊れかけたトレーラー=オプティマス・プライムであった。逃亡する中復活したオプティマス・プライムの元へ続々とオートボットの生き残りが集結。CIAの狙いはシード(種)と呼ばれ全てを金属に変える物質。これを使いトランスフォーミウムと呼ばれる素材を用いて人造トランスフォーマーを生み出すこと。
 CIAに味方するのはロックダウンと呼ばれる宇宙のハンター。彼は創造主の命でプライムや希少なトランスフォーマーを収集していた。その過程としてCIAのトランスフォーマー狩りに協力していたのだ。やがて人造トランスフォーマーを建造するKSIというメーカーはメガトロンの残骸を元にオプティマス・プライム風のトランスフォーマーガルバトロンを作り出していた…

前作の感想はこちら。

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 原題は「TRANSFORMERS AGE OF EXTINCTION」で「絶滅する時代」とか何とか。邦題の「ロスト・エイジ」の「失われた時代」とほぼ意味としては同じだけれど邦題が主に「ロストワールド(失われた世界)」などすでに絶滅した恐竜、この場合今回登場する恐竜型トランスフォーマーダイノボットたちを表しているが原題の方はそれに加えて今まさに人間に追い詰められ絶滅に追いやられようとしているトランスフォーマー(主にオートボット)を表現しているようにも思える。結果としてダイノボットの出番はそれほど多くないので原題の方が良かったかな、という気はする。
 今回は明確にストーリーは「ダークサイド・ムーン」から続いているが人間側のキャストが総入れ替えとなっている。トランスフォーマー側ではオプティマス・プライムとバンブルビーのみそのまま継続で後は新キャラ。ただ序盤でラチエットが大変な目に合うのが悲しい。ラチェットの死と言うとやはり「トランスフォーマー ザ・ムービー*1」の口から煙を出して倒されるラチェットとアイアンハイドなどを思い出すわけだが、今回はやはり前作で一応の区切りがついたということで「ザ・ムービー」を連想させる描写も多い。というかこのシリーズ何気にG1と呼ばれる最初のTVシリーズからきちんと設定や物語などが引用されていて実写だけというよりもTVシリーズを見てきたファンの方が楽しめる作品になっていると思う。それは今回も同様で更に最近のシリーズからも引用はされていて決して映画ファンだけのものではないのだ。

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 あと毎回言っているけれどこのシリーズに関して言えば元の「トランスフォーマー」のアニメなどがかなりおおらかな作品であったため「トランスフォーマーでなおかつマイケル・ベイなんだから矛盾なんて気にしないし他の作品に期待するようなきちんとした矛盾無き物語も特に求めていない」という姿勢で臨んでいることも確か。例えるならゆでたまごの「キン肉マン」、宮下あきらの「魁!男塾」、平松伸二の各作品などを読むときの感覚に近い*2。とはいえ、今回よく言われているような「内容が全く無い」なんてことはなく、最低限トランスフォーマーとしての内容はある。また上映時間が確かに長いが全然耐えられると思いますよ。これも毎回言っているけれど、「長い作品=ダメ」みたいな風潮には全く賛同できないので単に今の映画ファンは長時間に耐えられないんだなあ、と思ってしまう*3。後は劇中に特定の商品が出てきてあたかもCMのようである、と言う「プロダクトプレイスメント」とかいうやつか。確かに劇中で意味なく中国製飲料を飲んだりする描写がある。多少は不自然であるけれどこれがベイのコメディに近い演出で成されてるから特に変ということもない気がする。大体、こんなの今に始まったことではなく、「ゴジラ1985」なんてカメラ目線でぐびぐびドクター・ペッパー飲んだりしてたよ!中国が舞台となったりすることについては単に今の世界で中国の存在感が大きくなったんだろうなあ、というだけだと思う。日本が80年代に経済力でグイグイ言わせてた時代もあったんだし。とにかくこの映画の評論に関しては元のトランスフォーマーに対して愛を感じない、所詮おもちゃの映画だろ的な物が多く馬鹿にしてりゃOKみたいな批評が多くてちょっと不快。もちろん愛があればいいってわけでもないけれど。

 人間キャラとして新しく登場するのはケイド・イェーガー役にマーク・ウォールバーグ*4。彼は「ブギーナイツ」劇中で「トランスフォマー ザ・ムービー」の主題歌であるスタン・ブッシュの「THE TOUCH」を歌ってましたね。この曲は名曲であの時代を代表する一曲。実写版でもいつかこの曲がクライマックスでかかる日を夢見ていますよ、僕は。

 そしてスタン・ブッシュのオリジナル。

 このケイドはいわゆるガレージの発明家でガラクタを集めてきては修理したりそこから発明品を作ったりする人。そのDIYあふれる姿は前作までの主人公であるサム・ウィトウィッキーよりもアニメのスパイク(一応サムはG1のスパイクである)やその父親のスパークプラグに近い。他には娘とその恋人がいるがこの娘(名前がテッサなのでどうしても後述のクインテッサ星人を連想してしまう)が以前のミケーラやカーリーを思わせる分かりやすい色気の持ち主、セクシーさでもうこのへんは好みが分かりやすいというかなんというか。娘の恋人であるシェーンはイケメンだしよく顧みると役立っているのだが映画全体ではなんだか役に立った印象のない不運の持ち主。そして序盤で出てくるケイドの助手は「クローバーフィールド」のナードカメラマンT・J・ミラー
 前作までのシーモアに当たるのだろうか、KSIの代表がスタンリー・トゥッチ。ケイドたちと悪役であるCIAのハロルドたちの中間に位置し行ったり来たりする役柄だが基本的には善良な人物であるようだ。トゥッチの癖の強いキャラで強い印象を残す。
 敵役はCIAの高官ハロルドにケルシー・グラマー。アメリカ政府にはあくまでディセプティコン狩りと申請しているがその実オートボットも狩りの対象だった。今回は人類がシカゴの甚大な被害を受けてトランスフォーマー狩りを行っている、ということになっているが一応一般人や大統領周辺は、あくまで悪いのはディセプティコンであってオートボットではないよ、という姿勢。それをハロルドはロックダウンと組んでオートボットも狩りの対象にしているのだ。ケルシー・グラマーが演じているが、この役柄はある意味「X-MEN ファイナル・ディシジョン」のビーストと対象になるような役柄といえる。
 
 オートボット側からはオプティマス・プライムとバンブルビーのみが継続参戦。オートボットはそれぞれオプティマス・プライム、バンブルビー、ドリフト、クロスヘアーズ、ハウンドが登場(ラチェットは序盤で退場)。オプティマス・プライムは最初は別のトラックをビークルモードとしているがこれはG1のコンボイを元にしている。この時はかなりボロボロだがこれは本当にボロボロと言うより多分に身を隠すためにポンコツ車を装っている、という部分も大きいようだ(後になんの説明もなくいつものファイアーターンのトレーラートラックをトランスキャニングしいつもの派手なオプティマス・プライムになる)。相変わらず口が悪いがこれはいつものこと。
 バンブルビーも相変わらずラジオを利用して喋っているが大分やさぐれており、行動も荒っぽくどちらかと言うとクリフ、という感じ。このバンブルビーの様子からもしかしたら前作までの人間側主人公、サムたちは密かにCIAに消されたのではないか、というところまで想像が及んでしまう。
 新キャラクターはドリフト、クロスヘアーズ、ハウンドの三体でドリフトはヘリコプターとスポーツカーに変形するトリプルチェンジャー。ロボットモードでは日本の鎧武者のような姿を取り、古めかしい喋り方をする。声を担当しているのは「GODZILLA」でも活躍の渡辺謙オプティマス・プライムを「センセイ」と呼んでいたりしたかな(日本語吹替は別の人のようです)。このドリフトも比較的最近のキャラクターでアニメではなくIDWのコミックス出身。元はディセプティコンという設定だそうで、同じ鎧武者がモチーフのG1のプリテンダーであるブラジオンなんかも思い出す。また日本の武士や忍者キャラと言うと「トランスフォーマー アニメイテッド」のプロールあたりも参考されているか。後は新シリーズのサイバトロン側のトリプルチェンジャーということでやはりヘリコプターとスポーツカーに変形するスプラングも連想。
 クロスヘアーズは飄々としたムードメイカーという感じでロボットモードでのロングコートのようになる部分が格好いい。ハウンドは軍用トラックに変形。いかにも歴戦の軍人という豪快親父。元はG1のジープに変形するキャラクターだが、どちらかと言おうとルックス的にもキャラクター的にもこちらも「アニメイテッド」のアイアンハイド(英語ではBulkhead)を連想させる。
 そして今回の目玉であるグリムロックはじめのダイノボット。ただ、ダイノボットに注目すると彼らは終盤で一気に場を攫うが出番自体はそう多くない。セリフも殆ど無く人格のあるキャラクターとしてみるとちょっと物足りない。ダイノボットはG1のアニメでは恐竜に触発されたホイルジャックが作り上げた新しいトランスフォーマーで当初はかなり凶暴で力を信奉するため、サイバトロンよりデストロンに共感を得てしまうようなキャラクターたちだった。彼らはスカイリンクスやデストロンのアニマトロンなどと共に「野獣戦士」と称せられ、知能は低いが(最もスカイリンクスは外見が野獣なだけで登場キャラクターでも最もウィットに富んだセリフを喋るようなインテリであるためダイノボットと一緒に扱われるのは屈辱だったようだ)、そのパワーは絶大でいくどもデストロンを(そしてサイバトロンも)苦しめた。「ザ・ムービー」以降はユニークな面も覗かせ、リーダーであるティラノサウルスに変形するグリムロックはシリーズでも屈指の人気キャラクターである。
 今回はグリムロックのほかトリケラトプスに変形するスラッグ、スピノザウルスに変形するスコーン、そして双頭のプテラノドンに変形するストレイフの四体が登場。彼らはアニメではいわゆるインディアン語というか「ME GRIMLOCK NO LIKE YOU!(オレ、グリムロックお前のコト嫌い)」というような喋り方をするのが特徴だが、今回はその辺はほぼ確認できず。彼らに期待して観に行くとちょっと物足りないかも。

 新しく登場する敵ロックダウンは「トランスフォーマーアニメイテッド」から登場したキャラクターで一応ディセプティコンということになっているけれど厳密には第3勢力。「アニメイテッド」では独立した賞金稼ぎとして登場、今回は”創造主”の命令でプライムたちを収集しに来た。スーパーカーに変形。今回のメインの敵と言えるがそのルックスは剃りの入った坊主頭風というかなり渋いもの。ただゴテゴテデコレートしがちな映画版のキャラではそのボクサーのようなスタイルがかなりスマート。


 人造トランスフォーマーという概念はG1の頃からすでにあってスパークプラグはサイバトロンXを作ったりしているし、日本人科学者の作ったくのいちロボナイトバードなんかも出てくる。今回登場のガルバトロンとスティンガーはメガトロンの残骸を元にオプティマス・プライムとバンブルビーをモデルに作ったけれど何故か勝手にメガトロンに似てしまうという代物。最初はKSIの命令で動くがやがてメガトロンとしての自我を取り戻し…という展開で名前から分かる通りこれまでのアニメ同様ガルバトロンはメガトロンの進化系として出てくる。実写シリーズではメガトロンの声を演じていたのはヒューゴ・ウィーヴィングだったが今回はG1のアニメシリーズでメガトロン=ガルバトロンを演じたフランク・ウェルカー(ただしこれまでも実写版を元にしたゲームなどではフランク・ウェルカーがメガトロンの声を当てていた)。ちなみに「ザ・ムービー」でのガルバトロンの声はミスター・スポックことレナード・ニモイである。
 「ザ・ムービー」でのガルバトロンコンボイとの対決で致命傷を負い宇宙に放逐された(放逐したのはもちろんスタースクリーム)メガトロンが星帝ユニクロンの力で生まれ変わった姿。人格的にはメガトロンとガルバトロンは同一だが、「ザ・ムービー」ラストでロディマスに宇宙の彼方へ放り投げられその後「2010」冒頭までとある星の溶岩の中で犬神家状態で眠りについていた。この時に頭の回路が一部イカれて(絶えずスパークを放っている)ため冷静だったメガトロンに比べ凶暴になっており「2010」では部下のサイクロナスに精神治療惑星に強制入院されたりしている(最終的にガルバトロンが惑星ごと破壊した)。

 メガトロンがガルバトロンに生まれ変わるというのはシリーズでは定例の流れだがこれに人類が関与するというのはやはり今回影響の強い「アニメイテッド」からの設定だと思う。「アニメイテッド」では頭だけになったメガトロンが言葉巧みに人間のロボット開発者を騙し自分のボディを作らせていた。今回本当に「アニメイテッド」からの流用が多い。

 ガルバトロンとともに人造トランスフォーマーバンブルビーがモデルなのがスティンガーでこれら人造トランスフォーマー改め新ディセプティコンはトランスフォームがもう変形でなくメタモルフォーゼという感じ。いったん全てが粒子状になりトラックなどビークルモードを形作る。これはもうゲッターロボの変形に近い。
 トランスフォーマーの変形について言うと元々トランスフォーマーは日常動作の延長線上として変形を繰り返していて日本のロボットアニメでありがちなバンクフィルムを使って決めシーンとしての変形というのとはぜんぜん違う。そしてその辺が当時日本のロボットアニメに少し飽きてきた視聴者に新鮮な驚きを与えた部分でもある。実写版でも要所々々でキメキメの変形シーンもあるが基本的にはこの、「日常動作の延長線上にある変形」というのが守られていると思う。
 ちなみに創造主として出てくるのはほんの一瞬、手だけなんだけれどこれが明らかに機械生命体ではない有機生命体の手でおそらくクインテッサ星人であると思われます。クインテッサ星人セイバートロン星の本来の種族でトランスフォーマーの先祖となるロボットの生みの親。ロボットを奴隷としてこき使っていたら反乱されて追い出された宇宙にその悪名を轟かせる「死の商人」。そういう意味だとロックダウンなんかは「2010」に出てきたスカックスゾイドを思わせますね。


 実は「トランスフォーマー」というシリーズ(それは映画だけでなくアニメやトイなどを含む)に対しての耐性がどのくらいあるかによって大きく評価の分かれる作品だと思う。僕はこのシリーズが好きだが特にマイケル・ベイという監督を評価しているわけでもない(というかこのシリーズ以外は嫌いな物も多い)。それでもベイならではの爆発アクションは健在だし、もうCGで描かれた実写トランスフォーマー自体には特に驚きはないものの、それゆえにキャラクターとして活き活きとしているし、やはり劇場で観るにふさわしい作品だとは思う。
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トランスフォーマー アニメイテッド Vol.1 [DVD]

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 ドリフトがスプラングを連想させると書いたが、今回はガルバトロンも登場(本格的な活躍は次回以降か)し、なんとなくG1の第3シーズン(トランスフォーマー2010)への移行、という印象が強い。ということでそろそろオートボット側もオプティマス・プライムとバンブルビーではなくロディマスとウルトラマグナスとかが出てきてほしいなあ、とも思う。そして可能ならやはり実写版で星帝ユニクロンの登場が待たれるのです!*5

*1:1985年にアメリカで公開された最初のTVシリーズの第1、2シリーズ(戦え!超ロボット生命体」トランスフォーマー)と第3シリーズ(2010)を結ぶ傑作アニメ

*2:キン肉マン」では悪魔将軍に技をかけられているジェロニモとそれをリングサイドで見ているジェロニモ、という描写が有名だが、「トランスフォーマー」でも合体兵士とそれを構成するトランスフォーマーが同じ場面に映っている(設定上ありえない)などという作画ミスがあったりする

*3:もちろんトイレが近いので辛いとか腰に悪いとかそういう理由は分かります。またこのぐらい長い作品なら昔のように中休みを入れてもいいと思う

*4:イェーガーという姓は「パシフィック・リム」由来かな

*5:次回作はすでに製作は決定している模様。ただマイケル・ベイは降板を宣言している。ただし、これは毎回言っているようにも思うので信用は出来ない