The Spirit in the Bottle

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嘘だと言ってよマーニー! 思い出のマーニー

 日本を代表するアニメーション制作スタジオといえばジブリ。宮粼駿と高畑勲のダブルビッグネームを押し立てて世界的にも有名な作品を送り続けていた。僕はというと実は「もののけ姫」を劇場で観て以来ジブリ作品は劇場では観ていない(TVの金曜ロードショーで放映されたものは見ている。あくまで劇場で、という話)。「もののけ姫」の時もあれは夏の公開だと思ったが僕が観たのはその年の12月か年明けて1月だったと記憶している。なんだかあまりに上映期間が長すぎて「僕が観るまで終わらないんじゃないか」と自己中心的な被害妄想に陥って観に行ったのだった。今回は試写会が当たったのでおよそ17年ぶりにジブリ作品を劇場まで足を運んで観たのだった。「思い出のマーニー」を観賞。

物語

 札幌で暮らす喘息持ちの少女アンナは療養のため養母の親戚のいる海辺の田舎町で人夏暮らすことに。その街で古い洋館を見つける。「湿っ地屋敷」と地元の住人に呼ばれるその洋館にアンナは親しみを覚える。アンナは街の祭りに地元の少女たちと出かけるがうまく行かずつい悪口を言って逃げ出してしまう。湿っ地屋敷に灯りが付いているのを見たアンナは思わず近づくがそこにはマーニーと呼ばれる金髪の少女がいた。アンナはマーニーと親友になりこの交際を2人だけの秘密とした。頻繁に会うようになるが、湿っ地屋敷は昼の間はまるで人が住んでいるようには思えないのだった…

 キャッチコピーでは「ジブリ初のダブルヒロイン」と謳われていたりするけれど、「となりのトトロ」のサツキとメイは違うのかなーと思ったり、あと個人的には「風の谷のナウシカ」はナウシカクシャナ様のダブルヒロインだし、「天空の城ラピュタ」はシータとドーラのダブルヒロインですよ。とは言ってもヒーロー役が登場せず明確に主役がダブルヒロインということでは確かに「ジブリ初」なのかもしれない。
 監督は「借りぐらしのアリエッティ」の米林宏昌。「借りぐらしのアリエッティ」は脚本が宮粼駿だったが、今回はノータッチ。というかこの作品は「脱宮崎」を目指した部分もあるらしい。前作「借りぐらしのアリエッティ」に関してはTVの放送で見ただけだが、人間の少年がまるで目を開けたまま寝てる様がマネキンみたいで気持ち悪いな、と思ったりした。

 声優はアンナに高月彩良。そしてマーニーに有村架純高月彩良はアイドルグループbump.yの元メンバーの一人で、僕もリリースイベントなどで見かけたことがある。年齢はまだ16だが年に比べて大人っぽく長身でドラマなどでは大人の役も多い。最初アンナの声を聞いた時はあまりに棒読みっぽさにびっくりしたのだがドラマなどでの彼女の演技を見るとこれは演出によるものではないかと思う。実際年齢の割に大人びている、という彼女の特徴はそのまま劇中のアンナと共通していて、ボーイッシュな部分なんかも演者とキャラクターは似ている。この棒読みっぽさはあまり感情を表に出さない冒頭のアンナには合っていて、それがだんだん感情豊かになっていく様子が分かるものに。実際のアフレコが順繰りに録られたのかは分からないけれど、一見(一聴?)下手に思える彼女の演技が徐々にうまくなっていく様子と心を閉ざしたアンナがマーニーとの出会いやそこでの体験を元に明るくなっていく様子が被るので最終的には良かったのだと思う。最初はびっくりしたけどね。
 マーニーの有村架純はうまかったと思う。ちょっと声が低い(いわゆるアニメ声とはまた違うがアニメでの演技は実写の演技よりちょっと声を高めにしたり誇張しないと逆に不自然に感じる)けど天真爛漫でちょっと自分勝手なマーニーをうまく表現していたと思うし不思議な感じはよく出ていた。
 その他にはアンナがお世話になる大岩夫妻の夫のほうに寺島進。ただこれはキャラクターにもよるのだと思うけれどいわゆる下手な吹き替え、タレント吹き替えと聞いて思い浮かぶ感じの演技でちょっと観ていて辛かった。事前に出ていると知っていたのは高月彩良有村架純の二人だけで彼の声を聴いて寺島進とわかったわけではないけれど、プロの声優ではないな、とわかったのも確か。
 その他黒木瞳吉行和子、森山良子、松嶋菜々子あたりが出ていて前者2人は声で顔が浮かんだけれど特段不自然ではなかったのは良かった。あとは北海道が舞台ということなのかTEAM NACKSのメンバーが出ているけれど5人まとまって出てくるわけではなく脇役の男性キャラクターをそれぞれ引き受けてる感じか。僕はエンドクレジットを見るまで気付かなかった。
 大岩夫妻や花沢さん(正式名称忘れたのでサザエさんから)は「善良ぶってる意地の悪い人」にしか見えなかったのは残念だなあ。一方で後半出てくるさやかちゃんは凄い良いキャラクターですよ。この映画でのイチオシ。演じたのは杉咲花さん。
 絵柄的にはそれほど事前に思うより宮粼駿色は少なかったと思う。キャラクターデザインは一見すると宮粼駿の絵柄だが、どちらかと言うと名作劇場の「小公女セーラ」とかあのあたりを思わせる。ただ「アリエッティ」の少年もそうだけど今回のアンナも繊細な表情のデザインは乏しくて(これはキャラクターがおとなしいからという意味ではない)マネキンぽく見える時があった。脇のキャラクターは美形じゃなくてもいいのでいくらでも表情崩せるんだけどメインの美形キャラクターはその辺難しいのかな、一方でマーニーは表情豊かで良かったと思うけれど。
 あとは気になったのは涙の表現。いわゆる滝のような涙があふれるシーンは感動より思わず笑ってしまった。これが島本和彦だったりあるいは今川泰宏作品だったりすればその激しい涙は作品の雰囲気にあって笑いを越えて感動を呼び起こせるがこの涙は正直失笑してしまう。米林監督、まだそういう繊細な感情表現は苦手なのかな。
 物語としては後述する舞台変更によってちょっと不自然なところはあったけれど良かったと思います。アンナがオバケなんていないわ、みたいなことを言うシーンでは「本人の前で言ってやるなよ…」とか思ったのだがいわゆる幽霊ものともちょっと違うのであるな。ちなみに僕は最初に予告編を見た時連想したのは「ねじの回転」でした。超自然的なスリラーの要素もないでもないが、そういうのを求める映画でもないのでこれでいいのであろう。破った日記とか幼いアンナが抱えていた人形など伏線?と思わせて特になんでもないのはどうなんだろうか。
 先にヒーロー役が登場しない、と書いたが確かにこの作品ではいわゆる恋の相手のとなる男の子は登場しない。厳密には一人登場するけれど基本的に物語の枠外。そして女性同士の愛情、恋人ではなく家族の愛情が重要なところなんかは「アナと雪の女王」「マレフィセント」あたりと共通していて、今日のトレンドでもあるのだろう。他にもヒットすべき作品はあるだろうとか思わないでもないですがもしも今年の興行収入ベスト3が「アナと雪の女王」「マレフィセント」「思い出のマーニー」なんてことになったらそれはそれで愉快だと思わないでもない。

 本作はイギリスのジョーン・G・ロビンソンの児童文学「思い出のマーニーWhen Marnie Was There」を原作としていて、原作では当然舞台はイギリスである。映画では日本の北海道が舞台になっているが正直に言うとなぜ北海道なのかはよくわからない。北海道らしさが特に出ているわけでもない*1。「借りぐらしのアリエッティ」も原作は外国のものだが、舞台を現代の日本にしていた。しかし「アリエッティ」も「マーニー」も同様に日本にしなければならなかったかというと疑問だ。日本人出演で実写映画化というなら日本を舞台にする意味も分かるがアニメによる映画化なのだからそのままイギリスを舞台にしても良かったと思う。
 そして日本を舞台にする割に妙に西洋風な意匠を多く残しているのも徹底していないようでちょっと腹ただしい。「アリエッティ」で言うならアリエッティたちだし(一応縄文風というか原日本人的な小人も登場したけれど)、本作で言うならマーニーそのものである。アンナがどうやら白人の血を引いているらしいというのは漠然とアンナとマーニーの関連を示すヒントとなるがやはり日本の描写だと思うと不自然な部分も多い。やるなら徹底的に日本に置き変える方がいいと思う。

 いろいろ細かく書いたけれど面白かったです。やはりくさってもジブリ。作品のクオリティは高くそれ故に逆に他の作品なら気にならない粗が目立ってしまうという部分もあるでしょう。

 主題歌のプリシラ・アーンの「Fine On The Outside」は凄い良かったです!

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 すげえ前の記事なので笑って流してもらえると幸い。

記事タイトルはこちらから。

*1:最も当初は宮粼駿の意向で瀬戸内になるかもしれなかったという