The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

往きて還りし物語 X-MEN フューチャー&パスト


 アメリカ本国では興行成績で「GODZILLA」を抜いたという「X-MEN フューチャー&パスト」。日本ではどうなるか分からないですが*1、それでも頑張って欲しいですね。なんといっても「X-MEN」は21世紀のマーベルコミックスの実写映画化における躍進を決定づけた作品ですし、およそ15年間(正確には14年だけど今後もシリーズが続くのは間違いないのでまあキリの良い所で)長期的に間を空けること無く作品を送り続けたことは賞賛に値しますね。

物語

2023年、ミュータントを捕獲することを目的として作られたロボット「センチネル」の暴走によって地上は壊滅へと向かっていた。生き延びたミュータントたちはセンチネルの襲撃を受けるとシャドウキャットがビショップの意識を少し前に遡らせることによって危険を知らせ、それによってセンチネルの襲撃を回避、逃亡を繰り返していた。しかしこのままでは全滅は時間の問題。プロフェッサーXはかつての宿敵マグニートーともっと根源的な解決を図ろうと決意する。
 きっかけは1973年。センチネルの開発者ボリバー・トラスクをミスティークが暗殺した事件だ。公衆の面前で行われたこの暗殺はミュータントは危険だというイメージを決定づけ、更に捕らわれたミスティークのDNAがセンチネルの驚異的な進化の元となっていた。
 プロフェッサーXは50年前にウルヴァリンの意識を送ることでウルヴァリン=ローガンがかつてのプロフェッサーXとマグニートーを和解させミスティークの暗殺を事前に回避させることを狙う。50年前という長期的なタイムトラベルに耐えられるのはローガンしかいないのだ。しかしローガンの意識が50年前に言っているその間キティは動くことはできず、次にセンチネルの襲撃を受ければ終わりだ。かくして最後の作戦が開始された。
 1973年、ローガンの意識は当時のローガンの肉体に宿り、彼は早速プロフェッサーXを尋ねる。しかし、学園は閉鎖され、プロフェッサーX=チャールズ・エグゼビアは下半身不随の治療のためビーストの作った薬の中毒となり世捨て人のような生活を送っていた。さらにマグニートー=エリック・レーンシャーはケネディ大統領暗殺の容疑でペンタゴンの地下深くに囚われていた…

前作の感想はこちら。

 シリーズは続くことを前提としていなかったせいか、矛盾はいたるところにみられる。というか一作目の段階でも映画本編、コミカライズ、外伝コミックスなどでそれぞれ矛盾する描写があったのだな。ただ、いい意味で特に無理にその矛盾を解消する気は見受けられないのもこのシリーズのいいところ。今回も過去のシリーズや原作との矛盾、相違点はたくさんあるけれど、それで映画としての楽しさが減るわけではないのです。この感想・解説では映像上で起きたことは全て実際に起きたこととして進めていく。
 今回は「X-MEN3」と「X-MEN ファースト・ジェネレーション(以下FC)」の両方の続編ということで互いのキャストが登場。一部変更もあるけれど、基本的にキャストは継続。前作「FC」は旧シリーズの前日譚だったのだけれど、仕切り直しと捉えた人も多かったようだ。厳密には予告編でもきちんと旧シリーズの過去の出来事であることが示されていたのだけれど(物語的にもキャラクター的にも矛盾が多いのでそう捉えてしまうのも無理は無いのだけれど)。仕切り直しだったらミスティークのデザインとかまるっと変わってるだろうしね。あの作品はまだ若いチャールズとエリックのブロマンス的一面があったのでその路線を期待した人にはどうも本作は不評という面もあるようだ。
 監督は「FC」のマシュー・ヴォーンからシリーズの1,2を手掛けたブライアン・シンガーがカムバック。もともと「FC」でも最初のエリックと母親が離ればなれになるシーンが1の完全再現だったように「FC」でもシンガーの影響は濃かった。彼は3の製作時にシリーズを離れ「スーパーマン・リターンズ」の方に行ってしまったので(3の出来があまり芳しくなかったこともあって)裏切り者扱いされてしまうこともあるが、あれはどちらかと言うと制作サイド(20世紀FOX)のゴタゴタでなかなか撮影に入れずそれで時間を無駄にするぐらいなら、というのが正直なところ。僕に言わせればそもそもシンガーは「悪くない」のだ。
 映画は2023年の未来と、1973年の過去を互いに描く。原作は1981年に発表された「Days of Future Past」。2013年の暗黒の未来からシャドウキャット=キティ・プライドが意識を過去(原作発行当時の1980年)に送り暗黒未来を形作る決定打となる出来事の阻止に動く。映画ではもちろん色々と改変されているが大筋ではこの原作を受け継いでおり、マーベル映画でも珍しいぐらいきちんと一つのエピソードの映像化といえるかもしれない。

X-MEN:デイズ・オブ・フューチャーパスト (MARVEL)

X-MEN:デイズ・オブ・フューチャーパスト (MARVEL)

 前作の後、「FC」の続編としては次で1970年代、3作目で1980年代を舞台にした物語を描き最終的に「X-MEN」の1につながる、という噂を聞いていたのだが、それは半分正しく半分間違っていたわけだ。原作では1980年だが、更にさかのぼって1973年を舞台にしたのはなにかわけがあるのかな、と思うが前回がキューバ危機が背景にあったが、今回はベトナム戦争終結、和平協定が結ばれたのが1973年1月のことである。この通称「パリ協定」が背景となる。この時期原作の「X-MEN」の方はまだサイクロップスたちオリジナルメンバーが活躍していた時でこの2年後1975年に「GIANT-SIZE X-MEN」1号においてサイクロップス以外のメンバーの入れ替えを行い、国際色豊かなミュータントヒーロー、今回も出てくるウルヴァリン、ストーム、コロッサス、そして初登場となるウォーパスの兄であるサンダーバード、「X-MEN2」で登場したナイトクローラーなどがX-MENに参加することとなる。
 映画は20世紀FOXファンファーレの末尾がX-MENのテーマにつながり、さらに「FC」では無くなっていた暗転する際に「FOX」の「X」だけ少し残るという演出も復活している。それでは例によってキャラクターごとに*2

  • プロフェッサーX


 本名チャールズ・エグゼビア。前作のキューバ危機のあと自宅を利用して若いミュータントのための「恵まれし子らの学園」を運営していたが、今はそれも失敗に終わり、反世捨て人状態。前作ラストで下半身不随の車椅子生活となったが世話をするビーストの開発した薬で歩けるように。ただしこの薬はミュータントとしての能力を封じてしまう効果がありなおかつ彼はこの薬の中毒者となっている。1973年当時のチャールズを演じるのはジェームズ・マカヴォイ。前作ではプロフェッサーX役と聞いてフライングして剃ってしまい撮影はカツラをつけていたというが、この時点でもまだ頭髪は存在する、どころか当時の流行か長髪ですらある。ただビーストの薬が脚を治癒させる一方でミュータントとしての能力を奪うことから分かるように、頭髪や付随となった下半身が彼のミュータントしての能力(テレパス)と連動している事がわかり、未来のチャールズの姿はミュータントとして能力を使うことの代償とも言える。
 その未来、2023年のプロフェッサーXを演じるのはもちろんパトリック・スチュワート。シリーズでは「ウルヴァリン:SAMURAI」のラスト始めウルヴァリンのスピンオフ作品でも登場していたけれどメインでの活躍はかなり久しぶりな印象。3では死んでしまったはずだが、何故かラストでは生き返ったことを示唆されていた。これは劇中では明確に語られなかったが、チャールズには双子の兄がいてしかし彼は生まれつきの植物状態で(成長はした)3劇中で肉体を失ったチャールズはその植物状態だった双子の兄の肉体に自分の精神を宿した、ということらしい。この植物状態の兄は劇中ではモイラ・マグダガード(こちらではFCのCIAエージェントではなく原作に近い科学者)博士の元におり、3冒頭でちょこっとだけでてくる。でもまあ僕もすっかり忘れてたしちょっと乱暴な設定ではある。ただこの双子の兄という設定を知っておけば、例えば3の回想シーンでチャールズとエリックが少女のジーン・グレイを学校に向かい入れるシーンでチャールズが普通に歩いている部分とかが説明つくかもしれない(つまり必要に合わせてチャールズは兄の身体を利用していた?)。またチャ−ルズの兄弟ということだと3劇中では適用されなかったジャガーノートがコミックスではチャ−ルズの義理の兄だが設定を分けあったとも言えるし、後述するリージョンの設定も入っているのかも。
 ともあれ、プロフェッサーXは無事復活し未来から過去へと希望をつなぐ。未来のプロフェッサーXと過去のプロフェッサーXがウルヴァリンを通してしかしイメージ的には互いに正面を向いて相対するシーンは見どころといっていいだろう。テレパスとしての見せ場も過去のシリーズ随一だろう。今回はチャールズがプロフェッサーXとして改めてその道を確認する物語でもある。

 


 本名エリック・レーンシャー。前作でチャールズと袂を割った後、程なくして彼は捕まって長く拘束される事となる。1963年の11月ダラスにおいてジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関わった罪だ。エリックは弾道を変え銃弾をJFKに当てたとされる。彼自身の言によると実はJFKはミュータントであり、むしろ彼を救おうとしてしかし間に合わなかったということらしい。しかしJFKもスーパーマンの身代わりを務めたこともあったかと思えば「ウォッチメン」ではコメディアンに殺され、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」ではウィンター・ソルジャーに殺され、そして今回はマグニートーにもその疑惑が掛かるということで死んでなお大変であるなあ。知名度の割に具体的な業績はよくわからない人でもあるんだが。まあ、若くて格好良くて志半ばで悲劇的な死を遂げる、という部分は英雄的ではあるんだけれど。むしろ彼の政敵でダーティなイメージが強く、本作でもあんまりいい印象ではなく登場するニクソンのほうが業績では上回る気がするんだけど人気の差は圧倒的だよね。
 話がずれた。というわけで若きマグニートー国防総省地下深くに拘禁された状態で登場する。そこからウルヴァリンやチャールズ、ビーストたちが脱獄させる様子はちょっと「ミッション・インポッシブル」というか「スパイ大作戦」ぽい。ちなみに最初の「スパイ大作戦」のTVシリーズが終了したのは今回の舞台である1973年である。脱獄したエリックはチャールズたちと共に行動するが、やはりもうチャールズと相容れることはない。シリーズで度々用いられるチャールズとエリックのチェスのシーンは本作でも登場。ウルヴァリンに対しては今後(未来の)展開を予想させるような台詞なども登場。彼に台詞によってFCの時の仲間はエマ・フロスト、エンジェル(サルバドール)、アザゼル、そしてバンシーも捕らえられ人体実験の果てに殺されたことが判明している。その意味で彼の目的はより強固なものとなっただろう。
 また、3ではミュータントじゃなくなった途端ミスティークを見捨てるマグニートーが議論を読んだが、本作でもあっさりミスティークを殺そうとしたり目的のためにどこまでも冷徹になれるある意味悪役として成長した部分も見せる。
 若きマグニートーを演じるのはマイケル・ファスベンダー。どちらかと言うと悩み葛藤する前作に比べるともう自分の信念が確固たるものなっているので精神的な振れは少ない。その意味で後のイアン・マッケランが演じたマグニートーの姿をファスベンダーから連想するのが容易くなっている。そして未来のマグニートーを演じるイアン・マッケランは過去の行いから逆に「もしかしてこの土壇場で裏切るのかな」などと思わせつつセンチネル相手に奮闘する姿を見事に演じている。

 


 シリーズ皆勤賞の我らがローガン。今回は前作「ウルヴァリン:SAMURAI」のラストチャールズとマグニートーと再び出会ったあとの物語。ただ、あれからも10年近く経っているわけでそこから2023年のディストピアになるまで彼らがただボーっとしていたわけではないはずでその辺の説明が無かったのはちょっと残念。その辺は外伝のコミカライズとか出てるのかしら。原作ではキティの役割だった過去の自分へ意識を飛ばす役でやはり今回も主人公格。劇中では長い期間生きているローガンだからこそ可能、とされており、確かに50年前と現在で精神に大きな変化がないのはヒーリングファクターによって不老長寿を保っているローガンならでは。
 ただ、1973年はまだストライカーによるアダマンチウムの移植とそれによる記憶の喪失(「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」)の前であり、手から出る爪はただの骨だし、1973年に戻って早々のウルヴァリンはローガンではなくジミーと呼びかけられる。この記憶の傷がいいアクセントになっている。若きストライカーと出会い、未来に起こることでフラッシュバックを起こすのだ。
 これまではどちらかと言うと鉄砲玉的な役割が多かったウルヴァリンだが、ここではまだ未熟なチャールズとエリックを導く役割もある。前作におけるカメオ出演的なシーンがきちんと活かされていたのは面白かった。彼には今後1980年代にストライカーのもとで働きその後ウェポンX計画の被験者となる事態が待っているはずだがどうなることか(ラスト再びジミーに戻ったウルヴィーをストライカーが保護するシーンがありそれだけなら「ゼロ」に続くことを暗示するのだが、実はそのストライカーはミスティークの変身した姿であったことが分かり未来(1980〜2013)を不安定なものにしている。

 

  • ミスティーク


 シリーズではマグニートーの副官的な立場で格好良く印象的な悪役ではあったがそれでもメインのキャラクターではなかった。それがFCではチャールズとともに育った妹的存在であり、やがてマグニートーに惹かれ決別するという主役のひとりとして描かれた。本作でも彼女の行動が物語の基点であり、チャールズ、エリック、ローガンに続く主人公である。
 演じるのはジェニファー・ローレンスで今年も「ハンガー・ゲーム2(3も)」「アメリカン・ハッスル」など大活躍*3。文句なし美人というよりはちょっとふっくらしていて好みは分かれる風貌だと思うがそれでも十分魅力的。ジェームズ・マカヴォイからパトリック・スチュアートマイケル・ファスベンダーからイアン・マッケランへの変化は比較的容易に想像できるものの、ジェニファー・ローレンスからX-MEN1〜3で演じたレベッカ・ローミンへの変化は同じメイクであっても性格的にもそんなに似ていない事もあって想像が難しい(とはいえ彼女のミスティークも「X-MEN2」でのナイトクロウラー*4との会話などメインのドラマ中心人物では無かったものの重要人物ではあった)。だがむしろここでトラスクの暗殺に成功したことで(劇中で彼女の最初の殺人と言われている)その後の紆余曲折を経て「X-MEN」のミスティークへとつながったと見るべきだろう。
 元の時間軸では彼女がパリ協定の場でトラスクを暗殺することで一挙に「ミュータントは危険だ」という認識が一般人の間でできてしまう。しかし、最終的に彼女はマグニートーによる大統領殺害を自らが防ぐことでミュータントにも様々な立場のものがいるのだ、という認識を持たせるに至る。これで彼女はプロフェッサーXともマグニートも違う第3の道を歩むことになるだろう(実際コミックスではもともとマグニートとは別にヴィランである)。ともかくFCから一気に重要人物となったキャラクターである意味一番出世した人物である。
 

その他のミュータント

 他のアメコミ映画と違ってたくさんの超能力者(ヒーロー、ヴィラン)が出てくるのが「X-MEN」シリーズの特徴。群像劇の中で主役といえるのは上記の4名だが、ここでは短めに他のキャラクターも。

  • ビースト

 本名ヘンリー"ハンク"マッコイ。演じるのはニコラス・ホルト。シリーズでは「X-MEN3」から登場した。その時はケルシー・グラマーが演じていて恰幅もよく合衆国政府とX-MENのパイプ役として活躍していた。3でもFCでも彼につきまとうのはその外見として現れるミュータント能力。FCではやはりミスティークの能力を解析して能力はそのままに外見だけ普通の人間になる薬を開発したが失敗。副作用で逆にもっと青い毛もじゃの獣然とした姿に変わってしまった。ミスティークはミュータントとしての力を誇るべきだというマグニートーのもとに行き、彼はプロフェッサーXの元へ残る。1973年当時は学園経営に失敗し、世捨て人状態だったプロフェッサーXの世話をしていた。彼の開発した薬はチャールズを歩けるようにしたり、ハンクの姿を元に戻したりする効力はあれど、ミュータントとしての力は発揮できずさらに中毒性も高い。3にあたるキュアーとの関わりなどビーストは外見と力の間で悩む役割が多い。彼の姿はFCの時より3に近いように変わっており、ある意味一番3への関わりが強いキャラかもしれない。
 余談だが彼の部屋では「宇宙大作戦」のカーク船長(ウィリアム・シャトナー)の映像が流れていて、ここでも間接的にカーク船長とピカード艦長の共演!

 

  • ブリンク

 本名、クラリスファーガソン。実は後述する「エイジ・オブ・アポカリプス」というコミックスにおいて僕が一番大好きなキャラクター。ミスティークやナイトクロウラー程ではないが外見に影響が出るタイプのミュータント。クリスタルのようなエネルギー体を放出してそこに空間湾曲を作る。このテレポートを利用したアクションはブライアン・シンガーの面目躍如。シンガーはあんまりアクションに定評あるイメージはないが「X-MEN2」の冒頭ナイトクロウラーによるホワイトハウス襲撃などテレポーテーションを利用したアクションなどはとても上手い。これは3D的な構成がしっかりしていないと中々できないと思う。FCでのヘルファイアークラブのCIA襲撃時のアザゼルのアクションも魅惑的だったがあれはまたちょっと違うからなあ。
 演じたのは「アイアンマン3」の中国公開版に出演したファン・ビンビン。「新少林寺」「孫文の義士団」と薄幸の人妻を演じさせたらピカイチの超絶美人。ブリンクも原作ではかなり幸薄いイメージがあるが、ここではそれほど薄幸な印象はない(というか未来のミュータントは切羽詰まられてる状態なんで全体的に幸薄い)。ただファン・ビンビンはぴったりなんで今後も出て欲しいキャラクター。「エイジ・オブ・アポカリプス」におけるセイバートゥース(&ワイルドチャイルド)のコンビが実写で見たいなあ。

 

 本名、ピエトロ・マキシモフ。「アベンジャーズ2」でも登場予定の人気者。てっきり未来で登場するのかと思いきや1973年に登場。原作では超スピードで動くミュータントで実はマグニートーの子供である。映画ではその設定は無くなっているようで、(ただマグニートーの救出で大きな役割を果たし、母親がマグニートーと知り合い?と匂わせていたり、ラスト近くのマグニートーの演説に食い入るように見ていたり、なにかとマグニートーとの接点は多い)1973年時点ではかなりミュータントしての能力を満喫しているキャラクターとして描かれており、FCのバンシーに当たる。
 演じたエヴァン・ピーターズは「キック・アス」で主人公の友人2人組の一人を演じていた。そして主人公キック・アスを演じたアーロン・ジョンソンは「アベンジャーズ2」でクイックシルバーを演じる。ただ当然「アベンジャーズ2」の方ではマグニートーの子供って設定は使用されないと思うので、こちらで出てこなかったのはちょっと残念。
 

  • シャドウキャット

 本名キティ・プライド。キャラクター自体は1作目から登場していたが定まったのはエレン・ペイジが演じた3作目から。原作「Days of Future Past」では主役だったが、今回はウルヴァリンにその役を譲った。
 

 本名ボビー・ドレイク。こちらはなにげに1作目からきちんと登場していたオリジナルメンバー。演じたショーン・アシュモア(双子の弟はジミー・オルセンだったりする)も1作目から演じており、アニメでもアイスマンを演じていたりする。生徒だった1からある意味チャールズとエリックの縮小版とも言える友人パイロとの別れと結末を描いた2,3。今回はすっかり大人になってプロフェッサーXたちと合流する前の若いミュータントたちのリーダーであった。これまではどうしても手から冷気を放つという描写にとどまっていたが、本作では遂に氷のレールを創りだしてその上を滑りながら移動するなど原作に準じた描写に。

 

  • ビショップ

 原作では(今回とはまた別の)未来からやってきたミュータント。彼はX-MENが裏切りによって滅んだことを知っていてそれを防ぐために現代へやって来た。その裏切り者はどうやらガンビット*5と睨んでいたのだが…
 今回はその辺の設定はばっさりオミットされているがそれでもキティを通してタイムトラベルする役割をになっている。演じているのは「最強のふたり」のオマール・シー。
 
 その他、ストームにハル・ベリー。新キャラクターにサンスポット、ウォーパスが登場。サンスポットは一見パイロに似ているが太陽の力を吸収してパワーに変えることができる。ウォーパスはサンダーバードとして活躍したミュータントの弟でインディアンの血を引く。兄がX-MEN初の公式な戦死者となったことで敵対するヘリオンズに所属したり、ニューミュータンツに所属したり色々X-MENとは軋轢の多いキャラクターであった。漠然と戦闘に特化した究極の戦士という能力。映画での彼は掟ポルシェにしか見えない。
 コロッサス、ハボック、トードはこれまでにも登場していたキャラクター。コロッサスは本名ピーター・ラスプーチン。全身を金属に変え強大な力を使うことができる。その容貌からアニキ的な扱いをされるが彼の兄弟姉妹が皆重要な役割を果たし、彼自身も数奇な運命の持ち主。なにげに絵がうまい。ハボックはFCでも出てきたアレックス・サマーズ。どうやらベトナム戦争に駆り出されていたらしく、そのままミュータントの人体実験に回されるところをミスティークによって助けだされる。同じくトードも1作目ではレイ・パークが演じていてトードは他のベトナムで出てくるミュータントの中でも何故か単独で紹介されてたので悪役として出てくるのかな、とおもいきやほとんど出番は無かった。
 

  • ボリバー・トラスク

 ミュータント捕獲ロボセンチネルの開発者。天命のようにミュータントを捕獲殲滅することが正義だと信じている人物でもある。演じているのはピーター・ディンクレイジで彼はいわゆる小人俳優。原作では特にそういう描写は無かったと思うけれど、小人である彼が人と外見の違うミュータントをある種羨望の眼差しで見つつ(実験動物や野生の獣に対するそれに近いとはいえその能力を素直に驚嘆する描写も多い)人類の敵としてその殲滅に力を注ぐ。ピーター・ディンクレイジは声と顔がとにかく格好いい。敵であるがある種の魅力を備えている人物である。
 センチネルは3ではシュミレーション上のロボットとして登場したが(とは言え1973年と2023年の狭間が舞台であることを考えると普通にあの当時も存在したのであろう)、今回はその初期型と未来の進化したタイプとと2種類登場。作品完成前は胸のファンが格好わるいなど悪評が上回ったがいざ動いてみればこれが中々に格好いい。そして未来のセンチネルはミスティークの変身能力を取り込んだことで自在に体質を変えアイスマンの氷結能力もサンスポットの炎も一時的な足止め効果でしか無かった。とどめを刺す際に顔を開くところは「マイティ・ソー」のデストロイヤーっぽい。
 

  • ウィリアム・ストライカー

 シリーズでは度々登場したミュータント殲滅に命をかける軍人。前作FCではその父親が登場して漠然とミュータントに対する嫌悪感を覗かせたが息子のウィリアムはこの作品の時点では特にミュータントに対する必要以上の嫌悪感はない模様。ただ劇中でも言及された息子の件で後に決定的にミュータント差別主義者となる。
 2ではブライアン・コックス、「ゼロ」ではダニー・ヒューストンが演じていたが、今回は更に若くジョシュ・ヘルマンが演じている。一見するとショーン・ウィリアム・スコットを思わせる風貌だが彼は「アウトロー」でトム・クルーズに喧嘩を売る不良を演じていたりもした。自分の感想だとリチャード・ラミレス似とか書いてた。この後、彼はローガン(ジミー)をスカウトしてミュータント部隊を作り、さらにウエポンX計画に続くわけだけれど、もしかしたら今回の事件を通してミュータントの軍事利用というのを思いついたのかもしれない。この時点でのローガンとストライカーには接点はまだないが、未来から来たローガンに取っては恨んでも恨みきれない相手で、その若い頃の姿を見てパニックに陥る。

 

アポカリプス

 ラストはシリーズの集大成とも言える大団円なラスト。歴史は変わり暗黒の未来は消え失せた。それによって元に時間軸(映画シリーズ)では悲惨な死を遂げたジーン・グレイやサイクも無事だ。アイスマンはローグと順調な交際をしており、キティも学園の先生として若きミュータントを指導している。その傍らにはピーターも。ハンクもストームも学園で教鞭をとっている。ローガンはプロフェッサーに尋ねる。「1973年からの歴史を教えてくれ」と。それによってプロフェッサーはすべてを理解しローガンに告げる。「おかえり」。
 スコット役のジェームズ・マーズデン、ジーン役のファムケ・ヤンセンそして確実なことは言えないがどうやらケルシー・グラマーによるハンクなどがゲスト出演しており、これまでのシリーズに出演したきた役者がきちんと出演している。ローグ役のアンナ・パキンは本編でも出演シーンがあったそうだが残念ながらそこはカットされてラストのゲスト出演にとどまるが是非ソフト化された際は出演シーンを復活させて欲しい*6ここでは人類とミュータントは明るく共存しているように見える。学園の外は分からないがここで出てくる2023年はバランスのとれた未来だろう。そしてクレジット。
 
 エンドクレジット後のお約束はとある砂漠。そこでは一人の男が多くの人間の崇拝を受けている。彼はその強大な力で岩を操りあっという間にピラミッドを完成させる。青い肌をした彼の背後には4人の馬に乗った影も。人々が彼の名を叫ぶ「エン・サバー・ヌール」。
 彼の名はアポカリプス。世界最古のミュータントの一人であり不老不死でもある。かつてはエン・サバー・ヌールと名乗る奴隷だったが、やがて彼自身の力によってかつての主人(エジプトのファラオ)を下僕として「適者生存」をスローガンにミュータントの人類支配を進める。彼につき従うのは「黙示録の四騎士」フォー・ホースメン。
 僕はこの「X-MEN フューチャー&パスト」の物語とすでに予定されている次回作のタイトルが「Apocalypse」だと聞いた時、とある結末を予想した。それはセンチネルの支配する未来は防いだものの、チャールズが1973年時点で命を落としてしまい、その後の歴史がまた変わる。X-MEN創始者が若くして死んだ結果、今度は逆にミュータントが人類を支配する未来となり、その支配者がアポカリプスというわけだ。これは「エイジ・オブ・アポカリプス」という一大クロスオーバー作品を元に連想しており、この中ではリージョンと呼ばれるチャールズの子供であるミュータント(彼がずっと植物状態だったこともあり3のチャールズの双子の兄を連想させる)が父を苦しめるマグニートーを歴史をさかのぼって殺してしまえば良い、とタイムワープするが逆にチャールズがエリックをかばって死んでしまい、結果アポカリプスが容易に世界征服を完了してしまう、という世界においての物語である。ここではマグニート−がアポカリプスに反抗するレジスタンスとしてのX-MENを指導しており、先のブリンクも「AoA」で本格登場した。だから本作がアンハッピーエンドで続編に続く形をとるのではないかと危惧したのだ。危惧と書いたのはやはりそりゃハッピーエンドのほうがいいからである。
 結果として先に書いたような結末となり、少なくとも本作においてはこれまでにないハッピーエンドといえるだろう。ただラストのアポカリプスのシーンは未来2023年でもなければ現在2014年でも過去1973年でもなくもっと大昔の古代エジプトであるようだ。だからもしかしたら再び歴史は変わってしまうかもしれない。物語はまだ続くのだ。

 

*1:宣伝には力を入れているようですがいかんせん元々の認知度が低いような。また「GODZILLA」の公開はアメリカより2ヶ月も遅れるのでなんとも言えない。まあ、今年の一位は「アナと雪の女王」でほぼ決定だろうけど

*2:なぜかアメコミ映画はこの紀伝体に近い方式で書くのが常態化しているのでムダに長くしかもキャラに拠っては解説がかぶることもあるのは許してください

*3:個人的には後々彼女の初期キャリアを語る際に重要なのは賞を獲った作品よりも「ハンガー・ゲーム」と「X-MEN」シリーズだと思う

*4:原作ではナイトクロウラーはミスティークとアザゼル都の間に出来た子供だがこの流れだとその設定は映画では無しか

*5:ガンビットは「ゼロ」ではテイラー・キッチュが演じていたが、次回作ではチャニング・テイタムがオファーされたらしい

*6:だからアンナ・パキンだけは単独クレジット表記されている