The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

銀河の果てまで賞金首 リディック ギャラクシー・バトル

 コミックスや小説を原作としない映画オリジナルのヒーローと言うと僕の場合、「マッドマックス」シリーズのマックス・ロカタンスキー、「ニューヨーク1997」「エスケープ・フロム・LA」のスネーク・プリスケン、そして「ロボコップ」のアレックス・マーフィー*1が三大映画発ヒーローとなるわけだが、いずれもアウトロー気質の強いヒーローで今回の主人公もこれらに似た映画発のアウトローヒーローといえるだろう。ヴィン・ディーゼルが自身の当たり役に扮した第3弾「リディック:ギャラクシー・バトル」を鑑賞。

物語

 全宇宙の支配を目論む戦闘集団ネクロモンガーの首領ロード・マーシャルの座に付いたリディック。しかし彼はその座を狙うヴァーコによって銀河辺境の惑星に置き去りにされてしまう。過酷な環境の惑星でサバイバルをするリディック。やがて彼は人間の施設を発見し、自らSOSを発信。その信号をたどってリディックを狙い二組の賞金稼ぎグループがやってくる。一癖も二癖もある賞金稼ぎ相手にリディックは生き残ることができるのか!

 デヴィッド・トゥーヒーによるシリーズは2000年の「ピッチブラック」2004年の「リディック」そして今回の「ギャラクシー・バトル」と続く。前作から10年経っているわけだけれど、その作風は監督・脚本がトゥーヒーで統一されている割にバラバラで「ピッチブラック」は「エイリアン」風味のモンスタースリラー。「リディック」は宇宙の覇権を巡るスペースオペラ。今回はどちらかというと「ピッチブラック」に近い作風だけど、西部劇っぽい感じがする。
 僕はシリーズを劇場で観たのは今回が初で、「ピッチブラック」なんかは結構最近見たぐらい何だけど、まあ、これを観るに関して特に前作を見直す必要はないのかな。とは言え、一部人間関係で「ピッチブラック」を引き継いでいるところはあるのだけれど。
 で、これ邦題がかなり盛り過ぎですね。「ギャラクシー・バトル」なんて大層なものではありません。原題は「RIDDICK」と主人公の名前だけでシンプルなもの。「リディック」の原題が「THE CHRONICLES OF RIDDICK」で「リディックの年代記」なのでどちらかと言うと前作はリディックという人物が宇宙の歴史に影響を与えた大なる事件を描き、今回の作品はもっと個人的なリディックの人柄を描写する外伝という位置付けに近いのではないのかと思う。
 銀河の辺境の惑星で緑も殆ど無いような荒涼とした風景の元、リディック、二組の賞金稼ぎグループ、そして惑星に棲む生物のバトルが描かれれる。宇宙空間はほとんど登場しない。

 リディックは宇宙に悪名を轟かせる大犯罪者。リディックのキャラクターはおそらくスネーク・プリスケンの影響を強く受けていると思うけれど、やはり演じるヴィン・ディーゼルがこのキャラクターに惚れ込んでいるのだろう。トゥーヒーとともに制作も務めている。スネーク同様、ぶっきらぼうであるがやはりそこは演じるヴィン・ディーゼルのいかついながら妙に子供っぽい愛嬌のあるルックスで根底にある優しさみたいなものを伺わせる。
 リディック自体は元々のヴィン・ディーゼルの格好良さに加え、不気味に輝く瞳(暗視眼となっており逆に普通に見る時はゴーグルを掛ける)などのギミックや、アウトローで冷徹、生き延びる意思とサバイバルのための知恵に長けているなど魅力的だ。
 今回は子どもや少女のキャラクターこそ登場しないけれど、宇宙ジャッカルの子供を手なづけ飼い犬としたりする。冒頭はリディックがいきなり荒野に放置され宇宙ジャッカルの群れに襲われるところから始まる。絶対絶命の危機!そこから仔ジャッカルを手なづけ、エイリアン風の水棲怪物を退治してやっと人類の施設へ。最初のほうでリディックがなぜこの惑星に放置されたか、説明されて、ここでは前作から引き続きカール・アーバンも出演。ネクロモンガーの首領となったリディックがあっけなく放り出される。一応前作から繋がっていて、しかもそのラストを台無しにするような始まりだが、この辺はもうどうやったらリディックを荒野の惑星に配置できるか、というメインの舞台のための設定だろう。 

 前半の宇宙版「ダーウィンが来た」な描写から、中盤の西部劇な賞金稼ぎとのやりとり、そしてラスト近くのモンスターの襲来とバラエティ豊かな展開ではあるのだが、この辺はトゥーヒーが元々ジョージ・ルーカスのようなスペースオペラ志向ではなく緻密なSFスリラー志向なせいか決定的に派手さに欠ける。もちろん、乾いた荒野、基地、豪雨とバリエーション豊かで決して下手ではないのだけれど。「ギャラクシー・バトル」という響きの持つ派手さに惹かれて観に行った客は不満に感じてしまうのではないのだろうか。
 後半のエイリアンとサソリを合体させたようなモンスターの襲来にしても、前半で一度登場ししかもリディックがこれを見事にやっつけてしまっているので、大量に登場してもいかんせんインパクトは弱い。

 この作品自体はかなり地味で日本でのシリーズとしての知名度もそんなに高くないのでヴィン・ディーゼル知名度と邦題を派手にして興味を惹きつけようとしたのかな、という感じはよく分かるのだけど、いかんせんそういう形で入った客にはアピールしなさそう。映画自体はこれがトゥーヒーとディーゼルによる「リディック」シリーズだと思えば特に悪くなく、こういうもんだろうな、と思う。
 ヴィン・ディーゼルは本当にこのリディックというキャラクターが好きなようで、できればコンスタントにこのキャラクターを主役に据えたシリーズを作り上げてほしいな、と思う。ミニマムなSF、スペースオペラ、またミニマムなSFと交互に作る感じでリディックの年代記を記し続けて欲しいものである。

 リディック以外の登場人物は冒頭のネクロモンガーを除くと賞金首グループだが、これが見事に二分化され、現在の荒くれ者とほとんど一緒な粗野なグループとネクロモンガーの装備とも一部共通する訓練させた軍隊のようなグループが登場する。どちらもリディックの首が目当てだが、一方が単にリディックにか懸けられた賞金が目当てなのに対して、もう一方は個人的に遺恨がある。この2グループが共同したり敵対したりしながら、リディックとやられたりやり返したりで徐々に人数を減らしていく。妙に信心深い少年や美人な女兵士(正確には賞金稼ぎなんだけど)がいたりするが、やはりここでイチオシしておきたいのは粗野なグループの副リーダーであるディアス役のデイヴ・バティスタ(デヴィッド・バティスタ)。巨漢の割に妙に冷静なこの人物を演じるのはWWEスーパースターであるバティスタ。「THE ANIMAL(野獣)」とあだ名されるレスラーでHHH、リック・フレアーそしてランディ・オートンとともにユニット「エボリューション」を結成して活躍、WWE王座や世界ヘビー王座にも複数回輝いている。今も現役活躍中で(と言っても軸足はもう俳優活動に置いているようだが)、今年も1月の「ロイヤルランブル」で優勝し、「レッスルマニアXXX」(トリプルXXX!)でメインを張る予定である。
 この人もヴィン・ディーゼルザ・ロック(ドゥエイン・ジョンソン)同様様々な人種の血を引いており、一見いかついながらよく見ると愛嬌のある顔をしているのでアクション映画などでは重宝する人材になるはずである。とりあえず次回作はマーベル・シネマティック・ユニバースの新作「Guardians of the Galaxy」の主人公の一人ドラックス・ザ・デストロイヤー

 ウガチャガ。日本公開は9月!

*1:リメイク版の感想も近々頑張って上げます!