虚実の夜の夢 カノジョは嘘を愛しすぎている
TOHOフリーパスポートで観る普段ならまず観ない映画の第一弾!少女漫画の映画化作品「カノジョは嘘を愛しすぎている」を観賞。奇しくも嘘と真実みたいなものをテーマとしてる点では同日に観た前回の「鑑定士と顔のない依頼人」と同じかもしれない。
物語
人気バンド「クリュード・プレイ」の全曲を作曲しているアキ。彼はデビュー時に自分の演奏が差し替えられていたことにショックを受けバンドを脱退。今は裏方として謎の曲提供者となっている。色々と行き詰まっている時、歌った鼻歌に惚れた女子高生小枝理子と付き合うことに。理子はクリュード・プレイの大ファンだったが、アキは素の自分を好きになってもらうため「小笠原心」と嘘の名を名乗る。また彼女には歌わないことを求めるが、実は理子はバンドのギターとボーカルを担当していた。クリュード・プレイのプロデューサー高樹はアキの元を訪れた時に偶然理子の歌声を聞いてしまい彼女のバンドのデビューを決める・・・
原作は青木琴美の同名マンガ。彼女の作品の映画化は「僕は妹に恋をする」、「僕の初恋をキミに捧ぐ」に続く3作目ということで前2作はもうタイトルからして「ごめんなさい、許してください」という感じだが、これはまだ大丈夫なタイトルといえようか。
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また既に観た人の評判がとても良かったのだな。実は僕もこの時期色々流れていた邦画の恋愛物の中では一番おもしろそうだと思っていた。そこに先のアイドリング!!!出演やフリーパスの入手なども手伝ってこれは是非観てみようと思ったのだった。
主人公は野上良太郎こと緋村剣心こと佐藤健。天才肌の繊細な音楽家を演じている。彼の演じるアキは表には出ていないので一見みすぼらしい格好だったり理子のバンド仲間にニート扱いされたりするが、まあ、良太郎や剣心も半ばそんな感じでありやはり役柄としては似たものがあるかも。
ヒロインは大原櫻子。まだ17歳でこれが実質デビュー作のようだ。劇中では美人シンガーとして相武紗季が出ているがそれとの対称でもあるようで美人というよりはかわいい系のルックス。歌手としてのモデルは男2人、女子ボーカル1人という構成は「いきものがかり」とかかなと思うが彼女のキャラ自体は川本真琴っぽい。いい意味で素人っぽい自然な演技が魅力。バンドメンバーの一人は誰かに似てるなあ、と思いながら観ていたのだがこれが仮面ライダーメテオの吉沢亮。どうも若い男性俳優は髪型変わるともう区別がつかない・・・
アキのライバル心役は「ゲゲゲの女房」の池上遼一・・・じゃなかった倉田さんや「平清盛」の平家の良心平重盛役でお馴染みの窪田正孝。あんまりイケメンって印象はなかったが、ここではメガネにさらさらヘアーの確かにイケメンで冷静沈着なアキとはまた違った天才ベーシストを演じている。
個人的に一番興味深いキャラだったのは反町隆史が演じたプロデューサー高樹で彼はバンドには演奏させないで実際はスタジオミュージシャンに演奏させていたり、いわゆるアーティストとしてよりビジネスとしての音楽業界の側面を担当する人物。劇中でもたくさん夢を壊すような、バンドメンバーがカチンと来てキレるような発言をするが、奇妙に悪くは思えない。それは彼の発言がある側面において正論であるから、というだけでなく、彼なりに誠意を持って喋っているのが分かるからか。この作品、ライバル的なキャラクターは何人かいるがいわゆる悪役はいないところも素晴らしい。
少女漫画の実写映画と言うと昨年の「今日、恋をはじめます」がある。あれも僕が普段ならまず観ないような作品であったが、いざ見たら面白かった。今回僕は原作となった漫画を読んでいないのでどのくらい原作のストーリーに忠実なのか、キャラクターの設定や容姿の再現度はどのくらいなのか、ということは分からないが意外と少女漫画と実写映画の相性はいいのかあな、と思う。2時間弱に物語を詰め込むときに少女漫画ならではのデフォルメの効いた個性のキャラクターは説明要らずだしじっくり描くというより瞬発的に描くことが多い気がするので時間が限定されてる映画でも違和感が少ない。最もやはり僕なんかは突然キスしたり、壁ドンするような描写は苦手(劇中でもいきなりでごめんとか言っているけれど)。
で、この映画劇中歌がとても良い。映画に限らないが国内の実写作品でいつも不満だったのが劇中劇や劇中作品などの作り込みの甘さだった。例えば「デスノート」のミサミサのお料理番組とか「適当に作ってるなあ、絶対本物の番組だったらあのクオリティでは放送されないよ」と思ってしまうものだった。劇中歌にしてもドラマの中でキャラクターがその歌に感動していても、客のほうが「ふーん」と冷めてしまうようなものも多い。ザック・スナイダーの「エンジェル・ウォーズ」のように凄いダンスを見せているという設定だけどダンスそのものは見せずに代替描写(ナチスゾンビ兵との戦闘とか)で表現するという手法もあるが、やはりできるだけきちんと作りこんで見せてほしいものだ。「デトロイト・メタル・シティ」とかもちょっとその辺いまいちだったしなあ(まあこれは個人差もあると思うけれど)。その点、今回の「カノジョは嘘を愛しすぎている」はきちんと劇中で歌が歌われ、しかもその曲が素晴らしい、というものだった。しかも予告編などで歌われていた曲は劇中ではアキが作ったものじゃないんだよね。この外しもよかった。
クリュード・プレイは実際にバンドとして歌番組なんかに出ていたが、理子役の大原櫻子もこれがデビュー作で演技力と言うよりその歌唱力が認められ抜擢されたというのも納得だ。
クリュード・プレイそのものはなんとなく「プッシーキャッツ」劇中の男性ボーカルグループ、デジューを連想してしまうのだが。
予想していたよりはずっと良かったです。恋愛映画が苦手な人でも音楽映画として見れば大丈夫かもしれません。
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でもまあこういう邦画の恋愛映画は一年に一本ぐらいでいいかな・・
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