赤いちゃんちゃんこはまだ早い! REDリターンズ
今年はアーノルド・シュワルツェネッガーが俳優に本格復帰という出来事があったが、やはりきっかけとなったのはシルベスター・スタローンがアクションスターを総動員した「エクスペンダブルズ」だろう。こちらは新旧のアクションスターを揃えて80年代のような骨太だけど中身は特にない作品を蘇らせた。この作品ではゲスト的な位置付けで出演したのが「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスで彼がもう一つのオールスター総出演、ただしアクションスターではなく演技派スターを一同に集めたアクション映画が「RED」であった。その第2弾「REDリターンズ」を観賞。
物語
前作の出来事の後、恋人のサラと幸せに暮らす元CIAの凄腕エージェント、フランク・モーゼス。しかし平凡に暮らしたい彼の思いとは裏腹にサラは刺激を求めているようだし、やはり元CIAで腐れ縁のマーヴィンは自分が狙われていると押しかけてくる。マーヴィンをあしらうフランクだったが、彼は殺されフランクは彼の葬儀の後FBIに拘束される。フランクは脱出を試みるが彼を助けたのは殺されたはずのマーヴィンだった。どうやらフランクがエージェンだった冷戦時代に関わった大量破壊兵器をめぐる事件に巻き込まれたようでFBIはフランクの元パートナーだった殺し屋ハンにフランクの始末を依頼、MI6も凄腕スナイパーヴィクトリアにフランクの殺しを依頼し、フランクとマーヴィン、それにサラは世界中を逃げ回り事件の解決奮闘するのだった!
前作の感想はこちら。
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前作は特に見なおしておらず、もう話も半分忘れているのだけれど、特に問題なし。ただ前作よりコメディ度合いは大きくなっているかな、という気はする。前作と比べてイマイチという意見も見受けられたけど、前作では役所勤めの地味なオールドミスという風だったメアリー=ルイーズ・パーカーが最初っから最後までエンジン全開でずーっとかわいいので僕的には全く問題ない。お話も元々コミック原作ということでいい意味で荒唐無稽、細かい整合性を気にする作品ではないだろう。僕は気にならなかった*1。
ブルース・ウィリスは今年は大活躍で「ルーパー」「ダイハード・ラストデイ」「ムーンライズ・キングダム」「G.I.ジョー バック2リベンジ」そして本作と出演作が続いていて僕は「ダイハード・ラストデイ」以外は一応劇場で見ているのだけれど「エクスペンダブルズ」や「G.I.ジョー2」もそうだが、引退した凄腕、という役柄が多い気がするね。ブルース・ウィリスは元々スタローンやシュワルツネッガーと違って筋肉モリモリのアクションスターではなくコメディアンに近い芸歴から出発してるので演技派という一面も持っているわけだが、この作品ではそのアクションスター、コメディアン、演技派というバランスが上手く活かされていると思う。
今回は一部モーガン・フリーマンやカール・アーバンといった一部キャスト(R.I.P.アーネスト・ボーグナイン!)を除けばほぼ続投でさらにアンソニー・ホプキンス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、イ・ビョンホンといった新顔が参戦。先述した通り、僕は前作の内容を半分忘れていたので、「ブライアン・コックスの役は前回死んだっけかな?」とか「前作は初代ハンニバル・レクターで今回は2代目ハンニバル・レクターだな」とか思っていたらオープニングクレジットでブライアン・コックスの名前が出てきて驚いた。まさかの新旧人喰いレクターの共演!前回もオープニングクレジットでアーネスト・ボーグナインの名前が出てきて驚いたんだった。
アンソニー・ホプキンスは確かにハンニバル・レクターのセルフパロディのような役柄で冷戦時代に数々の大量破壊兵器を開発し「大量破壊兵器のロックスター」と称され、現在はロシアの精神病院に32年に渡って収容されてた天才科学者。「ヒッチコック」でも夫婦役で共演したヘレン・ミラーとも息のあったところを見せてくれる。
一方、ブライアン・コックスはゲスト出演と言った感じではあるけれど、こちらはこちらで出番は少ないながら強烈な印象を残す。あれだなー、ブライアン・コックスとアンソニー・ホプキンスがヘレン・ミレンを取り合うシニア版「ブラック&ホワイト」みたいなアクションコメディ映画が観たいな。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズは正直あんまりいい役とは言えないかも。彼女は出番多い割にあんまり印象に残らずちょっと損な役回りかもしれない。
ジョン・マルコヴィッチのマーヴィンは前半は活躍するのが、いや全編に渡って活躍するのだけれど、彼のトリッキーなキャラクターは最初の方だけで後半は普通に相棒、といった感じ。むしろ彼のエキセントリックなキャラクターは実はマーヴィンによく似ていたサラに受け継がれているのだな。フランクは仕事の男性のパートナーもプライベートな女性パートナーも似たタイプを選んでしまうようだ。本人は無意識だと思うが。
ヘレン・ミレンは見事にメアリー=ルイーズ・パーカーとヒロインの座を分けあっており、ドレス姿で死体処理をしながら電話をするシーンとかとてもチャーミング。彼女も精神病院に侵入する際、自分をエリザベス1世だと思い込んでいる狂人に扮したり彼女のキャリア*2がそのまま役柄に反映されている。そもそも役名もヴィクトリアだしね。僕はヘレン・ミレンとジュディ・デンチの二人がそれぞれ英国を代表する女王を演じていることでイギリスを代表する女優!みたいなイメージが有ります。
そして、イ・ビョンホン!「G.I.ジョー2」にひき続いてブルース・ウィリスと共演。今回は殺し屋ですぐ脱ぐ・・・というほぼストームシャドウと同じ役柄。ヘリポートにサングラスにスーツ姿のバッチリ決めた格好で登場し、まずはサングラスを外す、そしてその30秒後にはもう裸になってる!しかも尻の割れ目も披露!
イ・ビョンホンは決して普段から身体を鍛えるタイプではなく、あくまでその時々の役に応じた肉体作りをするのだそうだけど、今回は脚本のト書きに「ハンが全裸になる。その肉体は完璧」というような一文が載ってたので、これは生半可な身体じゃ駄目だ、と鍛え上げたそう。もちろん、これまでのイ・ビョンホンのヌードの例に漏れず今回も見事である。最初の暗殺はいかにもニンジャタイプと言う感じの仕事でストームシャドウの延長線上にあるニンジャや体術系のキャラかと思わせたが、次に登場する時は結構正面からウィリスに挑む感じになっていてアクションの面では物足りないかもしれないがキャラクターとしてはより面白くなっていた。ヘレン・ミレンのヴィクトリアもそうだし、ホプキンスのベイリーもそうだけれど、殺しと友情は別問題!依頼されたり必要に迫られれば友人でもすぐに裏切るし殺すけど、逆に必要なら躊躇せず手を組む、というカラッとした姿勢が素晴らしい。
それに比べれると前作のカール・アーバンなどはちょっとプロになりきれてない、まだ青いな、というキャラクターだった。今回はカール・アーバン的な位置付けの新キャラとしてイ・ビョンホンのハンとFBIのホートンだろう。ホートンを演じるのはニール・マクドノーで容姿的にもカール・アーバンと似ていた。マクドノーは「スタートレック ファースト・コンタクト」でエンタープライズEの新クルー、ホーク中尉として出演していて当時、新しいクルーとして今後の活躍が楽しみ!というような紹介がされたが、実は劇中でボーグに同化されて1作きりの登場となってしまったのだった。その後しばらく見なかったが(僕が見ていないだけで着実にキャリアを増やしていたようだ)、だいぶ恰幅が良くなって性格俳優として色々な作品に出演しており「ストリート・ファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」のベガ、「キャプテン・アメリカ/ザ・フースト・アベンジャー」のダムダム・デュガンなど個性の強い役で印象を刻んできた。今回はフランク・モーゼスを追いかける役ではあるが、ちょっとキャラとしての属性は悪役の方に大きく傾いており、残念ながら前作のカール・アーバンや今回のイ・ビョンホンのように仲間にはなることはなく退場してしまった。残念!
作品はコメディとして振り切り、役者のキャリアそのものを役柄に取り入れたりしたことで(前作にもまして)個人的には前作より楽しめた気がします。コメディとしてもアクションとしても水準以上ではある。ずっしり超大作を観た!という感じは薄いけど最大公約数的に楽しめる作品だと思う。おすすめ。
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デヴィッド・シューリスも出てるよ(こちらも怪演!)