The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

白亜館炎上! ホワイトハウス・ダウン

 うわーん、「仮面ライダーウィザード」と「獣電戦隊キョウリュウジャー」の劇場版公開終わっちゃったよ―!キョウリュウジャー見たかった!
 ということで気持ちを切り替えて別の映画。人類全体の中でも最も影響力が強い役職はおそらく「アメリカ合衆国大統領」だと思う。単にアメリカ合衆国という一国家の元首にとどまらず、世界の命運を握る存在でもある。それ故に生命を狙われることも多く、特にリンカーンケネディの両名の暗殺は歴史上の出来事として深く記憶に残り「テクムセの呪い」のような伝説を生んだ(最近ではブッシュJrがイラクで靴を投げられましたね)。個人に特定すればもっとたくさん暗殺未遂にあった独裁者などもいるかもしれないが、公的役職ではやはりアメリカ合衆国大統領が一番危険と隣り合わせの職業とも言える。
 もちろんフィクションの世界でも大統領は幾度と無く命を狙われ、その拠点となる大統領官邸、通称ホワイトハウスは格好のターゲットとなっている。ちょうど911が過ぎたばかりだが、アメリカ同時多発テロ事件でハイジャックにあった4機のジャンボジェット機のひとつ航空機の乗客の叛乱によって墜落したユナイテッド航空93便はその目標はホワイトハウスとも国会議事堂ともいわれている。
 今回観た映画は「ホワイトハウス・ダウン」。僕は見ていないが最近も「エンド・オブ・ホワイトハウス」という似たような映画があったばかり。あのローランド・エメリッヒの新作で少なくとも僕が覚えている限りでは彼にとって3度目のホワイトハウスの破壊である。前回の安土城に続き建物炎上映画です。

物語

 下院議員議長イーライ・ラフェルソンの警護を務めるジョン・ケイルは大統領に憧れる娘のために大統領の警護シークレット・サービスになるための面接を受ける。大統領は若き黒人大統領ジェームズ・ソイヤー。面接の手応えは薄かったが娘のエミリーとともにホワイトハウスツアーに参加する。
 そしてステンツ率いる傭兵軍団がホワイトハウスの一部を爆破し、占拠する。階下にいたエミリーを探すためジョンは1人テロリストに挑むが・・・
 その頃、大統領はシークレット・サービスともに地下ヘ逃れていたが警護の責任者マーティン・ウォーカーが突然警護全員を殺す。ジョンは現場に訪れ大統領を救出する。人質やテロの本当の目的を防ぐためジョンとソイヤー大統領がコンビを組んだ!

 去年から今年にかけて何かと他の作品(主に全面戦争となる侵略SF)との対比で僕の中で再評価が進んでいるローランド・エメリッヒ監督最新作。ちなみに今年最初に見た映画がエメリッヒの史劇「もうひとりのシェイクスピア」でしたな。前作に比べれば爆破やなにかで派手になってエメリッヒらしくはなっているが、それでも世界を何度も破壊し(かけた)エメリッヒとしては比較的こじんまりとした規模の作品が続いたこととなる。どうしたエメリッヒ?もう世界の破壊は飽きたのか?と思わないでもないが今回も類型的ではあるがキャラクターが活き活きとしていて、アクションもさることながら普通にドラマ部分が面白かったりした。

 アクションは言われている通り、「ダイ・ハード」などと似た制限された建物内での孤軍奮闘!が基本なのだが、ホワイトハウスの構造と歴史を簡単に説明、都市伝説(ケネディとモンローの密会)やエメリッヒ自身の映画(「ID4」)を例えに出して説明するなど観客にやさしい作り。また米英戦争によって消失した初代ホワイトハウスの絵画が映しだされ、これが後々ヒントになるところは面白いところ。チャニング・テイタムジェイミー・フォックスはこの官邸を庭から屋上まで縦横無尽に駆け回る。特に後半訪れる車で官邸の庭を疾走しながら行われるカーチェイスアクションはスラップスティック・コメディぽくもあり楽しい。ただ、ホワイトハウスともなればそれなりどころではない防犯対策もとってあるだろうにテロリスト側にとってあまりにスムーズに行くのはちょっと気になるかな。
 チャニング・テイタムは「G.I.JOE2」では前半で退場してしまったが(それでも主役だった1より存在感があった気がする)、今回も肉体派アクション俳優若頭なところを見せてくれる。チャニング・テイタムは名前を聞くとどうしてもテイタム・オニールが一緒に思い浮かぶためか小動物的というか可愛い女の子みたいなイメージが抜けなかったのだが、ここに来てやっと肉体派のイメージがついてきました。

 事前に知っていたのはエメリッヒ監督作で、チャニング・テイタムジェイミー・フォックスの二人がコンビを組んでテロに遭ったホワイトハウスで活躍する映画、というざっくりした情報だけだったのだが、まさかジェイミー・フォックスが大統領だとは思ってもみなかった。黒人大統領と言うのはもはや現実のものだし、過去にもモーガン・フリーマンが「ディープ・インパクト」で、そしてエメリッヒの「2012」でもダニー・グローバーが演じていた*1。ただ現実のオバマ大統領をモデルにしているとしてもジェイミー・フォックスが演じるには若すぎるのではないか、などと思いながら見ていたのだが、後で調べたらジェイミー・フォックスは45歳。見た目からはもっと若い30代後半ぐらいと思っていたのだが45歳ならオバマ大統領の第1期就任が48歳の時なのでそれほど若すぎるとも言えない。このジェイミー・フォックス演じるソイヤー大統領は別に元軍人であるとかそういう経歴があるわけでもなく、戦闘に関しては本当に素人でありながらなんとか頑張るさまが面白い。ジェイミー・フォックスは今年は「ジャンゴ 繋がれざる者」では黒人奴隷の復讐者を演じていたが、黒人奴隷からアメリカ大統領へ、という転身もまさにアメリカンドリームといったところか。ソイヤー大統領は平和路線で中東から米軍を全面撤退させる政策を取ろうとしている。当然反対派も大きくテロの黒幕は実は和平路線に反対する軍産複合体の支持を受けるある人だったりするのだが・・・
 もちろん、劇中でも最初は中東のテロリストか?!と騒がれるのだが、実際は国内のミリシア、右翼や人種差別主義者など。よくエメリッヒは「ドイツ発アメリカ万歳野郎」などと揶揄されるが、よく考えると何度もホワイトハウスを破壊しているし、こういうアメリカ内部の反動的な集団を敵として描いていることから決して政治的にはタカ派ではないのだろうな。
 敵集団の正体が明らかになるのは、エミリーが密かにスマホで撮影し、それをYouTubeに流したからだが、ここでのマスコミ報道のあり方にも疑問。人質になっていることは確かなのにエミリーを顔写真付きで実名報道(勇気ある少女!みたいな感じで)するのだ。そんなことすれば明らかに人質として囚われているエミリーが危険な目に合うだろうに。エミリーを演じているのは「ダークナイト ライジング」でピットにおけるタリアの少女時代を演じ、今年は「オズ はじまりの戦い」でチャイナ・ガール(&カンザスにおける車椅子の少女)を演じたジョーイ・キング。顔つきはクロエ・グレース・モレッツレイチェル・ワイズを足して割ったようなルックス。とくにレイチェル・ワイズが子供の頃はこんなかんじだったのかなと思わせる利発そうなお子さんでツアーガイドをも唸らせるホワイトハウスマニア振りを発揮するが嫌な感じに映らないのは素晴らしい。
 ツアーガイド役の人も好感の持てるオタクと言った感じで良いキャラクターだった。ニコラス・ライトという人らしい。

 実はこの映画を観る前に「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の3回目を観たりしたのだが、ピーター・ウェラーが悪役の映画を観た後にジェームズ・ウッズが悪役の映画を続けて観るというのも中々乙なものである。テロリストは先ほども言った通り国内のミリシア、右翼、人種差別主義者、元工作員など雑多でその思想も一枚岩ではないのだが、中々に個性的。いかにもパソコン小僧と言った風情のハッカー(彼がBGMにクラシックをかけるところや役柄的にやはり「ダイ・ハード」の黒人ハッカーテオを連想する)や、典型的なホワイトトラッシュと言った感じのキリックの狂犬ぶりなど。その中でテイタムのジョン・ケイルのライバルと言った役どころにあたるのは「ゼロ・ダーク・サーティ」でも主人公の前任として拷問も辞さないCIAを演じていたジェイソン・クラーク。見た目はちょっと太めなビール好きの兄ちゃんと言った感じだがテロリスト実行部隊のリーダーとしてライバルにふさわしい存在感。
 ジェームズ・ウッズは余命3ヶ月のシークレット・サービス責任者で息子のことやなんかで世界の滅亡を願う男。テロリストの戦略における頭脳部分と程よくアクションもこなして最後まで存在感抜群の悪役。
 すべての黒幕は軍産複合体の「和平は利益に反する」という考えから現在の大統領を排除し、あまつさえ核を撃って全面戦争しようぜ!という輩。物語が進むに連れて、いやに大統領が死んだことにして就任したがっている副大統領かな?あるいはその一派かな?とか想像を働かせるが最後にきちんと残った人物が黒幕として痛い目にあうのは見事な展開。偶然だが「スター・トレック イントゥ・ダークネス」とその辺は少し似た背景の物語である。「スタートレック6 未知の世界」なんて惑星連邦とクリンゴンが互いに戦争をし続けるためにそれぞれのタカ派(及びロミュラン)が手を組んで和平派を殺そうとする、というかなり理解に苦しむ複雑な政治思想の持ち主たちが敵だったりするのだが(背景にあるのはチェルノブリ原発事故や冷戦の終結)、それに似たものを感じる。

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監督の前作。あのエメリッヒの作品としてみると全然イメージ違うし小粒だけど、そのへんあんまり意識しなければ良質な作品です。

 うん、やっぱりローランド・エメリッヒはしっかりしてる。今回はそれまでのような大規模なパニック映画やSF映画ではないけれどしっかりしたアクション映画の佳作でありました。でもそれより人間ドラマの部分が飽きずに観られて面白いんだよね。エメリッヒ再評価は間違いじゃなかった!

*1:両作とも地球滅亡の危機!という時期の大統領であることは興味深い