The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

韓流ベルリンの赤い雨 ベルリンファイル

 どうも!約3週間ぶりのスーです。生きてます。諸事情でブログ更新できませんでした*1が、やっと映画を劇場で観る機会がありました。まあ前にも2013年後半は映画を観れる回数は減ると思うと書いたばかりでしたがとりあえず7月は「サイレントヒル レベレーション」と「飛びだす 悪魔のいけにえ」の2つだけ観れればとりあえずいいや、と思っていて久々の劇場映画鑑賞もその2つのどちらかにするつもりだったんですが、近場の映画館ではレイトが土日しかやっていない、ということでそのまま別の映画を観てきました。今年初の韓国映画「ベルリンファイル」です。それでは久々の徒然はてな別館、小覇王オン!(影響されやすくて何ですが、この期間私「ゲームセンターCX」に激ハマリしておりました)

物語

アラブ組織との武器取引現場を韓国情報院の敏腕エージェント、ジンスに察知され、からくもその場から脱出した北朝鮮諜報員ジョンソン。なぜ、このトップシークレットが南に漏れたのか?まもなく、北の保安監視員ミョンスから、妻ジョンヒに二重スパイ疑惑がかけられていると知ったジョンソンは、祖国への忠誠心と私情の板挟みになり苦悩を深めていく。しかしジョンソンは、まだ気づいていなかった。すでに彼自身までが、恐るべき巨大な陰謀に囚われていたことに。CIA、イスラエル、中東そしてドイツの思惑も交錯し世界を巻き込んだ戦いが“陰謀都市ベルリン"で始まる。生き残るのは果たしてー
今回は【公式サイト】から引用しました。

 (ここからいつもの文体)先に「今年初の韓国映画」と書いたけれど、アメリカ進出した韓国の映画監督作品というのは観ているわけで、キム・ジウン監督の「ラストスタンド」、パク・チャヌク監督の「イノセント・ガーデン」は劇場で観ている。韓国の映画監督が世界進出するというのは取りも直さず韓国映画そのものが世界的にヒットしているということでそのきっかけとなったのはやはり1999年のカン・ジェギュ監督作品「シュリ」であろう。今思い返しても「シュリ」の衝撃というのは凄くて、漠然と邦画と洋画の差に対して「そりゃハリウッドは予算も規模も段違いだから負けて当たり前」というダブルスタンダードで観賞していた身に対して「いやそんなの関係ないべ!」と頭を殴られた感じだった。北朝鮮特殊部隊と韓国の諜報員の戦い、諜報戦、少しSF的なガジェットと特段観賞の基準を下げなくても普通にアクション映画としてハリウッドや香港映画と比べて遜色ない出来であったのだ。また東京などの大都市と変わらぬソウルの町並みなどで無意識のうちに僕も持っていた韓国に対する侮りを打ち砕かれたものであった。
 日本でも「シュリ」の影響を受けたと思われる「ホワイトアウト」などが作られ、アクション部分で力作ではあったもののどうしても脚本における人間関係が従来のドラマの域を出ておらず残念に思ったものだった(もう内容もそんなに覚えているわけではないが「ホワイトアウト」は当時「中村嘉葎雄(に代表される麓の警察)のシーンは全部削れよ!」と思ったのは覚えている)。
 現在の目からすると「シュリ」でさえテンポは悪いし、ドラマ的にも現在の韓国のアクション/サスペンス映画に慣れた身には物足りなく感じると思うがそれでも韓国映画が世界的に注目されるようになった金字塔として語り継がれていくことだろう。しかも一時的なブームではなくもう14年に渡って高クオリティの作品を送り続けているのだ。

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 また「シュリ」ソン・ガンホチェ・ミンシクの二人の俳優と出会わせてくれた作品でもある。ガンホは主人公の相棒、ミンシクは北朝鮮特殊部隊の隊長という役柄であったが、その後の活躍は御存知の通り。ガンホもミンシクもその特異なキャラクターで誰にも真似できぬ唯一無二の俳優として大活躍している。僕もこの二人の出演作品はできるだけ劇場で観るようにしている。しかし「シュリ」の主演はハン・ソッキュ。この時点で彼は既に韓国では大スターで「(ガンホも含めて)やはり日本と韓国ではいい男の見方が違うなあ」などと思ったりして、つまり日本人が思い浮かべるイイ男とはちょっとずれるのではあるが正直ガンホやミンシクの影に隠れた感があった。「シュリ」以後も出演作品は多く公開されているようだが、僕がハン・ソッキュ出演作を劇場で見るのは「シュリ」以来ということになる。

 物語はある意味かつての冷戦の中心地とも言えるベルリンを舞台に韓国、北朝鮮の二大勢力にCIA、モサド、アラブのテロリスト集団などが複雑に絡み合う物語*2。また各組織も一枚岩ではなく、各々の事情も複雑で一回では容易に理解することは難しい。
 第二次世界大戦後に何らかの形で国家が分裂した国の代表として北ベトナム南ベトナム、西ドイツと東ドイツ、そして大韓民国朝鮮民主主義人民共和国があると思うがベトナムとドイツがそれぞれ統一されたのに対し、朝鮮半島は現在も分裂抗争中である(朝鮮戦争は正式には現在も継続中)。まあ実際はインドとパキスタン*3パキスタンバングラデシュはどうなんだとか他にも色々あると思うが、それら分裂国家の中でも比較的平和裏に統一されたドイツ・ベルリン(ベルリンは都市自体が東西に分断された地域でもある)で現在も紛争中の南北朝鮮の諜報員が暗躍しているというのは中々に皮肉が効いている。
 ハン・ソッキュ「シュリ」にひき続いて韓国側の諜報員ジンス役だが紳士的で社会人としても立派な人物と言えた「シュリ」の時と比べると、かなり粗野で私生活も荒んでそうな人物。一方事実上主人公である北朝鮮の伝説的なスパイ、ジョンソンは冷静。この二人の対照的な性格も面白い。ジョンソン役は「チェイサー」のハ・ジョンウ。感情を表に出すシーンもないではないがそこはやはり劇中で「伝説のスパイ」と称されるだけあって冷静沈着な印象が強い。キム・ジョンイル死亡後の北朝鮮では必ずしもキム・ジョンウン政権を認める勢力ばかりではなく、その内紛の代理戦争がベルリンで行われる。ジョンソンの美しい妻ジョンヒに「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョン。彼女は通訳としてではあるが彼女も紛れもない諜報員の一人で時には(劇中でははっきりとは表現されないが)要人に対して肉体接待をさせられている。
 キャラクターの相関としては入り組んでいるが、全体として敵役を務めるのはトン・ミョンス役のリュ・スンボム松山ケンイチとお笑い芸人のおさるを足したようなルックスで精悍なハ・ジョンウや経験の重さを感じさせるハン・ソッキュに比べるとちょっと小柄で物足りない気もするがこれが十分に演技でラスボスに相応しい雰囲気を漂わせる。このトン・ミョンスは北朝鮮の軍幹部の息子で父親の権力争いの道具としてジョンソンが捨て駒にされるのだが、最初(というか結構終盤まで)ミョンスがジョンソンに対して「兄貴」(字幕)と呼びかけるため実の兄弟なのかと勘違いしていた。おそらくこの二人は軍における先輩後輩、あるいは特権階級であるミョンスの教育係を伝説のスパイであるジョンソンが務めた、とかそんな縁による呼び名であるのだろう。この先輩を邪魔する後輩という図は韓国側でも描かれるが北朝鮮のそれに比べると必死さが違う。
 北朝鮮のドイツ大使であるリ・ハクスを落ち着いた雰囲気で演じているのは「サニー 永遠の仲間たち」でイム・ナミの憧れの人だったチュノの現在の姿を演じたイ・ギョンヨン。

 前半の諜報合戦はなんとなく「裏切りのサーカス」を彷彿とさせるし、クライマックスの銃撃戦は「007 スカイフォール」を思い出させる。といっても「スカイフォール」とは敵味方の位置が逆だけどなんとなく似ている。そしてラストのバトルは「ラストスタンド」に。とにかく一度では物語を把握できないほど複雑で盛りだくさん。特に字幕だと人名とそれぞれのキャラクターの立ち位置の理解に苦しむとは思う(先述した通りトン・ミョンスの役割についてずっとジョンソンの実の弟だと誤解してた)。その辺を復讐した上で2回め3回めを観るとより楽しめると思う。
 日本のポスターのキャチコピーは「敵は南か、北か、世界か―」だが、実際北朝鮮はもちろん、韓国政府もやはりジョンソンを政治のコマとして使うことを決め、ジンスはその決定に従わずジョンソンに表に出ず日陰でひっそりと暮らせ、と言って逃すがジョンソンは復讐を誓う、という終わり方。前半特に北朝鮮(それは国家であり党でありキム・ジョンウン個人崇拝)に対しての忠誠が問われるが最後はすべての国家に対する疑義の念を残して終わる形である。

 今回は劇場についてから観る映画を決めたわけだけれど、こういう面白い作品に出会うからやめられない(それでもまあ後半戦は好きな物を中心にって形になってしまうけれども)。というわけで2013年後半戦、おそらく更新回数もちょっと減ると思うのだけれど、よろしくお願いします!タイトルはこちらから。未だキン肉マン熱も冷めず。
ゲームセンターCX DVD-BOX9

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小覇王オフ!

*1:多分旧ブログ含めこの未更新期間の長さは新記録

*2:今回自力で【物語】を書くのを諦めました。

*3:そういや同じスパイ物でも全然雰囲気は違うけどやはり「タイガー 伝説のスパイ」のことは思い出しながら観てた。