The Spirit in the Bottle

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箱推し悪魔くん ポゼッション

【一言感想】わしらのいとしい箱なのよ、ゴクリゴクリ

 本当に今年はサム・ライミ関連作が多い。監督作の「オズ はじまりの戦い」に始まってリメイク作の「死霊のはらわた」。直接関わっているわけではないが、ホラー映画へのオマージュが盛りだくさんでその中でも「死霊のはらわた」が設定の基幹をなしている「キャビン」。そしてまたサム・ライミが製作という形で関わっているホラー映画が公開されている。「ポゼッション」を鑑賞。

物語

 とある老婆が奇妙な箱を壊そうとしている。しかしその箱を壊そうとすると老婆は何かに邪魔され大怪我をしてしまうのだった。
 3ヶ月前に離婚したクライドは母親のもとで暮らす二人の娘と新しく購入した一軒家で過ごす。娘を連れて立ち寄ったフリーマーケットで下の娘エミリーは奇妙な箱に惹かれこれを購入する。その箱こそ老婆が壊そうとしていたあの箱だった。やがて家では奇妙なことが起き始め、エミリーはあの箱に執着し始める。エミリーのあまりの変化に両親の離婚が原因かと思われたが、検査にかけるとそこには悪魔の影が。クライドはユダヤ教のラビの力を借りようとユダヤ人街を訪れるが・・・

 例によって事前にどんな映画であるか、誰が出てるかとかは一切知らずに鑑賞。サム・ライミが製作をしているということと、TVCMでの喉から指が覗く描写(この描写に惹かれて観にいくの決めた)などからおおよそオカルトホラーなのであろう、という認識。
 いきなり「これは実話である」というようなキャプションが出てきてビックリする。いやホラー映画でも「実話」が売り文句の映画というのはあったけれども劇中に出さなくても、とは思う。観終わると分かるけど、実話ではありえない話でいいところ「そういう伝承がある」という程度。監督は「ナイトウォッチ」のオーレ・ボールネダル。サム・ライミはクレジット上は製作だけでどのくらい具体的に関わっているか判断はつかないのだが(脚本も別の人)、作品的にはライミ監督作「スペル」に似ている。ただ「スペル」はその過剰さが極まってホラーなのに笑える、というレベルまで到達していたが(これはある種ライミの作風なのだと思う)、この「ポゼッション」には圧倒的にユーモアが足りない。もちろん意図的なギャグシーンという意味ではなく、たとえば漫画「北斗の拳」に見える、シリアスなのに笑えてしまう(劇中の登場人物は決して笑いをとるつもりはない)、というような部分が足りないのだ。「スペル」はそういうシーンが満載であったのに。これはリメイクのほうの「死霊のはらわた」でもいえることだが、生真面目すぎるのだな。まあライミ独特のユーモアはなかなかまねできるものでもないのかも知れないが。
 この作品もいわゆる「見せない演出」ではなく、最終的にがっつり見せてくれはするのだが、その割りに見せてくれるビジュアルが弱い。どうせならもっと悪魔悪魔したクリーチャーをしっかり見せてほしい。MRIでエミリーのレントゲンを撮ったら肺の辺りに悪魔がちわっす!という感じで写ってるのとかはちょっと面白かったけど、どうせ「見せる演出」なのだったら多少ちゃちい感じでもいいからいかにも悪魔!って感じのを見せてほしかった気がするなあ。

 と、物語の演出上では不満も残るもののキャストはとてもよくて、主演は「ウォッチメン」でコメディアンを演じたジェフリー・ディーン・モーガン。久方ぶりに見たがロバート・ダウニーJr.とハビエル・バルデムを足して割ったようなルックスで頼りがいはありそう。彼が演じたクライブの別れた妻がジュリア・ロバーツをさらに怖くした感じのルックスで恐怖感を煽る。この辺「おっかない顔だから」という理由で「エクソシスト」に起用されたというエレン・バーンステインを思い出した。

 キャストはジェフリー・ディーン・モーガン以外はまったく知らない人ばかりだったのだが、特にエミリーを演じたナターシャ・カリスは素晴らしい。「サイレントヒル」や「ローズ・イン・タイドランド」の頃のジョデル・フェルランドを思わせて、ちょっと今後注目したい。この子が悪魔を封印した箱に夢中になる。その様子はほとんど「指輪物語」のゴクリ(ゴラム)そのもの。箱を愛し執着する。ただ箱の役割がいまいち不明で箱そのものは悪魔を封印する聖なるものなのか、箱自体が邪悪なのかちょっと分かりづらい。
 姉のハンナ役も中学生ぐらいと思われる健康的な美少女。

悪魔にのっとられ菜食主義者だったのに肉を貪り食うエミリーちゃん、ゴクリゴクリ。

 ラストの唐突具合といい、どこが実話なんだよ!とは言いたくなるが全体的にキャストに救われている感じではある。あまりサム・ライミ的なものは期待しないほうがいいし、そんなに怖くもない。ただ、劇中の姉妹含めキャストは良いのでそういう視点で見る人にはオススメである。

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