The Spirit in the Bottle

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ネクロのミコちゃん大暴れ! 死霊のはらわた

 2013年も、もうそろそろ半年が経過しようという時点で今年の実写映画の僕のベスト1はホラーオマージュ満載の「キャビン」なわけだが*1、その「キャビン」の根幹部分の設定をなしている作品がサム・ライミの「死霊のはらわた」。そしてサム・ライミも製作として関わった正式リメイク作品が公開。既に公開より日数は経過していて賛否両論という感じだが遅ればせながら観て来たのだった。今年はなんとなくサム・ライミと縁があるね。

物語

 とある森深くの山荘。かつてここで暮らした兄妹、デヴィッドとミアが久しぶりにここで再会。他に二人の幼馴染エリックとオリヴィア、デヴィッドの恋人ナタリーが山荘に集合した。目的はミアの薬物依存治療。看護士のオリヴィアの元、人里離れた環境でミアを隔離しようというのだ。
 使われていなかった山荘は荒れ果て、地下では猫の死体が多数吊るされている何かの儀式が行われた後が。エリックはそこで謎の書物を発見し底に書かれた禁断の呪文を唱えてしまう。やがてミアが何かに怯え飛び出すが森で何かに襲われる。そして彼らの身に異変が訪れるが・・・

 まずはオリジナルの予告編。

 オリジナルはご存知サム・ライミの長編デビュー作にして出世作、1981年の「死霊のはらわた(原題はEvil Deadで同じ)」。いわゆるスプラッターホラーだが、低予算作品でそのチープだが過剰なスプラッター描写が恐怖だけでなく笑いに転じる、恐怖と笑いは紙一重というのを実践した作品だ。僕はそれほどこのオリジナル作品には思い入れもないがそれでも当時は素人同然だったブルース・キャンベルはじめとするキャストの大仰な演技、主にクレイアニメで撮られた肉体損壊描写*2など怖いというよりも笑えてしまう描写は楽しめた。当然リアルタイム体験ではないので最初からバイアスはかかってはいるのだが。ただ、怖い中にもユーモアがある、というのは必ずしも低予算だから、というだけでもなさそうで後の「スペル」などを見るとサム・ライミの作風であるところも大きそう。で、当然のことながらこの作品も後々の作品に影響を与えたマスターピース

 今回の作品はサム・ライミブルース・キャンベルが製作として関わっており(ライミは共同脚本も)、かなり本格的なリメイクではあるのだが、オリジナルにあった思わず笑ってしまうような描写は少なく、かなりリアルに怖がらせようとしている。肉体損壊などのVFXもリアルだ(ただしCGは使われず特殊メイクで中心だそうだ)。その一方でそれならばもうちょっと人間関係の説明やキャラクター描写を詳細に描いて欲しかった。「スクリーム」以降のような役割が明確で無いのでどのキャラクターも中途半端に思える。

 キャストというか5人の若者が「キャビン」や最近のホラーものに比べると個性が確立しておらず魅力に欠ける。特にデヴィッドの恋人以外の4人の関係性(というか兄妹とエリック&オリヴィアの関係)が分かりづらい。オリジナルとの大きな違いはおそらく観客の誰もがデヴィッドに対して「こいつがアッシュの立ち位置なんだろうな」と思っていると、デヴィッドは終盤退場していしまい、最初に悪霊に乗っ取られたミアがチェーンソーを取り出してアッシュの立ち位置になってしまうところだろう。ミアに対しては正直前半のまともな部分でも共感しづらく、悪霊に取り憑かれて以降もさんざんな目に合わせているのでイキナリ主役交代しても困るよ、という感じ。デヴィッドがミアを一時的に生き埋めにすることで元に戻すのだが、その時点でミアもかなり身体を損傷してるし色々と無理があるなあ、と思った。
 後はミアと並んで元凶とも言えるエリック。こいつがブツブツ文句ばっかり言っているくせに読むな!と言われている呪文をわざわざサルベージして唱えてしまい悪霊を呼び起こす。そしてこいつは肉体的にもしぶとくて、とにかく痛い目にあうのに中々死なない。最後には取り憑かれてデヴィッドに襲いかかる。このしぶとさはちょっとやりすぎ感もあって、それに比べるとあっさり退場してしまったオリヴィアがかわいそう。関係ないがオリジナル含め悪霊に憑かれて活躍するのは主に女性陣で男性がこれに対処する、というのは意外とホラー映画では珍しいような気がする。

 すべてのきっかけとなる書物は「ネクロなんとか」というタイトルでまあ、要するに「ネクロノミコンクトゥルフ神話に出てくる架空の魔導書)」なのだが、単に悪霊に取り憑かれた仲間を倒すだけではなく、なんとか悪霊を祓って元に戻そうとする(そして実際成功する)ところから「エクソシスト」を思い出す部分もあった。しかも相当肉体をしばくタイプのエクソシズム。燃やすか、バラバラにするか、生き埋めにするかで悪霊を追い祓える。デヴィッドは生き埋めにすることでミアから悪霊を祓う。また古代シュメール発と(ラストで)言及されることでやはりクトゥルフ的世界観というよりはユダヤキリスト教系っぽいオカルトな感じ。
 最後に肉体を持った悪霊が復活するがこれがいわゆる女性のゾンビのような感じでよく分からない上にラスボス感に欠けるのはもったいない。これなら最後まで見せない演出のほうが良かったのではないかなあ、とも思う。 

 終始リアルに展開するがエンドロールでどうやら「死者の書」を見つけたらしい学者の独白が流れる。そしてその横顔も。それがなんとブルース・キャンベル!これはあれか?今までリメイクだと思っていたのは実はオリジナルと陸続きで、アッシュの出てくる「死霊のはらわた」といずれつながるのか?そうなら期待したいなあ(まあ死霊のはらわた2」も実質ライミ本人によるリメイクみたいなものなのだけど)。
 まあ、最近劇場で観たホラー映画では本格的にスプラッターな物でもあり、全体的には満足です。ただオリジナルに思い入れがあるとちょっと受け入れづらいかもしれないなあ。

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*1:非実写も含めるとベスト1はやはりホラーオマージュ満載な「パラノーマン」ですね

*2:クレイアニメで有名人が殺し合いをする「セレブリティ・デスマッチ」という番組に近い気がします