インドの007は一途 タイガー 伝説のスパイ
3月の中旬に試写会で見てすっかり忘れてしまっていたのがインド映画「タイガー 伝説のスパイ」でそれが普通に公開されたので今更ながら感想を。すっかり細かいことは忘れつつあるのでちょっと短めに。
物語
インドとパキスタンは長年の敵対国。今は一見平和だが互いの諜報員は各地で暗躍している。インドの諜報局RAWの誇るスパイ”タイガー”は今日もイラクで裏切り者を始末したばかり。次なる任務はダブリンの大学で教鞭を取るインド人教授がパキスタンに機密を売っているのではないかという疑義の調査。ジャーナリストのふりをして教授に近づくタイガーだったが教授の身辺の世話をする女子大生ゾヤと知り合い惹かれ合う。パキスタンの諜報員と死闘を繰り広げながら、徐々に確信に近づくが実はゾヤこそパキスタンのスパイだったのだ!(前半)
互いに敵同士であることが分かったタイガーとゾヤ。しかし二人は再び出会ってしまう。互いに愛のため国を捨てて逃避行を繰り広げるがそれを追うのは二人のかつての古巣、インドのRAWとパキスタンのISIであった。二人は逃げ延びることができるのか!(後編)
インドでは大ヒットしたスパイアクション映画で主演のサルマーン・カーンもインドの大スターらしいが残念ながら僕はインド映画には疎いのでこれが初見。サルマーン・カーンはラジニカーントと違っていかにもインド人という風貌ではなく、普通に全世界で通用するハンサム。アラン・カミングがマッチョになった感じか。ヒロインのカトリーナ・カイフもインド美人と言うよりはもっと普遍的な美人という感じで主要舞台もダブリンだったり、キューバだったりすることもあってインド映画ぽさは控えめで問題なく全世界的にヒットする要素を備えている映画だ。政治的にもインドとパキスタンの長年に渡る紛争が背景にあるが、パキスタンを一方的に悪者として描いているわけではなく、特に後半は要は「ロミオとジュリエット」なので、パキスタンの人が観てもそれなりに楽しめると思う。
この映画、上映時間は132分とインド映画としては短めだが、きっちり二部構成で途中インターミッションも入るので、もしかしたらインターナショナル版か何かで短くしたバージョンなのかなあ、などとも邪推する。前半はタイガーがインドのスパイとしてゾラの正体を突き止めるまで。そして後半はタイガーとゾラが再び出会い愛を確認し、互いの故国を捨てて愛の逃避行に走る。
アクションの中心は「007カジノ・ロワイヤル」や「仮面ライダーウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム」でも見られたパルクール。イラクやダブリン、キューバの町並みを軽々と駆け巡る。その他、ダブリンでのアクションでは電車のシーンも印象深く、特に似ているというわけでもなく電車というだけでの連想かもしれないが、「スパイダーマン2」におけるスパイディとドック・オックの戦いを思いだしたりした。
インド映画ならではのダンスシーンは前半に1回、後半に1回。多分これもインド映画としては少ない。もしかしたらカットされているシーンなんかもあったりするのかもしれないが、特に前半のダンスシーンは実際の出来事と言うより、タイガーの妄想シーンとして見ることも出来て、もしもインド映画だと知らなかったり、インド映画のダンスシーンに馴染みのない人にもすんなり受け入れられると思う。というか全体的にインドローカルにとどまらず、世界的にも通じる映画作りをしていると思うし、実際成功している。アクション部分はハリウッド映画や香港映画、最近だと対映画などと比べても遜色なく、アクションだけ物語から突出しているわけでなくうまく物語の中に溶け込んでいるということでは他よりうまくいっている印象すらある。インド映画(文芸的なイメージにしても長時間のダンスシーンというイメージにしても)という前提をいい意味で裏切ってくれるはずである。
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この「タイガー 伝説のスパイ」の他に「ボリウッド4」と題してインド映画全4作が同時期に公開されます。そちらもよろしければ。