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さらば!だけど次回にさらなる期待 アイアンマン3

 さあ、「アイアンマン3」の登場!「アベンジャーズ」を経てマーベル・シネマティック・ユニバースもフェイズ2へ移行。しかし「アイアンマン」シリーズとしてはおそらく最終作?という微妙な立ち位置の作品。監督がジョン・ファブローからシェーン・ブラックに変わったことで雰囲気も1,2作目とは多少変化もあったが、予告編で見られるほどシリアスなものではなくシリーズ特有のユーモアは健在。

 一応、前作の感想はこちら(この記事の最後にマーベルの映画化作品の感想全体へのリンクも貼ります)

敵は大量、味方は少し アイアンマン2
僕が「アイアンマン2」でスカーレット・ヨハンソンになびかなかった理由
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 とはいえ、時系列的には2の後に「アベンジャーズ」を挟んでいる(更に言うなら「ソー」や「キャプテン・アメリカ」も)わけで今回の物語も「アベンジャーズ」の続編という趣が強い。
 僕はこの作品を楽しんだが、それでもちょっと(いや、かなりか)引っかかるところがあった。それは主に原作ファンとして観た場合なので映画シリーズしか知らない人にとってはおそらく気にならない部分であると思う。それについては後述するとして、それでは例によってキャラクターごとに。

アイアンマン/トニー・スターク

 ご存知我らが髭の社長。演じるのはもちろんロバート・ダウニー・Jr。シリーズ通算4度目ということで完全にものにしていると思う。金持で天才、女好きで自分に自信があるのでナチュラルに他人を見下しがち。というキャラクターはもう映画1作目から続いているので今更という感じだが、そこに今回は1999年当時のトニーが描写されることでさらなる嫌味も加わっているか。この辺で過去作以上にトニーのキャラクターは好き嫌いが分かれそう。
 今回は「アベンジャーズ」におけるNYの戦い、ラスト近くの核ミサイルをチタウリの本拠地に投げ捨てて一瞬爆発に巻き込まれる、がトラウマ一種のPTSDとなって彼にのしかかる。今回は彼の告白という形で物語は始まり、映画自体が一種のトニーのセラピーとなっている。
 一見社交的のようでありながら実はコミュニケーションには難を抱えているようにも思われるトニー。ペッパー、ハッピー、ローディーといった決まった人物と以外はあんまり交際を持てないような風にも見受けられる。劇中ではハーレイという子供と親交を結ぶがここでも彼のぶっきらぼうな態度は子供が嫌いというより、トニー自身が子供でありある意味対等な立場で向かい合っているのだな。また1作目を思わせるトニーのDIY描写も楽しい。洞窟でガラクタからマーク1を作ったトニーであるからホームセンターがあったらもうどんな兵器が作れることやら。
 アイアンマンスーツは過去3作ではマーク7までの製作だったが、今回はイキナリ42が登場。これは「ガンダム」に出てくるサイコミュのように部分ごとに遠隔操作できるスーツ。マーク42と言うことは「アベンジャーズ」から3の間の1年間に35個のスーツが制作されたことになるがマーク42はおそらくそれらを統率する汎用スーツということになるのであろう。
 クライマックスで出てくる35のスーツはおそらく専門に特化したスーツであり、リパルサーを強調したもの、延長アームを装備したもの、そして予告編でも特徴的な登場をする青いジャガーノートのような突進をしたスーツ(おそらく原作における対ハルク用スーツであるハルクバスターがモデル)などが登場。基本は遠隔操作で動かされるものの、クライマックスではトニーはそれを次々着替えながら戦う。アイアンマンはヒーローとしては(例えば異星人であるスーパーマンや神様であるソーなどと比べて)比較的リアル路線のヒーローだと思うがそれでも前作までのアイアンマンが「ガンダム」など主役メカは一点物、である感じなのに対して今作は「ボトムズ」など主役がどんどん機体を乗り換えていく感じか(それでもキリコがスコープ・ドッグに思い入れているのが分かるようにトニーも自分のスーツに思い入れを持っている)。僕は桜田吾作版(5/9追加。桜多吾作でした。ブコメにて指摘あり)の「グレートマジンガー」の量産型グレートマジンガーとかを思い出しちゃったが。
 最後に彼はアイアンマンとしての活動を停止し、それを象徴するかのようにすべてのスーツを爆破する。花火のようにトニーとペッパーの周りで炸裂し、ある種祝福のようでもある。今後彼はスーツを身にまとうのか否か。その意味では確かにこの映画は「さらば、アイアンマン」ではあった。
 20年前に何かの中毒を患っていたようなセリフがあるがおそらくこれは父親が死んでからそれを乗り越えるまでのことであると思われます。後は彼をサポートする人工知能ジャーヴィスが物語全般にわたって活躍するのも今回は嬉しい所。
 

ペッパー・ポッツ

 トニーの元秘書で現在はスタークインダストリーの社長、そしてトニーの恋人でもある。長年彼を支えてきたがそのせいでトラブルに巻き込まれることもしばしば。一夜のお相手としてならともかく、終生の恋人としてはトニーに付き合うのは大変であろう。過去のお相手もダース単位で出てくるだろうしね。今回も例によって巻き込まれ遂に彼女自身がスーパーパワーを得るに至る。
 またトニーによってマーク42を着せられるシーンも有る。
 全体として今回はスーツにすぎないアイアンマン(のスーツ)とトニー・スタークその人の区別が明確に付けられているようにも思われる。
 演じるのは引き続きグウィネス・パルトロウ
 

ハッピー・ホーガン

 トニーの元ボディガードにして家族のような仲間の1人。1999年ではドレッドヘアーだった(ただ1作目の時より太っていたような)。現在はスタークインダストリーズの警備責任者でペッパーのボディガードである。テロに巻き込まれ重症を負う。
 演じるのは前作、前々作の監督でもあるジョン・ファブロー。俳優としての出番はむしろ増えており決して仲違いしたとかではないようだ(彼自身は製作としても名を連ねている)。

アイアン・パトリオット/ジェームズ・”ローディ”・ローズ

 前作のウォー・マシーン。元になったのはマーク2だが今回はジャスティン・ハマーの改良を一旦なかったコトにしてトニー自身によって再改良された模様。パワードスーツ版キャプテン・アメリカというような色彩でヒーローと言うより政府の命を受け外国に拠点を持つテロ組織を攻撃したり、大統領の警護が主要任務。そう彼は現在のところ明確に政府所属のヒーローということになる(キャップはWW2時はともかく現在はフリー)。
 もともとコミックスではウォーマシーンの名前のまま活躍しているが、「戦争機械」では物騒とされたのか「鋼鉄の愛国者」に名前もカラーも変更。個人的にはこっちのほうがよほど物騒な気がしないでもない。そしてアイアン・パトリオットはコミックスではスパイダーマンの宿敵グリーンゴブリンことノーマン・オズボーンの別の姿である。彼が更正後政府直轄の組織を編成する際にスタークの遺産を受け継いでアイアン・パトリオットとなったという設定。最終的にはグリーンゴブリンの顔が再び出現し・・・となるがこれは又別の話。
 演じるのは2に引き続き、ドン・チードル。1の時のテレンス・ハワードから2でチードルに変わったからか1と2で少しキャラクターに変更もあったが、政府直属の生真面目なヒーローとしてはチードルの方があっているか。今回はトニーと反目することもなく最初から仲間だが、それでも彼自身ではなくスーツのほうが敵に利用されたりしてちょっと残念な印象も。
 

大統領

 アメリカ大統領役はウィリアム・サドラー。そして副大統領ミゲル・フェラーという凶悪な内閣。最近はサドラーは「ミスト」の小心者や「崖っぷちの男」の好々爺だったりするがどちらかと言うと「ダイ・ハード2」だったり、「ビルトテッドの地獄旅行」の死神のような爬虫類顔を生かした悪役が多かった。ミゲル・フェラーは「ロボコップ」の(結果として生みの親となった)オムニ社のスノッブなヤンエグ役が有名。その他ディズニーのアニメ「ムーラン」では大ボスのシャン・ユー役もやっている。この到底善人には見えないコンビが劇中のアメリカ政府である。この二人の内、副大統領がキリアンたちの後ろ盾となり大統領の命を狙う。彼の娘が片足をなくしており、おそらくエクストリミスによる再生を願ったのだろう。その意味では同情の余地はあるキャラクター。
 一方大統領は大統領で何か表に晒すことの出来ない過去の悪事がある模様。奪われたアイアン・パトリオットのスーツを着せられるシーンがあるのだが、先述したとおりアイアン・パトリオットは本来コミックスではグリーンゴブリンことノーマン・オズボーンなのだが、サドラーが爬虫類顔ということでライミ版「スパイダーマン」でゴブリンを演じたウィレム・デフォーとちょっと似た容貌でアイアン・パトリオットからサドラーの顔が覗かせる部分はちょっと「お!ノーマンだ!」と思わないでもなかった。多分共和党(笑)。
 

アルドリッチ・キリアン


 シンクタンクエイム(A・I・M)のリーダーにしてハンセンの研究をサポート。ペッパーとは旧知の仲である。1999年当時は足が悪かったが・・・
 ガイ・ピアーズ演じるアルドリッチ・キリアンこそ本作の黒幕。そしてある意味シリーズでもお馴染みの「トニーになりたかったがなれなかった男」でもある。前作のイワン・ヴァンコとジャスティン・ハマーをひとつにしたようなキャラ。彼のパワーの源は「エクストリミス」でおそらく、生物の再生する力を極限まで高める物。欠損した身体も再生するしちょっとの炎に巻きこまれたぐらいでは平気だが、過剰に使用するとその再生パワーが暴走し肉体そのものが爆発物と化す。
 途中何人か出てくるエクストリミス適応者と基本は一緒であり(ちょっとキリアンのほうが強力かもという描写はあるが)、特に差別化はされていない。個人的には彼はあくまで雑魚キャラに甘んじていただいてやはりマンダリン(一応彼もマンダリンではあるのだが)に頑張って欲しかった。
 中盤でもっぱらアイアンマンの相手を務めるサヴィン(ジェームズ・バッジ・デール)の方が敵としての印象は強いかも。
 そして僕が今回一番受け入れがたくこのアイアンマン3という作品の評価を微妙なものとしているのが次の・・・
 

マンダリン


 国際的テロ組織テン・リングスの首領。アメリカ、ひいてはアイアンマンを執拗に狙う・・・
 マンダリンは原作におけるアイアンマンの宿敵で映画化1作目の頃から登場ヴィラン候補としてずっと挙げられてきた。共産中国に追われた中国人が宇宙人の宇宙船を発見その遺産を10個の魔法の指輪に変えてマンダリン(中国の王朝の官僚を意味する)を名乗り世界征服を狙っている。
 例えば「ノックスの十戒」という言葉があって、これは推理小説を書く際のルールのようなもので、そこでは「中国人を登場させてはならない」という一節がある。これは現在の目から見ると意味不明だが、この「ノックスの十戒」が発表された1928年当時は主に中国人はなんでもできる魔法使いのような存在としてフィクションに登場することが多かったからである。有名な所ではサックス・ローマーの「フー・マンチュー」なんかが「よくわからないけどなにかすごい力を持っている怪しい中国人」の代表だろう。また人気SFTVドラマシリーズ「スタートレック」に出てくるロミュラン帝国もそのモデルは(ローマ帝国と)中華人民共和国である。あるいは「007ドクター・ノオ」のジュリアス・ノオ博士。なんとなく怪しい悪い中国人、このイメージがマンダリンの源泉だろう。僕が漠然とマンダリンと似たイメージを持っている横山光輝の「バビル2世」のヨミなどももしかしたらマンダリンと共通するモチーフがあるのかもしれない(バビル2世は1971年登場、マンダリンは1964年登場)。

バビル2世 文庫版 全8巻セット

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 おそらくは1、2作目の段階では機械工学のアイアンマンのヴィランとしては魔法の指輪を使うヴィラン、というのは荒唐無稽に過ぎる、と判断されたのであろうトニーを攫うゲリラ組織テン・リングスにその名を留めるだけとなり登場は見送られた。それは理解できるが、逆に言うと「マイティ・ソー」や「アベンジャーズ」の魔法や異次元の宇宙人からの侵略、という要素を経たからこそ、満を持してマンダリンの登場をファンは期待したはずである。
 マンダリンを演じるのはベン・キングズレー。彼自身はイギリス人だが過去にインド人やユダヤ人、ペルシャ人、アラブ人、東南アジア人などその演じてきた役柄は人種を問わない。過去のヴィランを演じたジェフ・ブリッジズやミッキー・ロークに比べても遜色ない、いやそれ以上の配役。やっとのマンダリンの登場に期待も高まった。
 しかし、結局のところ、ベン・キングズレーのマンダリンは単に役者の演じた飾りであり実際の黒幕はキリアンであったという展開になる。ベン・キングズレー演じる男はトレバーという役者で言われるままマンダリンを演じていただけだったのだ。はっきり言ってこの展開はがっくりきた。原作ファンの待ち望んでいたマンダリンはこういうものではなかったはずだ。もちろん、僕も原作を全部読んでいるとかでは到底ないので、もしかしたらこういう展開の話もあったのかもしれない。でも大筋でのマンダリンの物語は全く違うはずで期待はずれもいい所である。当然魔法の指輪を使って戦うという描写も全くない。
 「アベンジャーズ」のソフトの特典映像「マーベル・ワンショット」ではチタウリの銃を拾ったカップルが(本来地球人には使えないはずの)チタウリの兵器を使って強盗をするという話であるが、例えばマンダリンがアスガルドの遺産やチタウリの兵器を指輪に変えて力を発揮する、という展開でも良かったはずである(当然だがヴィランとしてのオリジンとアイアンマンと戦う理由は別でもシナリオでうまく因縁は付けられたはず)。
 キリアンはアイアンモンガーやウィップラッシュのような戦闘能力的なもう一人のアイアンマン、というヴィランでこそなかったが、キャラクターとしてはトニーになりたくて、でもなれなかった男、を踏襲している。映画しか知らないファンには問題ないかもしれないが、1作目の頃から「次はマンダリン!」と期待していた身にはとんでもなく期待はずれな描写だった。
 
 ベン・キングズレー演じるマンダリンが単なる飾りであるという展開や、キリアンという名前のキャラクターが出てくるので「バットマン・ビギンズ」を彷彿とさせないこともない。あの映画も公開当時は僕は評価が低かったが、それは続編である「ダークナイト」や「ダークナイト ライジング」と通して観た場合、シリーズとしての評価では底上げされた。しかしこの「アイアンマン3」はシリーズとしては最終作、しかし世界観そのものはソーやキャップの続編、そして「アベンジャーズ2」として続く。この曖昧な立ち位置が現在のところ、僕の評価を微妙なものにしている。
 

Tony Stark will return トニー・スタークは戻ってくる

 恒例のエンドクレジット後のお楽しみ。先に今作はトニーのセラピーである、と書いたがそれではその相手はというと・・・ブルース・バナー博士。今回は「アベンジャーズ」を受けての物語であるが、シールドもキャップもハルクも言及されない(ソーは少し言及される)。ちょっと物足りないな、と思っていると最後でバナー博士が登場して爆笑をさらった。しかしバナー博士は別に心理学の専門でも何でもないはず、と思っていたら、話を聞くフリして寝ていたというオチ。マーク・ラファロ主演の単独「ハルク」映画も見たいがハルクというキャラクターは映画の場合主役よりも群像ヒーロー劇か他のヒーロー映画にゲスト出演するのが一番輝くような気もするなあ。
 ラストには”Tony Stark will return”のクレジットが出てくる。ここでは「アベンジャーズで」とはされていないのでもしかしたら「マイティ・ソー」や「キャプテン・アメリカ」での方で再び登場するのかも知れないが、ここで注目したいのは”Ironman will return"と名詞がアイアンマンではなくトニー・スタークとなっているところだろう。今作でアークリアクター要らずの身体となってすべてのスーツを失ったトニーがどういう形で関わるのか*1。それとも本当にもうアイアンマンという形では登場しないのか。いずれにしろ早く次回作が望まれる。とりあえず今年中には「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」が全米で11月に公開予定(日本公開は来年2月予定)。

アイアンマン3: ヒーローズ・フォール

アイアンマン3: ヒーローズ・フォール

Iron Man 3 (Original Soundtrack)

Iron Man 3 (Original Soundtrack)

 このシリーズ、作品ごとにスコア担当が違う。1作目がアイアンマンのテーマ曲としては定着している印象で2作目はスコアよりもAC/DCの楽曲が優先していた印象。今回はブライアン・タイラーという人。担当は違っても1作目のテーマを流用して欲しかったなあと思わないでもない。音楽自体はとても良かったです。
アイアンマン3:プレリュード (ShoPro Books)

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アイアンマン:エクストリミス (MARVEL)

アイアンマン:エクストリミス (MARVEL)

 アベンジャーズでNYが大変だった頃、ローディーは何をしていたのか?という疑問に答える前日譚コミックスと、今回の物語のたたき台になったコミックス。

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*1:もちろんローディーがアイアン・パトリオットを使用しているように胸のアークリアクターは別に絶対必要なものではないし、いざとなればスーツはすぐ作れるであろうが