The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

Bugってヴァニー! シュガー・ラッシュ

 今年も早くも1/4が過ぎて、すでに結構な量の映画を観たりしている。もちろん全部チェックできるわけでもないが、それでも話題作は大体見ていると思う。今年は例年以上に傑作が多い印象で、特に3月は良作が多いと感じたのだが、それでもビビッと来る*1飛び抜けた僕にとっての傑作というのはまだないと思っていた。去年で言うなら、「サニー」のような圧倒的な多幸感の中、誰がなんと言おうと「好きだ!」と大きい声で宣言で来るような作品。一応、今年観た中では現時点では「アウトロー」と「キャビン」がおそらくベスト10入りは間違いないであろう作品。「クラウド・アトラス」「ジャンゴ」「ライフ・オブ・パイ」と言った大作は良作だと思うけど最終的に年間ベスト10にはおそらく入らないだろうなあ、という感じ*2
 でもここで、ビビッときた作品が出て来ました!それがディズニーの新作アニメーション「シュガー・ラッシュ」。というわけで「シュガー・ラッシュ」を鑑賞。現時点で文句なし今年ナンバーワン!

紙ひこうき

 まずは恒例の短編。音楽だけのセリフ無しモノクロ映画。駅で一目惚れした相手がオフィスの向かいのビルで面接しているのを発見した主人公が仕事に使う書類を紙ひこうきにして飛ばし、自分の存在に気づいてもらおうとする。しかし飛行機は尽く狙いを外れ、最後の一枚に。主人公は意を決して仕事をなげうってオフィスを飛び出すが、そこで奇跡が起こって・・・

 この作品は一応3DCG作品ではあるのだが、日本のゲームで言うならトゥーンレンダリングというやつだろうか。手書きの良さも残したアニメーション。おそらくは「塔の上のラプンツェル」のキャラクターデザインを2Dにした感じだと思うが、等身こそ普通の人間風だが顔にデフォルメも効いていて、このデザインが僕の大好きなブルース・ティムの絵柄に似ている。しかもそれを更に躍動的にした感じ。前半の切ない部分と後半のファンタスティックな部分との対比も素晴らしい。2Dと3Dの中間のような誰でも没入できる映像に今後の可能性もかいま見えた。これだけのためにもう一回劇場に行ってもいいと思うほど。
 とは言っても実際はその後に控えてる作品が最高に良かったのだな。

物語

 閉店後のゲームセンターではゲームのキャラクターたちは電源を通して全てがつながったゲーム・セントラル・ステーションを通じて互いのゲームを行き来したりして交流をしている。8BIT時代の人気ゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の悪役ラルフは30年間も悪役一筋。本来は「気は優しくて力持ち」タイプの彼だが、ゲームの他のキャラクターからは悪役として嫌われている。本当はヒーローをやってみたい彼は「悪役セラピー」でそう告白するが受け入れてもらえない。自分のゲームの世界へ戻るとそこでは「フィックス・イット・フェリックス」30周年パーティーの真っ最中。自分が招かれてないことを知ったラルフはつい爆発し、ヒーローの証であるメダルを手に入れることを宣言。ゲームを飛び出す。やってきたのは新型ゲームである「ヒーローズ・デューティー」の世界。ここでキャラクターになりすまし、カルホーン軍曹に怒鳴られながら、彼は密かに敵キャラであるサイ・バグの眠る塔の最上階にたどり着き、メダルを手にするが、目覚めたサイ・バグと別のゲームに飛ばされてしまった。
 一方、ラルフの戻らない「フィックス・イット・フェリックス」の世界では当然ゲームは成り立たず、故障の紙が貼られてしまった。もしも電源を抜かれたら世界は崩壊し、キャラクターはセントラル・ステーションで失業者として過ごすことになるのだ!フェリックスはラルフを連れ帰すために探しに出る。
 ラルフが飛ばされた世界は可愛い女の子のレーサーが活躍する「シュガー・ラッシュ」というゲームの世界。そこでラルフはヴァネロペという少女と出会いメダルを盗られてしまう。彼女には不具合がありレースに出場させてもらえないのだ。ラルフは彼女の境遇を自分を重ねあわせる。ラルフを探すフェリックスとサイ・バグ退治のためにやってきたカルホーン軍曹もやってきて・・・

 僕の世代(1977年生)のアーケードゲームというと、小学校一年の時にファミコンが発売されているので、「ドンキーコング」とかはファミコンで遊んだ感じ。アーケードゲームでは「魔界村」とか「ドラゴンバスター」とかが記憶にある。ただ、小学校の時は一回50円〜100円のゲームを気軽にプレイすることも中々出来ず(うちは小遣い制になるのは中学からだった)、もっぱらプレイしている人を後ろから見ているだけ、という感じ。本格的に自分でもプレイし初めるのは中学に入って「ストリートファイター2」が稼働し始めてからだろう。ゲームセンターはもちろん、どこそこのスーパーに筐体が置いてある、などという情報を共有しあってプレイし合ったものだ。その頃の僕はとにかく意表を突いたキャラクターが好きだったので使用キャラは主にダルシムブランカ。後は連打でなんとかなる春麗エドモンド本田と言ったところか。普通にリュウやケンが使い勝手がイイと理解するのはかなり後年のことだ。で、しばらくは格闘ゲームテトリスを中心に遊んでいたが、その後「ダンス・ダンス・レボリューション」などリズムゲームが流行り始め、さすがにその頃からゲーセンとは距離を置くようになった。
 多分僕の兄貴のような少し上の世代だとファミコンの前にパソコンゲームなどに親しんだりしたのかもしれないが、自分たちの世代は本当にゲームの進化とともに歩んできた世代のように思う。
 さて、この映画はゲームのキャラクターが自分の意志を持っている、という設定からなのか「トイ・ストーリー3以来の傑作!」などの宣伝文句が付けられ何かと比べられている。ただ、決定的に違うところがあって、「トイ・ストーリー」の場合、おもちゃの本来の役割(西部劇のヒーロー、スペースレンジャーなど)の他に、持ち主の子供が遊ぶ際に勝手に新しい役割を与える。そしてその持ち主の子供がいなくなったらおもちゃ自身の自我がキャラクターとして活躍する。一方、「シュガー・ラッシュ」の場合、ゲームの設定として与えられたキャラクターと閉店後の自我という2つ。劇中実際の子供が何人か出てくるが実はゲームのキャラクターには子供(というかプレイヤー)の存在はあんまり関係ない。彼らはゲーム本来の役割をかなりビジネスライクに仕事として捉えていて子供のために、とか考えているふうではない。
 主な舞台となるゲームは3つあって、主人公ラルフがいる「フィックス・イット・フェリックス」は「ドンキーコング」と「レッキングクルー」を合わせたようなゲームで劇中30周年ということは1982年頃から稼働しているゲームか。ラルフは悪役という設定だが、どちらかと言うとプロレスにおけるヒールに近く一旦仕事場を離れればいい人。しかし、フェリックス以外の「フィックス・イット・フェリックス」の住人には本当に悪人だと思われて嫌われている。「フィックス・イット(修理屋)・フェリックス」に対してラルフのアダ名は「レック・イット(壊し屋)・ラルフ(この映画の原題でもある)」。彼は悪役を仕事としてやるのも嫌になって他のゲームに行ってでもヒーローになろうとする。
 もう一つが最新ゲームであるFPSシューティングゲームの「ヒーローズ・デューティ」。デザイン的には「HALO」とかだろうか。あんまり僕には分からないが(最新ゲーム余りやらないのでね)、ここでの敵キャラであるサイ・バグが他のゲームの世界にアクシデントで飛び出してしまい、(他のキャラと違ってひたすらプログラミング通り働こうとするので)大変なことになる。カルホーン軍曹はプレイヤーを誘導するキャラクターで女性ながらに鬼軍曹でルックス的にはララ・クラフトとか海外のゲームキャラという感じ。「ジャッジ・ドレッド」のジャッジ・アンダーソンにも少し似ているかもしれない。ちなみにカルホーン軍曹には悲しい過去が設定されている、という設定だが、おそらく最新ゲームなのでまだ、セントラル・ステーションなどを通じてのほかのゲームとの付き合いなどがよく分かっていないのだと思われる。「トイ・ストーリー」でやってきたばかりのバズ・ライトイヤーが自分をおもちゃでなく本物のスペース…レンジャーだと思ってしまったように。
 そしてメインの舞台になるのが90年代に制作されたレーシングゲームシュガー・ラッシュ」。女の子向け「マリオカート」という感じでお菓子の世界をカートレースしながら途中でアイテムを駆使して、邪魔したりする。日本の女の子たちのファッションなんかをイメージしてるらしい。プレイキャラクターはほとんどが女の子で閉店後に予選をやって上位の女の子だけ次の日のプレイキャラクターになれるらしい。キャンディ大王が支配しているが・・・
 ここの女の子たちが不具合のあるキャラクターであるヴァネロペをいじめていたりするのだが、このいじめが何気に酷い。陰湿な感じのいじめで、こんなところまで日本をイメージせんでも・・・とか思ってしまった。
 とにかく、楽しくキュートな作品で、後半は涙腺が崩壊していた。劇場では女児はじめ若い女の子ばかりだったが、関係なく普通に泣いてました。

 この映画では映画オリジナルのゲームの他に、実在のゲームも出てきて悪役キャラクターのセラピーではクッパ*3、ベガ、ドクター・エッグマンなどが確認できる。ベガとともに「スト2」からはザンギエフが出てくるが、「あれ?ザンギエフって悪役だったかな?」という疑問はゲームを実際にプレイしたことのある者なら誰しもが思う所。監督が好きなキャラクターで喋らせたかったとか、理由は色々あるのかもしれないが、たしかアメリカではM・バイソンがシャドルー四天王では無くなって善玉キャラクターになっているので*4代わりにロシア出身のザンギエフが悪役ということになっているのかな、と推察する。これら、既存のゲームキャラはほとんどがゲスト出演で物語に関わってくるのはQバート(ゲームが電源抜かれて撤去されたのでセントラル・ステーションで失業中!)くらいのものだが、酒場で呑んだくれるリュウ、セントラル・ステーションの注意案内などを担当しているソニックなど芸が細かい。
 映画はラルフとヴァネロペという世間から阻害された二人が共同でゲームに参加しよう、というところから、誤解による別れ、それを再び乗り越えての合流、真の敵との叩きを経てハッピーエンドという王道の作り。キャンディ大王のプログラム工作(コナミコマンドが出てくる「シュガー・ラッシュ」はコナミ製?)がなんでヴァネロペに対してあんなことをしたのかがイマイチよく分からなくて「設定のための工作?」とか思ったり、物語がハッピーエンドとなってもヴァネロペの不具合がそのまま個性として残ってしまうのはどうなの?(ワープできるチートキャラになってしまった?)とか多少の疑問は残るが、まあ小さな問題だろう。
 ゲームだけでなく映画のパロディもいくつかあって、僕が分かったのはキャンディ大王の白の門番がお菓子のオレオなのだが「オ〜レ〜オ!オ〜レオー!」と「オズの魔法使」の西の魔女の兵隊が「ウォーリーア!ウォーリアー!」と歌うように掛け声をかけながら門番を務めるシーンのパロディ。実はここでキャンディ大王が悪いやつだ、と知らしめているのかもしれない。後はやはりキャンディ大王がメガネを掛けて「メガネを掛けた男を殴れるか?」とラルフに言うシーン。こちらは1989年の「バットマン」でジャック・ニコルソンジョーカーがクライマックスでバットマンに言うセリフ。面白いのは「オズの魔法使」はMGM作品だが現在はワーナーの管理で、「バットマンももちろんワーナー・ブラザーズ。ディズニーなのにワーナー作品のパロディという所。僕が知らないだけで他にも映画のパロディシーンがあったのかもしれないが。

 さて、今回は挿入歌という形で、日本からAKB48の曲が使われている(全世界共通)。といっても作曲がJimie Houstonという人で多分、制作の段階からかなりディズニーと密に劇中歌として合うように作られているものだと思う(作詞はいつもの様に秋元康だがレースと生き方をかけてそれをお菓子に例えるような歌詞でこれまた劇中にマッチしている)。正直、「カーズ2」のPerfumeの「ポリリズム」より劇中での違和感の無さでは上であろう(まあ、ポリリズムはカーズ2のために作られた曲ではないしなあ)。他の主題歌などと続けて聞いても違和感がない。1つだけ文句があるとすれば、この「Suger Rush」を歌う選抜メンバーに前田亜美が入っていないことだろうか。だって彼女ヴァネロペそっくりなんだよ!なので勝手に脳内で映画同様、本当はセンターだったのにキャンディ大王=秋元康にプログラムをいじられて選抜に選ばれていない状態になっているのが前田亜美、ということにしているよ!
 また、今回は日本語吹き替え版のみの公開、ということで、一部からは不満をも出ているが、僕も最初は一部キャラクターを例によって森三中ハリセンボンなどの吉本女芸人が担当していると知って不安だったのだが(「呪怨2」のトラウマは根深い)、彼女らはゲーム「シュガー・ラッシュ」のプレイヤーキャラクターの女の子たちを担当していて、リーダー格のタフィタを演じる友近以外はほとんどセリフもなく、その友近も違和感がないので良かったと思う。もう何度も書いているが、例え洋画であっても、アニメそれも3DCGアニメは断然日本語を第一言語とする人なら日本語で観たほうがいいと思う。ましてやこの映画は(もちろん大人が観ても素晴らしい映画だが)家族向けの映画、第一の観客対象である児童のことを考えれば吹替で十分なのだ。いやまあこの辺の問題は難しいのではあるのだけれど。
 また、吹き替え版という言い方をしているが、本来は日本語版、というべきでディズニーやピクサー、ドリームワークスなどのアニメにおける日本語吹き替え版は本来、英語がオリジナルで日本語はそうではない、という考えはちょっとおかしいようにも思う(もちろんその他各国語版も同様)。単に英語版と日本語版と考えたほうがいい。ちなみに英語版ではカルホーン軍曹は「glee」のスー先生でお馴染みジェーン・リンチが担当。こちらはそれなりに格好良かった印象だが、ヴァネロペ役のサラ・シルバーマンははっきり言って日本語版の方が美味いです。というかヴァネロペのキャラに近い年齢の役者(諸星すみれ、子役だけど声優経験も豊富)が合うのは当然で逆になんでコメディアンであるサラ・シルバーマンを起用しちゃったのだろう?と不思議に思う。実際聞いてみてもヴァネロペの英語版には違和感が残ります。そして主人公ラルフは山寺宏一なのでもう何も言うことはありません。

 ところで、ヴァネロペは本来ゲーム「シュガー・ラッシュ」のメインキャラクターとでも言うべきキャラである。だから他のゲームセンターにおいてある筐体であれば普通にヴァネロペが使えたはずで、
子供「ねえ、店長のおじいさん。他のお店ではヴァネロペって子が使えるのに、どうしてこの店では使えないの?」
店長「さあ、でもね。代わりにこの店ではキャンディ大王っていうキャラクターが使えるんだよ」
子供「やだ!可愛くない!却下!」
というようなやり取りがあったりなかったり(妄想)。まあ実際は「シュガー・ラッシュ」自体が90年代のゲーム(「フィックス・イット・フェリックス」が80年代、「ヒーローズ・デューティー」が最新ゲームということで差をつけているらしい)ということでもう他の店には置いてないのかも知れない(どうもこの店は比較的古いゲームも置いておく方針の店のようだ)。

シュガー・ラッシュ オリジナル・サウンドトラック

シュガー・ラッシュ オリジナル・サウンドトラック

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 もしも続編があるのなら、今回はゲスト出演にとどまっていた既存のゲームキャラクターなどが本格的に物語に関わってくれるようになると嬉しい。後はやはり名前だけ出てくるマリオの出演に期待したいですな。
 ということで本来なら、この「シュガー・ラッシュ」がぶっちぎりで現時点での今年公開作暫定第1位の座をしばらくキープするはずだったのだが・・・(以下次回!) 

Bugってハニー DVD-BOX下巻(8枚組)

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高橋名人のBugってハニー

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*1:去年「モンスター・ホテル」を観て以来お気に入りのフレーズ

*2:ついでに言っておくと「TED」「ルーパー」の2つは鑑賞後しばらく経ってかなり評価を下げています

*3:スーパーマリオ」もそういえばアーケード版あったなあ

*4:名前も変わっているはず。春麗が主人公の映画「レジェンド・オブ・チュン・リー」では日本通りの設定・名前になっていたが