The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

小さな恋のスージー ムーンライズ・キングダム

 僕の大好きな映画に1971年の「小さな恋のメロディ」というイギリス映画があって、まあ僕の普段の趣向からすると意外と思われるかもしれないが、この小粒な恋愛映画が「マッドマックス2」や「悪魔のいけにえ」「大脱走」などと並んでオールタイムベスト10には入るであろうぐらい好きである。この作品はイギリスを舞台に11歳の上流階級の少年と同級生の労働者階級の少女が恋に落ち、それを支援する子どもたちが保守的な大人を振り回す、という作品で「Don't trust over thirty!(30歳以上を信じるな!)」というカウンターカルチャーの映画であるのだが、本国イギリスとアメリカでは全然ヒットせず、なぜか日本では大ヒットしたという作品だ。僕は当然リアルタイムの公開では見ていないが後々鑑賞してとても大好きな作品である。
 そしてやはり同じようにローティーンの少年少女が恋に落ち周りの大人がそれに翻弄される、という映画「ムーンライズ・キングダム」を観た。

物語

 1965年アメリカのニューイングランドの小さな島。ここでキャンプをするボーイスカウトから1人の隊員が脱走した。親を亡くし後見人にも見放された少年隊員サムはやはり親とうまく言っていないと思っている少女スージーと一年前に出会い、今日この時一緒に駆け落ちする計画を立てていたのだ。
 二人は島の中をかつての先住民が辿った道を行き、潮流口に二人の王国「ムーンライズ・キングダム」を築くのだ。一方スカウトのウォード隊長、島で一人の警官シャープ、そしてスージーの両親は大慌て。残ったボーイスカウトも巻き込んで大捜索が始まった!

 監督は「天才マックスの世界」や「ロイヤル・テネンバウムズ」でお馴染みのウェス・アンダーソン。僕は映画を見ながら時代設定やストーリーに「小さな恋のメロディ」を思い出してしまったが、もちろん舞台がアメリカになっていることや、監督自身(ローマン・コッポラと共同で脚本も)もまだこの時代に生まれてはいないことでだいぶん違う作品である。特にこの監督ならではの絵画的な画作りというか(キャラクターを正面から捉えたカットが多い)計算されたカットやどうにも皮肉的な人物造形などは練られているものの、さわやかな勢いのある「小さな恋のメロディ」とはかなり異なっている。

 この作品、実は意外に大スターが出ていて、ウォード隊長にエドワード・ノートン先生、シャープ警部にブルース・ウィリス、スージーの両親にビル・マーレイフランシス・マクドーマンドといった具合。ボーイスカウトの一番えらい人はハーベイ・カイテルティルダ・スウィントンも出てくる。ブルース・ウィリスは今年に入ってすでに二本目。「ダイ・ハード ラスト・デイ」は劇場で観る予定は無いけれど、先の「ルーパー」と合わせて日本では3本ほぼ同時公開されていることになる。今年は6月に「G.I.JOE2(本当は2012年中に公開されているはずだったのに…)」が控えているし、とりあえずブルース・ウィリスはもういいや。このウィリスのシャープ警部とスージーの母親が不倫をしているという設定だったりするのだな。
 問題のある孤児を扱うソーシャルワーカーティルダ・スウィントンノートン先生の芝居がかった雰囲気はこの映画の特徴という感じか。子どもたちの物語である一方で大人たちも何かと成長しきれていない感じで、ノートン先生ボーイスカウトの子どもたちに囲まれてお山の大将ぽさが満載だし、ウィリスも昔の付き合いを引きずって中々踏み出せない感じ。そういうダメっぽさを子どもたちに見透かされてもいるのだな。

 子どもたちはまずはサムを演じたジャレッド・ギルマンとスージーを演じたカーラ・ヘイワード。サムは特に美少年風というわけでもなくメガネを掛けたガリ勉風。理論派の皮肉屋で筋肉マッチョ系の神経を逆なでするタイプ。孤児であるという部分もあってすでに自分の世界を確立している。一方スージーは「ハリー・ポッター」シリーズ1,2作目の頃のハーマイオニーエマ・ワトソン)がちょっと大人になった感じの美人。不思議な言い方だが今現在のエマ・ワトソンの子供の頃、というのとはまた少し違うのだな。「小さな恋のメロディ」におけるマーク・レスタートレイシー・ハイドもそうだし、最近だと「ヒューゴの不思議な発明」、「スーパー8」でもそうだが、この頃の年齢だと同い年だと女の子のほうが体つきは大人っぽくて男の子の方は本当にガキなのだが、ここでもサムはまだまだ子供という外見なのに、スージーはかなり大人っぽい。精神的にはまだまだ子供なのだが下着姿になったり、パンチラを見せたり妙に色っぽい描写が多い。まあ、それでもカーラ・ヘイワードとトレイシー・ハイドだったら僕はトレイシー・ハイドを選ぶけどね!
 その他、最初は敵対していたボーイスカウトの面々が後半、サムとスージーを手助けするようになるのが楽しい。途中大人なのに手助けするスカウトとしてジェイソン・シュワルツマンが出ているが、ここでのトランポリンのシーンは愉快。
 僕としては「小さな恋のメロディ」が永遠のマスターピースなので、ついそれと比べてしまい、そういう意味ではどうしても「小さな恋のメロディ」には敵わない、と思ってしまうのだが、それでも中々に楽しい映画であった。とはいえ、ウェス・アンダソン独特のカットやオフビートな皮肉めいた物語などが苦手という人もいるのではないかなあ。音楽の使い方も良かったです。

ムーンライズ・キングダム オリジナル・サウンドトラック

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小さな恋のメロディ ― オリジナル・サウンドトラック

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ちょいと短めですが。