長寿とご繁栄を マリーゴールド・ホテルで会いましょう
ここ数年、何気にジュディ・デンチの出演作はほぼ劇場で見ている気がする。もちろん彼女が目的で観に行くと言うことは無く、大概は事前の知識では出演していることさえ知らない、ということも多いのだが(007シリーズは別)、今回ははっきりジュディ・デンチ目当てで観に行ったのだった。「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」を鑑賞。
物語
40年連れ添った夫を亡くし、長年住んだ家を夫の借金返済のために売らなくてはならなくなったイヴリン、退職金を娘の事業のために貸し出して失敗していしまったダグラスとジーンの夫妻、安く早く股関節の手術をうけるためにインドへ行かなければならないミュリエル、少年時代にインドで過ごした元判事グレアム、そしてまだまだ若いつもりで恋の相手を見つけるべくやってきたノーマンとマッジ。それぞれに事情を抱えた7人の老人が訪れたのはインドにあるシニア用長期滞在型ホテル「マリーゴールド・ホテル」。広告では豪華な歴史を感じるホテルで優雅なひとときを謳っていたが実態は若い支配人が孤軍奮闘するボロホテルだった!しかし前払いで料金を払ってしまった7人に他の選択肢はなく、英国から遠く離れたインドの地で人生も終盤を迎えた彼らの奇妙な生活が始まるのだった・・・
先ほど、ジュディ・デンチ目当て、と書いたが実は事前には予告編すら見ておらず、ポスターだけ見て「ビビッと」来たのであった。やはりジュディ・デンチとビル・ナイに惹かれたのだ。
原題は「The Best Exotic Marigold Hotel」でこれに「The Eldery & Beauty(長寿と美しさ)」という宣伝文句が付いて劇中のマリーゴールド・ホテルの肩書きとなる。いわゆる引退後の人生「セカンドライフ」をインドで過ごそうと決めた人たちの物語。息子の世話にはなりたくないから、というものもいれば手術のため、あるいは少年時代からの秘めた思いを果たすため、など様々な事情の老人たちがひとつに集う。問題はそのホテルがけっして立派なホテルではないということで、優雅な老後を模索していた彼らは手痛い目にあう。
キャストは78歳のジュディ・デンチと63歳のビル・ナイを中心に、「バットマン・ビギンズ」のトム・ウィルキンソン、「タイタニック」「ハリー・ポッター」でお馴染みのマギー・スミスなど。ビル・ナイは「ショーン・オブ・ザ・デッド」で初めて知ったのだがまだ63歳なのだね。この人は見た目よりも若いのだ。今まではゾンビ、ヴァンパイア、魔法使い、神様、とちょっと人間離れした役ばかり見ていたので普通の役が新鮮。この人も結構な長身で、クリストファー・リー御大、ジェームズ・クロムウェルと並んで三大細身長身お爺ちゃんに認定したい。ジェームズ・クロムウェルはてっきり英国出身かと思ったらアメリカ人だったのね、どうせなら英国三大細身長身お爺ちゃんでまとめたかったので惜しい。ビル・ナイのダグラスがジュディ・デンチのイヴリンとプラトニックに惹かれ合うが互いに気づいていない風なのがいい。
ビル・ナイとその妻役であるペネロープ・ウィルトンは「ショーン・オブ・ザ・デッド」でも夫婦だったが、こちらはこちらではペネロープ演じるジーンが最後までインドに馴染めぬ人物として描かれている。
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トム・ウィルキンソンは「バットマン・ビギンズ」の暗黒街の帝王カーマイン・ファルコーネが一番お馴染みなのだがここではゲイの元判事役。彼の演じるグレアムは少年時代をインドで過ごしその時彼の家にいた召使のインド人一家の少年と恋に落ちたが、そのせいでインド人一家が大変なことになり40年間苦しんでいたが、その思いを伝えるべくインドへやってきた。イギリスではゲイの扱いもそれほどひどくはないだろうが、インドではまだまだ偏見が酷いだろう。昔日本在住の外国人がずらっと並んで討論?する番組インドの人が同性愛者に対して口汚く罵っているのを見て心痛く思ったものだ。
彼がジーンに自分はゲイだ、と述べた時ジーンが「ゲイって陽気なって意味でしょ?」と冗談を言うがそういえば「ウェストサイド物語」でもナタリー・ウッドが「I So Pretty」の中でそういう風に歌うシーンが有った。
マギー・スミスはジュディ・デンチと同年齢(1934年生まれ)だが車椅子に乗っているためかもっと上に見える。彼女はちょっとした人種差別主義者で主治医が黒人であるのを嫌がったり、インド人の妻を持つ看護士に対してそうとは知らずインドの悪口を並べ立て怒られたりする。インドへ行っても当然その辺は変わらず劇中ではジーンと並んで一番偏屈な老人なのだが、ホテルで彼女の世話をする女性〜不可触賤民出身で英語も分からない〜と交流することで徐々に馴染んでいき最後は思わぬ活躍をする。
そういった老後を穏やかに過ごすため、というタイプの老人とは違って「まだまだ若いよ」というタイプがノーマンとマッジ。ふたりともそれぞれ恋のお相手を見つけにやってきている。ふたりとも確かに魅力的でまだまだ若い。特にロナルド・ピックアップ演じるノーマンは飄々として格好いい。冒頭結婚相手を見つけるイベントで自分の年齢を「40代」と偽って、孫ほど年の違う女性に「1940年代生まれの間違いでしょ」と言われてしまうシーンは愉快。
もちろん、インドへ旅に出て己を見つめなおす系の作品はたくさんあるが、単にインドを美化しているわけでもなく、いかがわしい部分もそれなりに描いている。そしてインド側の主人公となるのがデヴ・パテル演じるソニー。父親から受け継いだホテルを何とか立てなおそうと奮闘しているが空回り気味。また母親には家柄の良いデリーの娘と結婚するように言われているがソニーには美しい彼女がいる。デヴ・パテルは「スラムドッグ$ミリオネア」で一躍有名になったが彼はインド出身ではなく英国出身。なんでも「スラムドッグ$ミリオネア」の時、インドでオーディションやると筋肉隆々の美男子しか見つからずダメだったとか聞いている。この映画で言うならソニーの恋人スナンナの兄ジェイがそういうインド美男子に当たるのか。
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全く内容を分からず観に行ったが爽やかな青春劇(あえてこう言おう)。もちろんインドの死生観や英国らしい庶民にまで広がったお茶会的な雰囲気などこれ又英国映画という雰囲気の映画である。しかし、ここ最近はイギリスとインドに関わる映画に縁があるなあ。
僕としては「The Eldery & Beauty」に関連してこう思ってしまうのだった。この言葉を世界中のご老人に贈りたい。
Live Long and Prosper
長寿とご繁栄を!
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