The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

スノーって呼べ! ロックアウト

 コミックスや小説などを原作としない映画オリジナルのヒーローと言うと僕の中では「マッドマックス」シリーズのマックス・ロカタンスキー(メル・ギブソン)とジョン・カーペンターの「ニューヨーク1997」と「エスケープ・フロム・L.A.」のスネーク・プリスキン(カート・ラッセル)の二人が双璧である。ともに多くのフォロワーを生んだ作品で、孤高のアウトロー。特に後者スネーク・プリスケンはゲーム「メタルギア」シリーズのスネークのモデルの1人でもある。余談だが「カート・ラッセル主演映画に外れなし」というオレ法則があって*1カート・ラッセルの出てる映画はどれも傑作なのでみんな見るといいよ。
 先日「人生の特等席」を観た日は久しぶりの劇場での映画鑑賞で調子に乗って二本観てしまったのだが、一本の「人生の特等席」はイーストウッド主演ということで最初から予定に入れていたのだが、もう一本は劇場についてから時間と相談。その日は「悪の教典」やら「ヱヴァンゲリオンQ」やらで大混雑だったのだが、どちらもいまいち興味が沸かないのでパス。選んだのは初日公開にもかかわらずすんなり見れたリュック・ベッソン製作という触れ込みのSFアクション映画「ロックアウト」だった。そしてこれがスネーク・プリスキンの遺伝子を受け継ぐ中々の快作だったのだ。

物語

 西暦2079年、衛星軌道上に建てられた刑務所MS-1は20万人収容できる予定だが現在は500人の囚人を冷凍睡眠刑にして試験運用している。大統領の娘エミリーが調査のためにMS-1に来ていたがボディーガードのミスにより凶悪な囚人ハイデルが自由を手にし、囚人たちを冷凍睡眠から解き放った。瞬く間に囚人に占拠されてしまったMS-1。囚人たちを指揮するのはハイデルの兄アレックス。脱走を防ぐための様々な設備はそのまま刑務所を強固な要塞となさしめた。
 同僚殺しの濡れ衣を着せられたCIAエージェントのスノーはMS-1に送られる予定だったがエミリー救出のためにスニーキングミッションを余儀なくされた。最初は拒否するスノーだったが、自分の無罪を証明する仲間がMS-1に収容されていることを知りミッションを引き受けるのだった。500対1人の戦いが始まった!

 リュック・ベッソンのSFといえば「フィフス・エレメント」が有名だがあれはベッソンが16の時から暖めていた物語らしいということで子供の妄想が全開になった作品であった。今回は製作と脚本はベッソンだが監督(共同脚本も)はアイルランド出身のスティーブン・レジャー&ジェイムズ・マザーのコンビでそのせいか否かあんまりベッソンぽい感じはしない。

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 僕は主人公が単身乗り込むという設定というよりも主人公であるスノーの反骨的であり飄々としつつ憎まれ口を叩くさまなどがスネークの遺伝子を受け継いでいると強く思った。とはいえあんまりそう思ってみている人はいなかったらしく、他の人の感想を聞くと「ダイ・ハード」っぽい、という意見があってなるほどとも思った。確かにナカトミビルのような建物そのものが重要なキャラクターであり、その中で孤軍奮闘するという設定は「ダイ・ハード」かもしれない。特に上方に吹き上げる巨大換気扇のような設備での中に浮きながらの戦闘やダクトを進みながらの銃撃戦などは人間以上に舞台が主要キャラであることの証明だろう。
 キャラクターは何よりガイ・ピアーズ演じるスノーが魅力的でガイ・ピアーズの当たり役といってもいいのではないだろうか。ガイ・ピアーズといえば僕は「プリシラ」で知ってその後「LAコンフィデンシャル」でブレイク、という感じだろうか。この間も「プロメテウス」で老けメイク過ぎて極端な話誰でも良かったんじゃないの?というガイ・ピアーズを観たわけだけど、顔出しのこちらは当然もっと若々しい。彼とエミリーの皮肉めいたセリフの応酬などが楽しい(とはいえ細かいやり取りは忘れてしまった…)。
 ヒロインに当たるエミリーはマギー・グレイス。登場時のいかにもなキャリアウーマン風の格好から髪がほどけた色っぽい格好。敵から偽装するためにショートにして髪を染め囚人服を着た格好など様々な魅力を見せてくれる。この手の役柄は最初はいけ好かない感じなのだが、徐々に魅力的に見えてくるものでそういう意味では良かったと思う。
 一方、敵役のアレックスとハイデルの兄弟。兄貴で囚人のリーダーとなるアレックスはヴィンセント・リーガンが演じている。少しすっきりしたロバート・デ・ニーロという感じ。犯罪者としては理知的なタイプ(もちろん巨悪犯罪者であることは変わりなく必要とあれば平気で人質を殺す)。そして弟でヤクネタとなるハイデルはジョセフ・ギリガン。常に落ち着きなく小刻みに動きまわり、人質を殺すか女(エミリー)を犯すことしか考えていない。他の囚人がアレックスに「なぜ生かしておく?」と言われてしまうほど。この兄弟はある種類型的なキャラ作りで「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のゲッコー兄弟(ジョージ・クルーニー&クエンティン・タランティーノ!)や「パニッシャー:ウォーゾーン」のジグソー兄弟、最近だと「アジョシ」のマンソク兄弟とかの仲間。兄弟同士の愛情は強い代わりに他人の命は歯牙にもかけない。
 ところがこの兄弟の場合、弟の石川力男ぶりが激し過ぎて、人質を全員殺した挙句(それゆえ刑務所が地上に堕ちる危機に!)自分に説教ばかりする兄貴を殺してしまうのだ。このため、アレックスの最後が宙に浮いてしまい少し残念だった。ハイデルはハイデルで狂犬としていいキャラだったが、スノーはアレックスと決着を付ける機会がなくなり、少し物足りなかった。

 とはいえ最期の軽くひねりの効いたオチや更にその後のスノーとエミリーのラストもおしゃれでした。
 傑作というほどではないけれど普通に楽しめる佳作。特にSFアクションという形だけれどもそれほどSF的な要素は少なく、単にアクション映画としても楽しめる。
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*1:最初に見つけたのは柳下毅一郎氏だったと思うが全く異議なしの法則である