The Spirit in the Bottle

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新しい若さ、振り向かないことさ 宇宙刑事ギャバン THE MOVIE

 今年1月に公開されたスーパー戦隊VSシリーズはまさかの「VS宇宙刑事ギャバン」だったわけだが、そこでの手応えがあったのか、ギャバンが単独で復活。新世代への橋渡し、という意味合いも込めて二代目ギャバンが誕生する「宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」が公開されたので初日に鑑賞。

物語

 幼い頃から一緒に宇宙を目指してきた十文字撃、大熊遠矢、河井衣月の三人。撃と遠矢の二人は宇宙飛行士となり宇宙へ出るが二人を乗せたスペースシャトルは遭難し、二人は行方不明に。
 一年後、衣月が務める研究所に謎の怪人が侵入。衣月が襲われるがそこに現れ、助けたのは銀色のコンバットスーツを纏う宇宙刑事ギャバンだった。
 ギャバンの正体は行方不明になったはずの十文字撃。彼は伝説の宇宙刑事ギャバンの名を受け継ぐ若き宇宙刑事だった。パートナーのシェリーとともに地球への任に着く。衣月狙っていたのはかつて初代ギャバンが倒した宇宙犯罪組織マクーの残党。その首領であるブライトンはドン・ホラーの復活を目論んでいたのだ。どうする宇宙刑事ギャバン

 前回の「海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」では堂々大葉健二演じるギャバン=一条寺烈がゴーカイジャーと並ぶもう一人の主人公だったが、ここでは世代交代。伝説の宇宙刑事であるギャバン(これは一条寺烈の本名)を受け継ぐ2代目ギャバンの襲名と成長の物語。
 物語は完全に単体ヒーローとして成り立っており、「海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」や先にお披露目となった「特命戦隊ゴーバスターズ」におけるゲスト出演には言及されない。一応先に発売された前日譚ノベライズではゴーカイジャーについても触れられているし、今回の映画でももしかしたら「VSゴーカイジャー」のことかな?と思うようなセリフもないではないが。あと「ゴーバスターズ」の出演についてはおそらく物語的にこの映画の後日譚といった方が適当のようだ。何れにしてもスーパー戦隊シリーズとの絡みは「つながりは否定しないけどあくまで宇宙刑事単体の物語」という感じのようだ。
 実は今回楽しみな半面、不安要素も大きく、まずは監督が金田治監督であるということ。もちろん特撮界ではベテランだし実績のある人だが、ここ最近の仮面ライダーの劇場版はけっして良い出来ではなく、特に前作「スーパーヒーロー大戦」が最悪な出来だった*1のでとても心配だった。特に同じ仮面ライダーの劇場版を手がける坂本浩一監督の作品郡の出来と比べるとどうしても不安になってしまう。もっとも「スーパーヒーロー大戦」の出来の悪さはかなりの率を脚本が占めるのだけど。
 とはいえ、出来上がった作品はとても良く出来上がっていた。やはり他のシリーズ作品との絡ませることをしないであくまで単体シリーズとして手がけたのが良かった気がする。

 「宇宙刑事ギャバン」の英語タイトルは「SPACE SHERIFF」。シェリフとは一般に保安官と訳される。この名の通りギャバンはいわゆる刑事と言うより保安官に近い。例えば(世界観がつながっているかどうかは別として)「特捜戦隊デカレンジャー」と比べると分かりやすい。あちらもいわゆる宇宙警察だが彼らには捜査・逮捕権はあっても刑罰執行の権限はない(怪人を倒す際にいちいち宇宙の裁判所にお伺いを立てている)。その辺であくまで一警官に過ぎない。しかいギャバンには刑罰の執行権も付与される。これは西部開拓時代の治安が悪い街を治める保安官に近いだろう。また、デカレンジャーが「地球で起きる宇宙人(アリエナイザー)の犯罪」に対処するのに対して宇宙刑事は「魔空空間などの異次元からの侵略者による犯罪」に対処する、と考えられる*2。いずれにしろ宇宙刑事の権限は結構大きいと思われる。
 以前、「グリーン・ランタン」の時に宇宙刑事に設定が近い、というようなことを書いたが、今回の作品は設定・物語の両方において映画「グリーン・ランタン」によく似ている。でも物語のメリハリはこちらのほうがついていたしヒーロー物としての爽快感はこちらのほうが上。また東映版の「スパイダーマン」に続く作品として「シルバーサーファー」が企画されており、その時の日本版設定が「宇宙刑事ギャバン」に流用されたという説もあるようだ。そう考えるとグリーン・ランタンとシルバーサーファーというDCとマーベルの2大コズミックヒーローが日本で良い感じに融合したとも言えそうだ。しかもギャバンのデザインはハリウッドでロボコップという形でリスペクトを受けつつ発展的展開を遂げている。理想的な拡がりを見せていると思う。
 ギャバンのスーツは従来の一条寺烈用と新タイプの十文字撃用(TypeG)が登場するけれど、一部(目の発光色と胸の装飾、あと肩も少し違うか)を除くとほぼ従来のデザインのまま。何時の時代でも格好良いデザインであることを今回も証明した。

 二代目ギャバン=十文字撃を演じているのは石垣佑磨。あんまりTVで見かけないけど*3、濃い顔つきと力強い喋り方は現代劇より時代劇やこういう特撮劇に向いている。今回は同じく二代目となるシャリバン(ゲキバイオレット!)、シャイダー(伊達さん!)が登場するけれど彼らと並んだ時に少し小さく、その辺も大葉健二を思わせる。力強い正義漢といった感じ。今後どう展開するかわからないが、新しいギャバンの続きを彼で見てみたいと思わせる。
 撃のパートナーとなる女宇宙刑事シェリーに元アイドリング!!!11号の森田涼花(以降すぅちゃん)。5月にアイドリング!!!を卒業してちょこちょことドラマなどで見かける。シンケンイエローだった頃に比べるとだいぶ大人になったがそれでもまだ子供っぽい可愛らしさ。実を言うと今回すぅちゃん目的で観に行った部分も大きい。シェリーは本人も言っている通りあくまで立派な宇宙刑事の一人。ただ、コンバットスーツを着用する負担に耐えられる人材は少なくギャバンのサポート言う形になっている。TVシリーズのミミーの役割。彼女はコム長官の姪ということだが普通に孫でもおかしくないよなあ。女性のコンバットスーツ着用者やミミーは前日譚小説で出てきます。
 すぅちゃんはヘルメット付きの制服の他にやけに少女趣味な潜入衣装に身を包むけれど、その辺はまだ地球の風俗に慣れていない感じなのだろうか。髪がピンクでド派手な人形みたいな格好の時は思わず草間彌生を連想してしまったり。

宇宙刑事ギャバン THE NOVEL

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 銀河連邦警察のトップはTVシリーズから変わらずコム長官(西沢利明)。少なくとも30年以上長官の地位にいるというFBIのフーバー並の長さだが大丈夫なんでしょうか。まあバード星人の年のとり方や時間の感じ方が必ずしも地球人と一緒とは限らないけれど。西沢利明さんはルックスこそ厳し目のおじいちゃんという感じだけれど喋ると力強く若いのでびっくりします。秘書は穂香で特撮シリーズではセクシー系女優さんが出るのはもはや日常だけれど主に悪役が多いのでちょっと最後まで疑ってしまった(例えば魔女キルが変装していたとか予想してしまった)。
 そして!初代宇宙刑事ギャバンとしてもちろんこの人大葉健二氏が再登板。今回は彼から二代目へのバトンタッチを描いているわけだが彼自身も今でも現役。アクション、ドラマで大活躍。彼の登場シーンで明らかに劇中の熱気が上がる!
 その他先ほどの通り、シャリバンとして「獣拳戦隊ゲキレンジャー」ゲキバイオレットの三浦力と「仮面ライダーオーズ」の伊達さんこと岩永洋昭が特別出演。名前からすると同じ地球人の宇宙刑事でどうやら(TVの時とは違って)撃より少し先輩に当たるようだ。クライマックスでは3人揃っての戦闘もある。そういえば伊達さんはまた髭を生やしました!
 地球人側のキャラクターでは「仮面ライダーアクセル」に出演した滝裕可里がヒロイン衣月を演じている。アクセルの時はアクションも多かったが今回は救出されるヒロインと言う感じ。正統派の美人である。
 撃と衣月の幼馴染である遠矢が永岡卓也で「ディケイド」に出ていたらしいのだが僕は今回が初認識。お笑い芸人の麒麟川島がもう少しシュッとしたようなハンサム。ワームホ−ルの研究に命をかけていて撃とともに宇宙で行方不明になるが実は・・・という展開。冒頭彼と撃がコンビを組むサイドカーレースが登場するのだが、あれ全く同じかどうかは分からないけれど実在するレースなんですね。サイドカー部分に乗る人(体重移動させてカーブなどの重心を取る。パッセンジャーというらしい)の負担が大変そうですねあれ。多分このサイドカーレースは後にギャバンがサイバリアン(新しくなっており青い)に乗ることをイメージしてるのだと思うが、そうならもう少し物語に絡めて欲しかった。例えば、敵に囲まれて絶対ピンチの時に遠矢の忠告「もっとスピードを落とせ」が心の声として聞こえてきて、それで窮地を逃れる、みたいな展開があれば燃えたし良かったね。
 敵キャラはTVシリーズにゆかりのあるキャラが1人づつ登場する感じ。ドン・ホラーの復活が目的なのだがこういうのって難しくてドン・ホラーが復活してもしなくても物足りなくなっちゃうのはこういう大物の封印を解こうみたいな物語の欠点でもあるなあ。

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 串田アキラによる主題歌も相変わらずの格好良さ。光の早さで明日へダッシュさ!
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 アメリカと違って日本だとTV特撮番組やアニメが中心なのでいわゆる中の人の年齢が上がったりして中々、同一キャラをずっと続けていくのは難しく、新しいヒーローを出し続けシリーズを続けるという形になることが多い。それはそれでいいが、今回のような代替わりという形で一つのキャラクターを続けていく事も大事かなあ、と思ったりする。
 

*1:興行収入は良かったようだけど

*2:もちろん地球人同士の犯罪は地球の警察が取り扱うのだ

*3:相棒シーズン10で元警官役で出てたよね