The Spirit in the Bottle

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眉毛姫と七人の小人 白雪姫と鏡の女王

 ターセム・シン監督、石岡瑛子が衣装を担当した「インモータルズ」は個人的には去年観た映画の中で一番のワースト作品で「もうターセムの作品は見ない!」と強く(しかし特に誰に言うでもなく)誓ってしまったのだが、戻れない橋はないという言葉のごとくターセム&石岡の作品をまた見てしまいました。ちなみに他にも似たような誓いを立てた監督もいるのですがそれらも例外ではなく制約の無い誓いなんてものは豆腐より脆い!

 なんだか明るい「ブラックスワン」て感じのポスターですね。
 これ、最初に予告編観たのは「スノーホワイト」の上映前だったんですね。その時は「白雪姫」観る前に別の「白雪姫」の予告編持ってくるなよ、とか思ったんだけど、これが結構おもしろそうだった。しかしターセム監督と聞いて一歩後退したのも事実。それでもヒロインのリリー・コリンズが魅力的に見えたのと、実際に公開されてからの評判もとても良かったので観に行ってしまったのだった。
 やっぱり同じ白雪姫題材の映画ということでつい「スノーホワイト」と並べてしまい、同じ童話を基にしてはいるけれど、これは根本的には別ジャンルの映画ですね。「スノーホワイト」はヒロイックファンタジー、「白雪姫と鏡の女王」はコメディ。それでも直近のほぼ同じ話ということでどうしても比べてしまうけれど。

 で、いざ観るとですね。これが面白かったんですね。「ターセムの野郎、一皮剥けたじゃねえか」などと上から目線で感想を漏らしてしまいました。色々理由はあって、まずは題材とキャスティング。僕はターセム石岡瑛子もだけれどそれ以上にジュリア・ロバーツが苦手なんだけれど彼女が悪役を嬉々として演じている。全然美人とは思わないけれど、悪の女王としての魅力は十二分に発揮していた。
 王子役のアーミー・ハマーは「ソーシャル・ネットワーク」のウィンクルボス双子、「J・エドガー」でFBI副長官のトルソンなどを演じていたけれど、今回はそれなりに頼もしいけれど基本はおぼっちゃまなバカ王子(系列的には「魔法にかけられて」のジェームズ・マースデンに近い)を魅力的に演じている。元々クラシックなハンサムという感じの容貌でこういうコスチューム物が似合うのかもしれない。
 「スノーホワイト」の方ではどうやら普通の役者が特殊メイクやCGで小人化していたようだけれどこちらの七人の小人は本物の小人役者が演じている模様。それぞれの個性が分かりやすく(下手するとディズニーの「白雪姫」より個性が確立しているのではないか)魅力的。
 で、やはりいちばんの魅力は白雪姫を演じたリリー・コリンズで最初に予告編を観た時からその美しさにはやられてしまったのだが日本の女優で言うと石原さとみ新垣結衣を足したようなキュートなルックス。劇中では特に触れられないがその太い眉毛もむしろ魅力を引き立てる要素で全然マイナス点ではない。前半のいかにもお姫様風の衣装から後半の青を基調とした動きやすい衣装まで、アップはアップでロングはロングですべてのリリー・コリンズが美しい。正直かなりキャスティングに助けられているんじゃないかと思うくらい、各キャストが各々の役柄をきちんと魅力的に演じてます。

 正直言って僕は全然良さが分からない石岡瑛子の衣装も今回は悪くなかった。というか元々の童話的な世界観あるいは中世ヨーロッパ風というよりももう少し後の18世紀ロココ調の美観に近く、派手派手なドレスなどが馴染んでいる。お伽話の世界にきちんと順応しているのだな。自己主張が強いこれまでと違い映画の中の役割を果たしているように思う。これはターセム石岡瑛子が譲歩したというよりは彼らのヴィジョンと題材が一致したという感じなのかと思う。
 映像的にはとにかくリリー・コリンズの出演シーンが一個たりともダメに見える部分がないということで素敵なのだが、他にも冒頭の物語本編に入るまでの人形劇(CG?)風のプロローグ、これが全編このクオリティーで丸々一本作品が観たいと思わせる。そして中盤の魔法の鏡(の精?)が操り人形(モデル人形)で小人たちのアジトを襲うシーンがマリオネットの動きが妙(というかストップモーション・アニメーション風)で怖くも楽しい。
 「インモータルズ」ではほぼ全てのシーンがCGで陰影・色彩加工されていて(もちろんこの白雪姫でもCGはふんだんに使われていると思うけれど)肝心の人間に精彩が感じられなかったの比べると自然の明かり(に近い)であろう、こちらのほうが人物が生き生きしている。
 物語的には元の童話では白雪姫は女王の化けた老婆に毒リンゴを盛られ王子のキスで目覚めるのだが(この辺は「スノーホワイト」でも比較的忠実に再現されていた)、こちらでは魔法の薬でおかしくなった王子を白雪姫のキスで戻す、という逆パターン。僕はこちらのほうが好きかも(まあ、スノーホワイトにしても今回の「白雪姫と鏡の女王」にしても白雪姫が受動的じゃなく主導権を持って動くのが現代的な解釈ということなのだろう)。毒リンゴも別のところに持ってきてうまくアレンジしてます。
ーそして、ラストのミュージカル&ダンス!これだけでも見る価値があります!


 とりあえず日本の誇る眉毛アイドルAKB48の前田亜美さんの写真を貼っておきますね(右。左はアイドリング!!!24号野元愛さん)

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 石岡瑛子氏は2012年の1月に亡くなり、この作品が遺作となったらしい。結局僕には彼女の良さは分からなかったがそれでも最後の作品を評価できたのは良かった。ターセムの作品にしてもまた次の作品を観てみようと思う気にはなった。ただ、今回はリリー・コリンズ、アーミー・ハマーネイサン・レインといったキャストの力が大きかったようにも思う*1。のでどうなることか。
 以上!ひたすら上からの目線の「白雪姫と鏡の女王」の感想でした。

*1:そういえばショーン・ビーンも出てたのですよ!