The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

虎と兎事始 劇場版TIGER & BUNNY The Beginning

 スーパーマンといえばメトロポリスバットマンならゴッサム・シティ。そしてフラッシュならセントラルシティ。マーベル(主にNYがホームになっているヒーローが多い)に比べるとDCのヒーローは架空のホームタウンを持つヒーローが多い。最近は日本でもご当地ヒーローが増えてきているが特定の街を舞台にするヒーローというのは結構多い。そしてそんなヒーローで日本製の最新ヒーロー群像劇「劇場版TIGER & BUNNY The Beginning」を鑑賞。

物語

 NEXTと呼ばれる特殊能力者が存在する巨大都市シュテルンビルト。一部のNEXTは企業所属の元スポンサー広告を背負って犯罪から街を守るヒーローになっていた。彼らの活躍はTV中継され行動はポイント化され、市民は彼らの活動をスポーツのように鑑賞して楽しんでいる。
 ワイルドタイガーとして活躍する鏑木・T・虎徹は10年選手のベテランヒーロー。今日も今日とてポイントよりも人命救助を最優先に頑張っていたがそこに新しいヒーローが現れる。ワイルドタイガーの所属する会社が買収され、彼は新しい事業主の命令で新しいヒーローとコンビを組まされることになる。その新しい相棒こそバーナビー・ブルックスJr.だった。熱く古臭い「おじさん」ワイルドタイガーとクールで生意気な「バニー」バーナビー。水と油の二人はうまくヒーローとしてやっていけるのか?

 TVシリーズは最初の放送の時は存在に気づかず、中盤ぐらいに存在を知ってアメコミ風ヒーロー物と知って興味が湧いたもののもはや追いつける感じでは無くなっていて、結局見始めたのは一周遅れの再放送。ただ実際はそれほどアメコミっぽいヒーロー物という感じはしない、やはり日本のアニメヒーローという感じだと思う。やはりアメリカのスーパーヒーローは根底に自警行為があってその辺で日本とは違うのだな。
 実在する企業のロゴをヒーローたちのコスチュームにプリントし実際にスポンサードするというアイデアやヒーローが企業に所属するサラリーマンで更にヒーロー行為をポイント制にして順位を競い、それを見せ物にするというアイデアは面白い。ただ、このアイデアはこういう架空の世界の話じゃなく現実に近い物語のほうが効果的だったんじゃないかなあ、という気はする。まあ架空世界だからこそ企業もOK出したんだろうけど。ちなみにこのシュテルンビルトの設定とか雰囲気とかは同じサンライズ作品の「THE ビッグオー」と親和性が高い気がする*1のでクロスオーバーとかしませんかね?サンライズさん

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 今回の映画版は「The Beginning」の名の通り最初の物語。入門編といってもいい物語でTVシリーズの1,2話に新規エピソードを加えて再編集したものになっている。いわゆる再編集物の作品だが元々の1時間ほどのエピソードに30分強の2.5話とでも言うべきエピソードを付け加えているので無理やり感はない。元々作画や動き自体はしっかりしたものだし(もう邦画を語るときは何度も言っているけど)邦画特有のモッサリ感はないので非常にクオリティの高いものになっている。劇中でしっかり1話と2話が描かれアニエスが「バーナビーのドキュメンタリーを作ろう」みたいなことを言うので確実に新規エピソードは2話と3話の間の物語。

「あれはビルってやつだ。あれもビルだな。ついでにいうとその隣の建物がビルで、その手前に立つ建物もビル。ま、こっから見えるビル的な建物は全部ビルだ」
 残念ながらこの名台詞は3話のものなのでは今回は登場せず。

 「TIGER & BUNNY」の世界観や人物設定を詳しく知ってもらうのが狙いと思われ、いわゆる物語全体を貫く謎は今回の映画版ではほとんど語られない。一応「ウロボロス」に関してはそれがバーナビーのヒーローになった動機であることが軽く語られたり、後にルナティックとして登場するユーリ・ペトロフが普通に新任の裁判官として登場するが全然メインの話ではない。いわゆるNEXTの犯罪者(しかし特に強大なわけでもない)をヒーローたちが追い求める。だから新規部分のエピソードは丁寧にヒーローの捕物を描きシュテルンビルトや登場人物を詳細に描写する。僕は今回の映画版を観て思い出したのは先に公開された「特命戦隊ゴーバスターズ THE MOVIE 東京エネタワーを守れ!」だったりする。あちらも世界観を知ってもらうために特に新しいことはせずTVシリーズの内容を、より詳細に一エピソードを描いたものだ。
 ワイルドタイガーとバニーのコスチュームは映画のアイアンマンを意識したのかな、と思うパワードスーツタイプのコスチューム(ただ実際は結構軽いものみたいだね)だが僕はワイルドタイガーの旧コスチュームやファイアーエンブレムみたいな方が好きだなあ。まあこのへんはいかにもサンライズぽいロボットアニメの延長線上のデザインであるのだろうなあ。
 TVシリーズとはスポンサーが一部代わっている。そのせいでロックバイソンの胸と腕に「太麺堂々」のロゴが標されこれが「牛角」みたいにコスチュームにマッチしてないのでちょっとうるさい印象
 まあそれはそれとしてそれぞれのヒーローが変身するさまをじっくり見せてくれたのは楽しかったしヒーロー物の醍醐味の一つですね。

私の氷はちょっぴりCOLD!貴方の悪事を完全HOLD!


 えい!ブルーローズの尻!*2
 何度も言っている通り今回の劇場版は1,2話+2.5話。だからタイガーとバニーのコンビもほとんど進展しないし、決め技有的なものであるGOOD LUCK MODEも登場しない。だからその辺は盛り上がりに欠けるかもしれない。実際に二人が理解を深め(喧嘩もたくさんして)コンビとして成長するのはこの後のことだから。
 おそらく、TVシリーズで棚上げにされていた「ウロボロス」にまつわる話やルナティックとの決着は2013年公開の映画「劇場版TIGER & BUNNY The Rising」でなされるのだろう。今回の映画は入門編であり、全く知らない人がいきなり見ても何ら問題のない作品だが、続編はTVを踏まえての展開になるであろうから映画を観て興味が湧いた人は是非TVシリーズを観て欲しい。個人的にはスカイハイさんがスランプになってとある少女に恋をする話がおすすめ。

劇場版 TIGER&BUNNY-The Beginning-オリジナルサウンドトラック

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リニアブルーを聴きながら [初回盤]

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 しかしタイトルが「The Rising」ということはかなり「ダークナイト ライジング」を意識してるよね。そういえばTVシリーズでも中盤の大物敵役として明らかにジョーカー(声が藤原啓治)を意識したキャラクター出てきたものなあ。
 ところで企業にスポンサーになってもらうヒーローというと「ウォッチメン」のダラービルを連想してしまってキャラクターの未来に不安を感じるんだぜい。ワイルドだろう?*3

とりあえず、折紙さんを見切れさせておきますね。

*1:とあるエピソードに登場する矢島晶子さん演じる少女はまんま「ビッグオー」のドロシーを彷彿させる

*2:ブルーローズの本名カリーナ・ライルってのはバットマンキャットウーマン=セリーナ・カイルから取ってるんですかね

*3:年内限定ネタ