The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

吸血鬼ワナビーの悲劇 ヴァンパイア

 昨日は栃木から来られたいとっとさん(id:itotto)にお誘いいただいて「ヴァンパイア」という映画を観てきました。岩井俊二監督作品ということで普段ならまず観ないであろう作品。岩井俊二監督作品というと劇場で見たのは「スワロウテイル」以来だなあ。まあ、たまにはこういうのもいいであろうと思います。お誘いありがとうございました。

物語

 痴呆の母と暮らす高校の生物教師サイモン。彼はネットで出会った自殺志願者を本人同意のもと血を抜くという形で殺しその血を飲むという癖を持つ連続殺人鬼だった。家にはサイモンに好意を寄せるローラが出入りし母の世話を見るようになるがサイモンは彼女に心を開かない。
 サイモンは次の相手としてラピスラズリという女性と知り合うが彼女は他にも自殺志願者を連れてきていた。集団自殺の中で生き延びたのはサイモンとレディバードという女性だけだった・・・

 まあ、吸血鬼などというものは大きく2つの存在のメタファーであるといえる。ひとつは貴族による農民への搾取、資本家による労働者への搾取、といった経済的な搾取のメタファー、そしてもうひとつは形を変えたセックス(主に暴力を伴うようなもの)のメタファーである(更に最近は性行為に伴う各種病気を表現してる場合もある)。大体の吸血鬼物はこのふたつのどちらかによっており(もちろんどちらも表現しているものもたくさんある)どっちとも無縁な吸血キャラクターなんて悪魔超人ミスター・カーメンぐらいなものか*1
 この映画の中ではヴァンパイアというのは連続殺人鬼のサイモンのあだ名である。特に彼が超常的なキャラクターである描写はなく繊細ではあるが極めて普通の人物(ただし彼が吐く際は必ず血を吐いている描写はある)。彼がどうしてそういう趣向に走るようになったかは示されない。サイモンは自殺志望の女性を誘って一緒に死のうと騙しては(あえてこういう)血を抜いてそれを飲む変態。例えばよくあるヴァンパイア作品のように首元にかぶりついて血を吸うという行為はエロチシズムの一つとしてはまだ理解ができるが瓶に溜めた血液を一気飲みというのは理解の範囲外。劇中では同じヴァンパイアワナビーの集会に参加し、そこで出会った別の殺人鬼をk「君のはただのレイプ、変態だ」などと非難するが基本的にはサイモンも一緒だと思う。そういう部分でサイモンには基本的に共感できないのだなあ。

 この映画事前情報を全然仕入れずに観に行ったのだが、岩井俊二監督が脚本・編集・音楽などを手がけているが日米加による作品。舞台もアメリカでキャストも蒼井優を除くと向こうの人達ばかり。当然セリフは全て英語だがやはり、ネイティブな英語話者じゃない人が書いた脚本という感じがする。いかにも日本人が「アメリカ人なら言いそう」というセリフを日本語で考えそれを直訳して喋らせている感じがしてしまうのだ。もちろん僕は英語にそれほど詳しいわけではないが沿う感じてしまう。これはアメリカで脚本も手がける外国から来た監督の作品によく感じられM・ナイト・シャマラン作品などでも思ってしまう。
 先ほど述べた通りどんな映画か分からないので誰が出ているのかも分からなかった(普通に日本が舞台の日本人メインの作品だと思ってた)のでロビーでチラシを見て「うぉお!レイチェル・リー・クックやクリスティン・クルックが出てる!」と興奮した部分は確かにあった。最悪映画がつまらなくても女優さんを眺めていればいいかな、と。レイチェル・リー・クックはサイモンに好意を抱く警察学校に所属しているローラ役。劇中ほぼ唯一生気を見せるキャラでサイモンの家に勝手に乗り込んでは母親の面倒を見たりする。まあこういうキャラの女性はサイモンには苦手な類ですわな。このローラのキャラがもっとまともで観客の共感を誘う風に演出できたと思うのだが、これだとただ痛い人にしか見えないのが残念。
 その他はほぼ自殺志望の女性ばかりで微妙に生気に欠ける。集団自殺で生き残ったレディバードことアデレイド・クレメンスちゃんがとても可愛かったのだけど、劇中彼女は子供もいた、という設定でびっくりしたりした(彼女は1989年生まれだがティーンにしか見えない)。ラナ・ラングことクリスティン・クルックはおそらくサイモンの最初の犠牲者でエピローグ的に登場する。そして唯一の日本人キャストは蒼井優。日本人留学生を演じている。
 後は集団自殺を画策したラピスラズリが「フレディVSジェイソン」や「ジンジャースナップ」に出ていたキャサリン・イザベルではないかと思うのだが、クレジットで確認し忘れた上、彼女のフィルモグラフィーにも「ヴァンパイア」の公式サイトにも載っていないのでよくわからない。多分彼女だと思うのだけど。
 しかし、こうして見るとどの女性キャストも年齢の割に外見がティーンの少女のように見える役者ばかりでまあ、監督の趣味がまるわかりというかなんというか。
 
 けしてつまらない映画ではなかったが、外人キャストで撮っていても日本映画特有のモッサリ感は健在。音楽も監督が手がけているが単調な音楽でこれに合わせて画面が暗転するたびに「やっと終わりかな。でもまだクリスティン出てきてないよな」とかの思いをいだいてしまう作品だった。

 

レイチェル・リー・クックと言えばこれ!

*1:最近ブログ主は「キン肉マン」に激ハマリしており四六時中七人の悪魔超人のことを考えています