トム来る?トム来る! トム・クルーズin ロック・オブ・エイジズ
僕はミュージカルとか音楽映画が大好きで、これまでにも色々見てきたしそのうち幾つかはブログで感想を書いてきた。なのでこの映画も以前から注目していたし、なんといってもトム・クルーズのミュージカル映画!というわけで早速観てきたのだった。「ロック・オブ・エイジズ」鑑賞。
物語
1987年、ロサンゼルス。歌手を目指してハリウッドにオクラホマからやってきたシェリーは着いて早々荷物を盗まれ、それがきっかけで知り合ったドリューにライブハウス「バーボンルーム」での仕事を紹介してもらう。バーボンルームは過去に多くのスターを輩出しており、大人気バンド「アーセナル」のボーカル、ステイシー・ジャックスもその1人。そのステイシーがバンド解散、ソロ宣言ライブをバーボンで行うことに。
一方その頃、新しく市長となったウィットモアの夫人パトリシアは街から悪しきロックを浄化することを宣言、その矛先として経営が苦しく、税金を滞納しているバーボンルームが槍玉に。どうやらパトリシアはステイシーに浅からぬ因縁があるようで・・・
ドリューとシェリーは交際を始める。アーセナルの前座としてドリューのバンドがデビュー。やがて大スターステイシーがやってくる。ステイシーは前室でのローリングストーン誌の記者コンスタンスからインタビューを受けるが・・・
監督はミュージカル映画「ヘアスプレー」のアダム・シャンクマン。「ヘアスプレー」は大好きな作品だがこちらはそこまでアピールはしなかったかなあ。例えば、今回と同じ、
- 既存の音楽を使い、
- 舞台となる劇場の存亡がかかっており、
- そこに男女の恋愛が絡む
音楽映画として「ムーラン・ルージュ」「バーレスク」などが先行作品として存在する。僕はこれらの作品が大好きだが今回の「ロック・オブ・エイジズ」はそれらに比べると(あくまで個人的にだが)いまいち。もちろんそれなりに楽しかったけど。で、なぜそうなのかなあ、と考えた時、それはおそらく映画全体に漂う「ゲイっぽさ」の有無ではないかなあ、という気がする。これは劇中の登場人物にゲイの人物が出るかどうかではなく*1、演出やセットの雰囲気などにゲイっぽさがあるかどうかということ。そういうゲイっぽさが意外と僕は好きなようでその雰囲気にムンムンしている「ムーラン・ルージュ」や「バーレスク」に比べると今回の「ロック・オブ・エイジズ」はその辺が物足りない。「ヘアスプレー」はオリジナルのジョン・ウォーターズがそもそもゲイであり、その雰囲気をミュージカル映画版も引っ張っていたのかもしれない。
出演者はドリュー、シェリー、ロニーなど若手陣が全員どこかで見たような、誰かに似てるような、でも誰だか思い出せない感じの容姿の連中でうだつのあがらない感じを上手く表現。コンスタンスを演じたマリン・アッカーマンも「どこかで見たことあるな〜でも誰だったかな〜」という感じだったのだが、これは僕の勘違いでマリン・アッカーマンは「ウォッチメン」のシルクスペクター2(ローリー・ジュピター)その人でありました。
とはいえやはり素晴らしいのはベテラン陣でポール・ジアマッティ(彼がポール・ヘイマンを演じるECWの映画が観たい!)は胡散臭いマネージャーをうまく演じているし、キャサリン・ゼタ・ジョーンズはロックを目の敵にする(しかし彼女は元グルーピーであった!)体制側の人物を演じている。
アレック・ボールドウィンはでっぷり太ったライブハウスのオーナー。いかにもロックンローラーの成れの果てという感じだが実は・・・そしてウィットモア市長はブライアン・クランストン。「トータル・リコール」に引き続きの悪役?とはいえこのウィットモア夫妻は妙に憎めないけどね。
そしてやはり一番の見所はロックスター、ステイシー・ジャックスを演じたトム・クルーズだろう。彼はおそらくガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズをモデルにしたと思われる破滅型のロックスター。屈強なボディーガードを従え(後述)女を侍らせ、なぜかヒヒを飼っている典型的描写ではあるが実にトムに似合っている。やっぱりねー、トム・クルーズはなんだかんだ言っても格好いいんですよ。背は低いし、今回は顔や身体が多少崩れつつも(それは酒漬けだから、という設定のせいだろう)とても美しい。でもマリン・アッカーマンとのラブシーンでは最初トムが誘っているのにその気になるとマリン・アッカーマンのほうが積極的になってる風になってるのが楽しいね。
音楽は80年台のロックが中心。トムはボン・ジョヴィやデフ・レパードなんかを歌っています。しかしびっくりしたのはドリューがシェリーに「昨夜、君と出会った後、作った曲だ」とか言って「glee」でお馴染みジャーニーの「Don't Stop Believin'」を歌ってしまうところで、この有名な曲を自分の作った歌だといってしまうドリューにすっかり呆れてしまった。しかもこの曲1981年発表の曲だよ。ジャーニー的にはいいのから。話は少しずれるが例えば町山さんが「バク・トゥ・ザ・フューチャー」で未来からやってきたマーティーが「ジョニー・B・グッド」を演奏し、それをチャック・ベリーが間接的に聴いて自分のものにした、という展開に「黒人の成果を白人が奪った」と言っていたが*2それと同じようなことをこの「ロック・オブ・エイジズ」でもやっていることにならないか?しかも念押しにラストも「ドリューが作った」この「Don't Stop Believin'」で締めてしまうのである。先の「BTTF」の例は僕はそれほど怒ることではないと思っているが(ちゃんとチャック・ベリーが名前だけとはいえ登場するし、タイムトラベルを利用したギャグで済むレベルだと思う)こっちのほうがより悪質な気がする。既存の曲を使うならなおさらそういう部分には気を使って欲しかった。
そして!この「ロック・オブ・エイジズ」にはケビン・ナッシュが出てきます!ケビン・ナッシュ、元オズで元ディーゼルですよ。そしてnWoの総帥!役柄はトム・クルーズのボディーガード!セリフは一切ありませんがなかなかの存在感を醸し出している。まあ、劇場でケビン・ナッシュを見つけた途端テンションが急上昇したのは僕だけでいい。
若者文化とそれをよく思わない旧体制の対決というのは「ヘアスプレー」でも見られた構図。また「フットルース」などでも定番の構図。キャサリン・ゼタ・ジョーンズが教会で歌う部分は面白かったがここはロックじゃなくあえてゴスペルとかにしてもよかったんじゃないかなあと思う。
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*1:ロック・オブ・エイジズにもゲイの登場人物がいます