The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

勇気を矢に込めて メリダとおそろしの森

 ヒーロー強化月間、中休み。ディズニーはピクサーの3DCGアニメ「メリダとおそろしの森」を鑑賞。

物語

 昔々のスコットランド。勇敢な国王ファーガスと王妃エリノアの間に生まれたメリダは弓の得意な少女に育ったが、王族らしいおしとやかさを求める王妃気が気ではなく、母娘の仲は気まずい。ある時、王妃はメリダに婿を決め結婚させるという。候補はマッキントッシュ卿、マクガフィン卿、ディンウォール卿のそれぞれの息子たち。しかし結婚など全く考えていないメリダは弓競技で勝負をさせ、なおかつ自分が参加し一番になってしまう。王妃とメリダは激しい口論の末メリダは家族を描いたタペストリーを切り裂き、王妃はメリダの大切な弓を暖炉に放り投げてしまう。城を飛び出たメリダは森の中で「鬼火」に誘われ、魔法使いのおばあさんの元へ。「お母様の考えを変えて欲しい」メリダは頼み込み、魔法のケーキを作ってもらう。城に戻り王妃に食べさせると、なんと王妃は熊になってしまう!
 急いで元に戻そうとするが既に魔法使いのおばあさんは別のところへ。しかも二日目の朝日が登ると一生熊のままになってしまうのだ!

 というわけで実に民話ちっくなお話である。どうやら元になったお伽話などはないようだが事前の予告編を観て思っていたヒロインが活躍するファンタジー映画、というのとは少し違っていた。熊にされた母親をもとに戻すために奮闘するお話である。前半はメリダが弓を披露する場面が多いが、後半はそれほど弓の腕前を披露する場面が無かったのが残念。
 公開されてからあんまり評判が良くなくてしかも「ダークナイト ライジング」の後だったりするので、観ようかどうか迷ってたくらいだったのだ。確かに物語的には「?」というところが無かったでもないが決してつまらない作品では無かった。
 
 と、その前に今回は短編が二本同が時上映。一本は「トイ・ストーリー」の新作「にせものバズがやってきた」。もう一本は完全新作「月と少年」。「にせものバズがやってきた」は原題が「Small Fly」でこの場合は「小さい飛行士」つまり「にせものバズ」を指すのだろう。にせものバズとはファーストフード店のキッズメニューのおまけおもちゃで、バズ・ライトイヤーのデフォルメ人形。この人形がバズと入れ変わってボニーの家にやってきて、一方バズは遊ばれること無く倉庫行きになった販促おもちゃ達のグループセラピーに参加することになるのだった。前回「カーズ2」の時の短編に比べるとぐっと出来は劣る印象。それでもグループセラピーで出てくるワンダーウーマンとアクアマンを合体させたようなネプチューナというキャラは面白かった。
 一方「月と少年」はセリフが一切ない短編。「天空の城ラピュタ」に出てくる親方のような父と爺の仕事に初参加した少年。その仕事とは満月に降り立って月表面の星々を払って三日月にすることだった!アメリカというよりどこかヨーローッパの雰囲気のある作品で、それもそのはずこの作品の監督はイタリアの人らしい。こちらはアカデミー賞にノミネートされたのも納得な素晴らしい短編。キャラクターデザインも可愛らしい。

 それでは「メリダ」本編。
 物語的には過去に滅んだ王国の伝説があったり、(とりたてて悪くはない)魔女が出てきたりと設定が盛り沢山だがうまく生かしきれてない印象。特にメリダが「母親をけだものに変えて!」という部分は結構唐突。そこまで怒りが持続するかな?とか思うし、結構母親を動物に変えて!というのはしっかりメリダの願望であった気がする。しかし、熊となった母親とともに行動する時は歩み寄るというより、メリダが一方的に反省したように見えるし(舞台になっている大昔のスコットランドの価値観ならともかく、現代の観客には王妃のいうことには全く正しさを感じない)、ファーガス王の足を食った熊モルデューに関してももっと描写を割いても良かったのでは無いかという気もする。
 それでも悪いところばかりではない。

 森の描写(特に鬼火ことウィル・オー・ウィスプ)や動物になった親を助ける、という展開から宮崎駿の作品「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」辺りを連想するし、実際ピクサージブリアニメの影響も多分に受けていると思うが、僕はジブリアニメよりむしろ手塚治虫の匂いがした。キャラクター達、とりわけスコットランドの豪族であるマッキントッシュマクガフィン、ディンウォールの三人やファーガス王。彼らのデフォルメの効いたデザインや城の中で乱闘してるシーンなどが実に手塚治虫ぽかった。
 この作品の男たちはヨーロッパといってもそこはスコットランド。体中にペイントした部族があったり、三つ編みを編んでいたり、キルトのスカートを履いていたり、そして勿論その下はノーパンなのだ。この蛮勇っぽい魅力はふんだんに出ていたと思う。ハッキリいって(ルックス的に)いい男一人も登場しないしね*1
 ヒロインにしても(ピクサーではなく)ディズニーの3DCGアニメである「塔の上のラプンツェル」のヒロイン・ラプンツェルが従来のディズニープリンセスをそのまま3DCGに置き換えたようなデザインなのにたいしてメリダ赤毛のチリチリパーマ。顔も丸っこいしどこか垢抜けない。日本のロボットアニメでいうと美少年ばかりの主人公の中に突然「戦闘メカザブングル」で丸顔団子っ鼻の主人公ジロン・アモスが登場したような感じだ。ところで「スノーホワイト」にメリダとそっくりな人が出てきた、と書きましたが、本編見て思ったのはメリダのデザインは「sakusaku」の新MC、トミタ栞ちゃんに似てますね。
 
 今回は吹き替え2Dで鑑賞。メリダの声はAKB48大島優子。まあタレント吹き替えでしかもAKBということでまた色々言われているようだけど、全然気にならず。普通にうまかった。まあ何度も言っているけどタレント吹き替えと3DCGアニメは比較的相性がよく、しかも本当に聞くに耐えないのはアイドルよりもベテラン俳優の方だったりするのだけれど。

メリダとおそろしの森 オリジナル・サウンドトラック

メリダとおそろしの森 オリジナル・サウンドトラック

 これまでの(ピクサーに限らず)アメリカの3DCGアニメの出来の良さと比べると70点といった感じだが、十分面白かった。とりあえず、次の作品は「モンスターズ・ユニバーシティ」だそうだけど「モンスターズ・インク」は観てないんだよなあ。
 それよりもやっと予告編が見れたティム・バートンの「フランケンウィニー」が超面白そう。元々はバートンの実写デビュー短編なのだけどこれをストップモーション・アニメーションでセルフリメイク。フランケンシュタインを犬に置き換えた作品だが、さらに犬を人造人間に逆変換したのが「シザーハンズ」だったりする。元は30分ぐらいの短編なのだでどのように膨らませるのか楽しみでもある。

オリジナルはこれに収録されてるはずです。 

*1:ひとりマッチョで顔もよさそうでおそらく劇中最強の男が登場するけどなにげに太めの侍女といい関係になってました