The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

愛アンマンとワイルドタイガー誠 愛と誠

 2012年も半年が過ぎたけれど、映画鑑賞のうち邦画*1は4本。そのうち2本が三池崇史監督作品(更にいうなら全部マンガやゲーム原作だ)というわけで、「愛と誠」鑑賞。

物語

 学生運動も下火になりつつ合った1972年、ブルジョアのお嬢様、早乙女愛は喧嘩の強い男と出会う。額にバット傷を刻んだその男こそかつて長野ののスキー場で愛を助けた「白馬の騎士」であった。しかしその白馬の騎士・太賀誠はとてつもないワルだったのだ。天使が悪魔に恋をした!
 かつての恩返しに誠を更生させるべく愛は親に頼み込み誠を自分の通う学園に通わせるが、超不良誠はすぐに退学。悪の巣窟花園実業に転校していく。後を追うように転向する愛と「きみのためなら死ねる」と愛を追う優等生岩清水弘。
 しかし、花園実業には恐怖の女番長高原由紀とその用心棒座王権太が待ち構えていたのだった!

 原作は梶原一騎原作、ながやす巧作画による劇画。この間の「ジェーン・エア」ではないが、こちらも僕が生まれる前の作品で断片的に読んだことはあるが全体としては未読。知識としてあったのは過去に映画化された際当時の新人女優がこの映画のヒロインから早乙女愛と芸名を名付けたリしたことと、「きみのためなら死ねる」という有名なセリフぐらい。
 今回、この映画化に合わせてコンビニ版の単行本が出ていたのでそれを読んだら思いの外面白くって、それで映画も駆けこむように観に行ったのだった。ただやはり1973年の作品ということで、現在とは熱量が違う。当時は真剣に捉えられていたと思われるが現在では突っ込みどころも多い。僕も面白かったけどそれは半分ギャグに近い楽しみ方だったのだ(勿論当時の読者も突っ込みながら読んでいたのかもしれないが)。だから今回三池監督が最初からギャグとして作るというのは現代の作品としてはありだと思う。
 予告編からして笑わせる気満々でコントっぽい部分も含め雰囲気としては前回観た「逆転裁判」に似てる。でも「逆転裁判」よりそのマンガ的デフォルメ、コントが物語への没入感を妨げない、ということでは上手い方向に発展してる。ミュージカル的に歌う部分もその方向性を手助けしている。
 ミュージカル的、と書いたがこれをミュージカルといってしまうのはちょっと違うかもしれない。主要キャラクターが初登場するときに自己紹介を兼ねて一曲披露する、という感じかな、と思う。太賀誠が歌う「やめろと言われてもー」で有名な西城秀樹の「激しい恋」は1974年のリリースで、主題歌ではないが西城秀樹が1974年版の映画「愛と誠」に出ていた頃にヒットした歌謡曲だ。

 主演は太賀誠に妻夫木聡。30を越えた高校生というのもどうかという意見もあるが僕個人としては悪くなかったと思う。というか高校を舞台にした物語の場合、同年齢の女子に比べて高校生の実年齢に近い役者だと子供にしか思えなくてこういう濃い物語には合わないんだよね。今期ドラマで「GTO」をちょこっと見ているが*2男子生徒が誰一人顔が覚えられない。勿論、若い人やその男子生徒役の子のファンなんかは別なんだろうけど(あと、お前の物覚えが悪くなっただけだ、という意見は謹んで受け入れます)。海外のドラマを見ていてもむしろ高校生を演じるのにふさわしいのは卒業してから10年ぐらいが勝負!だから妻夫木くん君なんて全然大丈夫だ。
 まあ、妻夫木聡という俳優には悪名高い「タイタニック」吹き替えやこれまた評判の悪い大河ドラマ天地人」などがあってあんまりいい印象は無かったのだが、今回は頑張っていたと思う。年齢は別に気にならないけれど不良を演じるには線が細いかなと思ったけれど長髪にしたそのルックスはTMネットワーク宇都宮隆を思わせるし歌もなかなかうまい。まるでバットシグナルのように刻まれた額の傷も合わせて主役にふさわしい活躍。ただ、原作では学校乗っ取りといった野望があるのだがその辺が無視されていたので、何が目的なのかさっぱり分からなかったりする。逆に虚無感というかニヒルな感じはよく出ていたが。ところで妻夫木聡の子供時代はこども店長が演じるという決まりでもあるのでしょうか?
 一方、ヒロイン早乙女愛は高校生の実年齢(原作は中学から始まるが映画では最初から高校生に)に近い武井咲。これが映画デビューということだが初っ端から特異なことやらされてますね。まだ確定ではないが、今年は彼女主演のマンガ映画を最低あともう一本は見に行く予定。彼女は「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌うのだけど、「あの素晴らしい、アーイー」と鼻を伸ばす仕草は何か元ネタがあるのかしら。いまいちよくわからないギャグ?だった。
 関係ないが中越典子武井咲が姉妹演じるドラマを早く作ってください。お願いします!
 

この岩清水弘、君のためなら死ねる!and more...


 原作を読んでいて一番ウゼぇと思っていたキャラが名台詞「君のためなら死ねる」の発信者岩清水弘。原作でも後半はそれほどでもないのだが前半はかなり鬱陶しい。そんな岩清水弘を斎藤工が演じていて原作より更にウザさ倍増(褒めてる)。結構な怪演である。歌うのは「空に太陽がある限り」。
 座王権太には伊原剛志。原作のまるでハルクのような巨体、という設定を「おっさんに見える病気」という設定*3に置き換えて48歳の伊原剛志が演じている。でも妻夫木聡斎藤工が高校生を演じているように伊原剛志が高校生を演じたっていいじゃないか!そういう小手先のエクスキューズは男らしくないよ!ちなみに伊原剛志は1983年の「コータローまかりとおる!」で「愛と誠」の登場人物砂土谷俊(本作には登場せず)のパロディキャラクターである砂土屋俊兵を演じている。歌う曲は「オオカミ少年ケンのテーマ」(今だとガムのCMでお馴染み)。
 後は早乙女愛の両親に市村正親一青窈一青窈武井咲の母親を演じているというのはそう無理な話でもないからいいとして、この二人の歌うシーンはそれほど必要だったかなという気がしないでもない。
 個人的に一番儲け役だったのは大野いと演じる高原由紀。原作のモデルみたいな切れ味尖そうな女性と言うよりは普通にその辺にいそうな女子高生という感じだけどボソっとしゃべるのとかがかなり壺だった。「夢は夜ひらく」を歌うのもかなり良かった。とはいえ生い立ちの寸劇はもう少しあっさりが良かったか。
 後は原作以上の儲け役になってるのは安藤サクラ演じるガム子。歌うシーンもある(また会う日まで)。その他太賀誠の母親に余貴美子。完全な余談だけれどつい最近まで僕は「アマリ キミコ」だと思っていて「ヨ キミコ」だと知って驚愕したものだ。
 
 僕はそれほど昔の歌謡曲に詳しいわけではないけれど(生まれる前だし)、映画のキャラクター達が歌う60〜70年代当時の歌謡曲がイイ味付けになっていることは間違いない。故に主題歌などでがっつり現代の曲(一青窈もだけど主題歌はかりゆし58)が流れるとがっかりくる。これは「アメイジングスパイダーマン」で日本語主題歌流れた時と似ているよ。もうちょっと曲のトーンを統一、普通に当時のヒット曲(あるいはそのアレンジ)で良かったんじゃないかなあ。

愛と誠(1) (講談社漫画文庫)

愛と誠(1) (講談社漫画文庫)

映画 愛と誠 オリジナル・サウンドトラック

映画 愛と誠 オリジナル・サウンドトラック

 全体としては前作「逆転裁判」が良い方向に進化した良作だと思う。ただやっぱり原作の大ファンだったりするとちょっと違うのかなあ。
 

おまけ アベンジャーズの面々が隠し芸で演じた「愛と誠」配役

  • 早乙女愛 アイアンマン(金持ち、アイつながり)
  • 太賀誠 ソー(暴れん坊)
  • 岩清水弘 キャプテン・アメリカきみのためなら死ねる!)
  • 座王権太 ハルク(インクレディブル・座王権太)
  • 高原由紀 ブラック・ウィドー(浪の花(食塩)を追加!)
  • 砂土屋俊 ニック・フューリー(片目ですが何か?)

ホークアイ「おい!俺の出番がないぞ!」
 

*1:特撮ヒーロー物除く

*2:おひぃさまことアイドリング!!!17号三宅ひとみさんが出ておられるので

*3:映画見てる時は冗談のつもりかと思ったが、パンフ読むと本当にそういう設定のようだ