The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

宗教と暴力の1995 NHK未解決事件 オウム真理教

 NHKの「未解決事件」第2弾。今回は1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教。前回同様3部構成で最初の二編はドラマ。残り一編はドキュメンタリーという構成(勿論ドラマ部分にもドキュメンタリーが挿入される、その逆もしかり)。

 1995年3月当時、僕は高校2年生。福島県に住んでいたので「地下鉄サリン事件」も朝のニュースだったかあるいは学校から帰ってきてからだったかよく覚えてはいないのだが、逆に鮮明に覚えているのは7歳上で東京に住んでいた兄が帰省していて何かの理由で一日東京に帰るのを遅らせていたのだが、真っ青な顔で「もし昨日帰ってたら、オレ、今日この時間帯のこの路線に乗ってたかも・・・」と言っていたのだ。まかり間違えば兄も犠牲者になった可能性もあったのだ。
 
 今回のドラマ部分はNHKの記者がある女性古参幹部に取材し、その女性幹部の視点から描かれる。この女性幹部はオウムの各種凶悪事件には関わっていなかったとされ(実際幹部であってもそういう人もいたのだろうと思う)、他の部分は他の幹部(現在死刑囚)の手紙やNHKが独自に取得した麻原彰晃の説法が入ったテープ等から再現している。基本的にその女性幹部の視点から描かれているため、前回の「グリコ・森永事件」に比べると弱い。何かが決定的に欠けている。
 萩原聖人演じるNHK記者は基本的に女性幹部の話を聴くだけで元信者の話を鵜呑みにしているように思える(勿論それなりのツッコミは入れるがしかし「人を殺すのが宗教なんですか!?」といったようなテンプレ質問に終始)し、その女性信者(冨樫真)と男性信者(羽場裕一)は反省しているようには見えず、その主張を垂れ流しにしている感さえある。
 多分、昨年11月の平田信容疑者の出頭を受けて急遽企画されたのかな?と思うような少し物足りない作り。それでも見所は幾つかあってその一つが麻原彰晃を演じる役者さんの演技で今回、男性信者には何人か見知った俳優もいたが(その代表は河相我聞)、この人は初めて。古川悦史という人らしい。

古川悦史のEtsushi.Fの記事、放送日です。
撮影前‥監督やスタッフから『物まねでは困るんですが、日本中が知っている容疑者だけに似てないのも困るんです』‥なんて複雑なことを言われ‥

 なるほど、この人の本来の顔はチェ・ミンシク似という感じ。勿論ルックスも似せているがそれを超えて独特の抑揚など喋り方がよく似ている。彼自身の動きは殆ど無いが今回のドラマ部分の一番の見せ場は彼の演技だろう。何しろ途中実際の麻原の説法テープの声とその後にそれを再現したドラマが流れるが全く違和感がないのだ。
 後は村井秀夫のサイコパスぶりを強調する演技。この人が一時期ワイドショーに出演しまくってたかと思うと恐ろしい。
 
 とはいえ全体的に知りたい、「坂本弁護士一家殺害事件」や「地下鉄サリン事件」、その後の「村井秀夫刺殺事件」などについてはドラマ中では以外にあっさり描かれていて物足りない。もちろん凡百なドラマに比べると充分重厚で考えさせられるものではあるのだけれど。
 

前回の記事

27年目のグリコ・森永事件 NHK未解決事件

 「グリコ・森永事件」が「未解決であることが確定」した事件であるのに比べるとこの一連のオウム事件まだまだ現在進行中の事件である。「犯人がわからない」という意味での未解決事件でも無い。
 このシリーズ、未解決事件をテーマにするということは最も証言が必要な警察の過去の汚点を暴くということでもある。ご存知のように警察がミスを認めることは、めったにない。必然的に最近の事件は難しいのかもしれない。関係者が現役を引退しているようなものでないと証言を引き出せないのかも。その意味で今回、微妙に歯切れが悪い。数年後にもう一度「オウム真理教」をこのシリーズで取り上げ別の視点か描いてほしい。ドキュメンタリー部分にしてもその頃には新しい事実も判明してまた別に作れるはずである。
 
 それにしても1995年は色々なことがありすぎた。1月に阪神大震災、そして3月に地下鉄サリン事件とそれを発端とする各種オウム事件。この時の総理大臣は自社連立政権社会党村山富市氏であって震災にしてもこの事件にしても当時は色々批判されたが久しぶりの社会党からの首相だと思ったらこんな百年に一度起こるかどうか分からない事件にあたってしまって現在から振り返ると少し可哀想であった。でもこの政権自社さ連立なのにネトウヨの手にかかるとこの当時の不始末は全部社会党が悪いことにされちゃうんだから可哀想だよなー*1
 あの当時、オカルト番組やワイドショーが批判され縮小されたがそれも今や昔、現在ではまた増えているし、マスコミも過去の反省を忘れたかのように見える。あの狂気は確かに凄かったが、オウムの前には連合赤軍があり更に遡れば国をあげて狂気に邁進していた大日本帝国がある。そして現在でも社会への憎しみを救い上げる形で在特会や維新を名乗る集団(特にどれとも言わないが維新を標榜する集団は総じて危険な香りがする)、あるいは労働力を奴隷化する企業が暴走しかけている。現代でも狂気はまだ生きているのだ。
 
 直接関係ないが、オウム真理教の名が知られ始めた1990年頃、僕は「オウム真理教」のオウムとは鳥のオウム(鸚鵡)のことだと思っていた時期があった。そして日曜日の「平清盛」は前半のクライマックス保元の乱悪左府藤原頼長がオウムを持って逃げ惑っていましたね。見せ場はほとんど源義朝と敵対する弟、鎮西八郎源為朝*2が奪って行って無理やり清盛の見せ場を作った感じではありました。実際の保元の乱も功労者は義朝で、にも関わらず恩賞その他で清盛より低かったためそれが平治の乱につながるのですが。
 で、為朝さんの無双ぶりが素晴らしかったのでNHKは彼のスピンオフドラマを作るべき!前半は九州で大暴れ!後半は保元の乱後、伊豆大島で大暴れ!

*1:論議席数の大多数を締めていたのは自民党だったのだ

*2:個人的に僕が純粋な武力では日本史上最強と考える人物