グーニーズ VS WWFスーパースターズ
この間、何故か発作的にリチャード・ドナーの「グーニーズ」をレンタルして見ていたのだけれど、色々と発見があったので軽く書いてみた次第。
こんなシーンあったっけ?というアメリカ版ポスター。
この有名なポスターは平成ゴジラシリーズやスターウォーズシリーズで有名な生頼範義氏によるものだけど日本限定だったのかな?
公開当時はコリー・フェルドマンとキー・ホイ・クァンのアイドル的人気がずば抜けていたように記憶するけど今見るとマイキーとブランドの兄弟がショーン・アスティン(サムワイズ・ギャムジー!)とジョシュ・ブローリンという中堅俳優として大活躍していることのほうが重要かも。ジョシュ・ブローリン(今度「MIB3」でトミー・リー・ジョーンズの若いころを演じるね)は今だとゴリラみたいな強面の風貌だけどこの頃はすっきりしたハンサム。ちょっとライアン・レイノルズ似。ショーン・アスティンは今と違ってぜんぜん痩せててサムの頼もしさより可愛く守ってあげたい感じだ。後はヒロインであるアンディが今で言うならエマ・ワトソンに似ていて可愛い。
ブルーレイにはいつ収録されたのか分からないが(ここ数年以内だと思う)リチャード・ドナー監督とグーニーズ(高校生3人含む)の面々によるコメンタリーが収録されており映像付きなので現在の風貌が拝めるのだけれどキー・ホイ・クァンがすごく格好良くなっている。この人今はアクション監督なんだよね。当時は「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」にも出ていたしスピルバーグの秘蔵っ子、今で言うシャイア・ラブーフ的な存在だったのかな。コリー・フェルドマンはやっぱり「スタンド・バイ・ミー」が有名ですね。
後は強烈なフラッテリ一家の面々。特にママ・フラッテリが印象深いがこういうギャング一家を率いる女傑というと「天空の城ラピュタ」のドーラが思い出される。でもこっちが一年早い。というかおふくろギャング的な存在はその前から結構あるけどね。こちらも次男のフランシスを演じているのが「マトリックス」「デアデビル」などで個性的な風貌で活躍するジョー・パントリアーノだった。今と違ってすっきりしたインテリ風若者といった感じ。まあ頭頂部がアレだけど(それは劇中での話)。
映画のなかではピタゴラスイッチ的なライトな「インディ・ジョーンズ」という感じの仕掛けが満載で今見るとたわいもない感じだけどオールセットによる映画はいま見てもなかなか面白い。しかしこの映画、物語の原作はスピルバーグなのだが、屋根裏で父親のものを探る、というのはもはやスピルバーグの定番なのだな。
ラスト、キー・ホイ・クァンが「巨大タコが出てきた」と言ってそれは話を大きく見せるためにホラを吹いたのかな、と思ったらカットシーンにあったんですね。明らかに作り物の巨大タコと遭遇するシーンが。アレは当時でもちょっと見た目がしょぼくカットして正解ですな。
で、「グーニーズ」と言えばシンディ・ローパーの歌う主題歌「グーニーズはグッドイナフThe Goonies 'R' Good Enough」で当時もしかしたら映画そのものよりも人気だったかもしれないファミコンゲーム版の基本BGMとしても馴染みが深い。で、これが今見るとなぜかWWF(現WWE)のスーパースター(プロレスラー)がたくさん登場していたのだ!
"ラウディ"ロディ・パイパー、アイアン・シーク、ニコライ・ボルコフ、ファビュラス・ムーアといった当時現役だったレスラーから、フレッド・ブラッシー、ルー・アルバーノといった既に現役を退いていた元レスラーのマネージャー。そして何と言ってもアンドレ・ザ・ジャイアント!さらにはグーニーズの面々やスピルバーグその人も出演しかなり賑やかなPVになっている(なぜか前後半の二部構成だし)。PVの中でシンディと対立するロディ・パイパーは日本でもっと評価されて欲しいレスラーだが、「パイパーズ・ピット」というコーナーを持っており、最後はホスト(パイパー)がゲストと乱闘になって終わるという、「ジェリー・スプリンガー・ショー」を先取りした人物でその喋りはザ・ロックやクリス・ジェリコに影響を与えている。アイアン・シークとニコライ・ボルコフはそれぞれイランとソ連という当時のレーガン政権にとっての敵対国を象徴するレスラーとして”リアル・アメリカン”ハルク・ホーガンと対立していた。ファビュラス・ムーアとフレッド・ブラッシーはヒール側マネージャーとして活躍。
いっぽうPVでもシンディ・ローパー側として着くルー・アルバーノやアンドレ・ザ・ジャイアントは当時はベビーフェイス。現実のリング(といってもアングルだが)における対立がそのまま(とても和やかとはいえ)PVで反映されているのだな。
当時のWWFの状況を顧みると何と言っても1985年に「レッスルマニア」の第一回大会がニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで行われており、その大会にシンディ・ローパーも特別参戦している。この大会にはシンディ・ローパーの他にもミスター・Tやモハメド・アリなどレスラー以外も出演しておりニューヨークの地方団体から全米団体へと躍進しようとしているビンス・マクマホンの意気込みが伺える。おそらくこの「グーニーズ」におけるスーパースターの貸出もその一環だったのだろう。
いっぽう、当時のWWFの絶対的エースといえばハルク・ホーガンであるがホーガンの映画出演第一作である「ロッキー3」は1982年。これは有名レスラーがゲスト出演した、というよりむしろこの出演で名を売った、という感じのようだ(勿論プロレスファンや日本では知名度抜群だったが、プロレスをあまりみないような一般人にまでアピールしたという意味で)。その後ビンスの元いくつか映画に出演しているが結局ぱっとしていない。
ロディ・パイパーは1988年にジョン・カーペンターのSF「ゼイリブ」で主演を果たす。後半に延々路上プロレスするシーンが語りぐさだったりするのだが、この映画はビンスとは関係なく出演したらしくこれが元でビンスとパイパーの仲が揉めてパイパーはWWFを離れることになる。
「グーニーズはグッド・イナフ」に出ているレスラーから当時を振り返ると、ヒールであるパイパーはスコットランド、シークはイラン*1、ボルコフはソ連と実際の出身地とはまた別に「外国人」というギミックを与えられヒールをしていた。対立するのは「リアル・アメリカン」なホーガンなわけで当時のWWFのレーガン政権のタカ派路線に乗っかったイケイケ路線が伺える。
WWFが再び映画に本格参戦するのはロック様の「ハムナプトラ2」における出演がきっかけでスピンオフ「スコーピオン・キング」ではビンスが製作に名を連ねている。今ではWWEのスーパースターの映画出演は珍しくない。
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「グーニーズ」キャストの現在。服装からブルーレイのコメンタリー撮った時の写真だね。