沈んだ客船、不沈の映画 タイタニック3D
100年前の今日。1912年4月14日、まもなく日付が変わろうかという夜の11時40分。大西洋をニューヨークに向かい航行中の豪華客船タイタニック号に氷山が衝突、巨大な豪華客船は翌15日の2時20分に沈み1500人以上の死者を出した大惨事となる。
1997年。ジェームズ・キャメロン監督は私費まで投じて一本の映画を撮りあげる。映画「タイタニック」は全世界でヒットし当時興行収入世界一位の映画となった。
沈没事件から100年が経った今年その映画が3Dとなって再び公開される!
というわけで、本日見て参りました。「タイタニック3D」。冒頭に書いたように100年前の今日、4月14日がタイタニックが事故にあった日なのですが、別にそれを意識して鑑賞日を選んだわけではなく、全くの偶然で劇中で日付が出てきて驚いた次第。
僕は1997年の「タイタニック」公開当時3回(うち一回は先行オールナイト)劇場に観に行き、ソフト化されてからも数回レンタルで見て、TVなどで放送されれば少なくとも後半は見る。それぐらいにはファンです。今回も予告編を見た段階で同じ過去作の3D化作品である「スターウォーズ EP1ファントム・メナス3D」よりも効果的に感じてこれは観に行こうと思った次第。映画自体は公開から15年も経っているし色々なとことで語られ尽くされているがそれでも少し書き綴りたい。
本作は御存知の通り実際に起きた「タイタニック号沈没事件」を描いた物語。ただ劇中の主人公であるジャックとローズの話は架空のもの。今回改めて凄いなと思ったのは劇中の物語構成とキャメロンの演出に対する自信。よく言われるがまずこの映画は最初に現在(1997年)から始まり沈没したタイタニック号を見せてしまう。さらに当時の生存者の一人である101歳になった主人公のローズが登場し、CGによって沈没の過程を説明してしまう。つまりローズが最後まで生き残ることや沈没する様子を事前に教えておいてから本編に入るのである。こんな構成、よほどドラマ部分に飽きさせない自信がないと出来ない。ましてや今回はリバイバル公開。客の殆どが過去に一度は見たことがあるだろう作品。にも関わらず改めて見てもまったく飽きさせないものだった。見事!
以前にも旧ブログの方で書いたことがあるのだが、「タイタニック」と「シザーハンズ」と「ムーラン・ルージュ」が実は同じ話、だと思っている。実際に起こった事件とファンタジーとミュージカルと一見バラバラだが、
- 身分の違う男女が出会い、
- 女には恋人または婚約者がおり、
- 男女は恋に落ちるものの
- 事件が起こり、どちらかが姿を消す。
と、ストーリーは共通している。まあそれだけ普遍的で古典的な物語の定番であるわけだ*1。
僕はよく冗談で「『タイタニック』放送する時は前半要らない、後半だけでいいや」とか言っているのだがここでの前半というのは要はジャックとローズの恋愛描写の部分である。タイタニック沈没の阿鼻叫喚の地獄絵図が見たいのであって男女の恋愛なんていらないよ!というよくある話なのだが、あくまでこれは既に一度見た場合であって初見であればドラマ部分も全くダレることはない見事な演出だった。勿論先に示したとおりよくある物語の定番でシーンもセリフも陳腐だ。でもやはり一等客室の退屈そうな食事と三等客室のアイルランド音楽に乗せて賑やかな宴会の様子が対比で描かれていたり、粗末な服装のジャックがイザ会食の時にはパリッとしたタキシードでアッと言わせるシーンとか(いつもでなく、たまにああいう格好するからいいのだよ)とてもうまい。今回は久しぶりに見たこともあって恋愛描写の部分も全く飽きることなく見れた。
キャストはご存知のようにレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット。ディカプリオは前回「J・エドガー」で老けメイクを見たというのもあるけれど当然のことながら若い!当時は23歳。まあ劇中でも似たような設定だろう。15年経った今でもそんなに老けてない(悪くいえば大人に見えない)ディカプリオだけど下手すりゃ15歳ぐらいに見えないこともない。
一方ケイト・ウィンスレットは22歳。劇中設定は17歳だが22歳だとしても大人びている。キャメロンの「強い女性好き」は当時から有名だったけど改めて見ると最初から強い女性である「エイリアン2」のシガニー・ウィーバーや「T2」のリンダ・ハミルトンに比べると上流階級のお嬢様が緊急事態に本領を発揮する感じだ。最初のほうこそ積極的なのはジャックでも一度開き直るとむしろ引っ張っていくのはローズの方なんだよね。最後が実は一番すごくて沈みゆくジャックの死体を臨みながら別の死体から笛をとって生存を訴える。僕なら多分、「なんかもうどうでもいいや」と思って一緒に沈むね。ウィンスレットはクラシックな顔つきでドレスとかがよく似合う。車の中で結ばれるシーンとか完全に主導権を握ってるのはローズの方でディカプリオの童顔とも相まって、ことが終わった後にローズの胸に抱かれてるのは完全にローズのほうが年上に見えるよ!
ローズの婚約者であり悪役であるビリー・ゼーンは相変わらず厭味ったらしく俗っぽいハンサムフェイスは絶対正義のヒーローとかは無理だよなあと思わせる。僕の記憶が曖昧になってる部分があって、劇中女性子供優先のボートに親とはぐれた女の子を連れてきて「この子には私しかいないんだ」などと嘘を言ってボートに乗り込むシーンは半端に覚えていて「ああこいつ嫌なやつだけど、これでこの女の子がこいつの養子にでもなってるならまだいいか」とか思ってたら、その後その子供を別の婦人に押し付けて自分はさっさと救命ボートから逃げ出してるじゃないか!するとあの女の子は・・・15年ぶりに見ても嫌なやつ全開でした!
「タイタニック」は当時、キャメロンがタイタニックのセットまるごと一台作ろうとしてさすがにそれはかなわず、それでも半分だけ作り、左右反転させて撮影、役者にも左右反転の衣装着せて左右反転の演技させてたとかの逸話があるけれど、この辺は「T2」の双子特撮*2の延長線。
改めて見ると激しく上下に移動するタイタニック号のエンジン部分や沈みゆくタイタニックの雄叫びがまるで生物のようである。こういうのは今なら全面的にCG使うんだろうし、当時もある程度使っているんだろうけどこういう部分をセットで見せるのは凄い。
劇中で乗員数に対して救命ボートの収容人数が足りない(更には満員になる前にボートを出していた)であるとか、一等客と三等客で救出に優先順位をつけ死亡客の殆どが三等客だったとか単なる事故を超えて人災の面が強い。その辺や船内に押し寄せる海水などにどうしても東日本大震災とそれによる原発事故などを思い出した。タイタニック号の事故をきっかけに安全対策の見直しや海難に関する国際条約などが整えられた。震災も今後の対策のきっかけになってほしい。
タイタニック号乗員のその後
- 有能なんだか無能なんだか劇中ではよく分からなかったスミス船長は後に中つ国に生まれ変わってローハンの国王セオデン王として名誉回復しました。
- タイタニック号の設計士だったアンドリュースさんは「キューティ・ブロンド」でセクハラ弁護士になりました。「glee」のシュー先生の父親です。
- 元刑事で強面執事だったラブジョイは後に猿の惑星でチンパジーの金持ちになりました。今度は使用人から使用人を使う立場だ!良かったね!
- 不沈のモリー・ブラウンは宇宙から来たキアヌ・リーブスを調べる政府の高官に。
- 救出ボートの中で唯一乗客を救いに戻ったボートを指揮していたロウ五等航海士は後に宇宙で事故にあってゴム人間のヒーローになります。
- ローズの孫リジー役のスージー・エイムスは現在のジェームズ・キャメロンの奥さんだそうです。と言うことはこの時付き合ってリンダ・ハミルトンとの結婚/離婚騒動(この辺すごくどろどろして面白いんだけど割愛)の原因となったのは彼女か(勿論彼女だけでなくキャメロンも悪いのです)。
- そして!もしもジャックとローズが上手く生き延びて結婚したらどうなっていたかに興味がある方は「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きる日まで」を御覧ください。不沈のモリー・ブラウンも出てるよ!
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老婆ローズ役のグロリア・スチュアートさんは2010年に亡くなりました。100歳の大往生だそうです。